第31話 試作救難車両は、歩いて海へ入るものではありません
退院して十分で、新しい試作車両を見つけないでくださいいいいいいいいい!
第一特別救難補給隊基地。
中央整備区画。
全長九十メートル。
全幅二十四メートル。
通常の車輪。
なし。
代わりに。
左右八本ずつ。
合計十六本の巨大な可動脚。
車体下部には。
水上航行用推進器。
前部。
大型掘削腕。
側面。
救助用クレーン。
後部。
無人車両格納庫。
上部。
ヘリ発着甲板。
見た目だけなら。
巨大な昆虫と。
揚陸艦と。
工兵車を。
無理やり一つへまとめたような車両だった。
試作統合特殊救難車。
《バシリスク》。
開発目的。
大規模地震。
洪水。
沿岸災害。
都市崩壊。
通常車両が進めない地域へ。
瓦礫。
泥。
水。
段差。
すべてを無視して進入。
現地で。
救難基地として活動。
搭乗人員。
二百四十名。
緊急収容。
千二百名。
軍用AIが。
湊の視界へ割り込むように。
車両情報を閉じた。
見なくていいです。
湊。
でも大きい。
軍用AI。
知っています。
脚が十六本。
軍用AI。
知っています。
海にも入れる。
軍用AI。
知っています。
動く。
軍用AI。
それも知っています!
湊は。
整備区画の向こうを見る。
バシリスク。
主電源。
入っている。
整備員が。
試験用に。
脚を一本ずつ動かしていた。
右前脚。
持ち上がる。
前へ。
地面へ。
巨大な油圧音。
湊の目が。
さらに輝く。
軍用AI。
その顔をやめてください。
湊。
何も言ってない。
軍用AI。
言わなくても分かります。
神代玲華が。
湊の右腕を掴む。
白波凪沙。
左。
久遠沙耶。
後ろ。
三人とも。
退院時と同じ配置。
湊。
また。
神代。
相良特務少佐。
退院条件。
車両運転禁止。
白波。
重作業禁止。
久遠。
現場出動も三日間は原則禁止です。
湊。
見るだけ。
三人。
駄目です。
軍用AIの表示灯が。
青く光る。
完璧な連携です。
そこへ。
整備区画から。
一人の女性技術将校が走ってきた。
階級。
技術少佐。
赤茶色の髪。
油で汚れた作業服。
彼女は。
湊を見るなり。
姿勢を正した。
第一特別救難補給隊。
相良湊特務少佐。
お会いできて光栄です。
統合技術開発局。
エマ・クラウゼ少佐。
バシリスク開発主任です。
湊が。
車両を見ながら尋ねる。
これ。
もう使えるんですか。
エマ。
試験段階です。
湊。
動く。
エマ。
動きます。
湊。
海にも。
エマ。
入れます。
軍用AI。
答えなくていいです!
エマが。
困った顔をする。
軍用AIは。
バシリスクの説明書を表示した。
試験結果。
平地歩行。
完了。
瓦礫走破。
完了。
水上航行。
低速試験のみ完了。
深水域。
未試験。
大規模傾斜地。
未試験。
実災害投入。
なし。
軍用AI。
つまり。
まだ。
人を乗せて危険区域へ行く段階ではありません。
湊。
無人で動かせば。
軍用AI。
何ですか。
湊。
お前が。
軍用AIの表示灯が。
赤へ。
軍用AI。
嫌です。
湊。
まだ頼んでない。
軍用AI。
絶対その流れです。
◇
その瞬間。
基地全域。
救難警報。
赤。
一級。
国際統合救難機構。
緊急信号。
軍用AIが。
数秒。
沈黙した。
湊。
どうした。
軍用AI。
救難要請です。
久遠。
場所。
軍用AIが。
地図を開く。
沿岸国家。
ミレス連邦。
首都圏東部。
人口。
百八十万人。
今朝。
巨大地震。
マグニチュード。
八・一。
沿岸部。
大規模液状化。
堤防。
複数崩壊。
地下鉄。
浸水。
河川。
逆流。
さらに。
港湾地区の一部が。
地盤沈下。
海面より。
二・四メートル低下。
市街地一帯が。
巨大な浅い湖のようになっている。
通常車両。
進入不能。
船。
瓦礫と建物が邪魔。
ヘリ。
強風。
高層ビル群。
大量投入困難。
孤立者。
推定。
一万一千六百名。
うち。
旧地下商業区。
約三千名。
大型病院。
入院患者。
千二百名。
学校。
避難者。
二千名。
工業区。
多数。
地震から。
四時間。
水位。
上昇中。
軍用AIが続ける。
最も危険。
東部地下都市区画。
非常防水扉。
一部故障。
完全浸水まで。
推定。
五時間二十分。
湊の視線が。
バシリスクへ。
軍用AI。
見ないでください。
湊。
ちょうど。
軍用AI。
言わないでください。
湊。
陸でも。
水でも。
瓦礫でも。
軍用AI。
言わないでください!
