第百四十四話 鉄の、足音
一 澱みの信徒、浄化
澱みの信徒を、隠密部隊が、捕らえてから——アルクは、彼らを、浄化していた。
《還元》で——心を、侵していた、澱みを、引き剥がす。
「……ここは」正気に、戻った、信徒の、一人が、つぶやいた。「俺は——何を、していたんだ」
「もう、大丈夫だ」アルクは言った。「澱みは
——浄化した。お前は、自分を、取り戻した」
「すまない——」その男は、頭を、抱えた。「俺は
——澱みの、声に、唆されて。アステリアを、探って——」
「過去は、いい」アルクは言った。「これから、どう、生きるかだ。——やり直したいなら、ここにいろ」
だが——浄化の、途中で。
ライナが——気づいた。
「アルク」ライナは言った。
「こいつらを、唆していた、大本が——わかった」
「大本?」アルクは言った。
「澱みの、信徒は——ただ、古き王の、気配に、引き寄せられた、だけじゃ、ない」ライナは言った。「組織的に——動かされていた。背後に——国が、いる」
「国——」アルクは、息を、呑んだ。
二 鉄帝国ヴァルガルド
「鉄帝国ヴァルガルド」ライナは言った。「大陸の、北方の——軍事国家だ。フィリア殿の、知識にも、あった」
「ヴァルガルド——」アルクは言った。
「武の国ガラントとも、知の国ミネルヴァとも、違う」フィリアが、説明した。「力こそ、すべて。大陸の、統一を、悲願とする——好戦的な、大国です。これまで——アステリアからは、遠く。接点が、ありませんでした。でも」
「でも?」
「最近——ヴァルガルドが」フィリアは言った。声を、潜めて。「地下帝国ネブロスの、澱みの力に
——手を、出した、という、噂が、あります」
「ネブロスの、力に——手を出した!?」アルクは、驚いた。
「ええ」ライナが、言った。「澱みの信徒を、操っていたのも——ヴァルガルドだ。古き王の、信徒と、手を組み。澱みの力を——軍事に、利用しようとしている。そして——」
ライナの、表情が、硬くなった。
「奴らの、狙いは——アステリアだ」ライナは言った。
三 狙われる、理由
「なぜ——アステリアを?」ネッサが、不安そうに、言った。
「いくつか、理由が、ある」ライナは言った。「一つ——アステリアは、急成長している。ガラントをはじめ、様々な国と、同盟を、結び。多種族が、集い。豊かに、なっている。ヴァルガルドにとっては
——大陸統一の、邪魔な、存在だ」
「もう一つは?」アルクは言った。
「お前の、力だ、アルク」ライナは言った。「賦活師の、力。澱みを、浄化する力。——ヴァルガルドは、澱みの力を、利用している。お前の、浄化の力は
——奴らの、力の、源を、脅かす。だから——お前を、消したい」
「なるほど」アルクは言った。
「そして——最も、厄介なのは」ライナは言った。
「奴らが、アステリアの、強みを——理解している、ことだ」
「強み?」
「縁だ」ライナは言った。「アステリアの、強さは
——多種族の、同盟国との、縁。その、縁こそが——アステリアを、支えている。ヴァルガルドは——おそらく。その、縁を、断とうとしてくる」
「縁を——断つ」アルクは、つぶやいた。
四 不穏な、動き
ライナの、予感は——的中し始めた。
まず——同盟国、ガラントとの、通信玉が。
突然——繋がらなく、なった。
「ガラントと——連絡が、取れません」フィリアが、青ざめた。「通信玉が——澱みで、妨害されている」
「知の国とも——?」アルクは言った。
「確認します——」フィリアが、別の、通信玉を、試した。「だめ——こちらも、繋がらない」
さらに——エニが。
『……アルク』エニが、苦しげに、言った。『二つの世界を、繋ぐ、門が——澱みに、侵されかけている。誰かが——意図的に。縁の糸を——断とうとしている』
「故郷との、門まで——!?」アルクは、息を、呑んだ。
「やはり——縁を、断ちに、来たか」ライナは言った。「同盟国を、孤立させ。故郷との、繋がりも、断ち。アステリアを——独りに、しようとしている。各個撃破の——常套手段だ」
「ヴァルガルドの、罠か」アルクは言った。
「ああ」ライナは言った。「そして——縁を、断った後。総攻撃を——仕掛けてくる、はずだ」
アステリアに——緊張が、走った。
平和だった、星の国に。
初めて——明確な、軍事的脅威が、迫っていた。
五 偵察隊、襲撃
その時。
町の、外れで——戦闘が、起きた。
