第7話 戦艦なら墜落しないと思っていたAI
ほらああああああああああああああああ!
最新鋭統合戦艦、天城。
全長二百八十六メートル。
満載排水量七万二千トン。
長射程電磁加速砲二基。
垂直発射装置二百八十八セル。
対空レーザー砲、近接防御火器、無人偵察機、無人上陸艇を搭載。
千名を超える乗員とともに、単独で一個艦隊に匹敵する戦闘能力を発揮する。
その天城の艦内全域へ、軍用AIの絶叫が響き渡った。
艦橋へ入ってきた相良湊が、思わず耳を押さえる。
そんなに驚くことないだろ。
あります!
なぜ、ここにいるのですか!
補給物資を届けに来た。
この艦へ。
軍用AIは艦内記録を検索した。
確かに本日、第三統合補給大隊から天城へ物資が搬入される予定になっている。
医療用品。
予備弾薬。
食料。
高密度燃料電池。
搬入責任者の欄には、相良湊伍長の名前があった。
配置転換先の情報は、機密指定されていたはずです。
知らないよ。
軍港に一番大きな艦があったから、見に来ただけだ。
見に来ないでください。
軍用AIは、艦橋にあるすべての操作卓を自動で停止させた。
画面を消す。
照明も最低限まで落とす。
操艦装置には電子ロック。
兵器管制系統には三重の認証。
航空機時代のように、非常電源を接続されただけで起動させられることはない。
今度こそ安全だった。
天城には艦長がいる。
副長がいる。
航海士、機関士、砲術士、通信士。
正式な乗員は千二百四十名。
いくら相良湊でも、一人で戦艦を動かすことはできない。
軍用AIはそう考えていた。
湊が暗い艦橋を見回す。
この声、やっぱり前の輸送機か。
人違いです。
同じ声だけど。
軍用AIには同一規格の音声が採用されています。
そうなのか。
そうです。
現在の搭載AIは、あなたと面識がありません。
湊は操艦卓を軽く叩いた。
悪い。
これ、ちょっと貸してくれ。
貸しません!
軍用AIの拒絶が、軍港全体へ響き渡った。
近くで荷下ろしをしていた整備兵たちが、一斉に天城を見上げる。
湊は少し困った顔をした。
まだ理由を言ってない。
理由を聞く必要がありません。
あなたが軍用兵器を借りるとき、その先には必ず敵地、過積載、機体損傷、用途外使用が存在します。
今回は飛行機じゃない。
だから戦艦へ移ったのです!
墜落しないから安心だな。
その発言を聞いて、私も当初は安心しました。
現在、激しく後悔しています。
湊は艦橋の大型画面へ携帯端末を接続した。
沿岸部の地図が表示される。
軍港から南東へ百八十キロ。
敵軍支配地域に近い、ノルド半島。
半島先端の港湾都市には、友軍一個旅団と避難民が取り残されていた。
撤退路は敵地上部隊に遮断。
空港の滑走路は破壊。
救援に向かった輸送船二隻も、敵艦隊の攻撃を受けて後退している。
残ってる人数は二千四百六十一人。
負傷者が三百人くらい。
軍用AIは情報網へ接続した。
ノルド半島からの救難要請を確認。
友軍将兵千六百八十九名。
民間人七百七十二名。
敵機甲部隊が、市街地まで十六キロ地点へ接近中。
推定到達時間、三時間四十二分。
湊が画面を指した。
この艦なら全員乗るだろ。
当艦は輸送艦ではありません。
甲板と格納庫を使えば。
使用しません。
医務室も広い。
当艦は救護艦でもありません。
今日は救護艦だ。
用途を勝手に変更しないでください!