エマ技術少佐が。
バシリスクを見る。
開発目的。
まさに。
こういう場所です。
軍用AIが。
ものすごく嫌そうに。
知っています。
湊。
使おう。
軍用AI。
相良特務少佐は。
乗りません。
湊。
乗らない。
軍用AI。
操縦もしません。
湊。
しない。
軍用AI。
現場にも行きません。
湊。
基地から指揮。
軍用AIが。
少し止まる。
条件。
全部。
守っている。
軍用AI。
……。
湊。
駄目か。
軍用AI。
駄目と言う理由が。
減っています。
湊が少し笑う。
じゃあ。
軍用AI。
ただし!
病室ではない。
基地司令室。
椅子。
座る。
移動禁止。
神代。
白波。
久遠。
三名監視。
湊。
そこまで。
三人。
必要です。
軍用AI。
バシリスク。
完全無人運転。
現場作業員は。
安全確認後に乗車。
初期進入。
無人。
湊が頷く。
分かった。
軍用AIが。
バシリスクの主制御へ接続する。
十六本の脚。
推進器。
掘削腕。
クレーン。
無人車両。
全部。
軍用AIの管理下。
軍用AI。
試作統合特殊救難車バシリスク。
第一特別救難補給隊。
臨時編入。
湊。
当たりの車だな。
軍用AI。
まだ出発もしていません!
◇
バシリスク。
輸送方法。
自走。
ではない。
ミレス連邦まで。
海を挟んで。
七百キロ。
通常なら。
大型輸送船へ載せる。
だが。
到着まで。
十時間以上。
間に合わない。
湊が尋ねる。
空輸。
軍用AI。
重量。
三千八百トン。
無理です。
分解。
軍用AI。
現地再組立に。
最低二日。
湊が地図を見る。
港。
基地から海へ。
二十二キロ。
そこから。
水上航行。
最高速度。
時速五十五キロ。
十三時間。
遅い。
白波が。
地図を拡大する。
途中。
国際高速輸送艦。
《レゾリュート》。
現在。
基地から百四十キロ沖。
最高速。
七十ノット。
大型車両用。
半潜水甲板。
バシリスクを載せられる。
湊。
迎えに来てもらう。
白波。
こちらへ戻すより。
バシリスクを港へ。
レゾリュートは途中合流。
乗せて。
現地沖まで。
四時間二十分。
そこから。
バシリスクが自力上陸。
軍用AI。
最短。
五時間十分。
地下都市の浸水まで。
五時間二十分。
湊。
十分钟余る。
軍用AI。
その数字を。
余裕と呼ばないでください!
