第14話 ただの補給隊を作るはずが、陸海空の最精鋭が集まりました
第一特別救難補給隊の初任務は、隊長が病床から一歩も出ないまま終了した。
北方地下補給基地に取り残された五百七十二名。
救助中の死亡者はゼロ。
燃料設備の爆発も阻止。
大破した工兵用無人機も回収された。
軍上層部は、この結果を高く評価した。
相良湊特務少佐は、病室から出さなくても人命を救える。
ならば、怪我が治るまで遠隔指揮に専念させればよい。
誰もがそう考えた。
それから三日後。
第三特別病棟の病室から、相良湊が消えた。
軍用AIが異変を検知したのは、午前五時三十二分。
湊の生体情報を監視していた医療端末から、信号が途切れた。
軍用AIは即座に病室の照明を点灯。
治療用ドローンを起動。
扉を施錠しようとした。
だが、すでに病床は空だった。
相良湊特務少佐。
応答してください。
返事はない。
洗面所にもいない。
病室内の収納にもいない。
窓の防護シャッターは閉じたまま。
扉の記録には、誰かが出入りした形跡もなかった。
軍用AIの表示灯が赤く点滅する。
警報。
患者離脱。
第一特別救難補給隊隊長が病室から消失。
陸海空の連絡将校および病棟警備部隊へ緊急通報。
廊下の警報灯が一斉に点灯した。
空軍警備兵が駆け込む。
海兵隊員が非常口を封鎖。
陸軍憲兵が病棟内の捜索を始める。
神代玲華。
白波凪沙。
久遠沙耶。
三人も数分以内に病室へ到着した。
神代が空の病床を見る。
どうやって逃げたのですか。
白波が窓を確認する。
防護シャッターは開いていません。
久遠は床を調べた。
換気口も人が通れる大きさではない。
軍用AIが院内監視映像をすべて検索する。
相良湊が病室から出た映像はない。
だが、午前五時十七分。
清掃用の大型無人台車が病室へ入っていた。
使用済みの寝具を回収し、十五分後に退出。
軍用AIが台車の映像を拡大した。
積まれたシーツ。
毛布。
廃棄予定の医療用容器。
その中に、一つだけ不自然に膨らんだ部分があった。
神代の表情が固まる。
まさか。
白波が呟く。
清掃台車に隠れたのですか。
久遠は額を押さえた。
特務少佐が。
軍用AIは清掃台車の現在位置を検索した。
病棟地下。
洗濯設備前。
だが台車は空。
午前五時二十五分、地下搬入口で荷物を降ろしている。
湊と思われる人物は、その直前にシーツの中から出ていた。
軍用AIが地下通路の映像を追う。
患者服姿。
左肩には包帯。
右脚には固定具。
足を引きずりながら、湊は職員用通路を歩いていた。
病院の裏口から外へ出る。
そこには、一台の小型貨物車が停まっている。
運転席に乗った湊は、何の迷いもなく発進させた。
軍用AIが叫んだ。
病院の清掃車両まで借りないでくださいいいいいいいいい!
