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ただの補給兵だった息子の葬儀に、陸海空すべての英雄が集まった ~戦死したはずの息子は、今も敵地で仲間を逃がし続けている~  作者: てへろっぱ


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28/36

第28話 敵の空母を、救難船として正式に借ります



正式に借りられるようになったからって、今度は敵の空母まで借りようとしないでくださいいいいいいいいい!


軍用AIの絶叫が。


休戦した二国だけでなく。


人道回廊へ参加を検討していた十七か国の通信網へまで流れた。


第一軍病院。


第三特別病棟。


相良湊は。


今日も病床から一歩も出ていない。


本人だけは。


とても大人しくしているつもりだった。


目の前の大型画面には。


大洋上で炎を上げる超大型旅客船。


船名。


オーシャン・クラウン。


全長三百二十二メートル。


乗客。


七千九百四十名。


乗員。


六百七十二名。


合計。


八千六百十二名。


機関室から発生した火災。


電源系統へ延焼。


主機停止。


非常発電。


一部のみ。


さらに。


大型台風が接近中。


現在位置。


台風外縁。


六時間後。


暴風圏。


旅客船の浸水速度から推定。


沈没。


五時間四十八分から七時間二十分。


最寄りの民間救難船。


到着まで十三時間以上。


間に合わない。


湊は画面の別部分を見る。


そこに。


休戦により武装封印中の敵軍超大型航空母艦。


ヴァルキュリア。


全長。


三百八十メートル。


基準排水量。


十万トン以上。


艦載機。


八十機。


救難ヘリ。


三十六機。


大型医療区画。


最大二千床。


航空燃料。


大量。


食料。


二万人規模を十日以上支えられる備蓄。


旅客船まで。


最短四時間十一分。


湊が言った。


間に合う。


軍用AIは赤く点滅する。


一応確認します。


何がですか。


相良特務少佐。


あなた。


空母を。


何だと思っていますか。


大きい船。


軍用AIが一秒停止した。


間違ってはいませんが。


致命的に情報量が足りません。


空母です。


航空母艦。


戦闘機を運用するための軍艦です。


救難ヘリもある。


医療区画もある。


飛行甲板は広い。


人も乗る。


港みたいなものだろ。


港ではありません!


白波凪沙から通信が入った。


ですが。


今回に限っては。


相良特務少佐の判断は合理的です。


軍用AIが止まる。


白波海将補。


裏切りましたね。


裏切っていません。


ヴァルキュリアは現在。


休戦協定に基づき。


全攻撃兵装を封印済み。


艦載戦闘機の武装も撤去されています。


救難用途なら。


極めて有用。


黒崎宗一郎海将も通信へ入る。


こちらの第一主力艦隊より。


ヴァルキュリアのほうが近い。


しかも医療区画が大きい。


敵側は貸すのか。


ヴァルター元帥からすでに回答。


人道救難目的なら。


共同運用を承認。


湊が少し笑う。


正式に借りられる。


軍用AIが叫ぶ。


嬉しそうに言わないでください!


