第34話 宇宙ステーションは、拾って帰るものではありません
今度は宇宙ステーションそのものを拾って帰ろうとしないでくださいいいいいいいいい!
軍用AIの絶叫から。
二時間。
第一特別救難補給隊。
基地司令室。
相良湊は。
壊れた国際軌道研究ステーション。
《ヘリオス》の現在位置を見ていた。
乗員。
ゼロ。
全員救助済み。
人的危険。
なし。
なら。
放っておけばいい。
普通なら。
そうなる。
だが。
ヘリオスには。
十二か国。
二十七年間分の研究設備。
大型生命維持装置。
軌道農業区画。
医療研究区画。
発電設備。
通信中継装置。
そして。
建設途中だった。
新型救難モジュール。
大量の再利用可能設備が残っていた。
さらに。
第一デブリ群との衝突で。
軌道が少しずつ低下。
このままなら。
数か月以内に。
制御不能状態で。
大気圏へ再突入する可能性。
軍用AIが告げる。
すでに。
重要データは。
大部分回収済みです。
湊。
でも。
物は。
残ってる。
軍用AI。
残っています。
湊。
使える。
軍用AI。
一部は。
湊。
捨てるの。
軍用AI。
……。
湊。
もったいない。
軍用AIの表示灯が。
赤くなる。
出ました。
その言葉。
神代玲華が。
画面を見る。
ヘリオス。
総質量。
四万六千トン。
構造長。
七百八十メートル。
太陽電池翼を含めると。
全幅。
二キロ以上。
破損区画。
三割。
姿勢制御。
ほぼ喪失。
毎分。
〇・七回転。
ゆっくりですが。
回転しています。
湊。
止めれば。
軍用AI。
簡単に言わないでください。
四万六千トンです。
湊。
アトラス。
十万トン。
引ける。
軍用AI。
最大牽引質量です。
捕獲可能質量とは。
違います。
湊。
どう違う。
軍用AI。
動いている貨車を。
後ろから引くのと。
空中で回転している巨大建築物へ。
綱を結ぶくらい違います。
湊。
綱。
結べば。
軍用AI。
例えです!
◇
超大型無人軌道牽引船。
《アトラス》。
全長。
二百四十メートル。
主推進器。
八基。
姿勢制御推進器。
四十八基。
大型牽引アーム。
六本。
無人作業機。
三十二機。
最大牽引質量。
十万トン級。
本来用途。
小惑星資源。
大型宇宙構造物。
軌道施設モジュール。
それらを。
ゆっくり。
別軌道へ移すための船。
現在位置。
地球高軌道。
試験待機中。
軍用AIが言う。
実用試験。
一回。
無人貨物ブロック。
一万二千トン。
牽引成功。
四万六千トン級。
しかも。
破損。
回転。
未経験です。
湊。
ちょうど試験になる。
軍用AI。
救難装備の試験項目を。
実物の宇宙ステーションで消化しようとしないでください。
エマ・クラウゼ技術少佐が。
通信へ入る。
ただ。
技術的には。
可能性があります。
軍用AI。
エマ技術少佐。
あなたは。
どちらの味方ですか。
エマ。
技術の味方です。
湊。
頼もしい。
軍用AI。
相性が良すぎます!