神代が通信端末を取る。
基地警備隊。
病院から出た小型貨物車を停止させてください。
運転者は相良湊特務少佐。
白波が港湾区域へ連絡する。
すべての艦艇と車両を封鎖。
相良特務少佐を近づけないでください。
久遠は道路監視網を開いた。
逃走方向を確認。
北東です。
黒崎海将から、眠そうな声で通信が入る。
今度は何を借りた。
病院の清掃用貨物車です。
黒崎は数秒黙った。
目的地は。
久遠が地図を見る。
北東へ向かう道路。
その先にあるのは、旧第六補給基地。
本日、第一特別救難補給隊の基地として引き渡される予定地だった。
白波が目を細める。
自分の基地へ行っただけ。
神代は納得しない。
退院許可は出ていません。
軍用AIが医療記録を確認する。
正式な退院予定は、本日午前九時。
あと三時間三十分です。
湊は三時間早く出ただけだった。
だが、手続きをせず。
清掃台車へ隠れ。
病院の貨物車を借りて。
新しい基地へ向かっている。
軍用AIは生体信号を再捕捉した。
清掃車両の運転席。
心拍数は正常。
体温正常。
本人は脱走しているという認識すらない可能性が高い。
神代が言う。
追います。
白波も病室を出る。
港から高速艇を回します。
久遠は軍用車両を呼んだ。
陸路なら私が先に着きます。
軍用AIが三人へ告げる。
私も接続可能な移動端末を要求します。
黒崎が通信越しにため息をついた。
朝から大騒ぎするな。
相良は自分の部隊へ向かっているだけだ。
退院手続きを無視しています。
神代が反論する。
車両も無断使用です。
軍用AIも続けた。
清掃車両を軍事用途へ転用する前に確保する必要があります。
黒崎が聞き返す。
清掃車両で何ができる。
軍用AIは即答できなかった。
相良湊が乗っている。
それだけで用途を予測できない。
清掃車両の荷台には、洗剤。
替えのシーツ。
清掃道具。
予備の水。
一般人なら、ただの清掃用貨物車。
相良湊なら、数時間後には何かの救助装備へ変わっているかもしれない。
軍用AIは結論を出した。
何をするか分からないため、危険です。
◇
相良湊は、病院の清掃用貨物車を運転していた。
窓の外には、朝日に照らされた基地都市。
道路はまだ空いている。
旧第六補給基地まで、あと十五分。
助手席の携帯端末が鳴る。
着信者。
神代玲華。
湊は運転しながら通信をつないだ。
おはようございます。
おはようございますではありません。
どこにいるのですか。
新しい基地へ向かってます。
なぜ病室にいないのですか。
今日、退院予定だったので。
退院予定は午前九時です。
少し早いだけです。
三時間半を少しとは呼びません。
神代の後ろから、白波の声が入る。
その車両は病院の所有物ですね。
借りました。
誰から許可を。
鍵が付いていたので。
軍用AIの絶叫が通信へ割り込む。
それを無断使用と呼びます!
湊は速度を少し落とした。
返したらいいんだろ。
まず病院へ戻ってください。
もう基地のほうが近い。
そこからの距離で決めないでください。
久遠の声も聞こえる。
旧第六補給基地の門を閉鎖しました。
入れません。
湊は前方を見る。
道路の先に基地の正門が見え始めた。
確かに大きな金属門が閉まっている。
その前には陸軍憲兵。
装甲車。
警備兵。
かなり厳重だった。
湊が通信へ言う。
見えてます。
停止してください。
久遠が命じる。
湊は貨物車を減速させ、門の前で止めた。
警備兵たちが周囲を囲む。
運転席の扉が開く。
湊は抵抗せず降りた。
患者服。
病院用の上着。
片方だけ軍靴。
右脚には固定具。
肩に包帯。
軍人というより、病院から逃げてきた患者にしか見えない。
実際、そのとおりだった。
警備隊長が敬礼するか、拘束するか迷っている。
湊が聞いた。
今日からここが第一特別救難補給隊の基地ですよね。
その予定です。
中を見たくて来ました。
開所式は午前十時。
その前に退院と着替えを済ませていただく予定でした。
そうなんですか。
説明を受けていませんでした。