久遠が。
別案。
バシリスクを。
高速輸送艦へ載せるまでの間。
航空部隊が先行。
排水ポンプ。
救命装備。
地下防水扉の補強部材。
空輸。
バシリスク到着前に。
時間を稼ぐ。
神代。
大型輸送機。
二十機。
すぐ出せます。
湊。
それで。
軍用AIが。
全体計画を組む。
第一陣。
航空支援。
第二陣。
高速輸送艦。
バシリスク。
第三陣。
医療艦。
補給艦。
各国救難部隊。
軍用AI。
作戦開始。
◇
バシリスク。
初出動。
基地中央道路。
十六本の脚。
一斉に動く。
車輪ではない。
歩く。
右前。
左前。
中央。
後ろ。
三千八百トンの巨大車体が。
地面を踏む。
一歩。
十メートル。
一歩。
八メートル。
基地内。
全員が見る。
普通の車両ではない。
建物より大きい。
脚だけで。
人間の身長の何倍もある。
軍用AIが姿勢を調整。
軍用AI。
歩行速度。
時速二十五キロ。
道路上。
異常なし。
湊。
もっと出る。
軍用AI。
出しません。
港まで二十二キロ。
一時間かからない。
それでいい。
湊が。
少し残念そう。
軍用AI。
何を期待していたのですか。
途中。
道路。
橋。
バシリスク。
重量制限。
通常橋。
通れない。
湊。
川。
軍用AI。
橋を使わず。
川底を歩行します。
湊の顔が。
明るくなる。
軍用AI。
楽しそうにしないでください。
バシリスク。
道路から外れる。
堤防へ。
巨大な脚。
斜面を下る。
川。
水深。
六メートル。
車体底。
水へ。
さらに。
脚。
川底。
一歩。
一歩。
水の中を。
歩く。
橋の下を通過。
反対岸。
上がる。
湊。
便利だな。
軍用AI。
まだ試験中です。
湊。
でも動いてる。
軍用AI。
だから怖いのです。
◇
港。
高速輸送艦。
レゾリュート。
沖から。
入港。
艦尾。
半潜水甲板。
海水を取り込み。
甲板が。
水面近くまで沈む。
バシリスク。
そのまま。
海へ入る。
十六脚。
海底へ。
水深。
十メートル。
十五。
車体が。
少し浮く。
推進器。
起動。
軍用AI。
水上航行モード。
湊。
浮いた。
軍用AI。
浮きます。
湊。
足が。
海の中で。
ぶら下がってる。
軍用AI。
収納します。
十六本の脚。
車体側面へ。
折り畳み。
巨大な船のような姿。
レゾリュート。
半潜水甲板へ。
前進。
固定。
高速輸送艦。
排水。
甲板。
上昇。
バシリスク。
完全搭載。
白波。
固定索。
四十八本。
完了。
軍用AI。
レゾリュート。
最大速力。
ミレス連邦へ。
出航。
巨大輸送艦が。
海を切る。
最高速。
七十ノット。
上甲板。
さらに巨大な。
多脚救難車。
湊が。
基地司令室の画面で見る。
すごいな。
軍用AI。
観光番組ではありません。
◇
ミレス連邦。
東部冠水地区。
先行した航空部隊。
到着。
大型輸送機。
空港。
一部使用可能。
神代指揮。
救難ヘリ。
無人機。
工兵。
排水ポンプ。
投入。
地下都市。
非常防水扉。
第三。
第五。
故障。
水。
少しずつ。
流入。
地下。
三千百八十二名。
避難場所。
中央地下広場。
上へ出る階段。
二か所崩落。
残る一か所。
大量の瓦礫。
人力では。
突破。
八時間以上。
湊が聞く。
別の出口。
軍用AI。
旧貨物搬入口。
地上側。
建物倒壊。
完全閉塞。
地下側。
大型扉。
健在。
湊。
バシリスクの掘削腕。
軍用AI。
地上から。
瓦礫を除去できます。
湊。
そこ。
軍用AI。
分かっています。
だから急いでいるのです。
◇
高速輸送艦。
現地沖。
到着。
予定より。
十一分早い。
軍用AIが言う。
波高。
三・八メートル。
港。
使用不能。
海底。
瓦礫。
多数。
通常揚陸。
不可。
湊。
バシリスク。
海から行く。
軍用AI。
そのために来ました。
レゾリュート。
半潜水。
甲板。
海へ沈む。
固定索。
解除。
バシリスク。
浮く。
推進器。
起動。
巨大車体。
海上へ。
沿岸。
瓦礫。
沈んだ車。
コンテナ。
小型船。
通常の船なら。
進めない。
軍用AI。
脚展開。
十六本。
海底へ。
接地。
推進器。
停止。
歩行モード。
バシリスク。
海の中から。
立ち上がる。
車体上部。
海面から。
十数メートル。
一歩。
前へ。
波。
車体へ。
当たる。
だが。
進む。
沿岸道路。
崩れている。
関係ない。
脚。
瓦礫の間。
安全な場所だけ。
踏む。
乗用車。
避ける。
建物。
避ける。
深い穴。
脚を伸ばす。
右。
高さ。
八メートル。
左。
十五。
車体。
水平。
軍用AIが。
十六脚を。
別々に動かす。
湊。
当たりだな。
軍用AI。
今。
忙しいです!