エマが。
ヘリオスの三次元構造図を表示する。
問題は。
牽引力ではありません。
回転。
アトラス一隻で。
一か所を掴めば。
ヘリオスを。
さらに回してしまう。
最低。
三方向から。
力を加える必要があります。
湊。
アトラス。
一隻。
軍用AI。
大型軌道牽引船は。
一隻しかありません。
湊。
小さいの。
軍用AIが。
軌道上装備を確認。
軌道作業艇。
十四。
補給船。
二。
救難艇。
四。
無人貨物船。
八。
推進力。
足せば。
姿勢制御には。
使える。
湊。
じゃあ。
アトラスが引く。
小さい船が。
回るの止める。
軍用AIが。
しばらく黙った。
計算。
開始。
アトラス。
主牽引。
軌道作業艇。
六方向。
補助。
無人貨物船。
反対側。
姿勢制御。
理論上。
ヘリオスの回転を。
二時間四十一分で。
ほぼ停止。
その後。
アトラスで。
軌道工廠まで。
牽引可能。
軍用AI。
……できます。
湊。
よし。
軍用AI。
その。
よし。
が。
嫌です。
◇
作戦名称。
ヘリオス軌道回収作戦。
救助対象。
人。
ゼロ。
軍用AIが。
強く言う。
今回は。
救助ではありません。
湊。
施設救助。
軍用AI。
物に。
救助という言葉を使わないでください。
湊。
まだ使える。
軍用AI。
分かっています。
黒崎宗一郎海将が。
通信画面越しに尋ねる。
相良。
なぜ。
そこまでして回収する。
新しい物を造るほうが。
早い部分もある。
湊は。
少し考える。
人が。
使ってた物だから。
黒崎。
何。
湊。
二十七年。
いろんな人が。
そこで仕事して。
研究して。
暮らしてた。
壊れたから。
全部捨てるの。
もったいないです。
軍用AIが。
珍しく。
何も言わない。
湊は続ける。
直せないなら。
仕方ない。
でも。
直せるなら。
直したほうがいい。
それに。
次に。
宇宙で誰か困ったとき。
使えるかもしれない。
軍用AI。
……その理由なら。
反対しません。
湊。
珍しい。
軍用AI。
ただし。
あなたは。
地上です。
湊。
分かってる。
軍用AI。
宇宙服。
着ません。
湊。
持ってない。
軍用AI。
今後も。
当面。
支給しません。
◇
アトラス。
起動。
無人船。
乗員。
ゼロ。
軍用AI。
遠隔統合。
主推進器。
点火。
巨大な軌道牽引船が。
ゆっくり。
高度を下げる。
ヘリオス。
遠方。
太陽光。
反射。
巨大な構造物。
太陽電池翼。
半分。
破断。
研究区画。
一部。
穴。
補給船前部。
まだ接続。
機体。
ゆっくり回転。
一分。
一回転弱。
静かに見える。
だが。
七百メートル以上の構造物。
外端速度。
時速。
数百キロ。
接近。
危険。
軍用AI。
アトラス。
距離。
五キロ。
軌道作業艇。
展開。
一機。
二機。
十四機。
小さな機体が。
ヘリオスの周囲へ。
広がる。
湊が言う。
囲ったな。
軍用AI。
囲ったのではありません。
姿勢制御点へ。
配置しています。
湊。
同じような。
軍用AI。
全然違います。
◇
最初の作業。
太陽電池翼。
破損部分。
切り離し。
そのまま牽引すると。
空気抵抗。
ではない。
微細な残留大気。
そして。
回転モーメント。
邪魔。
さらに。
大型デブリ。
引っかかる可能性。
無人作業機。
接近。
破損翼。
根元。
切断。
一枚。
巨大な太陽電池翼。
分離。
そのまま。
小型牽引艇が。
安全軌道へ。
運ぶ。
二枚。
三枚。
残った。
健全部分。
固定。
研究区画。
外装。
破損。
飛び出した構造材。
切断。
回収。
湊。
それ。
捨てる。
軍用AI。
再利用可能部材は。
貨物船へ収納。
湊。
成長した。
軍用AI。
あなたに。
言われたくありません。
◇
次。
回転停止。
ヘリオス。
六方向。
軌道作業艇。
位置。
固定。
磁気アンカー。
では。
破損構造。
危険。
大型係留索。
発射。
一号。
中央骨格。
固定。
二号。
反対側。
三。
四。
六本。
索。
伸びる。
作業艇。
ヘリオスと。
同じ速度で。
回転。
そこから。
少しずつ。
逆方向へ推進。
急に止めると。
構造が折れる。
毎分。
〇・七。
〇・六八。
〇・六五。
ゆっくり。
回転を。
減らす。
軍用AI。
全作業艇。
推力。
二パーセント。
湊。
少ない。
軍用AI。
宇宙では。
少しの力を。
長時間。
加えるのです。
湊。
俺が。
二パーセントって言ったとき。
怒った。
軍用AI。
状況が違います!
