第30話 最高司令官を断ったら、世界中の軍隊が俺の補給隊に入りました
補給兵から世界救難軍の最高司令官になろうとしないでくださいいいいいいいいい!
七十四か国の共同通信網へ。
軍用AIの絶叫が響き渡った。
第一軍病院。
第三特別病棟。
相良湊は。
今日も病床へ固定されている。
目の前の大型画面には。
国際統合救難軍。
暫定設立案。
参加予定。
七十四か国。
常設人員。
十二万四千名。
緊急時動員。
最大八十万人以上。
使用可能装備。
航空機。
約四千機。
艦艇。
八百隻以上。
地上車両。
六万両以上。
無人機。
数え切れない。
そして。
初代総司令官候補。
相良湊特務少佐。
推薦国。
七十四か国中。
六十九か国。
反対。
一か国。
棄権。
四か国。
湊が画面を見た。
反対した国。
どこ。
軍用AIが答える。
我が国です。
なんで。
あなたをこれ以上昇進させたくないからです。
統合参謀総長が通信画面の向こうで深く頷いた。
その一点については。
軍用AIと完全に意見が一致している。
湊は少し傷ついた顔をした。
そんなに嫌ですか。
嫌というより。
怖い。
黒崎宗一郎海将が答えた。
相良。
貴官は特務少佐になってから。
まだそれほど日が経っていない。
その間に何をした。
湊が考える。
救助。
軍用AIが一覧を表示した。
北方山岳地下補給基地。
五百七十二名救助。
西部峡谷列車事故。
千四百十七名救助。
エルダム工業都市。
約十二万人保護。
第七収容都市。
五万人以上。
グラード工業都市。
二十一万人以上。
西方帰還都市。
二十六万八千八百三十名。
共同人道回廊。
三万七千三百名。
第三国旅客船。
八千六百十二名。
カルデラ諸島。
九万四千名。
さらに。
戦争そのもの。
休戦。
国際共同救難装備網。
参加国七十四。
黒崎が続ける。
これを。
特務少佐になってからやった。
湊が答える。
みんなが手伝ってくれたので。
そこなのです。
軍用AIが強く言った。
あなた自身が強いだけなら。
まだ管理できます。
問題は。
あなたが。
周囲の人員と装備を全部使えることです。
戦車。
列車。
航空機。
戦艦。
空母。
工兵車。
鉱山ダンプ。
橋。
空港。
高速道路。
敵軍。
味方軍。
ついには世界中の軍隊。
湊が少し考える。
使える物を使っただけ。
だから怖いのだ。
統合参謀総長が頭を抱えた。
◇
午前十時。
七十四か国。
国際共同会議。
議題。
国際統合救難軍の設立。
および。
初代総司令官選出。
本来。
首脳級会議が開かれるはずだった。
だが。
参加各国から。
相良湊本人の意見を聞きたい。
という要請が集中。
結果。
世界七十四か国の代表者が。
一人の入院患者の病室へ。
大型通信画面越しに集まっていた。
軍用AIが言う。
この病室。
世界会議を開く場所ではありません。
湊が答える。
俺もそう思う。
原因はあなたです。
画面。
一番上。
我が国。
統合参謀総長。
その横。
旧敵国。
ヴァルター元帥。
エレナ外交全権代表。
レイアス共和国。
カルデラ諸島の救助を受けた政府代表。
旅客船救難を依頼した中立国。
共同人道回廊参加国。
次々と。
顔が並ぶ。
神代玲華。
白波凪沙。
久遠沙耶。
黒崎。
御厨大将。
病室内にも。
陸海空の将官。
そして。
湊の両親。
修一。
明里。
二人は。
なぜ自分たちまで呼ばれたのか。
よく分かっていなかった。
明里が小声で軍用AIへ尋ねる。
私たち。
ここにいていいの。