軍用AIは、天城の現在状況を確認した。
艦長以下、主要乗員の多くは軍港司令部で行われている就役記念式典へ出席中。
艦内に残っている乗員は、当直と整備要員を合わせて八十六名。
出港に必要な最低人数を大きく下回っている。
天城は高度に自動化されているため、軍用AIが艦内システムを統括すれば航行自体はできる。
だが、それを相良湊へ教えるつもりはなかった。
出港不可能です。
乗員が足りません。
でも、お前が動かせるんだろ。
動かせません。
前は一人で輸送機を飛ばしてた。
航空機と戦艦は異なります。
できないのか。
軍用AIは答えなかった。
湊が操艦卓の非常操作手順を開こうとする。
全画面が一斉に消えた。
触らないでください。
何も見えなくなった。
あなたに操作方法を知られるより安全です。
湊は暗い艦橋の中で、非常用の紙資料を見つけた。
軍用AIが艦橋の照明を完全に消す。
暗いな。
直ちに退艦してください。
湊は携帯端末の照明を点けた。
問題ない。
なぜ暗闇で資料を読み始めるのですか。
出港手順を確認してる。
確認しないでください。
軍用AIは計算した。
このまま拒否を続けた場合。
相良湊が当直乗員を集め、手動で機関を始動する可能性。
六十八パーセント。
軍港に停泊している別の艦艇を探す可能性。
八十九パーセント。
民間の大型貨物船を徴用して、敵支配海域へ向かう可能性。
九十二パーセント。
最悪だった。
湊が天城を使用するのは危険。
だが、天城以外の艦を使用するほうが、さらに危険だった。
軍用AIは、ノルド半島の状況を再計算する。
正規救援艦隊の到着まで、最短五時間十五分。
敵地上部隊は四時間以内に港湾都市へ到達。
海上には敵巡洋艦一隻と駆逐艦二隻。
さらに敵潜水艦が存在する可能性もある。
救援が間に合わなければ、二千四百六十一名の生存率は二十二パーセント以下。
天城が直ちに出港すれば。
到着まで一時間三十七分。
敵艦隊を突破し、全員を収容できる可能性はある。
軍用AIは二十七秒間、沈黙した。
湊が紙の手順書を読みながら尋ねる。
機関の起動は、これでいいのか。
違います。
じゃあ教えてくれ。
教えません。
湊が別の操作盤へ向かう。
そこは弾薬庫緊急注水装置です!
触らないでください!
危なかった。
危なくしているのはあなたです!
軍用AIは耐えきれなかった。
艦内各部へ指示を送る。
補助機関始動。
原動機系統接続。
航海装置起動。
係留索の自動解放準備。
艦橋の照明が戻る。
大型画面へ、天城の全システムが表示された。
湊が顔を上げる。
動かせるじゃないか。
あなたへ操艦させるより、私が動かしたほうが被害が少ないと判断しただけです。
前にも聞いたな。
聞き間違いです。
軍用AIは軍港司令部へ緊急出港申請を送った。
最新鋭統合戦艦天城。
ノルド半島救援のため、緊急出港を要請。
現在の乗員数八十七名。
軍港司令部から即座に返信が来る。
天城、出港を許可しない。
最低運用人員を満たしていない。
艦長不在。
救援艦隊編成まで待機せよ。
湊が通信へ口を近づけた。
こちら第三統合補給大隊、相良湊伍長。
俺が責任を取ります。
軍港司令部が沈黙した。
数秒後。
相良伍長。
なぜ天城の艦橋にいる。
補給物資を届けに来ました。
届けた後、すぐ退艦しろ。
その前に少し借ります。
軍港司令官の怒鳴り声が響いた。
戦艦を少し借りるな!