さらに。


ヴァルキュリア艦長から。


直接通信。


画面へ。


敵海軍の女性提督が映る。


黒髪。


鋭い眼差し。


階級。


海軍中将。


ヘレナ・アーベント。


相良湊特務少佐。


あなたが。


ヴァルキュリアを借りたいと言った人物か。


はい。


少しだけ。


軍用AI。


十万トン級空母へ。


少し。


という表現を使わないでください。


ヘレナ中将は。


病床の湊を見る。


本当に入院しているのだな。


最近。


そればかり言われます。


敵軍では。


あなたは負傷したまま艦隊へ乗り込み。


軍艦を持っていく男と認識されている。


軍用AIが即座に補足する。


その認識は。


完全な誤解とは言えません。


湊が聞く。


ヴァルキュリア。


今すぐ出せますか。


ヘレナは答えた。


主機。


航海系統。


航空設備。


すべて正常。


兵装のみ封印中。


ただし。


艦載戦闘機は人道救難には使えない。


湊が艦載機一覧を見る。


大型早期警戒機。


輸送機。


救難ヘリ。


無人機。


戦闘機。


戦闘機も使える。


何に。


翼がある。


軍用AIが警戒する。


何を考えていますか。


小型救命筏を積めないか。


戦闘機へ。


軍用AIが沈黙した。


神代玲華が即座に計算を始める。


翼下増槽用の搭載架。


武装は撤去済み。


そこへ。


投下式救命筏コンテナを取り付ければ。


一機あたり二基。


二十四人分。


戦闘機四十機で。


約千九百人分。


軍用AIが叫ぶ。


戦闘機を救命筏運搬機に改造しないでください!


武装を積むより平和だろ。


軍用AIは。


反論できなかった。


ヘレナ中将が。


初めて少し笑った。


面白い。


やろう。


軍用AI。


敵側の艦長まで乗らないでください!



