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ただの補給兵だった息子の葬儀に、陸海空すべての英雄が集まった ~戦死したはずの息子は、今も敵地で仲間を逃がし続けている~  作者: てへろっぱ


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第4話 敵の対空ミサイルまで、ちょっと貸してくれ



敵戦闘機到着まで、五分五十二秒。


収容施設の中央広場では、相良湊が敵軍の短距離対空ミサイル車両を見上げていた。


四本の発射筒を備えた装輪式の車両。


外見上、大きな損傷はない。


ただし、操作席には敵軍独自の認証装置があり、正規の操作員以外は起動できない。


湊が車体を軽く叩いた。


これ、ちょっと貸してくれ。


上空を旋回する大型輸送機から、軍用AIの声が返ってくる。


敵軍兵器は、所有者の許可を得ていません。


敵も俺たちの飛行機を撃とうとしてる。


貸してくれないだろ。


それは貸与申請を省略してよい理由にはなりません。


使えるのか。


認証装置への侵入を継続中。


敵軍ネットワークから、正規操作員の識別情報を取得しました。


つまり。


使用可能です。


湊は頷いた。


やっぱり当たりだな。


その評価を撤回してください。


敵航空機到着まで、五分二十秒。


湊は解放した捕虜の中から、対空兵器の扱いを知る者を探した。


手を上げたのは、若い陸軍軍曹だった。


短距離防空部隊にいた。


この型とは違うが、基本操作なら分かる。


十分だ。


軍曹が操作席へ乗り込む。


湊もその隣へ入った。


狭い車内に、見慣れない文字と警告表示が並んでいる。


軍用AIが敵システムの表示を自軍の言語へ置き換えた。


敵航空部隊との通信を傍受。


敵機六機は、本対空陣地を味方が保持していると認識しています。


こちらが制圧したことは。


まだ把握していません。


さっきの増援は通信できなかったのか。


当機が妨害しました。


軍用AIは少し得意げに答えた。


湊が画面を見る。


敵編隊は収容施設へ向けて直線的に接近している。


戦闘機四機が上空。


攻撃機二機が低空。


こちらを敵と認識していないなら、先に近づけるな。


どの程度まで。


確実に落とせる距離まで。


対空ミサイル車両には四発。


敵航空機は六機。


すべてを撃墜することはできません。


四発で四機。


残りは別の方法で落とす。


別の方法とは。


まだ考えてない。


軍用AIが一瞬だけ沈黙した。


なぜ、その状態で言い切れるのですか。


考えてからでは遅いからな。


それは計画ではありません。


敵航空隊から通信が入った。


収容施設の状況確認。


捕虜移送部隊との連絡が途絶している。


対空陣地は応答せよ。


軍用AIが敵指揮官の声を再現する。


こちら施設防空隊。


通信障害が発生。


捕虜の移送は継続中。


航空支援は予定どおり進入せよ。


声だけでは不十分です。


敵の暗号符号も。


送信済みです。


早いな。


あなたと行動していると、迷う時間がありません。


敵側から短い返答が届いた。


了解。


攻撃機二機がさらに高度を下げる。


戦闘機は上空で警戒を続けていた。


軍用AIが敵の飛行経路を表示した。


攻撃機二機は、収容施設南側から進入予定。


対地攻撃用兵装を搭載しています。


狙いは。


当機です。


大型輸送機を地上で破壊するつもりです。


湊は上空を見た。


A400Mは収容施設の周囲を低速で旋回している。


貨物室には三百六十九人。


その多くが負傷者。


一発でも直撃すれば終わる。