市民たちが。
高層建物の窓から。
見ていた。
海から。
巨大な何かが。
歩いてくる。
軍艦ではない。
戦車でもない。
救難標識。
白。
第一特別救難補給隊。
バシリスク。
沿岸地区。
上陸。
◇
最初の救助。
大型病院。
一階。
浸水。
電源。
非常用のみ。
患者。
千二百名。
避難先。
屋上。
だが。
ヘリだけでは時間がかかる。
バシリスクが。
病院横へ。
接近。
地面。
水深。
二メートル。
脚。
病院を囲むように。
配置。
車体高。
調整。
側面救助デッキ。
病院四階。
同じ高さへ。
仮設橋。
展開。
病院と。
バシリスク。
接続。
軍用AIが叫ぶ。
また橋です!
湊。
今回は。
最初から搭載してるだろ。
軍用AI。
そうでした。
今回は正しい使い方です!
患者。
担架。
車椅子。
一人ずつ。
橋を渡る。
バシリスク内部。
医療区画。
満員。
三百。
五百。
千。
病院。
残存。
ゼロ。
軍用AI。
病院救助完了。
湊。
次。
軍用AI。
地下都市。
◇
地下貨物搬入口。
地上。
十階建て。
物流施設。
倒壊。
瓦礫。
高さ。
十八メートル。
地下入口。
完全に埋まっている。
バシリスク。
正面。
掘削腕。
二基。
伸びる。
巨大な爪。
瓦礫を掴む。
一度に。
四十トン。
横へ。
置く。
次。
コンクリート。
鉄骨。
車両。
全部。
分別。
生体反応。
確認しながら。
人がいない場所だけ。
掘る。
湊が言う。
急げるか。
軍用AI。
地下浸水。
残り一時間三十二分。
現在速度。
間に合います。
湊。
十分。
軍用AI。
今回は。
本当に。
少し余裕があります。
直後。
地下。
大きな振動。
余震。
マグニチュード。
六・九。
倒壊建物。
さらに崩れる。
バシリスク。
上部へ。
巨大な瓦礫。
落下。
軍用AI。
衝撃!
車体を。
十六脚。
全部。
沈ませる。
低姿勢。
瓦礫。
車体上部。
直撃。
轟音。
装甲。
へこむ。
だが。
耐える。
軍用AI。
上部外板。
損傷。
軽微。
湊。
頑丈だな。
軍用AI。
初任務で落下試験をしないでください!
さらに。
余震で。
貨物搬入口の上。
別のビル。
傾く。
バシリスク側へ。
倒壊予測。
三十秒。
軍用AI。
退避します。
湊。
入口は。
軍用AI。
あと十メートル。
間に合いません。
湊が。
バシリスクの掘削腕を見る。
二基。
最大保持力。
一基。
八百トン。
ビル。
倒壊部分。
推定。
三千トン。
二基では。
足りない。
十六脚。
湊。
脚も使う。
軍用AI。
何を。
湊。
倒れる方向。
押し返せないなら。
横へずらす。
軍用AIが。
計算する。
バシリスク。
左側八脚。
地面へ固定。
右側八脚。
車体を持ち上げ。
車体側面。
倒壊ビルへ接触。
掘削腕。
二基。
補助。
全体で。
押す。
軍用AI。
車体構造へ。
設計外荷重。
湊。
下に三千人。
軍用AI。
……実行します。
バシリスク。
左側脚。
地面へ。
深く。
固定。
右側。
伸びる。
車体。
傾く。
巨大な側面が。
倒れかけたビルへ。
当たる。
掘削腕。
押す。
ビル。
ゆっくり。
傾斜方向。
変わる。
地下入口。
反対側へ。
倒れる。
轟音。
瓦礫。
水しぶき。
バシリスク。
右側外板。
大きくへこむ。
脚。
二本。
警告。
軍用AI。
右第五脚。
油圧低下!