超大型航空母艦。


ヴァルキュリア。


出航。


本来。


敵艦隊の中核。


数百機の敵航空機を撃墜し。


複数の海戦で味方艦隊を苦しめてきた軍艦。


今日。


その飛行甲板から。


弾薬がすべて降ろされた。


空対空ミサイル。


対艦兵器。


爆弾。


機関砲弾。


全部。


封印倉庫へ。


代わりに。


積まれたもの。


救命筏。


毛布。


飲料水。


非常食。


医薬品。


担架。


消火剤。


小型排水ポンプ。


救難ビーコン。


軍用AIが艦内配置を変更する。


第一格納庫。


救助者受け入れ区画。


第二。


簡易医療。


第三。


歩行可能者。


飛行甲板前部。


ヘリ発着。


中央。


救助者一時受け入れ。


後部。


無人輸送機。


武器庫。


施錠。


弾薬庫。


完全封鎖。


湊が尋ねる。


格納庫に何人入る。


通常の居住基準では。


三千人。


緊急時。


八千人以上。


旅客船の全員いける。


空母乗員もいます。


人員密度が高くなります。


飛行甲板にも仮設テント。


海が荒れる。


固定できるなら。


ヘレナ中将が答える。


航空機固定用の係留装置がある。


十分可能だ。


ヴァルキュリアの飛行甲板へ。


大型救難テントが。


一列。


二列。


次々と建てられていく。


本来。


戦闘機を並べる場所。


今日は。


八千人を受け入れるための避難所。


軍用AIが小さく言う。


相良特務少佐。


何。


空母を本当に救難船へ変えています。


使えるだろ。


使えます。


悔しいですが。



一方。


オーシャン・クラウン。


火災発生から二時間。


機関室。


船尾区画。


複数階層で火災継続。


船内電源。


三十八パーセント。


エレベーター。


大半停止。


乗客の多くが。


上甲板へ避難している。


だが問題があった。


高齢者。


車椅子利用者。


入院中だった乗客。


乳幼児。


合計千六百人以上。


自力で上甲板へ移動できない。


さらに。


煙。


火災区画が。


中央階段へ近づいている。


旅客船船長から通信。


相良特務少佐。


こちらオーシャン・クラウン。


避難誘導を続けている。


ただ。


下層医療区画に。


重症患者百七十名。


エレベーター停止。


担架で上げるにも時間が足りない。


湊が船体構造図を見る。


外側から入れる場所は。


第六。


第七デッキ。


貨物搬入口。


非常用整備口。


でも海面から十メートル以上。


救難ヘリから人を入れる。


神代が答える。


狭い。


一度に入れる人数が少ない。


船の横へ。


何かつけられないか。


軍用AIが警戒する。


船ですか。


救難艇。


大型フェリー。


浮桟橋。


周辺を検索。


ヴァルキュリア搭載の。


大型航空機用作業台船。


二隻。


航空機事故時に。


海上から機体部品を回収するための平底無人作業艇。


全長四十五メートル。


積載能力。


三百トン。


湊の目が止まる。


二隻つなぐ。


軍用AI。


何にするつもりですか。


エレベーター。


軍用AIが止まる。


湊は船体側面の貨物扉を見る。


作業台船二隻を。


旅客船の左右へ。


大型クレーン。


仮設階段。


貨物搬入口から。


直接下層の人を外へ出す。


白波が理解する。


船内上部へ運ぶ必要がない。


横から抜くのですね。


船が傾いても。


作業台船が外側へついていれば。


救助経路を維持できる。


軍用AIが計算する。


可能です。


ただし。


波高。


現在四メートル。


四時間後。


七メートル以上。


作業艇固定が難しい。


空母の曳航索。


白波が即答した。


ヴァルキュリアの大型航空機固定索を。


旅客船の船体支持点へ。


作業艇二隻をその間へ固定。


三船体を一時的に一体化。


湊が言う。


それで。


軍用AIが叫ぶ。


大型旅客船と作業艇二隻を。


海の上で一体化しないでください!


でも可能なんだろ。


可能です!


それが一番困ります!



ヴァルキュリア。


巡航速度。


最大。


航空母艦が。


台風へ向かって進む。


周囲には。


昨日まで敵だった味方海軍艦艇。


第一主力艦隊。


救難艦。


医療船。


補給艦。


さらに。


中立国の沿岸警備船。


複数。


敵味方。


国籍。


すべて違う。


だが。


同じ救難識別灯を点灯していた。


白波が海上指揮を担当。


神代。


航空救助。


ヘレナ。


ヴァルキュリア艦内。


軍用AI。


全体統合。


湊。


病室。


軍用AIが付け加える。


最後だけ強調してください。


相良特務少佐。


病室。


固定。


一歩も外へ出ていません。


湊が言う。


誰に説明してるんだ。


世界中です。


あなたが現地へいると思っている国が。


すでに六か国あります。


いないぞ。


知っています!



旅客船まで。


残り百二十キロ。


最初に。


救難航空隊が発進。


敵軍戦闘機。


四十機。


翼下に。


救命筏コンテナ。


武装。


ゼロ。


神代が先頭。


マルタ・シュナイダー大佐も。


共同航空隊として参加。


神代が通信する。


第一救難航空隊。


発進。


戦闘機が。


一機。


二機。


四十機。


空母の飛行甲板から飛び立つ。


軍用AIが呟く。


世界初。


空母艦載戦闘機による。


大規模救命筏投下任務。


湊が言う。


役に立つな。


戦闘機の設計者は。


想定していないでしょう。


でも運べる。


はい。


そこは認めます。


オーシャン・クラウン上空。


雨。


強風。


煙。


数千人の乗客が。


飛来する戦闘機を見る。


敵国軍の識別。


一瞬。


甲板に緊張が走る。


だが。


機体は攻撃態勢に入らない。


翼下から落ちたもの。


救命筏。


海へ着水。


自動展開。


一つ。


二つ。


何十。


何百。


巨大な橙色の筏が。


旅客船の周囲へ広がる。


同時に。


救難ビーコン。


水。


非常食。


軍用AIが旅客船へ放送する。


救命筏を投下しました。


まだ船を放棄しないでください。


火災区画から遠い乗客は。


指定された集合場所へ。


救難ヘリ。


到着まで十八分。


戦闘機部隊は。


第二波。


救命筏を再装填。


ヴァルキュリアへ戻る。


神代機が甲板へ着艦。


マルタ機。


続く。


かつて。


敵機同士。


今日は。


同じ空母へ。


同じ救助装備を取りに戻る。



旅客船。


火災拡大。


船尾電源。


完全停止。


非常発電。


二十二パーセント。


軍用AIが警告する。


海水ポンプ。


一部停止。


船内消火能力低下。


ヴァルキュリア。


到着まで。


五十四分。


救難ヘリは。


先行できます。


三十六機。


全部出す。


湊が言う。


軍用AI。


一度に全部出した場合。


空母甲板へ戻る順番が混雑。


二十四機先行。


十二機待機。


海面救助用。


それで。


二十四機。


発進。


吊り下げ式担架。


救助籠。


医療員。


小型消火装置。


旅客船上空へ。


第一機。


甲板着艦。


二機目。


三機目。


高齢者。


子供。


重傷者。


一度に十人。


十五人。


二十人。


乗せて。


ヴァルキュリアへ往復。


だが。


八千人。


ヘリだけでは。


時間が足りない。


軍用AIが報告。


旅客船。


右舷側。


浸水増加。


傾斜。


三・二度。


湊が尋ねる。


作業艇。


発進済み。


空母到着と同時に。


両側へ展開可能。


よし。


そのとき。


旅客船から。


爆発。


船尾。


火球。


軍用AIが叫ぶ。


第二機関室。


燃料配管爆発!


