十一.「麒麟の姫」
四方の青龍宮・白虎宮・朱雀宮・玄武宮には、四神妃が暮らしている。四神妃はただの上級妃ではなく、東西南北を守る役割などもあり、後宮の人間からは「四方の守り神」や「守妃」とも呼ばれていた。
そして───中央にある麒麟宮に暮らす特別な妃が黄榴妃。
国の四方と中心の幸運の象徴として崇められている。
「な…なんで皆さんお揃いなんですかね?」
通常であれば、麒麟宮に足を踏み入れることは許されないが、すずめは後宮を仕切る宦官の琵琶に手配をしてもらい、特別に黄榴妃と面会をする機会を設けられたのだ。
───何故か蓮幻・藍幻・絆現も一緒に……
「僕は仲介役でっ」
「私は妃の診察で」
「俺は…着いてきてやったんだ!。…お前一人じゃ危なかっし──」
ゴンッ!!!!
偉そうに言う絆現の脳天に藍幻の拳が振り下ろされた。
「何故貴方が偉そうにしてるのでしょうか?。」
「…いってぇなッ!!!!。何すんだこの馬鹿力!!!」
「ケンケンが小鳥にちょっかいかけるからいけないんだよ?。」
「その呼び方やめろ!!!」
(うわあ…、痛そう。)
この三人はお互いに面識があるらしい。
特に共通点も無さそうなのに、意外と仲が良さそうなのが不思議だ。
(この三人の感じ何処かで見たような──)
「小鳥~、丁度黄榴妃と会えるきっかけが出来て良かったよ~。琵琶くんには頼んではいたんだけどねぇ…。」
なかなか難しくて…と、蓮幻が頬をぽりぽりと掻く。
琵琶の性格上、真っ当な理由でなければ
ただの食婦と妃が交流することなんて許される筈がない。然し、蓮幻は黄榴妃が暗殺事件に使われた煙草について何か知っているのならば、どんな手を使ってでも情報を手に入れるだろう。
今回はまぐれかもしれないが。
「黄榴妃は、どうやら精神的に参ってるみたいです。新しい環境に慣れてないのが原因っぽいですが…」
「…───それだけでは無いかと思います」
藍幻がぽそりと呟いた。
すずめが藍幻に理由を問いただそうとした瞬間、間が悪く女官が現れた。
「お待ちしておりました…。琵琶様からお話しはお伺いしております。私は黄榴様の侍女を務めている夕と、申します。」
「は、初めまして!、すずめと申します。」
夕は弱々しく微笑みながら深々と頭を下げた。
「黄榴様は…、今日はまだ機嫌が良い方なのですが…───」
黄榴が中に居ると思われる一室の扉を、夕は恐る恐る叩いた。
すると
バンッ!!!────
(と、扉が勝手に開いた!?)
独りでに開いた扉の先には
黄金色の常服を身に纏う、薄紫色の瞳をした美しい妃がこちらを睨み付けていた。
「夕!!──麒麟宮に何故そのような下賎な人間を入れたのじゃ!!。直ちに追い出せ!!!」
(めちゃくちゃ怒ってる…っ!!)
「黄榴様…お許し下さい。琵琶様の計らいでございます。」
夕が少し脅えながら黄榴に伝える。
「…麒麟の眠りを妨げたのじゃ。その命が幾つあっても足りぬ事くらいは分かっておろうな?」
すずめは黄榴の威圧感に一瞬怯む───と、思ったが…そうではない。
「黄榴様──本当に申し訳ございませんでした…!」
「謝れば良いものではない」
「因みになんですが……───麻婆豆腐はお好きでしょうか?」
ぐっぎゅるるるるるるるーーーっ
美しい妃から腹の虫の大合唱が響いた。
「き、貴様……───な、何故妾の好物を……」
すずめは口角を上げて
「その腹の虫が証拠です」