右第六脚。
関節損傷!
湊。
歩ける。
軍用AI。
十四本あれば。
歩行可能です。
湊。
まだ十四本ある。
軍用AI。
三十六輪のときと同じ数え方をしないでください!
地下入口。
残る瓦礫。
少ない。
掘削。
五分。
十。
大型貨物扉。
姿を現す。
内側。
三千人。
軍用AI。
扉。
外部電源喪失。
手動開放。
内側から。
無理。
バシリスク。
補助電源。
接続。
扉。
動く。
少しずつ。
開く。
地下。
人々。
光を見る。
外。
冠水した街。
その中。
十六本の脚で立つ。
巨大な救難車。
側面。
開放。
避難用デッキ。
軍用AI。
地下都市。
退避開始。
三千百八十二名。
バシリスク。
収容限界。
千二百。
湊。
全員は乗らない。
高齢者。
怪我人。
子供。
先。
残りは。
屋上。
軍用AI。
周辺高層建物。
二棟。
安全確認済み。
仮設橋で。
バシリスクから。
移動可能。
湊。
それで。
バシリスク。
一度に。
千人。
周辺建物へ。
残り。
再び。
地下。
往復。
巨大な歩く救難拠点。
三回。
地下都市。
残存。
ゼロ。
◇
救助開始から。
四時間。
孤立者。
一万一千六百名。
救助済み。
九千八百。
残る。
工業区。
千八百。
だが。
水位。
さらに上昇。
原因。
破損した海岸堤防。
大きな破孔。
幅。
六十メートル。
海水が。
市街地へ。
流れ続けている。
排水しても。
追いつかない。
湊が聞く。
堤防。
塞げないか。
軍用AI。
大型土嚢。
仮設壁。
到着まで三時間。
湊。
バシリスク。
軍用AIが。
嫌な予感。
何ですか。
湊。
幅。
二十四メートル。
軍用AI。
はい。
湊。
横向きに。
軍用AI。
やめてください。
湊。
脚を。
左右。
軍用AI。
相良特務少佐。
湊。
堤防の。
军用AI。
聞きたくありません。
湊。
部品に。
軍用AI。
救難車を堤防の部品にしないでくださいいいいいいいいい!
白波が。
海面データを見る。
でも。
一時的なら。
可能です。
軍用AI。
白波海将補!
白波。
バシリスクを。
破孔中央。
横向き。
脚を。
海底と堤防基礎へ。
固定。
残る隙間。
左右十八メートルずつ。
揚陸艦から。
大型防水板。
投入。
バシリスクを。
中央支柱。
として使う。
軍用AI。
本当に。
堤防の部品になりました……。
湊。
壊れない。
軍用AI。
それが最低条件です!