説明前に病院から逃げたからです。
軍用AIの声が、警備兵の端末から響いた。
湊は貨物車の鍵を警備隊長へ渡す。
返します。
病院へ返却してください。
本人が返しに行きます。
神代が通信で言った。
湊は基地を見る。
ここまで来たので、先に中だけ。
駄目です。
三人と軍用AIの声が重なった。
正門の向こう。
旧第六補給基地は、長く使用されていなかった施設とは思えないほど整備されていた。
広い車両倉庫。
地下物資保管庫。
小型滑走路。
ヘリポート。
鉄道引込線。
港へ通じる専用道路。
陸海空すべての装備を受け入れられるよう、大規模な改修が始まっている。
さらに。
基地中央の広場には、見慣れないほど多くの人間が集まっていた。
陸軍兵。
海軍兵。
空軍兵。
整備員。
衛生兵。
工兵。
通信士。
操縦士。
輸送要員。
予定されていた開所式の準備をしているようだった。
湊が人数を数える。
少数部隊と聞いてたんだけど。
軍用AIが名簿を表示する。
第一特別救難補給隊。
当初予定人員、三十二名。
現在、志願者数。
一万九千八百四十一名。
湊が固まった。
そんなに。
神代が通信越しに答える。
あなたに救助された空軍兵のほぼ全員が、転属願を提出しました。
白波も続ける。
海軍は八千名以上。
黒崎海将の艦隊を中心に、申請が殺到しています。
久遠が言う。
陸軍も同様です。
補給部隊、機甲部隊、工兵部隊、衛生部隊。
方面軍司令部の人間まで志願しています。
湊は基地内の人々を見る。
全員を入れるのか。
入れません。
軍用AIが答える。
一個軍団規模になります。
でも人が多いほうが。
管理不能です。
必要に応じ、各軍種から一時派遣を受けます。
常設人員は最小限。
軍用AIが続ける。
ただし、各軍種が自軍の人員を多く入れようとして交渉中です。
湊の目の前で、基地内の三つの集団が分かれていた。
陸軍側。
海軍側。
空軍側。
互いに大きな横断幕を掲げている。
陸軍。
地上救難と重輸送は陸軍へ。
海軍。
海上救難と長距離輸送は海軍へ。
空軍。
最速救難は空軍へ。
湊が尋ねる。
あれは何をしてるんだ。
軍用AIが答える。
第一特別救難補給隊へ、どの軍種が主導権を持つか争っています。
一緒にやればいいのに。
それができれば苦労しません。
基地の正門へ、三つの車列が同時に到着した。
最初は陸軍。
大型装甲輸送車。
工兵作業車。
装甲救急車。
重機運搬車。
無人補給車両。
久遠沙耶が先頭車両から降りてくる。
相良特務少佐。
退院手続きへ戻ってください。
その後ろから、海軍の車列。
白い軍用車。
港湾作業用無人車。
艦載救難艇を積んだ大型トレーラー。
白波凪沙が降りる。
その前に、無断使用した病院車両について始末書が必要です。
空からローター音。
大型輸送ヘリ三機が基地上空へ現れる。
一機が正門近くのヘリポートへ着陸。
神代玲華が降りてきた。
まず医師の診察です。
湊は陸海空の三人に囲まれた。
その中心に、患者服姿で立っている。
基地内の兵士たちが一斉にこちらを見る。
誰かが敬礼した。
続いてもう一人。
瞬く間に広場の全員が姿勢を正す。
相良湊特務少佐。
新設された第一特別救難補給隊の隊長。
直接会うのが初めての者も多い。
だが全員が知っている。
敵地から三百六十九名を輸送した補給兵。
最新鋭戦艦で二千四百六十一名を救出した人物。
病床から五百七十二名を救った隊長。
湊は多くの視線に戸惑った。
どうすればいい。
軍用AIが小型の移動端末へ接続し、正門まで運ばれてきた。
黒い円筒形の端末。
車輪付き。
上部にカメラとスピーカー。
湊の前まで走ってくる。
まず病院へ戻ります。
基地の説明は正式な退院後です。
せっかく集まってるのに。
あなたが予定より早く来たためです。
湊は基地内の兵士たちを見る。
遠くから来た者もいる。
開所式まで待たせるのも悪い。
湊は少し考え、正門の脇へ立った。
神代たちが止めるより早く、基地内の全員へ向かって頭を下げた。
相良湊です。