ヴァルガルドの、偵察隊が——アステリアの、防衛線を、探りに、来ていた。隠密部隊が、見つけ、衝突したのだ。
「アルクさん!」ガレオが、駆けてきた。「ヴァルガルドの、偵察隊です! 澱みの力を、まとった、兵が——数十! 防衛隊が、押されてます!」
「行くぞ!」アルクは言った。
アルクは——《創生》の、空間を繋ぐ門で。一瞬で、戦闘の、現場へ。
そこには——澱みの、鎧を、まとった、ヴァルガルドの、兵たちが、いた。澱みの力で、強化され、防衛隊を、圧倒していた。
「数が——多い」ヴィナが、剣を、構えた。
「アルク」ライナが、言った。「奴らは——澱みで、強化されてる。普通に、戦えば、長引く。それに
——浄化してる、暇は、ない。今は——退ける、ことを、優先しろ」
「ああ」アルクは言った。「なら——」
アルクは——新たな、力を、試す、ときだと、思った。
ずっと——浄化と、還元ばかり、だった。でも
——今は。爽快に、薙ぎ倒し、味方を、守る、攻撃が、要る。
六 創生・百刃
「アルファ!」アルクは、呼んだ。「力を、貸してくれ!」
アルファが——付与を、かけた。竜化した、アルファの、桁違いの、付与。
アルクの、全身に——力が、漲った。
「《創生》——」アルクは、念じた。今までとは、違う、使い方を。
空間に——無数の、光の、刃を、創り出す。一本、二本、ではない。何十、何百もの、光の刃が——アルクの、周りに、浮かんだ。
「これは——!?」ヴィナが、目を、見開いた。
「《創生・百刃》——!!」アルクは、叫んだ。
無数の、光の刃が——一斉に、ヴァルガルドの、兵に、向かって、射出された。
刃の、雨。
澱みの、鎧を、まとった、兵たちが——次々と、その刃に、貫かれ、吹き飛ばされていく。だが——刃は、命までは、奪わない。鎧を、砕き、戦意を、削ぎ、無力化する。
「すごい——!」ガレオが、叫んだ。「アルクさんが
——一瞬で、偵察隊を!」
「アルク——そんな、技が!?」ヴィナが、驚いた。
「《創生》は——攻撃にも、使える」アルクは言った。「武器を、創るだけじゃ、ない。——無数の、刃を、創って、一気に、放つ。これなら——大勢の、敵も、一気に、退けられる」
ヴァルガルドの、偵察隊は——壊滅した。
生き残った、兵は——澱みの鎧を、砕かれ、ほうほうの体で、逃げていった。
七 宣戦
偵察隊を、退けた、後。
逃げた、兵が——一つの、ものを、残していった。
ヴァルガルドの、紋章が、刻まれた——書状。
セバスが——それを、恭しく、拾い、アルクに、渡した。
「アルク様」セバスは言った。「これは——宣戦布告で、ございます」
アルクが——書状を、開いた。
『鉄帝国ヴァルガルド、皇帝バルドル、の名において、告ぐ。新興国アステリアよ。貴国の、繁栄も、賦活師の、力も——我が、大陸統一の、妨げなり。よって——七日の後、我が、全軍をもって、貴国を、滅ぼす。同盟国の、救援は——望むな。貴国は——すでに、孤立している』
「七日後——総攻撃」アルクは言った。
「同盟国の、救援は、望むな——」カインが、読んで、言った。「やはり——縁を、断った上で。総攻撃を、仕掛けてくる、つもりです」
「アステリアを——独りにして、滅ぼす、か」ライナは言った。
アルクは——書状を、握りしめた。
そして——静かに、言った。
「独りには——させない」アルクは言った。「アステリアは——独りじゃ、ない。同盟国も。故郷も。
——みんなと、繋がってる。たとえ、縁を、断とうとしても。——俺たちは、必ず、繋ぎ直す」
アルクは——仲間たちを、見渡した。
「七日後の、総攻撃」アルクは言った。「迎え撃つぞ。——アステリアを、守るために。そして
——ヴァルガルドの、奴らも。澱みに、侵されてるなら——救うために」
「ああ——!」全員が、応えた。
星の国、アステリアに——初めての、国家間の、戦争が、迫っていた。
だが——アルクの、目に。恐れは、なかった。
断たれた、縁を——繋ぎ直し。
爽快に、敵を、薙ぎ倒し。
そして——敵すら、救う。
その、覚悟を——胸に。
お読みいただき、ありがとうございます。
ご評価⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️、リアクション、ブックマーク頂けますと執筆の励みになります。
どうぞよろしくお願いします。