船体内部隔壁。


一部損傷!


浸水量増大!


沈没予測。


五時間四十八分。


から。


二時間五十二分へ短縮。


白波の表情が変わる。


全員を二時間半で。


八千人。


ヘリだけでは不可能。


湊はヴァルキュリアを見る。


空母を横につける。


軍用AIが叫ぶ。


やはり言いましたね!


旅客船の横へ。


ヴァルキュリアを並べる。


直接渡す。


全長三百八十メートルの空母と。


三百二十二メートルの旅客船。


波高五メートル。


両方とも。


巨大船。


距離を詰めれば。


船同士が衝突する。


軍用AIが答える。


通常なら。


不可能です。


通常じゃない方法は。


あります。


軍用AIが嫌そうに答えた。


曳航索。


大型防舷材。


作業艇。


無人操船補助。


二隻の速度と揺れを同期。


側面距離。


二十五メートルまで接近。


その間へ。


作業艇を二隻固定。


仮設橋を。


湊が言う。


軍用AIが。


ものすごく嫌そうに。


はい。


空母から。


旅客船へ。


仮設橋梁。


軍用AIが叫んだ。


海上で。


航空母艦と旅客船の間へ橋を架けないでください!


陸軍の浮橋。


久遠が通信へ入る。


持ってきています。


白波が少し笑う。


海軍曳航索。


あります。


神代も。


ヘリで橋梁部材を運べます。


軍用AIが悲鳴を上げる。


どうして全軍が相良特務少佐の案へ慣れているのですか!