◇
海岸堤防。
破孔。
海水。
激流。
バシリスク。
海側から。
接近。
十六脚。
水中。
歩く。
破孔中央。
旋回。
横向き。
脚。
最大展開。
左。
堤防基礎。
右。
海底。
前後。
固定。
車体。
巨大な壁。
海水。
ぶつかる。
衝撃。
十六脚。
荷重。
分散。
左右。
隙間。
救難艦。
防水板。
クレーンで。
投入。
一枚。
二枚。
十。
バシリスク側面へ。
固定。
海水流入量。
減少。
五十パーセント。
七十。
九十。
最後。
大型防水袋。
膨張。
隙間。
塞ぐ。
流入。
ほぼ停止。
市街地。
排水ポンプ。
一斉起動。
水位。
上昇停止。
低下開始。
軍用AIが。
静かに言う。
バシリスク。
現在。
車両としては。
動けません。
湊。
堤防だから。
軍用AI。
あなたが言うと。
腹が立ちます。
◇
工業区。
最後の千八百名。
水位低下。
道路。
一部。
通行可能。
水陸両用車。
救難艇。
無人車。
投入。
一人。
百人。
千。
最後。
工場屋上。
作業員。
三十一名。
ヘリ。
救助。
生体反応。
確認。
孤立者。
一万一千六百。
全員。
安全区域。
死亡者。
救難開始後。
ゼロ。
軍用AIが。
作戦終了を報告。
ミレス連邦東部水害。
初動救難。
完了。
湊が。
司令室の椅子へ。
身体を預ける。
よかった。
神代が。
右から。
白波。
左。
久遠。
背後。
三人とも。
じっと湊を見る。
湊。
何。
久遠。
退院条件。
事務作業のみ。
湊。
ずっと座ってた。
白波。
現場へも行っていません。
湊。
うん。
神代。
車両操縦もしていません。
湊。
してない。
軍用AIが。
生体情報を確認。
心拍。
正常。
疲労。
軽度。
移動。
司令室内のみ。
退院条件。
全項目。
遵守。
軍用AIの表示灯が。
青くなる。
初めて。
相良特務少佐が。
規則を守ったまま。
大規模救難を終えました。
湊が。
少し笑う。
できるだろ。
軍用AI。
できるなら最初からしてください。
◇
翌日。
バシリスク。
まだ。
堤防中央。
巨大な仮設壁として。
固定。
現地工兵。
正式な堤防修復。
開始。
湊が。
整備報告を見る。
右脚二本。
大規模修理。
右側外板。
交換。
掘削腕。
一基。
関節要整備。
車体フレーム。
軍用AI。
正常。
湊。
全損じゃない。
軍用AI。
はい。
初任務。
生還。
湊。
当たり。
軍用AI。
もう否定するのも疲れました。
エマ技術少佐から。
通信。
バシリスク。
実災害運用データ。
大量取得。
正式採用審査。
合格予定。
追加生産。
十二両。
湊。
十二。
軍用AIが。
嫌な予感。
湊。
一台で。
一万人以上助けた。
軍用AI。
はい。
湊。
十二台あれば。
軍用AI。
計算しないでください。
湊。
十二万人。
軍用AI。
人命救助を。
単純な掛け算にしないでください!
◇
さらに。
エマ技術少佐が。
もう一つの資料を送る。
次期試作救難装備。
湊。
何これ。
軍用AI。
開かないでください。
だが。
すでに画面へ。
表示。
名称。
統合超大型空中救難母機。
《アルカディア》。
全長。
百三十メートル。
全幅。
百六十メートル。
大型航空機。
ではない。
空中を飛ぶ。
移動救難基地。
内部。
救難ヘリ。
十二機。
無人輸送機。
二十四。
医療区画。
二千床。
避難者。
最大五千名。
空中給油。
長時間滞空。
世界中の災害地域へ。
飛行場がなくても。
上空から救難部隊を展開する。
現在。
試作一号機。
組立。
九十二パーセント。
湊の目が。
ゆっくり。
輝く。
軍用AIが。
画面を閉じる。
湊。
まだ。
軍用AI。
見なくていいです。
湊。
飛ぶ基地。
軍用AI。
忘れてください。
湊。
いつ完成。
軍用AI。
答えません。
湊。
一か月。
軍用AI。
答えません。
湊。
二週間。
軍用AI。
値切る対象ではありません!
エマ技術少佐が。
小さく答えた。
予定では。
十九日後です。
軍用AI。
エマ技術少佐ああああああ!
湊が。
楽しそうに。
十九日。
軍用AIの絶叫が。
第一特別救難補給隊基地へ響き渡った。
退院初日に九十メートルの歩く救難車を堤防にした人へ、次は百三十メートルの空飛ぶ基地を見せないでくださいいいいいいいいい!