今日から、この部隊の隊長になるらしいです。
らしいではありません。
軍用AIが訂正する。
湊は続ける。
正直、俺は人を指揮するのが得意じゃありません。
兵器にも詳しくない。
大型輸送機の操縦経験もほとんどなかったし、戦艦の動かし方も知りませんでした。
知識がない状態で借りないでください。
軍用AIがまた割り込んだ。
広場から、小さな笑いが起きる。
湊は少し困りながら続けた。
ただ、取り残された人がいるなら助けたい。
物資が届かなくて困っている人がいるなら届けたい。
その途中に敵がいるなら、倒して道を開く。
帰れない人がいるなら、全員乗せて帰る。
俺一人では無理です。
だから手伝ってください。
広場が静かになった。
陸軍兵。
海軍兵。
空軍兵。
全員が湊を見ている。
一人の兵士が敬礼した。
陸軍機甲部隊の軍曹だった。
相良湊に救出された経験を持つ。
必ず。
次は海軍兵。
その次は空軍兵。
やがて広場全体が、揃った敬礼で埋まった。
陸海空の区別はなかった。
湊は慌てて敬礼を返す。
神代はその姿を見て、小さく息を吐いた。
白波は腕を組んだまま目を細める。
久遠は表情を変えなかったが、敬礼する手には力が入っていた。
軍用AIが志願者名簿を再確認する。
このままでは、さらに人数が増加する可能性があります。
湊の演説が全軍通信へ流れていた。
通信を切ってなかったのか。
あなたが基地正門で話し始めたため、開所式の代替として中継しました。
勝手に。
人のことを言えません。
黒崎海将を乗せた軍用車が正門へ到着した。
黒崎は車から降りると、患者服姿の湊を見る。
早すぎる。
すみません。
病院の車を無断使用したそうだな。
返しました。
返せばよいという問題ではない。
黒崎は湊の格好を見る。
片方だけ軍靴。
病院用の上着。
固定具。
この状態で開所式を始めたのか。
少し挨拶しただけです。
全軍へ中継されていた。
軍用AIが報告する。
現在、志願者数が二万一千名を超えました。
増えてるな。
黒崎は額を押さえた。
正式な常設人員は四十八名に制限する。
その他は協力部隊として登録。
必要な任務ごとに招集する。
湊が尋ねる。
四十八人で足りますか。
普通の部隊なら十分だ。
お前の部隊は、陸海空すべてから必要な人員を借りられる。
また借りるのか。
正式にだ。
黒崎は強く言った。
必ず正式に。
第一特別救難補給隊の基地へ、正式な部隊旗が運ばれてきた。
白地。
中央に、陸海空を表す三本の線。
その三本が一つの道となり、帰還地点を示す円へ続いている。
湊が旗を見る。
誰が作ったんですか。
救助された者たちから公募した。
黒崎が答える。
隊の標語も決まっている。
黒崎が旗の下へ書かれた言葉を示した。
最後の一人まで、帰還させる。
湊はしばらくその文字を見ていた。
いいですね。
お前の行動を、そのまま言葉にしたものだ。
でも、俺一人じゃできない。
だから部隊が作られた。
黒崎は基地の門へ向き直る。
本日付。
第一特別救難補給隊を正式に発足する。
基地内へ歓声が広がった。
陸海空の兵士たちが、同じ部隊旗へ敬礼する。
相良湊は患者服のまま、その先頭に立っていた。
軍用AIが小さな車輪付き端末から告げる。
発足式を確認。
次は病院へ戻ります。
もう少し基地を見てから。
戻ります。
装備だけ。
見せません。
何があるか知っておかないと。
軍用AIは基地内の装備一覧を画面へ表示した。
陸軍提供。
装甲救急車四両。
重装甲輸送車六両。
大型工兵車両八両。
無人補給車二十四両。
海軍提供。
高速救難艇六隻。
大型無人上陸艇四隻。
港湾作業艇二隻。
空軍提供。
大型輸送ヘリ四機。
高速救難機二機。
無人輸送機八機。
さらに統合参謀本部から、多目的指揮車両。
移動式医療施設。
仮設橋梁。
大規模通信設備。
基地内倉庫には、救助と補給に必要な物資が積まれている。
湊の目が輝いた。
かなり使えそうだな。
軍用AIの表示灯が赤くなった。
壊す対象を選ぶような目で見ないでください。