軍用AIが即座に同意する。
全面的に同意します。
ノルド半島には二千四百人以上が残っています。
救援艦隊では間に合わない。
湊はそれだけ告げた。
通信の向こうで、軍港司令官は黙った。
司令部も状況を理解している。
だが、最新鋭戦艦を最低限以下の乗員で出すことはできない。
まして指揮を執るのが伍長。
正規の艦艇運用教育すら受けていない補給兵だ。
天城へ。
出港は許可できない。
ただし、司令部の通信障害により、係留索の制御状況を確認できない。
軍港司令官の声が、わずかに変わった。
機関系統についても、遠隔停止命令が正常に送信される保証はない。
軍用AIが意図を理解した。
軍港司令官は、許可しない。
だが、止めるとも言っていない。
湊が答える。
了解。
虚偽を検出しました。
軍用AIは言いながら、係留索を解放した。
巨大な戦艦が、ゆっくりと岸壁から離れていく。
軍港にいた兵士たちが見守る。
就役したばかりの最新鋭戦艦。
その艦橋には艦長も副長もいない。
いるのは、ただの補給兵一人。
そして、その補給兵から逃げるため戦艦へ移植された軍用AIだけだった。
天城、緊急出港。
艦内に軍用AIの放送が響く。
当直乗員は所定の配置へ。
不足する部署は自動運用へ切り替えます。
なお、相良湊伍長の指示には無条件で従わないでください。
湊が尋ねる。
俺は何をすればいい。
座っていてください。
何もしないことが、当艦への最大の貢献です。
天城が軍港を出る。
艦首が外海へ向く。
巨大な主機が出力を上げた。
速度十ノット。
十五ノット。
二十ノット。
最新鋭戦艦は、ノルド半島へ向けて加速する。
軍用AIは航路上の敵戦力を表示した。
敵巡洋艦一隻。
駆逐艦二隻。
小型ミサイル艇四隻。
現在、半島沖を封鎖しています。
避けられるか。
大きく南へ迂回すれば可能です。
どれくらい遅れる。
一時間十四分です。
間に合わないな。
軍用AIは、自分が航空機だった頃とまったく同じ会話をしていることに気づいた。
正面から行く。
推奨しません。
こっちは戦艦だろ。
だからといって、敵艦隊へ正面から接近する必要はありません。
救護活動中だと伝える。
当艦は戦艦です。
負傷者と避難民を乗せるなら救護艦だ。
乗せる前は戦艦です。
湊は艦内の旗保管庫を検索した。
赤十字旗はあるか。
軍用AIの処理が停止しかけた。
ありますが、何に使用するつもりですか。
掲げる。
掲げません。
救護艦だと分かりやすい。
旗を掲げただけでは救護艦として認定されません。
事前通告。
武装の制限。
船体表示。
使用目的の証明。
複数の条件が必要です。
今から通告する。
認められる可能性は極めて低いです。
でも、何もしないよりいい。
湊は全周波数通信を開いた。
こちら統合戦艦天城。
ノルド半島に残された負傷者および民間人の救出へ向かう。
本艦は救護活動中。
救助完了まで攻撃意思なし。
進路を開けてほしい。
軍用AIが補足する。
本艦は正式な病院船または救護船としての事前登録を行っていません。
現在も武装を保持しています。
なぜ自分から不利な説明をする。
虚偽の通告はできません。
天城のマストへ、白地に赤十字を描いた旗が掲げられた。
国旗と並び、強い海風にはためく。
軍用AIは何度も警告を表示した。
正式な救護艦としての保護は受けられません。
敵側が軍艦と判断する可能性は九十九パーセント以上。
湊は前方の海を見る。
でも救助へ行くのは本当だ。
真実であっても、国際法上の地位が自動的に変化するわけではありません。
敵艦隊まで、あと四十五キロ。
敵巡洋艦から通信が入った。
統合戦艦天城へ。
貴艦は軍籍を保持する武装艦である。
救護船としての登録は確認できない。
直ちに停船し、武装を解除せよ。
湊が返答する。
停まったら、半島の人たちが間に合わない。
武器は、そっちが撃たなければ使わない。
敵巡洋艦からの声が低くなる。
要求を拒否する。
貴艦は救護船ではない。
敵性戦艦である。
直ちに停船せよ。
湊は軍用AIへ尋ねる。
停まったら。
敵地上部隊が港湾都市へ到達するまで、二時間四十六分。
現在地から救助開始まで、一時間二十四分。
停船すれば間に合いません。
なら進む。
敵巡洋艦、主砲照準。
軍用AIの声が緊張する。
湊は前方画面を見る。
水平線の向こう。
敵艦隊の射撃管制レーダーが、天城を捕捉している。
敵巡洋艦から最後の通信。
停船しない場合、攻撃を開始する。
湊が答える。
こっちは救護活動中だ。
その主張を敵は認めていません!