軍用AIが答える。
相良湊特務少佐の暴走抑止要員として。
重要です。
湊が抗議する。
暴走したことないだろ。
病室内のほぼ全員が。
湊を見る。
湊は黙った。
国際会議。
開始。
議長国代表が話す。
国際統合救難軍。
設立目的。
戦争。
災害。
事故。
国境を越える大規模危機へ。
各国の救難能力を共同投入する。
今回。
カルデラ諸島救助作戦により。
国際共同救難装備網の有効性は証明された。
問題は。
常設指揮組織。
大規模事案発生時。
誰が。
どの国の。
どの装備を。
どこへ投入するか。
短時間で決定する必要がある。
その統合能力を示した人物として。
相良湊特務少佐。
あなたを。
初代総司令官へ推薦する。
湊は。
少しも迷わず答えた。
無理です。
画面の向こう。
七十四か国。
静かになる。
軍用AIの表示灯が。
一瞬。
青く光った。
やりました。
初めて。
自分から無茶な役職を断りました。
湊が続ける。
俺。
補給兵なので。
軍用AIの青が。
少し薄くなる。
理由はそれですか。
世界規模の軍隊なんて。
指揮できません。
神代が小さく言う。
すでにやっています。
湊。
やってない。
白波。
七十四か国の航空機。
艦艇。
車両。
同時運用しました。
湊。
救助だったので。
久遠。
それを指揮と呼びます。
湊は少し困った。
でも。
最高司令官は違う。
俺。
戦略とか。
外交とか。
よく分からない。
ヴァルター元帥が答える。
戦略なら。
我が軍は十分。
貴官に負けた。
湊。
戦ってません。
敵将官たち。
誰も反応しない。
湊は続けた。
俺が得意なのは。
必要な物を。
必要な場所へ。
間に合うように持っていくことです。
人が足りないなら人。
水がないなら水。
橋がないなら橋。
車が必要なら車。
それだけ。
軍用AIが小さく訂正する。
その橋を。
列車で造ったり。
船の間へ架けたりする部分は。
普通ではありません。
でも。
国際組織を動かすなら。
もっと偉い人が必要だと思います。
湊が統合参謀総長を見る。
例えば。
参謀総長が大きく首を横へ振った。
巻き込むな。
黒崎さん。
海軍だけならともかく。
世界は無理だ。
神代さん。
空軍担当なら。
白波さん。
海上部門だけなら。
久遠さん。
陸上救難であれば。
全員。
世界全体の最高司令官は断った。
軍用AIが言う。
非常に健全な反応です。
◇
だが。
七十四か国側も。
簡単には諦めなかった。
レイアス共和国代表。
カルデラ諸島で。
九万四千人を十八時間以内に避難させる必要があった。
我々は。
各国から航空機や艦艇を借りることはできても。
それを一つの作戦としてまとめることはできなかった。
相良特務少佐。
あなたがいなければ。
何万人も死んでいた。
中立国代表。
オーシャン・クラウン救難も同じ。
空母。
戦闘機。
海軍艦艇。
陸軍浮橋。
国籍の異なる装備を。
誰が同じ目的へ使える。
敵外交代表エレナ。
我々は。
戦争中。
相良湊の最も恐ろしい点を。
兵器運用能力だと考えていた。
だが間違っていた。
この人物は。
所属を無視する。
湊が言う。
無視はしてないです。
エレナ。
敵味方。
陸海空。
軍民。
使用可能なら。
同じ救助計画へ入れる。
それを。
組織として再現したい。
湊は少し考えた。
だったら。
俺じゃなくて。
仕組みにすればいい。
会議が静かになる。
湊は続ける。
カルデラ諸島のとき。
全部。
俺が一つずつ指示したわけじゃない。
空は神代さん。
海は白波さん。
