第六杯目 アブラはヌキで⑥
地の底に湯の音がして、玉座の前に女が跪いている。喫茶店で千代太と話していた女、その人であった。
「オベット、首尾は」
チャーシュ7世が声をかける。
「上々でございます」
オベットが顔を上げた。
「アブラホワイト。奴の心は、もう半分こちらにあります」
「ふん。薄情な輩よ」
「簡単でしたわ」
オベットは指先で髪の毛先をつまんだ。
「五人のうち、レッドは駄目です。あれは仲間を疑う心すら持っていないそのような人間は、揺すっても何も落ちません」
「ふむ」
「ブラックも駄目。あれは自分の中に軸がある。グリーンは周囲の様子を把握することに長け、隙がございません」
「イエローも軽薄そうではないか」
「いやだ、奴は騒がしいだけですわ。発散する術があるので、ストレスが溜まらないのです」
オベットは笑った。
「その点、ホワイトは不満を溜めます」
「ほう」
「ええ。理不尽なことがあっても受け入れ、不愉快なことがあっても言い返さず。自分が悪いとばかり考える」
「よくもまあ目をつけたものよ」
「本当に付け入りやすい性格で助かりました。まあ考えは足りないので、内偵として役に立つかまでは未知数ですが、使えなくなったら捨てればよろしいでしょう」
チャーシュ7世は、それには何も言わなかった。湯気が玉座の周りを流れていく。
「次は」
「もう一押しかと」
オベットが立ち上がった。
「あの者、まだ表立って仲間を悪く言えません。決裂さえしてしまえば、そこから崩壊するのはすぐかと」
「面白い。人の醜い様を見るのは大好きだ。何か手を貸す必要はあるか」
「ええ、一匹お借りしたいものが」
オベットはにやりと笑った。