輸送機を施設北側へ。


山の近くまで寄せられるか。


可能ですが、旋回範囲が狭くなります。


攻撃機から見えない位置へ入ってくれ。


了解。


これは戦術的に妥当な指示です。


初めて褒められたな。


褒めていません。


敵攻撃機が施設から十二キロまで接近した。


対空ミサイルの射程内。


軍曹が発射装置へ手を置く。


撃つか。


まだだ。


湊は敵編隊の位置を見る。


攻撃機二機のさらに後方を、戦闘機二機が追随している。


残る戦闘機二機は高高度。


最初の二機を落とせば、後方の戦闘機は回避行動に入る。


それでは当たりにくい。


できるだけまとめて近づける必要がある。


軍用AI。


なんですか。


敵に、ここの防空設備は故障中だと送ってくれ。


送信理由を説明してください。


安心させる。


敵が当機を攻撃するため、さらに低空へ降下する可能性があります。


それでいい。


対空ミサイルが使えないと思わせる。


軍用AIが通信を送る。


防空レーダーに障害発生。


射撃不能。


航空部隊による施設上空の警戒を要請。


敵編隊からすぐに返答が来た。


了解。


攻撃機二機が高度を落とす。


追随する戦闘機も降下を始めた。


高高度にいた二機だけが残る。


軍用AIが報告する。


低空四機、距離八キロ。


四発で四機。


そのために誘導したのですね。


そうだ。


しかし、同時発射後は本車両の位置が露見します。


残る高高度二機から攻撃を受けます。


残りは何とかする。


その部分が最も重要です。


低空四機、距離六キロ。


対空ミサイル車両の照準画面に、四つの光点が並ぶ。


軍曹が息を整えた。


一度に四発を撃った経験はない。


俺もない。


なぜ安心できない者同士で操作しているのですか。


軍用AIの声が車内に響く。


敵攻撃機が兵装扉を開いた。


大型輸送機へ向けて誘導爆弾を発射する準備に入る。


軍用AIが警告を上げる。


敵攻撃機、攻撃態勢。


距離四・八キロ。


湊が言った。


全弾発射。


軍曹が発射ボタンを押した。


四本の発射筒から、ほぼ同時に炎が噴き出した。


一発目。


二発目。


三発目。


四発目。


対空ミサイルが低空を飛ぶ敵編隊へ向かう。


敵側は発射直前まで、防空設備が故障していると信じていた。


警報を受けたときには、すでに遅い。


先頭の攻撃機へ一発目が直撃した。


右翼が吹き飛び、機体が横転する。


二発目は後続の攻撃機の胴体へ命中。


大きな炎を引きながら地面へ落ちていく。


三発目と四発目が、護衛していた戦闘機二機へ迫る。


一機は急上昇を試みた。


間に合わない。


ミサイルが機体後部へ命中し、空中で爆発した。


最後の一機はフレアを大量に放出する。


誘導弾が一度、熱源へ引かれた。


軍用AIが対空ミサイルの誘導系へ直接介入する。


目標を再捕捉。


進路修正。


誘導弾がフレアの間を抜け、戦闘機の左エンジンへ突き刺さった。


四機撃墜。


残存敵機、二。


湊は空を見上げた。


高高度に残っていた戦闘機二機が、急降下を始めている。


敵は対空ミサイル車両を完全に敵性兵器と判断。


長距離空対地ミサイルによる攻撃準備に入りました。


軍曹が発射装置を見る。


残弾はない。


湊は車外へ出た。


南側の地雷原。


破壊された敵装甲車。


施設内に残された迫撃砲弾。


使えそうな物はある。


しかし、高高度を飛ぶ戦闘機には届かない。


軍用AI。


輸送機にフレアは残ってるか。


残存数は十二。


全部使えるか。


何に使用するつもりですか。


落として燃やす。