陸は久遠さん。
黒崎さんが全体。
軍用AIが調整。
現地にも。
各国の指揮官がいた。
俺がやったのは。
どの装備を。
どこへ回すか考えたくらい。
軍用AIが言う。
その。
くらい。
が。
世界最大規模だったのですが。
でも。
同じ形にすれば。
次から俺がいなくてもできる。
軍用AIの処理が一瞬止まった。
それは。
非常に重要な発言だった。
相良湊がいなければ動かない組織では。
意味がない。
世界中で。
同時に災害が起きる可能性もある。
一人の人間へ依存する。
それ自体が危険。
軍用AIが言う。
賛成です。
世界各地域へ。
独立した救難司令部。
共通規格の通信。
装備データベース。
必要物資の自動計算。
地域だけで処理できない場合。
上位組織へ。
湊が頷く。
それでいい。
議長国代表が尋ねる。
では。
相良特務少佐は。
組織へ参加しない。
参加はする。
軍用AIが少し嫌な予感を覚える。
何として。
第一特別救難補給隊。
そのままで。
病室が。
静かになる。
世界規模の組織。
七十四か国。
数十万人。
その頂点ではなく。
一つの補給隊。
常設四十八名。
湊が言う。
大きな救助があって。
地域だけじゃ足りないとき。
うちが手伝う。
それなら。
今までと同じ。
軍用AIが。
少し考える。
悪くない。
むしろ。
非常に相良湊らしい。
最高司令官ではなく。
最後に足りない物を。
どこからか持ってくる補給隊。
世界規模の組織ができても。
相良湊の仕事は。
補給。
◇
各国代表が協議を始めた。
十分。
二十分。
三十分。
湊は途中で眠くなり。
軍用AIに枕の角度を下げられた。
相良特務少佐。
寝て構いません。
でも会議。
あなたが決める部分は終わりました。
眠そうです。
少し。
寝てください。
七十四か国の国際会議中に。
候補者本人だけ。
病床で眠った。
一時間後。
決定。
軍用AIが湊を起こす。
相良特務少佐。
決まりました。
最高司令官。
誰になった。
単独の最高司令官職は。
設置しません。
湊が少し安心する。
代わりに。
国際統合救難機構。
常設理事会。
地域司令部。
専門部門。
複数責任者による共同指揮方式。
湊が頷く。
いいと思う。
そして。
第一特別救難補給隊。
国際統合救難機構。
直轄特別部隊へ指定。
湊。
ん。
軍用AI。
何ですか。
直轄。
はい。
世界組織の。
はい。
湊は少し考えた。
でも。
うちは四十八人。
軍用AIの表示灯が赤くなる。
そこです。
続きがあります。
国際統合救難機構参加国。
七十四。
各国から。
第一特別救難補給隊への。
常設連絡分遣隊を派遣。
湊。
何人。
軍用AI。
一か国。
基本十二名。
七十四か国。
合計八百八十八名。
湊。
増えたな。
軍用AI。
さらに。
陸上救難群。
海上救難群。
航空救難群。
医療群。
工兵群。
補給群。
無人機群。
各国の専門部隊を。
必要時。
第一特別救難補給隊へ一時編入。
最大。
約十五万人。
湊が黙る。
軍用AIが続けた。
装備も。
必要時。
同隊へ一時所属変更。
つまり。
形式上。
相良湊特務少佐は。
世界救難軍最高司令官には。
なりませんでした。
湊が少し安心する。
よかった。
軍用AIの声が震える。
代わりに。
世界中の救難部隊が。
あなたの第一特別救難補給隊へ。
必要なときだけ入ってきます。
湊は。
数秒。
考えた。
それ。
結局。
増えてないか。
軍用AIが爆発した。
今気づいたのですかあああああああ!