ヴァルキュリア。


旅客船へ到着。


巨大な二隻。


並走。


速度。


八ノット。


台風外縁。


波高。


五・四メートル。


白波が海面を読む。


右へ二メートル。


ヴァルキュリア。


微速。


旅客船側。


操舵能力なし。


救難曳船三隻。


船首を保持。


船尾。


二隻。


揺れを抑える。


大型防舷材。


海上へ投下。


空母側面と。


旅客船の間。


巨大な空気式緩衝材。


一つ。


三つ。


十。


距離。


四十メートル。


三十五。


三十。


軍用AI。


接近警報。


白波。


二十七まで。


軍用AI。


二十五を切ると危険。


二十七で維持。


二隻が。


同じ速度。


同じ向き。


並んだ。


その間へ。


大型無人作業艇一号。


進入。


二号。


続く。


曳航索。


旅客船。


空母。


作業艇。


三方向へ固定。


海面に。


一時的な足場ができる。


久遠の工兵部隊。


浮橋部材。


ヘリで輸送。


作業艇の上へ下ろす。


一枚。


二枚。


十。


橋が伸びる。


空母側。


旅客船側。


それぞれへ。


可動式接続板。


船の上下動へ追従。


軍用AIが監視する。


二隻の相対上下差。


最大二・八メートル。


橋梁関節。


追従可能。


通行可能人数。


一分あたり。


百八十人。


湊が聞く。


もっと増やせないか。


橋を二本。


軍用AIが答える。


幅が足りません。


三本。


無理です。


二本なら。


可能です。


やれ。


二本目。


設置。


通行能力。


毎分三百六十人。


八千人。


三十分以内。


理論上。


渡せる。


ただし高齢者と負傷者。


実際には一時間以上。


十分。


軍用AIが小さくため息をつく。


今回も。


本当に十分です。



旅客船の船長から。


全船放送。


こちら船長。


救難艦が到着しました。


救助経路を開放。


走らないでください。


子供。


高齢者。


負傷者を優先。


乗組員の指示に従ってください。


空母との間に。


二本の橋。


本来なら。


あり得ない光景。


海面下。


波。


左右。


巨大な船。


その間。


救助者が。


一人ずつ。


渡る。


最初。


車椅子。


工兵四人が支える。


次。


担架。


子供。


高齢者。


歩ける人。


敵軍空母の乗員が。


旅客船の乗客へ手を伸ばす。


中立国の乗客。


味方国の乗客。


敵国の船員。


誰も区別されない。


ヴァルキュリア側。


格納庫。


医療区画。


飛行甲板。


人で埋まっていく。


千人。


二千。


三千。


軍用AIが人数を数える。


救助済み。


四千八百。


残り三千八百十二。


旅客船傾斜。


四・七度。


浸水増加。


白波が警告。


右舷側が下がっています。


橋の高低差。


拡大。


軍用AI。


許容限界。


三・五メートル。


現在三・二。


湊が船内の浸水区画を見る。


右に水が入ってる。


左側へ何か移せないか。


乗客を移動。


しかし。


まだ船内へ数千人。


急な移動は危険。


貨物。


車両甲板。


大型自動車。


荷物。


数千トン。


左へ移す。


軍用AIが答える。


車両甲板の電源。


停止。


車は。


動くものもある。


乗員を戻すのは危険。


無人で。


車載AIに接続。


対応車種。


六百二十台。


左側へ移動可能。


やれ。


旅客船車両甲板。


電源が一部復帰。


駐車されていた乗用車。


バス。


貨物車。


無人で。


一台ずつ動き始める。


右側から。


左側へ。


数百トン。


千トン。


重量移動。


さらに。


貨物コンテナ。


自動搬送装置で。


左側へ。


旅客船傾斜。


四・七。


四・三。


三・九。


橋の高低差が戻る。


軍用AIが言う。


安定化。


湊が笑う。


船の中の車も使えるな。


軍用AI。


そこへ感動しないでください。



救助済み。


六千七百。


残り。


千九百十二。


火災区画。


拡大。


煙。


中央階段へ。


船員が最後の乗客を誘導する。


下層医療区画。


残る重症患者。


四十六名。


貨物搬入口から。


外へ。


作業艇。


そこから。


空母。


一人。


二人。


最後。


人工呼吸器装着。


橋を通せない。


波で機器が危険。


神代がヘリを回す。


貨物搬入口まで。


吊り下げ。


医療用救助籠。


患者を固定。


医師一人。


同乗。


上昇。


その直後。


旅客船後部から。


大きな爆発。


船体。


右へ傾く。


軍用AI。


傾斜七度!


橋梁。


危険!


白波。


橋を切り離す準備!


まだ。


残り乗客。


百八十八名。


ほとんど。


乗員。


船長。


機関員。


救助誘導班。


湊が言う。


最後の人まで。


軍用AI。


分かっています!


旅客船船長が通信。


我々は最後に退船する。


乗客。


全員移動確認。


軍用AIが船内生体反応を見る。


乗客区画。


ゼロ。


乗員。


百八十八。


船尾。


火災。


浸水。


傾斜。


八・一度。


橋梁限界。


八・五。


白波が叫ぶ。


走らせて!


乗員たちが橋へ。


一列。


二列。


走る。


空母側から。


手を伸ばす。


百名。


五十。


二十。


最後。


船長。


船長が。


橋へ足をかけた瞬間。


旅客船が。


大きく右へ傾いた。


軍用AI。


傾斜十度!


橋梁接続部。


破損!


旅客船側の橋。


一方が外れる。


船長が。


足場を失う。


海へ。


落ちる。


湊が叫ぶ。


ヘリ!


神代が。


待機させていた最後の十二機から。


一機を即座に動かす。


だが。


船長は。


船体と作業艇の間。


狭い。


ローターを近づけられない。


軍用AIが作業艇一号を動かす。


無人アーム。


伸長。


海面。


船長の救命胴衣を掴む。


波。


一度沈む。


引き上げ。


作業艇甲板へ。


生体反応。


あり。


軍用AI。


救助成功!