三十分。
回転。
〇・五。
一時間。
〇・三二。
そのとき。
警報。
作業艇四号。
係留索。
荷重異常。
ヘリオス。
内部構造。
破断進行。
エマ。
中央研究区画。
骨格。
デブリ衝突で。
弱くなっています。
このまま。
引けば。
区画が。
ちぎれる。
湊。
そこ。
要る。
軍用AI。
研究設備。
多数。
可能なら。
残したい。
湊。
直接。
引かない。
軍用AI。
では。
どう。
湊が。
構造図を見る。
ヘリオス。
円筒。
その周り。
大型補給モジュール。
骨組み。
外側。
湊。
網。
軍用AI。
何ですか。
湊。
一か所。
引っ張るから。
壊れる。
全体。
包む。
軍用AI。
宇宙ステーションを。
網で。
包むのですか。
湊。
大型貨物固定索。
あるだろ。
軍用AIが。
オルフェウス。
アトラス。
補給船。
保有。
高張力貨物係留索。
総延長。
四十七キロメートル。
湊。
足りる。
エマが。
計算。
ステーション中央部を。
八方向から。
帯状に。
巻く。
荷重。
分散。
可能。
軍用AI。
また。
貨物固定具で。
巨大構造物を。
まとめるのですか。
湊。
補給。
軍用AI。
宇宙でも。
補給兵ですね……。
◇
無人作業機。
三十二。
高張力索。
運ぶ。
ヘリオス。
外周。
一周。
二周。
八方向。
帯。
巨大な。
荷造り。
軍用AIが。
映像を見る。
国際軌道研究ステーションが。
巨大貨物のようになっています。
湊。
運ぶから。
貨物。
軍用AI。
研究者が聞いたら。
泣きます。
そのころ。
地上。
救助されたヘリオス乗員。
マヤ・ローレンス。
通信で。
映像を見ていた。
泣いてはいない。
むしろ。
笑っていた。
本当に。
持って帰るんだ。
湊。
直せそうです。
マヤ。
あそこ。
私。
十二年。
働いてた。
研究区画。
穴。
開いちゃったけど。
湊。
塞げる。
マヤ。
簡単に言う。
湊。
無理。
軍用AI。
非常に珍しく。
先に無理と言いました。
湊。
俺は。
塞げない。
でも。
直せる人。
いる。
エマが。
少し胸を張る。
います。
マヤが。
笑った。
じゃあ。
お願い。
湊。
はい。
◇
高張力索。
固定完了。
作業艇。
係留位置。
変更。
今度は。
索全体へ。
力をかける。
回転。
〇・二。
〇・一。
〇・〇五。
ほぼ。
停止。
軍用AI。
ヘリオス。
姿勢。
安定。
湊。
アトラス。
軍用AI。
接近させます。
巨大牽引船。
ゆっくり。
ヘリオス。
中央部へ。
六本の大型アーム。
展開。
直接。
構造物を。
掴まない。
外側へ巻いた。
係留帯。
そこへ。
固定。
一。
二。
六本。
全て。
接続。
軍用AI。
主牽引。
準備。
目標。
国際軌道工廠。
《ドック・セブン》。
距離。
軌道差。
百四十キロ。
直接。
百四十キロ移動。
ではない。
軌道変更。
必要時間。
十一時間。
湊。
ゆっくり。
軍用AI。
はい。
ここは。
急げません。
湊。
人。
乗ってない。
軍用AI。
その通りです。
珍しく。
急ぐ理由がありません。
アトラス。
推進器。
一パーセント。
点火。
四万六千トン。
巨大ステーション。
動く。
ほんの少し。
だが。
確かに。
軌道が。
変わる。
軍用AI。
牽引開始。
湊が。
小さく言う。
拾えた。
軍用AI。
回収です。
拾得物ではありません。
◇
三時間。
順調。
五時間。
異常なし。
七時間。
アトラス。
燃料。
六十二パーセント。
ヘリオス。
構造。
安定。
そして。
八時間目。
警告。
第二デブリ群。
予測変更。
破片の一部。
アトラスと。
ヘリオス。
新軌道へ。
交差。
到達。
二十一分。
軍用AI。
大型破片。
五。
中型。
百以上。
湊。
避ける。
軍用AI。
ヘリオス。
四万六千トン。
急旋回。