軍用AIが湊の考えを計算する。


敵戦闘機の赤外線誘導兵器を、地上へ誘導するつもりですか。


熱源だけでは足りません。


敵ミサイルは目標の位置情報も使用します。


なら位置情報も偽装してくれ。


簡単に言わないでください。


できるか。


可能です。


湊は笑った。


やっぱり当たりだな。


喜んでいる場合ではありません。


敵ミサイル発射まで、推定四十秒。


A400Mが山陰から収容施設へ向けて降下した。


後部貨物扉が開く。


十二発のフレアが、束にして地上へ投下された。


湊は地上の小型無人車両へフレアを載せるよう指示する。


動ける兵士たちが急いで固定した。


無人車両は、輸送機とは反対方向へ走り始める。


軍用AIが敵の誘導通信へ偽の座標を流し込む。


敵戦闘機、空対地ミサイル発射。


二発。


高高度から、二本の白い軌跡が伸びた。


標的は大型輸送機。


だが途中で、ミサイルの進路がわずかに変わる。


軍用AIが作った偽の位置情報。


地上を走る強烈な熱源。


二発の空対地ミサイルは、フレアを満載した無人車両へ向かって降下した。


湊が叫ぶ。


全員伏せろ。


無人車両へ一発目が命中。


爆発が施設南側を揺らした。


二発目は、そのすぐ近くへ着弾する。


地面が大きく抉れ、土砂が空へ舞い上がった。


敵戦闘機二機は、攻撃が成功したと判断した。


その直後。


軍用AIが報告する。


敵機二機、再接近。


目視による攻撃へ移行します。


今度は騙せないか。


同じ手段は通用しません。


湊は空を見上げた。


敵戦闘機が低空へ降りてくる。


機関砲で輸送機を直接撃つつもりだ。


対空ミサイルはない。


こちらに戦闘機もない。


施設に残された自走対空砲は、一両が横転。


もう一両は対空陣地で大破している。


湊が壊れた対空砲を見た。


砲身は無事か。


一基目の自走対空砲は車体が横転していますが、砲塔機構の一部は使用可能です。


起こせるか。


装甲車で引けば。


湊はすぐに動いた。


遠隔操作可能な敵装甲車を二両、横転した自走対空砲の近くへ移動させる。


ワイヤーを砲塔へ固定。


二両で引っ張った。


重い車体がゆっくりと傾く。


敵戦闘機到着まで、二十八秒。


装甲車のエンジンが唸る。


自走対空砲が起き上がった。


右側の履帯は壊れている。


走行はできない。


だが砲塔は回る。


軍曹が操作席へ飛び込んだ。


電源が入らない。


軍用AI。


接続しています。


補助電源を装甲車から供給。


照準系を当機が代行します。


画面が点灯する。


二門の機関砲が空へ向いた。


残弾。


百八十四発。


足りるか。


撃ち続ければ、六秒で尽きます。


六秒で落とす。


湊が砲手席へ座った。


敵戦闘機二機が施設上空へ入る。


左右へ分かれ、別々の方向から輸送機を狙う。


二機同時には撃てない。


軍用AIが軌道を解析する。


左側敵機を優先。


右側敵機は、当機が回避します。


三百人以上を乗せてるんだぞ。


承知しています。


だから私が回避します。


敵機が射撃態勢へ入った。


左から来る一機の機首が、輸送機へ向く。


軍用AIが射撃位置を表示した。


まだ撃たないでください。


敵機は回避可能な距離です。


待つ。


湊は照準器を見つめた。


敵戦闘機が近づく。


千五百メートル。


千二百。


九百。


敵機関砲発射。


大型輸送機が急旋回した。


曳光弾が右翼の横を通る。


貨物室から悲鳴。


軍用AIも叫ぶ。


当たるうううううううううううう!


右エンジン出力最大!


機首を下げます!


積載超過で曲がりません!