船長。


意識あり!


乗員。


全員。


ヴァルキュリアへ収容!


白波が命じる。


橋梁切り離し!


曳航索解除!


作業艇退避!


仮設橋。


空母側。


切り離し。


旅客船側。


海へ落下。


作業艇二隻。


全速後退。


ヴァルキュリアも。


左へ離れる。


距離。


三十。


五十。


百メートル。


その直後。


オーシャン・クラウン。


船尾。


完全浸水。


大きな船体が。


右舷側へ傾く。


十五度。


二十。


火災の煙。


海水。


救難灯。


誰もいない。


船長も。


乗客も。


全員。


もう船には残っていない。


軍用AIが数える。


救助対象。


八千六百十二名。


ヴァルキュリア収容。


八千四百三十九。


救難ヘリで医療船へ搬送。


百七十三。


合計。


八千六百十二。


死亡者。


ゼロ。


全員救助。


オーシャン・クラウンは。


救助完了から。


十三分後。


大洋へ沈んだ。


巨大な船首が。


最後まで海上へ残る。


やがて。


見えなくなる。


ヴァルキュリアの飛行甲板。


八千人以上。


乗客たちが。


静かに海を見つめていた。


自分たちが。


数十分前までいた船。


そこに。


もう誰もいない。


だから。


誰も。


一緒には沈まなかった。



軍用AIが作戦報告をまとめる。


第三国大型旅客船救難。


救助対象。


八千六百十二名。


救助。


八千六百十二名。


死亡。


ゼロ。


共同参加国。


十三。


参加航空機。


九十七機。


参加艦艇。


二十八隻。


敵軍超大型航空母艦。


ヴァルキュリア。


正式共同利用。


損傷。


軍用AIが確認する。


外板。


軽微。


飛行甲板。


正常。


作業艇一号。


アーム損傷。


二号。


正常。


仮設橋梁。


二組中一組。


海没。


救難ヘリ。


全機帰還。


艦載戦闘機。


全機帰還。


ヴァルキュリア。


重大損傷。


なし。


軍用AIの表示灯が。


ゆっくり青くなる。


空母。


無事です。


湊が笑った。


よかったな。


はい。


借りた空母を。


壊さず返せます。


ヘレナ中将が通信へ入る。


返すのか。


軍用AI。


返します!


ヘレナ。


ヴァルキュリア乗員から。


正式な意見が出ている。


今後も。


共同人道回廊の海上救難母艦として運用したいと。


軍用AIが止まった。


湊の目が少し明るくなる。


いい船だったしな。


ヘレナが笑う。


乗員たちも。


戦闘機を飛ばすより。


今日のほうが気分がいいらしい。


軍用AIが小さく答える。


正式手続きがあるなら。


私は止めません。


湊が言う。


やっぱり成長したな。


違います。


軍用AIは続ける。


ただし。


相良特務少佐。


何。


大問題があります。


世界中で。


今日の救助映像が。


生中継されました。


旅客船の乗客。


八千六百十二名。


全員救助。


敵味方の空母。


艦載機。


海軍。


空軍。


陸軍。


すべて共同。


そして。


作戦指揮。


軍病院の病床にいる。


一人の補給兵。


湊が嫌な予感を覚える。


それで。


軍用AIが世界各国から届く通信を表示した。


共同人道回廊への加盟申請。


四十三か国。


救難支援協定。


二十八か国。


さらに。


各国軍から。


第一特別救難補給隊への装備提供申し出。


大型輸送機。


百四十二機。


救難艦。


五十九隻。


工兵車両。


二千両以上。


無人機。


数千機。


湊の目が。


少しだけ輝く。


軍用AIが叫んだ。


その顔をしないでください!


まだ何も言ってない。


世界中から。


正式に。


救助用装備を貸してくれるらしい。


軍用AIの絶叫が。


今度こそ。


本当に世界中へ響き渡った。


敵軍装備だけで済んでいたのに、世界中の軍用装備を正式に借りられる人にならないでくださいいいいいいいいい!


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