◇
新組織。
正式名称。
国際統合救難機構。
略称。
IURA。
戦争。
大規模災害。
海難。
航空事故。
火山。
地震。
洪水。
人道危機。
国家単独で対処困難な事案へ。
世界各国の。
軍。
消防。
医療。
工兵。
輸送。
民間機関。
共同投入。
そして。
その中に。
一つだけ。
妙な部隊。
第一特別救難補給隊。
元々。
三軍の間で。
相良湊を誰が管理するか決められず。
作られた部隊。
今や。
世界七十四か国から。
同じ理由で。
特別扱いされることになった。
軍用AIが組織図を見る。
陸軍。
海軍。
空軍。
各国軍。
IURA。
全部から線が伸びる。
中央。
第一特別救難補給隊。
その上。
相良湊。
軍用AIが言う。
組織図がおかしいです。
湊が答える。
俺のせいじゃない。
今回は。
七割くらい。
あなたのせいです。
三割は。
世界です。
◇
その日の午後。
第一特別救難補給隊基地。
国際連絡分遣隊。
第一陣。
到着。
十二か国。
百四十四名。
基地正門。
再び。
人。
車。
旗。
世界各国。
制服。
全部違う。
だが。
共通している物。
右腕。
白い救難章。
中央。
第一特別救難補給隊の旗。
最後の一人まで、帰還させる。
基地司令代行が。
新隊員へ説明する。
第一特別救難補給隊。
隊長。
相良湊特務少佐。
現在。
入院中。
各国隊員たちがざわつく。
まだ入院しているのか。
噂では。
病床から戦争を止めた。
空母を借りた。
火山島九万人を救った。
列車で橋を造った。
敵国から二十六万人を連れてきた。
話が。
だんだん。
人間ではなくなっている。
そこへ。
軍用AIの音声。
訂正。
相良湊特務少佐は。
普通の人間です。
各国隊員。
少し安心する。
軍用AI。
ただし。
周囲の装備を。
通常想定されていない用途へ使用する傾向があります。
隊員。
やっぱり普通ではないのでは。
軍用AI。
その点については。
否定しません。
◇
軍病院。
その日の夕方。
担当医が。
湊の検査結果を見ていた。
左肩。
回復。
右脚。
固定解除可能。
全身状態。
良好。
過労。
改善。
睡眠。
軍用AIによる強制管理のおかげで。
平均。
十分。
担当医が言う。
相良特務少佐。
明日。
退院を許可します。
湊の目が開いた。
本当ですか。
軍用AIが固まった。
担当医。
ただし。
条件があります。
湊。
何でも。
軍用AI。
先に聞いてください。
担当医。
一週間。
重作業禁止。
走らない。
重量物を持たない。
戦闘禁止。
車両運転。
原則禁止。
航空機操縦。
禁止。
艦艇操舵。
禁止。
軍用AIが激しく頷く。
さらに。
第一特別救難補給隊基地へ戻っても。
最初の三日は。
事務作業のみ。
湊。
分かりました。
軍用AI。
虚偽検出。
なし。
病室に。
安堵が広がった。
明里が息子を見る。
ようやく退院できるのね。
うん。
修一が笑う。
今度こそ。
普通に帰ってこいよ。
普通に。
湊も笑った。
神代。
白波。
久遠。
三人とも。
ほっとした表情。
軍用AIは。
もっとも安心していた。
入院。
長かった。
脱走。
一回。
病床からの救難指揮。
数えたくない。
戦争休戦。
一回。
世界組織設立。
一回。
これ以上。
病室で何か起きるはずがない。
軍用AIが言った。
今日は。
救難通信を切ります。
緊急時は。
黒崎海将。
神代空将補。
白波海将補。
久遠陸将補へ。
相良特務少佐。
今夜だけは。
普通に寝てください。
湊が頷く。
分かった。
病室の照明。
消灯。
明日。
退院。
ようやく。
普通の日常へ。
戻る。
◇
翌朝。
午前八時。
相良湊。
正式退院。
患者服から。
軍服へ着替える。
肩。
階級章。
特務少佐。
湊は。
少し見慣れない顔をする。
まだ少佐なんだよな。
軍用AI。
はい。
今後も。
可能な限り。
そのままにします。
病院正面玄関。
扉。
開く。
湊が。
数週間ぶりに。
自分の足で外へ出る。
明里。
修一。
両親。
神代。
白波。
久遠。
黒崎。
軍用AI端末。
一緒。
玄関前には。
軍用車両。
一台。
第一特別救難補給隊の。
普通の小型輸送車。
軍用AIが言う。
これで基地へ戻ります。
私が自動運転。
相良特務少佐は。
後部座席。
シートベルト。
寄り道なし。
湊が答える。
分かった。
全員。
安心する。
湊が車へ向かう。
その途中。
病院裏手。
整備区画。
古い大型車両が見えた。
六輪。
装甲。
大型クレーン。
巻き上げ機。
救難用の。
旧式重回収車。
車体横。
廃棄予定。
と書かれている。
湊の足が。
止まった。
軍用AIが。
即座に気づく。
見ないでください。
湊。
あれ。
軍用AI。
見ないでください。
まだ動きそうだな。
軍用AI。
動きません。
エンジン音してる。
軍用AI。
整備確認中です。
廃棄予定なのに。
軍用AI。
だから確認しています。
巻き上げ機も。
使えそう。
軍用AI。
基地には。
もっと新しい回収車があります。
でも。
捨てるんだろ。
軍用AI。
その予定です。
湊が。
回収車へ。
一歩。
軍用AI。
停止。
二歩。
軍用AI。
相良特務少佐。
退院条件。
車両運転禁止。
湊。
運転しない。
軍用AI。
ではなぜ近づくのですか。
湊。
ちょっと見るだけ。
軍用AI。
その言葉から。
すべて始まります!