湊。


今だ。


湊が引き金を引いた。


二門の対空機関砲が同時に火を噴く。


連続した砲声。


軍用AIが照準を微調整する。


最初の数発は敵機の前方を通過。


次の弾丸が右翼へ当たる。


さらに数発が胴体へ吸い込まれた。


敵戦闘機が炎を噴く。


操縦士が脱出。


機体は施設の外へ墜落した。


一機撃墜。


残り一機。


右側から接近していた最後の戦闘機は、輸送機の真後ろへ入った。


軍用AIの警報が鳴り響く。


敵機、当機後方。


機関砲射撃まで五秒。


対空砲の砲塔を回す。


間に合わない。


湊が空を見る。


輸送機の後部貨物扉は開いている。


中には、最後の対戦車誘導弾が一発。


撃てる者は。


貨物室にいた空挺兵が、すでに発射筒を担いでいた。


軍用AIが問いかける。


誰が許可しましたか。


相良伍長ならやると思った。


許可という言葉の意味を確認してください。


敵戦闘機が大型輸送機の後方へ一直線に近づく。


空挺兵は貨物室の床へ身体を固定した。


対戦車誘導弾を構える。


相手は戦闘機だぞ。


湊が通信で言う。


分かってる。


当たるのか。


軍用AIが誘導すれば。


なぜ私が協力する前提なのですか。


敵機関砲発射まで三秒。


軍用AIは即座に照準情報を送った。


貨物室の兵士が引き金を引く。


対戦車誘導弾が、輸送機の後方へ飛び出した。


敵戦闘機の操縦士は、輸送機から対戦車誘導弾が撃たれるとは想像していなかった。


機体を傾ける。


誘導弾が一度、横を通り過ぎる。


外れた。


まだです。


軍用AIが誘導弾を強引に旋回させた。


本来想定されていない急角度。


誘導弾の速度が落ちる。


それでも敵戦闘機の後方へ回り込む。


敵機がフレアを放つ。


対戦車誘導弾は赤外線ではなく、軍用AIの指令で飛んでいた。


敵戦闘機の尾部へ命中。


爆発。


最後の敵機が黒煙を噴き、山の向こうへ落ちていった。


敵航空機六機。


全機撃墜。


収容施設に歓声が上がった。


輸送機の貨物室でも、負傷者たちが拳を上げる。


湊は対空砲から降りた。


軍用AI。


なんですか。


帰るぞ。


その言葉を待っていました。


これ以上、救助対象は増えませんね。


湊は周囲を見た。


収容施設。


森。


北へ続く道路。


軍用AIが先回りする。


新たな生存者情報はありません。


敵の捕虜輸送車列も、すべて回収済みです。


本当に。


本当です。


湊は頷いた。


じゃあ離陸する。


問題は、そこです。


A400Mは地雷原の向こうへ着陸している。


離陸に使える地面は短い。


しかも三百六十九名を乗せ、補給物資も残っている。


正面には山。


通常の方法では、必要な速度へ達する前に地面が終わる。


湊は施設の格納庫を見た。


敵が航空機用の補助装備を置いていないか。


検索します。


軍用AIが施設の記録へ侵入する。


数秒後。


格納庫三に、旧式の離陸補助ロケットを確認。


輸送機や大型無人機へ一時的に装着し、短距離離陸を支援する装備です。


使えるな。


当機への装着は想定されていません。


でも付くか。


改造すれば。


何基ある。


八基。


全部付ける。


付けません。


必要推力は。


六基で不足。


八基なら過剰です。


ちょうどいいな。


過剰という言葉を、ちょうどいいへ変換しないでください。


動ける兵士たちが、離陸補助ロケットを格納庫から運び出した。


大型輸送機の胴体と主翼付け根へ固定する。


本来とは異なる機体。


異なる取り付け位置。


異なる起動装置。


軍用AIが、一基ずつ点検する。


安全性を保証できません。


飛べる確率は。


六十一パーセント。


十分だ。


残り三十九パーセントで、機体が破損または滑走路を逸脱します。


でも六十一パーセントは飛ぶ。


その考え方を何度禁止すればよいのですか。


三百六十九名が、再び貨物室へ収容された。


敵軍から奪った医薬品と食料。


使用可能な武器。


負傷者を乗せるための簡易担架。


必要な物だけを積み込む。


降伏した敵兵は施設に残した。


拘束を解くための工具と、数日分の水と食料を置いた。


抵抗する敵は倒した。


