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晩餐のおとぎ娘  作者: つぶ貝
少女と皇太子
10/15

十.「四神妃」

四神妃(しじんひ)から苦情をいただいたのだけど……どういうつもり?」

冷たい黄金色の瞳が、すずめを射抜いた。

黄昏のような…──美しいのに底知れない暗さを持つ目だった。

蓮幻(レンゲン)殿がここまで君を買う理由が、ボクには理解できないよ。……武官の癖に立場を弁えない犬もね」


(なんでこうなったんだろ…)


突然の呼び出しに呆然とするすずめを尻目に、童顔の中性的な宦官── この後宮を仕切る琵琶(ビワ)は静かに続けた。


「キミが早朝に哄笑したせいで、黄榴(ファンリィ)妃の機嫌を損ねたらしい。入内(じゅだい)したばかりで神経を尖らせているところに、朝から大声で笑い声が響いたら……誰だって不快になるだろう?」

「も、申し訳ございません!」

「誰が犬だッ!!。俺は絆現(バンケン)だ!!」


(やっぱり番犬だった)


すずめは笑いを堪えた。


黄榴(ファンリィ)妃は精神的に参っている。それなりの処罰を受けてもらうことになるけど…」

「しょ、処罰って…!!ちょっと待ってくださいよ!。元はと言えば、絆現(バンケン)さんが最初に突っかかってきたんですけど!?」

「じゃあ俺が悪いって言いたいのか!?」

「ソウデスネ」


琵琶(ビワ)は書案をバンッと叩き、冷ややかに言った。


「ごちゃごちゃ喧しいよ───死にたいの?」


(ひぃ!!こ、怖い…)


「通常だったら、このまま処罰を受けてもらう筈だったけど…──キミ達は一応、蓮幻(レンゲン)殿が買っている人物だからね。納得はいかないけど、今回は別の形で責任を取ってもらう。…食婦(しょくふ)のキミに黄榴(ファンリィ)妃の食事を作って欲しい。」

「え、黄榴(ファンリィ)妃の…ですか?」

「フン、つーかその妃…作った料理もまともに食べねぇ我儘だって噂じゃねぇか。」

絆現(バンケン)がそう言うと、琵琶(ビワ)は眉間に皺を寄せた。


黄榴(ファンリィ)妃が何故料理を口にしないのかは…ボクにも分からない。」

黄榴(ファンリィ)妃の好物ってなんでしょうか?」

「豆腐と挽肉と卵を使った物を好むらしいよ。」


(豆腐と挽肉と卵か…)


琵琶(ビワ)様、黄榴(ファンリィ)妃と面会をさせていただきたいのですが」

「……手配するよ────でも、一つだけ言っておく」


琵琶(ビワ)は少し低い声で言った。

「ボクは、今回の件で黄榴(ファンリィ)妃が素直に食すとは思えない───これは確実に言える事だよ。」

「なら、食べたくなるようにするだけです」

「…───失敗は許されない。最悪、その「命」をいただく…。それだけは覚えておくんだね。」


黄金色の美しく冷ややかな瞳は、すずめを殺そうとしていた。

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