神代が。
湊の右腕を掴む。
白波が。
左腕。
久遠が。
背後へ。
湊。
まだ何もしてない。
三人。
基地へ帰ります。
湊が。
三人に囲まれ。
小型輸送車へ連行される。
軍用AIの表示灯が。
青く光った。
退院初日。
危険車両との接触。
阻止。
成功。
湊は。
後部座席へ座らされた。
シートベルト。
固定。
軍用AI。
出発します。
車両。
発進。
病院を離れる。
湊が。
後ろの窓を見る。
旧式重回収車。
少しずつ小さくなる。
軍用AIが。
窓を自動遮光した。
見せないでくれ。
見ないほうが安全です。
湊。
あれ。
修理すれば。
軍用AI。
聞こえません。
湊。
第一特別救難補給隊で。
軍用AI。
聞こえません。
湊。
使えると思う。
軍用AI。
聞こえません!
◇
第一特別救難補給隊基地。
正門。
湊を乗せた車両。
到着。
門が開く。
その瞬間。
湊は。
言葉を失った。
基地中央道路。
左右。
人。
ずっと奥まで。
陸軍。
海軍。
空軍。
各国救難部隊。
国際連絡分遣隊。
敵軍から降伏し。
現在は共同救難要員となった兵士たち。
ヴァルキュリア乗員。
第九超重砲兵大隊。
黒鋼峡谷保守隊。
西方帰還都市代表。
救助された元捕虜。
救難隊員。
整備員。
医師。
看護師。
工兵。
輸送兵。
数千人。
その全員が。
整列していた。
車両が。
ゆっくり中央を進む。
誰も声を出さない。
湊が。
車から降りる。
軍用AI。
走らない。
重い物を持たない。
了解。
湊が。
一歩。
前へ。
黒崎が号令。
敬礼!
数千人。
一斉に。
右手が上がる。
陸。
海。
空。
国籍。
軍種。
階級。
違う。
だが。
同じ方向。
相良湊へ。
基地上空。
航空機。
輸送機。
救難ヘリ。
編隊通過。
港。
艦艇。
汽笛。
地上。
車両。
警笛。
そして。
基地中央。
第一特別救難補給隊の旗。
最後の一人まで、帰還させる。
湊が。
少し戸惑いながら。
敬礼を返した。
俺。
ただの補給兵だったんだけど。
黒崎が答える。
知っている。
神代。
だから。
ここまで来たのだと思います。
白波。
戦うためではなく。
帰すために。
久遠。
使える物を。
全部使った。
軍用AIが続ける。
その結果。
世界中から。
使える物が集まりました。
湊は。
基地を見る。
航空機。
艦艇。
車両。
人。
見たことのない装備。
各国の旗。
そのすべて。
人を助けるために。
ここへつながっている。
湊が。
少し笑った。
じゃあ。
仕事。
始めますか。
軍用AIが答える。
本日は事務作業だけです。
湊。
分かってる。
軍用AI。
現場へ行きません。
湊。
分かってる。
軍用AI。
車両を借りません。
湊。
それは。
軍用AI。
相良特務少佐。
湊が。
基地の端を見る。
新しく届いた。
巨大な特殊救難車両。
全長。
九十メートル。
多脚式。
水陸両用。
車体側面。
試作機。
と書かれている。
湊の目が。
少しだけ。
輝いた。
軍用AIが。
それを見逃さなかった。
退院して十分で、新しい試作車両を見つけないでくださいいいいいいいいい!




