第百四十二話 発明の、工房
一 大きさ自在の、竜
空の島から、戻った、朝。
アルファが——アルクの、肩で、くつろいでいた。手のひらサイズに、戻って。
「アルファ」アルクは言った。「お前——竜になっても、普段は、その、小さい姿、なんだな」
『せやで』アルファが、言った。『うち——大きさ、自在に、変えられるんや。普段は、こうやって、かわいく、小さく《これ大事なところやで!》。望む時は大きな竜に。なんなら——この前よりも、もっと、でっかくなれるで!』
アルファが——試しに、町の、広場で、巨大化した。山のように、大きな、橙色の、竜に。
「うわ——大きい!」ネッサが、目を、丸くした。
『どや!』アルファが、得意げに、言った。声が、町中に、響く。『この、サイズなら——城壁、まるごと、守れるで!』
「アルファさん、大きすぎます——!」ネッサが、笑った。「町が、影に、なっちゃう!」
『あ——ほんまや』アルファが、慌てて、手のひらサイズに、戻った。『ごめんごめん。加減、難しいわ』
「便利だな、その力」アルクは、笑った。「普段は、小さくて、可愛くて。守るときは、巨大に。——状況に、合わせられる」
『せやろ!?』アルファが、リボンを、揺らした。『うち、器用やねん!』
「『照れてない』も、言わないんだな」ルミが、言った。
『それは、お前の、口癖や!』
二 空を、飛びたい
ウィンドラ族の、シエルが——アステリアに、滞在し始めて。
町は——新たな、刺激に、満ちていた。
シエルが——空を、自在に、飛び回る姿に。子供たちが、憧れた。
「いいなあ、シエルお姉ちゃん!」コダマ族の子が、言った。「空、飛べて!」
「ぼくも、飛びたい——!」
その、声を、聞いて——リィナと、フィリアが、目を、輝かせた。
「アルク」リィナが、言った。「考えていた、発明
——本格的に、始めませんか。空を、飛ぶ、道具を」
「ええ!」フィリアが、言った。「ウィンドラ族の、風の、技術。わたくしの、知の国の、理論。リィナの、解析。そして——アルク殿の《創生》。
——これだけ、揃えば。きっと、できますわ!」
「面白そうだな」アルクは言った。「やってみよう」
三 発明の、工房
アルクは——《創生》で、町の、一角に、大きな、工房を、創った。
発明の、ための、工房。
リィナと、フィリアが——研究の、中心に。シエルが——風の、技術を、提供。ドルムたち、職人が
——細工を。そして——アルクの《創生》が、形に、する。
「まずは——理論から、ですわ」フィリアが、言った。「ウィンドラ族が、空を、飛べるのは——風の、聖石の、力。それを、小さく、再現できれば」
「風の、聖石の、かけらなら」シエルが、言った。
「分けて、あげられる。浄化された、聖石の、力を」
「それを——核に、する」リィナが、言った。「アルクさんの《創生》で、風を、まとう、装置を、創り。聖石の、かけらで、浮力を、生む。——理論上は、可能です」
試行錯誤が——始まった。
失敗も——あった。
最初の、試作品は——少し、浮いて、すぐ、落ちた。
「うわ——!」試した、ガドルが、尻もちを、ついた。「全然、飛べん!」
「ガドルさん、重すぎ、なんじゃ?」ネッサが、笑った。
「俺の、せいか!?」ガドルが、言った。
「データを、修正します」リィナが、冷静に、言った。「浮力が、足りない。聖石の、配置を——」
何度も、何度も——試した。
四 空舞の、翼
そして——ついに。
完成した。
「《空舞の、翼》」リィナが、名付けた。
背に、装着する——軽い、翼の形の、装置。風の聖石の、かけらを、核に。アルクの《創生》で、風を、まとう、力を、宿した。
「試して、みてください」フィリアが、言った。
まず——ガレオが、試した。
背に、《空舞の翼》を、装着し——念じる。
すると——翼が、淡く、光り。ガレオの、体が
——ふわりと、浮き上がった。
「浮いた——!」ガレオが、驚いた。
そして——ガレオは、空を、飛んだ。最初は、ぎこちなく。だが——次第に、自在に。
「飛べる——! 飛べるぞ——!」ガレオが、歓声を、上げた。
「やった——!」工房の、みんなが、喜んだ。