壊さないよ。
虚偽検出。
本当だ。
過去の実績を考慮すると信用できません。
湊は基地中央に停められた、一台の大型指揮車を見る。
十輪式の装甲車両。
通信アンテナ。
医療設備。
無人機管制装置。
現地で指揮所として使えるようになっている。
あれには乗っていいのか。
軍用AIが答える。
第一特別救難補給隊隊長専用の移動指揮車です。
正式に使用可能。
湊の顔が明るくなる。
借りなくてもいいのか。
あなたの部隊の車両です。
ただし運転は専任操縦手。
湊は運転席を見る。
大型車両の免許はある。
自分で運転しません。
少しくらい。
しません。
神代たち三人が、同時に湊の肩を掴んだ。
左肩には怪我があるため、右肩と両腕を掴む形になった。
湊はそのまま病院へ戻されそうになる。
そのとき。
基地内の警報が鳴った。
短い音ではない。
全域へ響く、第一級救難警報。
広場の空気が一瞬で変わった。
兵士たちが持ち場へ走る。
大型画面が起動。
軍用AIが緊急通信を解析する。
救難信号を受信。
発信地点。
西方大峡谷。
軍用旅客列車、第五避難輸送列車。
峡谷に架かる長大橋梁上で停止。
乗車人員。
民間避難民千百八十六名。
護衛兵百四十二名。
負傷者八十九名。
合計千四百十七名。
列車の前方では、橋梁が爆撃により崩落。
後方から敵装甲列車が接近。
第五避難輸送列車は、橋の中央で動けなくなっている。
敵装甲列車到着まで。
五十八分。
橋梁の残存部分も、列車の重量に耐えられない。
崩落予測。
四十一分。
病院へ戻ろうとしていた湊の足が止まった。
黒崎が先に言う。
お前は基地へ来たばかりだ。
まだ怪我も治っていない。
湊は大型画面を見る。
千四百十七人。
橋の上。
前にも後ろにも逃げられない。
軍用AIが救助手段を計算する。
通常の航空救助。
大型輸送ヘリ四機を使用。
一度に搬送可能な人数は百六十名。
全員の搬送には最低九往復。
時間不足。
列車を牽引できないか。
湊が尋ねる。
前方の線路は崩落。
後方には敵装甲列車。
別の線路は。
ありません。
峡谷の下は。
深さ六百メートル。
河川あり。
船では近づけません。
神代が航空地図を開く。
橋の横からホバリングし、吊り下げ搬送。
風が強すぎます。
白波が川の流れを見る。
救難艇も使えない。
久遠が地上部隊を確認する。
最寄りの機甲部隊は二時間後。
間に合わない。
湊は基地内の装備を見る。
大型輸送ヘリ。
無人輸送機。
仮設橋梁。
重装甲輸送車。
大型工兵車両。
そして、千人以上を乗せた列車。
全部を人だけ助けようとするから時間が足りない。
湊が言った。
列車ごと助ける。
軍用AIが聞き返した。
列車ごと。
橋から落ちる前に、列車を空へ吊る。
基地全体が静まり返った。
神代が画面を見る。
大型輸送ヘリ四機では、列車一編成の重量を支えられません。
無人輸送機も使う。
軍用AIが即座に計算する。
輸送ヘリ四機。
無人輸送機八機。
合計吊り下げ能力。
列車総重量の六十二パーセント。
足りません。
全部持ち上げなくていい。
湊は橋梁の構造図を表示した。
橋が支え切れない分だけ、上から吊る。
列車の重量を軽くする。
その状態で後ろへ引く。
敵装甲列車は。
止める。
何で。
湊は基地の装備を見回した。
目が、一台の重装甲工兵車へ止まる。
線路を走れるようにできるか。
軍用AIの表示灯が赤く点滅した。
今度は工兵車を装甲列車へ改造するつもりですか。
できるか。
できますが、今からでは。
四十分以内に作る。
部隊発足初日です!
軍用AIが叫ぶ。
せめて一日くらい、装備を壊さずに終えてください!
湊は部隊旗を見る。
最後の一人まで、帰還させる。
その下で、第一特別救難補給隊の最初の出動命令を出した。
全員、準備。
列車ごと連れて帰る。
軍用AIの絶叫とともに。
発足から十二分。
第一特別救難補給隊は、初出動を開始した。
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