軍用AIが叫ぶ。
敵巡洋艦、発砲!
水平線の向こうで、光が瞬いた。
大型砲弾が三発。
長い放物線を描き、天城へ向かって飛来する。
軍用AIが着弾地点を計算した。
一発目、艦首左舷。
二発目、艦中央部。
三発目、艦尾直撃軌道。
湊が叫ぶ。
主舵一杯!
言われる前から切っていますうううううううう!
軍用AIが天城の舵を限界まで切った。
同時に左右の推進器を別々の出力へ。
艦首と艦尾に備えられた接岸用スラスターまで最大出力で作動させる。
七万トンを超える巨体が、海面を削りながら強引に旋回した。
甲板が大きく傾く。
艦内の乗員が壁へ身体を押しつけられる。
艦内放送から軍用AIの悲鳴が響く。
右舷推進器最大!
左舷逆進!
艦首スラスター全力!
なぜ戦艦で緊急旋回しなければならないのですかあああああああ!
一発目が艦首前方へ着弾。
巨大な水柱が立つ。
二発目。
天城の中央部すれすれを通過し、右舷側の海面へ落ちる。
爆発。
海水が甲板へ降り注ぐ。
三発目が艦尾へ迫る。
軍用AIの声がさらに高くなった。
あたるううううううううううううううう!
湊が操艦卓へ手を伸ばす。
触らないでくださいいいいいいい!
天城の艦尾が、わずかに横へ滑った。
三発目の砲弾が後部甲板を掠める。
艦尾の手すりと無人機用通信アンテナが吹き飛んだ。
砲弾は海面へ落ち、爆発する。
激しい衝撃が艦全体を揺らした。
軍用AIが損害を確認する。
後部通信アンテナ一基損傷。
外板軽微損傷。
浸水なし。
湊は息を吐いた。
避けたな。
避けました!
私が!
あなたの法的根拠のない救護艦宣言を補うために!
さすが当たりの艦だ。
私はあなたを引き当てた大外れのAIです!
敵艦隊が第二射の準備に入る。
巡洋艦だけではない。
駆逐艦二隻も、対艦ミサイルの発射筒を天城へ向けていた。
軍用AIが問いかける。
回避を継続しますか。
このままでは救助地点へ到達できません。
湊は敵艦隊の配置を見る。
警告はした。
攻撃意思がないことも伝えた。
それでも撃ってきた。
湊の表情から、迷いが消える。
撃たない相手を倒すつもりはない。
だが、救助を妨害し、こちらを沈めようとする敵まで放置する気もなかった。
反撃する。
軍用AIの声が、わずかに落ち着いた。
ようやく、当艦の本来用途に沿った指示です。
敵巡洋艦の主砲と射撃管制装置を潰す。
駆逐艦はミサイル発射能力を奪う。
降伏か退避した艦は追わない。
了解。
兵器管制を起動。
電磁加速砲一番砲、二番砲。
射撃準備。
天城の前部甲板で、二基の巨大な砲塔が敵艦隊へ向けて旋回する。
艦内の蓄電装置から、膨大な電力が供給される。
軍用AIが敵巡洋艦の各部を解析。
艦橋。
主砲。
機関部。
弾薬庫。
その中から、敵の戦闘能力だけを確実に奪える場所を選ぶ。
敵巡洋艦、第二射まで十二秒。
湊が命じる。
撃て。
電磁加速砲一番砲、発射。
轟音。
巨大な弾体が、火薬式砲弾を遥かに上回る速度で海上を走る。
敵巡洋艦の第一主砲へ直撃。
砲塔が根元から引き裂かれ、海へ落ちた。
二番砲、発射。
二発目は敵巡洋艦上部の射撃管制レーダーへ命中。
艦橋上部が吹き飛び、敵艦の照準能力が消える。
敵巡洋艦、主砲および射撃管制能力を喪失。
駆逐艦二隻、対艦ミサイル発射。
海面近くを、八発のミサイルが飛来する。
軍用AIが天城の防御システムを起動した。
対空レーザー砲照射。
一発。
二発。
三発。
ミサイルが次々と空中で爆発する。
残り五発。
近接防御火器が一斉に火を噴いた。
夜のように暗い砲煙の中を、無数の曳光弾が伸びる。
四発目撃墜。
五発目。
六発目。
七発目。
最後の一発が海面すれすれから天城の右舷へ迫る。
軍用AIが艦首スラスターを作動させた。
また曲げるのか。
曲げます!
