ほのかな明かり
いつだって誰かが自分を助けに来る。
それは的はずれなようだけども、
それで世界は回っている。
「つまり、警察の方が来ないのは、」
「特殊屋があるからですねー」
そう言うと麻績は、お手本のようなドヤ顔を浮かべたまま、説明を始めた。
特殊屋とは、異変調査屋の調査において、後始末…、平穏な日常への橋渡しをする機関のことである。異変調査屋の実態を知る退役者がなっていることが多く、機密性は十分にあり、また機関の名前や役割の印象よりはるかに強い集団でもある。
「今回は事態の発覚が遅い、辺境の地、夜の時間といった要因が重なって特殊屋が出動したわけです。」
説明の補足と言って、池田は肩をすくめて続けた。
「この前は普通に警察を呼んだのは、状況が真逆だったからですね。特殊屋も人数が多くないので、あまり日本中を連れ回せないんですよ。」
「そうやって考えると、異変調査屋って人数が本当に少ないですよねー」
おそらく深刻な状況のはずだろうが、何でもないかというふうにのんきに麻績は返事をした。
「まったく、その通り。早く上の人間が対応してほしいものですが…。」
そんな事を話していると、近くの林の奥、自分たちが帰る方向から、いくつか明かりが見えてきた。相当強い光のようで、目が痛くなってくる。
「特殊屋でぇ〜す。異変調査屋の方はいますかぁ〜?」
「こっちです!」
声が聞こえてきたと思ったら、間髪いれずに裾野が返事をした。
「はぁ〜い。」
「やっと、帰れますかね、?」
「うん.今日はとっとと帰ろうか.」
群馬支部の人たちはそろそろ帰るようで、鈴木はお礼を言いに行くことにした。
「あの、皆さん。今日は遅いのに来てくださってありがとうございます。」
「ん?あぁ、いいよお礼なんて.どうせいつも暇なんだし.」
「暇なのは嘘ですよ、今日こそ早く帰って朝までぐっすり眠ろうと思ってたのに…、」
「まぁまぁ、いいじゃないの。」
群馬支部はいつもこんな雰囲気なんだろう、と鈴木は思った。これはこれで、楽しそうだ。
「とりあえず、君たちが見つかってよかったよ.それじゃ、また.池田さんによろしく言っといて.」
「わかりました!ありがとうございます!」
そう言うと伊藤たちは、今まさに光っている方に向かって歩いていった。その後、特殊屋と思わしき人と数秒やりとりをして、そのまま暗闇に消えていった。
「あれー、裾野さんたち言っちゃいましたー?」
麻績は先ほどまで池田と話していて、終わったのかこちらにやってきた。
「はい、もう帰ると。」
「そうですかー、私もお礼をいいたかったんですけどー」
また会った時に言うかー、と麻績は呟いた。
「それで本題なのですがー、」
「はい、なんでしょう?」
「さっき池田さんと話してー、今日はひとまずどこかに泊まることにしましたー」
麻績の話すところによると、本来何か大ごとな異変が発生した場合はすぐに事情聴取が基本だが(当たり前かもしれない)、今回はあまりに時間が遅いので、すぐにやるのではなく明日にしてもらおうと池田が特殊屋の人に話しているらしい。
「人が亡くなっているのでもしかしたら無理かもしれないですがー…」
そうなってしまってもしょうがない、どうにか頑張ろうと麻績は話した。
「これからどうなるんでしょうね…。」
鈴木は後院の言った言葉を思い出していた。息遣いに憎しみも怒りも諦めも混じっていたが、それがどこか浮ついて、自信のないようにも聞こえた。言ったことが全て本当だとしても、「誰かを呪う悪」に、彼は最後までなりきれなかったのかもしれない。
(そうあんまり暗くならないでよ。)
お前がそれを言うか。
(今日だって月明かりがあるでしょ。ほどよい暗さがだいじさ。闇にのまれたっていいことないのは、よく知ってるでしょ。)
そうだね。誰のせいだろうね。
「魔王の大群とか話してましたよねー、いったい何のことなのかー…」
麻績もそう言って考え始めたが…、
「鈴木君!麻績君!交渉成功です!」
池田の少し嬉しそうな声が聞こえてきた。あぁ、良かった、池田さんもちゃんと疲れるんだなと鈴木は思った。麻績も考えるのをやめ、顔を上げた。
「明日に改めて調査するので、今日はひとまず休んでと許可がでましたよ。」
「良かった…。」
張り詰めていた気持ちがやっとほどけてきた。いろいろあったが、何よりも疲れたのだ、しっかり休みたい。
「そうと決まればー、早く宿を探しましょっかー」
いつも雰囲気の変わらない麻績も、今日は心の底から嬉しそうにしている。
「といっても、この時間だとあまり期待できないかもですね…。」
「とりあえず、一回町に戻りましょうか。話はそこからです。」
そういうことで話がまとまった。鈴木たちは特殊屋に挨拶して、長い森の中を進む。
夜の闇に沈んだ木々は、池田のもつ明かりを反射して輝いているようにも見えた。
しばらくすると、今朝も見た、白色の車が目に飛び込んできた。
「とりあえず、乗っちゃって下さい。」
「はーい」
扉を開け椅子に腰掛けると、今日の疲れが一気に襲ってきた。眠いし足は痛むが、かといって車中泊するわけにはいかない。鈴木は目を擦った。
「近くの宿屋調べてみますね!」
「お願いします。その間に、駅まで戻っておきますので、特にその周辺を探してみてください。」
「はい!」
そういうなり、鈴木は持てる力を全て使ってでも見つけてやろうと、意気込んで検索し始めた。
麻績も後に続こうとしたが、
「うぐ…」
どうにも眠気が酷い。さほど疲れるようなことはしていないと思っていたが、体は正直だ。
「ぐ…」
限界を迎え、意識がとんで行ったのを感じた。
横で麻績が眠ったであろうことに鈴木は気づいた。麻績は自覚のないかもしれないが、あんなことの後でなら、当然の状態だろう。
「すー…すー…」
「(お疲れさまでした)」
そんな事もありながら、しばらくして鈴木の目に止まったのは、古い宿屋のレビューだった。
評価はいいとも悪いとも言えないが、そんな事を気にしている暇はない。
「池田さん!いい所見つけました!」
「本当ですか!」
鈴木は早速電話をかけ始めた。今はもう遅すぎるから、改めて考えるとはいれる宿屋を見つけるなんて、無茶な話だ。だから、なんとしても話をつけたいという思いと、宿屋の人に申し訳ないという思いが両者あって変な感じがしてくる。
「よし、電話つながりそう!」
鈴木は小さくガッツポーズをした。
色々考えながら書いていました。
ここからの展開はどうしよーかなぁって。
決まりました。
頑張ります。