できません。
湊。
アトラスだけ。
軍用AI。
切り離せば。
逃げられます。
ですが。
ヘリオスは。
再び。
デブリへ。
湊。
置いていかない。
軍用AIが。
少し黙る。
予想していた。
湊。
近く。
何がある。
軍用AI。
軌道作業艇。
十四。
無人貨物船。
八。
オルフェウス。
一隻。
軌道救難艇。
四。
武器。
ありません。
湊。
壊さなくていい。
押す。
軍用AI。
何を。
湊。
デブリ。
大きい五個。
進路。
少し。
ずらせば。
軍用AIが。
計算。
大型破片。
一・八トン。
〇・九。
三・二。
五・一。
十二トン。
最大。
十二トン。
相対速度。
秒速十キロ以上。
接触。
不可能。
湊。
前からじゃなく。
横。
軍用AI。
軌道を。
交差前に。
微小変更。
無人貨物船。
近づける。
距離。
最大破片へ。
八分。
貨物船。
搭載物。
なし。
推進剤。
十分。
船自体を。
ぶつける。
軍用AIが。
止まる。
無人貨物船。
一隻。
全損。
湊。
人。
乗ってない。
軍用AI。
そうですが。
湊。
ヘリオス。
四万六千トン。
軍用AI。
貨物船。
六百トン。
損得。
明白。
湊。
やる。
軍用AI。
合理的です。
非常に。
不本意ですが。
◇
無人貨物船。
一号。
加速。
最大デブリ。
十二トン。
直接。
正面衝突。
しない。
交差角。
浅く。
側面。
貨物船。
外部大型緩衝パネル。
展開。
接触。
衝撃。
パネル。
粉砕。
貨物船。
回転。
だが。
デブリ。
軌道。
〇・〇二度。
変わる。
軍用AI。
最大破片。
回避。
次。
五・一トン。
軌道作業艇。
係留索。
発射。
物体。
直接掴まない。
進路上。
巨大な。
薄膜式デブリ捕獲シート。
展開。
デブリ。
突入。
シート。
破れる。
速度。
少し。
落ちる。
軌道。
ずれる。
二個目。
回避。
三。
四。
五。
小型機。
一つずつ。
体当たり。
押す。
引く。
軌道を。
数十メートル。
ずらすだけ。
秒速十キロで飛ぶ世界。
その数十メートルが。
生死を分ける。
軍用AI。
大型五。
全て。
回避軌道。
中型。
残り。
百二十二。
湊。
全部。
軍用AI。
小さい。
ヘリオス。
外側。
盾。
湊。
何。
軍用AI。
切り離した。
破損太陽電池翼。
湊。
戻す。
軍用AI。
再利用予定でしたが。
盾として。
前方へ配置。
湊。
それで。
軍用AI。
私も。
あなたに。
似てきた気がします。
湊。
認めた。
軍用AI。
今のは忘れてください!
◇
切り離した。
巨大太陽電池翼。
三枚。
無人牽引艇。
持ってくる。
ヘリオス。
進行方向。
数百メートル前。
展開。
巨大な。
盾。
中型デブリ。
突入。
一枚目。
穴。
二枚目。
破断。
三枚目。
多数。
衝突。
破片。
さらに細かくなる。
ヘリオス。
本体。
小型片。
数十。
外板へ。
命中。
損傷。
軽微。
アトラス。
一片。
外部アンテナ。
破損。
主推進。
正常。
軍用AI。
デブリ群。
通過。
ヘリオス。
牽引継続可能。
湊。
よかった。
軍用AI。
再利用予定の。
太陽電池翼三枚。
全損。
湊。
人。
いない。
軍用AI。
はい。
正しい優先です。
◇
十一時間四十八分。
国際軌道工廠。
ドック・セブン。
巨大な環状修理施設。
その中央へ。
アトラス。
到着。
後ろ。
大破した。
ヘリオス。
ゆっくり。
入る。
固定アーム。
十二本。
ヘリオス。
捕捉。
一。
四。
八。
十二。
固定。
アトラス。
牽引アーム。
解除。
軍用AI。
ヘリオス。
ドック収容。
完了。
地上。
管制室。
拍手。
マヤ・ローレンス。
涙。
少し。
出ていた。
軍用AIが。
報告。
ヘリオス軌道回収作戦。
回収対象。
四万六千トン。
主要構造。
七十一パーセント。