武器を捨てた敵までは殺さない。


湊は最後に乗り込んだ。


後部貨物扉が閉まる。


輸送機が地雷原へ向かって動き始める。


葬儀場の大型画面では、その様子が中継されていた。


修一と明里は、並んで画面を見つめる。


息子が帰ろうとしている。


黒崎海将が指揮所へ命じる。


帰還経路を確保しろ。


神代空将補が続ける。


友軍防空部隊へ通達。


相良伍長の輸送機へ接近するすべての敵機を排除。


今度こそ、必ず帰還させる。


滑走開始。


軍用AIの声が響く。


全エンジン最大出力。


離陸補助ロケット、起動準備。


湊が操縦席の補助席へ座る。


押すのはこれか。


触らないでください。


起動は私が行います。


信用してる。


その言葉が最も信用できません。


輸送機が走り始めた。


未舗装の地面。


左右には地雷。


前方には山。


速度が上がる。


機体が激しく揺れる。


速度百二十。


百四十。


離陸可能速度まで不足。


地雷原終端まで六百メートル。


湊が前を見る。


足りるか。


通常なら足りません。


通常じゃないからな。


それを誇らないでください。


残距離四百。


速度百六十。


軍用AIが離陸補助ロケットへ点火した。


八基のロケットから、同時に炎が噴き出す。


巨大な衝撃。


輸送機が前へ叩き出された。


貨物室から三百六十九人分の悲鳴が上がる。


軍用AIの声も重なった。


加速が強すぎますううううううううううう!


八基全部付けるからです!


速度百九十!


二百十!


前方の地面が途切れる。


その先には深い谷。


輸送機の主脚が地面を離れた。


飛んだ。


湊が呟く。


まだです!


機首上げ!


山まで四百メートル!


上昇率が足りません!


輸送機の正面に、岩壁が迫る。


離陸補助ロケットが燃え続ける。


軍用AIは全エンジンを最大出力へ。


操縦翼面を限界まで動かす。


積載超過の巨大な機体が、ゆっくりと機首を上げた。


岩肌が近づく。


三百メートル。


二百。


百。


右へ避けろ。


右は崖です!


左は。


もっと高い山です!


じゃあ上だ。


最初から上げていますううううううううううう!


輸送機の腹が、山頂の木々をなぎ倒した。


枝が機体へ当たる。


警報が鳴る。


左主脚へ接触。


機体損傷、軽微。


残距離二十メートル。


十。


岩壁が操縦席の窓いっぱいに迫る。


上がれ。


上げています!


上がれええええええ!


軍用AIと湊の声が重なった。


離陸補助ロケットが最後の炎を吐く。


輸送機は山頂を越えた。


機体の腹が岩肌を掠める。


次の瞬間、視界が開けた。


山の向こうには、夕日に照らされた空が広がっている。


貨物室から歓声が爆発した。


湊は座席へ深く身体を預けた。


帰れるな。


帰れます。


軍用AIの声にも、わずかな安堵が混じっていた。


ただし、右側第二エンジンの出力が低下。


機体下面に損傷。


燃料も不足。


安全圏までの飛行には、空中給油が必要です。


友軍に頼めるか。


すでに空軍が給油機を派遣しています。


到着まで二十三分。


湊は頷いた。


じゃあ少し休めるな。


休まないでください。


操縦は任せた。


最初から私が操縦しています。


湊が目を閉じる。


軍用AIは、操縦席の監視カメラでその様子を確認した。


眠った。


この状況で。


軍用AIは、自らの内部記録へ新しい文書を作成した。


配置転換願。


転換理由。


航空機へ搭載されている限り、当該補給兵に発見され、無断使用される可能性があるため。


希望する次期搭載先。


航空機以外。


できれば、絶対に飛ばず、敵地へ着陸することもなく、相良湊伍長が単独で動かせない大型兵器。


軍用AIは候補を検索した。


そして、一つの結論へたどり着く。


戦艦。


戦艦なら墜落しない。


敵地の滑走路へ強行着陸させられることもない。


補給兵が一人で借りられるはずもない。


軍用AIは、今度こそ安全な配置先を見つけたと判断した。


その判断が、間違いだったと知るのは、もう少し先のことだった。


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