十三.「麻婆豆腐・其ノ壱」
「絆現さんは、蓮幻さんと藍幻さんとは友達なんですか?」
黄榴妃の夕餉用の麻婆豆腐を作る為に、すずめは味見係の絆現と調理場へとやってきていた。
「友達っつーか…───腐れ縁だ」
ほんの少し不服そうな絆現を横目に、すずめは手際よく材料を切り
「…なんか、羨ましいです」
三人だけにしかない「絆」を感じたからだ。
すずめは思わず本音を吐露する。
トントン───
純白色の大きめに角切りされた絹ごし豆腐を見ながら、絆現は怪訝そうにする。
「羨ましいだ?───何処かだよ…。彼奴ら腹黒いし、人の事すぐからかうし…」
「ぷっ…!、絆現さんからかいがいありそうですもんね」
「はあ!?、んな訳ねーだろ!!」
胡麻油をたっぷりと引いた中華鍋に、みじん切りにした香辛料と合い挽き肉を入れて炒める。じゅわあ──と、空腹を誘う音と共に香りが広がった。
絆現はそれを見て目を輝かせた。
「う、美味そう…!」
「ふっふっふっ…、仕上げに参ります!」
ちゃぽぽぽ…!と、金色の鶏ガラ出汁を入れて、煮込むように混ぜる。
「え……、鶏ガラ出汁だけか?。辣油とか豆板醤とか…色々入れるんじゃ…────」
すずめは、すぅ…───っと、息を吸った。
「真心の喜怒哀楽よ───麻婆豆腐に辛味を与えて」
すずめがそう唱えると、金色の鶏ガラ出汁の色が変わっていく。
(怒り──…過去の記憶を思い出すのは嫌だけど───)
現代に居た頃、同級生から雑に扱われていた。
何を言っても大丈夫!─── と、思われていた過去
(大丈夫…───今は、料理に活かすことができる…)
「───嘘だろ……、鶏ガラ出汁しか入れてねぇのに…!」
出汁は辛味を感じさせる艶のある赤茶色と変わった。
「仕上げに水溶き片栗粉を入れたら……完成です!」
皿に盛られた麻婆豆腐を見た絆現は、生唾をごくりと飲み込む。
カチャリ…───と、散蓮華に麻婆豆腐をすくい、そのまま口に入れた。
「ッ…!!───か、辛いッ!!!?舌が痺れる…!!───でも美味い~~!!!」
「どれどれ…味見を───…あむっ」
ビシャーン!!と、雷に撃たれたかのように舌は山椒の辛味が舌先を痺れさせた。
とろりとした豆腐と合い挽き肉が絡まって…───ご飯が欲しくなる。
「はあぁぁぁぁぁぁ~!!、この痺れるような山椒のピリッとした辛味……───絹ごし豆腐のとろんとした柔らかさと挽き肉に味が染みてて最高です~!…」
すずめと絆現は、頬が溶けてしまうかのように緩ませた。
「絆現さん、此処までお付き合いいただきありがとうございました!。黄榴様が喜んでくれるかは分かりませんが、とりあえず食べさせてきます。」
盆に黄榴妃用の麻婆豆腐を乗せた。絆現は我に返り、咄嗟にすずめの手首を掴んだ。
「あ、あの……絆現さん…────おかわりはありませんよ?」
「ちっがーうッ!!───お前のその力…真心茗荷を、先帝は探してたんだ。」
思わず心臓が、どくり──と、跳ねた。
「ど……どうして先帝が真心茗荷を!?」
絆現は鋭い眼差しをすずめに向ける。
「人の心を操れるからだ───」