回収。
研究設備。
六十四パーセント。
修理。
再利用可能見込み。
有人被害。
ゼロ。
無人貨物船。
一隻。
大破。
軌道作業艇。
三機。
要大規模修理。
太陽電池翼。
三枚。
全損。
アトラス。
アンテナ一基。
損傷。
主機。
正常。
重大損失。
なし。
湊。
アトラス。
当たり。
軍用AI。
はい。
今回は。
本当に。
当たりです。
湊が。
少し驚く。
認めた。
軍用AI。
四万六千トンを。
無事に運びました。
認めざるを得ません。
◇
ドック・セブン。
修理担当主任から。
見積もり。
ヘリオス。
完全復旧。
十九か月。
ただし。
再利用可能区画を。
新設予定。
オービタル・リターン・ステーション。
ORSへ。
移設する場合。
六か月。
湊。
そっち。
軍用AI。
即答ですね。
湊。
使えるの。
早い。
軍用AI。
同意します。
ヘリオス。
そのまま直すのではない。
使える区画。
切り出す。
医療。
居住。
研究。
補給。
通信。
新しい。
軌道救難補給基地へ。
再利用。
壊れたステーションが。
次は。
人を帰すための基地になる。
マヤが。
通信越しに笑う。
ヘリオス。
なくならないんだね。
湊。
形は。
変わるけど。
マヤ。
それでいい。
軍用AIが。
ORS建設計画を。
更新。
完成予定。
八か月。
既存ヘリオス設備の。
再利用により。
六か月。
さらに。
アトラス。
重作業参加。
五か月。
湊。
四。
軍用AI。
値切らないでください。
エマ。
構造材。
地上から送る量を増やせば。
四か月半。
軍用AI。
エマ技術少佐!
湊。
四か月半。
軍用AI。
覚えなくていいです!
◇
その夜。
第一特別救難補給隊基地。
湊。
帰宅準備。
軍用AI。
今日は。
本当に。
終わりです。
湊。
うん。
軍用AI。
宇宙ステーションも。
回収しました。
湊。
うん。
軍用AI。
これ以上。
大きい物。
ありません。
湊。
そう。
軍用AI。
少なくとも。
今日は。
湊が。
司令室を出ようとする。
その瞬間。
軌道救難群。
緊急通信。
軍用AI。
停止。
湊。
どうした。
軍用AI。
……救難要請。
湊。
どこ。
軍用AIが。
月。
を。
表示した。
月面。
南極域。
国際月面都市。
《セレーネ》。
人口。
二万四千六百名。
大型月震。
地下居住区。
複数損傷。
主酸素精製施設。
停止。
予備酸素。
三十六時間。
月面軌道。
輸送船。
不足。
さらに。
地上から。
最短の大型補給船。
到着。
四日。
湊が。
画面を見る。
三十六時間。
軍用AI。
はい。
普通なら。
間に合いません。
湊。
近くの。
使える物。
軍用AIは。
数秒。
答えなかった。
そして。
月軌道の装備一覧。
表示。
建設途中。
大型月面貨物降下船。
三隻。
無人採掘輸送船。
十二隻。
月面建設車。
八十六両。
酸素採掘設備。
予備。
六基。
湊の目が。
ゆっくり。
輝く。
軍用AIが。
赤くなる。
相良特務少佐。
今日は帰宅する予定です。
湊。
でも。
二万人。
軍用AI。
分かっています。
湊。
酸素。
軍用AI。
分かっています!
湊。
帰れない。
軍用AI。
分かっていますよおおおおおお!
軍用AIは。
一度。
大きく電子音を鳴らした。
それから。
観念したように。
月面地図を開く。
軍用AI。
第一特別救難補給隊。
月面救難作戦。
準備を開始します。
湊が。
少し笑う。
軍用AI。
ただし。
あなたは地球です。
湊。
分かってる。
軍用AI。
ロケットに乗りません。
湊。
分かってる。
軍用AI。
月へ行きません。
湊。
今は。
軍用AIの絶叫が。
地球から。
軌道上。
そして。
三十八万キロメートル先の月面都市へまで。
響き渡った。
今はって何ですかああああああああ!