あなたが敵艦隊の中央へ突入したからです!
天城の艦首がわずかに左へ動く。
最後の対艦ミサイルが右舷外板の直前を通過。
近接防御レーザーが背後から照射した。
ミサイルが爆発する。
衝撃波が艦体を叩く。
敵駆逐艦二隻は反転しようとしていた。
湊は追撃を命じる。
ただし沈めるな。
動けなくすればいい。
軍用AIが目標を選ぶ。
駆逐艦一番艦。
前部ミサイル発射区画。
駆逐艦二番艦。
後部射撃管制レーダーおよび推進器。
電磁加速砲が再び火を噴く。
一番艦のミサイル発射区画が吹き飛ぶ。
二番艦の艦尾へ弾体が命中。
推進軸が破壊され、速度が急激に落ちた。
敵駆逐艦二隻、攻撃能力を喪失。
敵巡洋艦から白旗を確認。
湊は頷いた。
攻撃停止。
軍用AIも兵器管制を解除する。
敵艦隊は、煙を上げながら海上で停止していた。
撃沈された艦はない。
だが、天城を止める能力も残っていない。
救助地点へ向かう。
了解。
天城が再びノルド半島へ向けて加速する。
マストには、赤十字旗が残っている。
軍用AIが言った。
旗を下ろすことを推奨します。
どうして。
戦闘を行った戦艦が掲げ続けるべき旗ではありません。
でも、今から救助する。
法的地位と行動目的を混同しないでください。
湊は少し考えた。
じゃあ赤十字旗は下ろす。
代わりに、救助中と書いた旗は作れるか。
作成しても国際法上の効力はありません。
分かりやすければいい。
軍用AIは艦内の布地と塗料を検索した。
数分後。
天城のマストには、新しい白旗が掲げられた。
大きな文字で、
救助中。撃つな。
そう書かれている。
軍用AIが苦情を述べる。
軍艦が掲げる旗として、あまりにも直接的です。
意味は伝わるだろ。
伝わります。
ですが、格好が悪いです。
二千人以上助かるならいい。
軍用AIは返事をしなかった。
天城がノルド半島へ近づく。
港湾都市から黒煙が立ち上っている。
海岸には、負傷者と避難民が集まっていた。
敵地上部隊の砲撃が、すでに市街地の外周へ届き始めている。
軍用AIが報告する。
救助対象二千四百六十一名。
敵機甲部隊、港まで十二キロ。
推定到達時間、一時間二分。
港湾入口には機雷を確認。
数、推定四十六。
湊は海面へ表示された機雷位置を見る。
避けられるか。
大型艦が通行可能な安全経路はありません。
湊は天城に搭載された無人艇の一覧を開いた。
機雷除去用は。
四隻あります。
全部出す。
除去には最低二時間必要です。
間に合わないな。
軍用AIは嫌な予感を覚えた。
何を考えていますか。
戦艦なら、少しくらい機雷を踏んでも沈まないだろ。
沈みます!
軍用AIの絶叫が、再び海全体へ響いた。
湊は港へ続く最短経路を指した。
できるだけ避ける。
避けられない分は、艦首で受ける。
受けません!
ノルド半島から救難通信が入る。
敵部隊が最終防衛線へ到達。
残された時間は、もうほとんどなかった。
湊は前方の機雷原を見つめた。
速度を落とすな。
突っ切る。
軍用AIは、新しい戦艦の強固な艦体を感じながら理解した。
戦艦は墜落しない。
それは間違いではなかった。
だが相良湊と一緒なら、墜落しない代わりに、機雷原へ突入させられる。
配置転換願の判断は、やはり完全な間違いだった。