「これで——空からの、偵察も、守りも、できる」ライナが、筆頭武官として、言った。「シエルたち、ウィンドラ族と、連携すれば——アステリアの、空の守りは、盤石に、なる」
「すごいです——!」ネッサが、言った。「みんなが、空を、飛べるように、なるなんて!」
「まだ——改良の、余地は、ありますわ」フィリアが、言った。「でも——第一歩、ですわね」
「ああ」アルクは、笑った。「発明って——面白いな。みんなの、知恵が、合わさって。新しいものが、生まれる」
五 隠密の、必要
《空舞の翼》の、発明で——アステリアの、空の力が、広がった、頃。
ライナが——アルクに、進言した。
「アルク」ライナは言った。筆頭武官として。「アステリアの、守りについて。一つ——足りないものが、ある」
「なんだ?」
「隠密だ」ライナは言った。「今の、アステリアの、守りは——正面からの、戦いには、強い。バルガの、城壁。ガレオの、防衛隊。《空舞の翼》の、空の守り。——だが」
「だが?」
「目に、見えない、脅威には——弱い」ライナは言った。「敵の、間者。要人の、暗殺。情報の、漏洩。——国が、大きくなり、各国と、付き合うように、なれば。そういう、影の、脅威も、増える。それに、備える——隠密の、部隊が、要る」
「隠密部隊——」アルクは言った。
「俺は——帝国で、そういう、影の、戦いも、見てきた」ライナは言った。「正面からの、戦いだけでは
——国は、守れない。要人の、護衛。密かな、偵察。情報の、収集。——そういう、役割を、担う、部隊が、必要だ」
「なるほど」アルクは言った。「確かに——アステリアには、なかった、視点だ。さすが——筆頭武官だな」
「任せて、くれるか」ライナは言った。「俺が——隠密部隊を、創る。アステリアを、影から、守る、部隊を」
「ああ」アルクは言った。「頼む、ライナ」
六 影の、守り手
ライナは——隠密部隊の、創設に、取りかかった。
メンバー選びには——意外な、適性が、活きた。
まず——ウィンドラ族の、シエル。空からの、偵察に、最適。
「わたし——役に、立てる?」シエルが、言った。
「ああ」ライナは言った。「空からなら——誰にも、気づかれず、見張れる。お前の、力が、要る」
次に——ミズチ族の、若者。水を、操り、気配を、消すのが、得意だった。
そして——コダマ族の、若者。森に、溶け込み、潜むのが、得意。
「種族の、特性を——活かす」ライナは言った。「ウィンドラ族は、空から。ミズチ族は、水辺から。コダマ族は、森から。——それぞれの、得意な、場所で、目と、なり、守りと、なる」
「面白い、考えだな」アルクは、感心した。「多種族の、隠密部隊か」
「そして——」ライナは言った。「俺自身が、率いる。帝国で、培った、影の、戦いの、技術を。今度は——アステリアを、守るために、使う」
ライナの、目には——強い、決意が、宿っていた。
「ライナ」アルクは言った。「お前、変わったな」
「変わった?」
「昔は——一人で、戦う、剣士だった」アルクは言った。「でも、今は——多種族の、部隊を、率いて。アステリアを、守ろうとしてる。——立派な、筆頭武官だ」
「……アルクの、おかげだ」ライナは言った。「お前が——俺に、居場所を、くれた。守るべきものを、くれた。——だから、俺は。今度こそ、守る。アステリアを。仲間を。——影から」
七 守るための、力
その夜。
ライナが、一人、訓練場で——剣を、振っていた。
アルクが——通りかかった。
「ライナ」アルクは言った。「まだ、起きてたのか」
「ああ」ライナは言った。「隠密部隊の、訓練法を
——考えていた。それに——自分自身も、鍛え直さないと」
「筆頭武官に、なって——責任を、感じてるのか」アルクは言った。
「ああ」ライナは言った。「アステリア、全体の、守りを——任された。重い、責任だ。でも——」
ライナが——剣を、止めた。
「昔は——力を、求めるのは。自分が、生き残るため、だった。帝国で。一人で。でも——今は、違う。アステリアを、みんなを、守るために——強くなりたい。その想いが——俺を、突き動かす」
「ライナ——」
その時。
ライナの、胸元で——小さなギフトの光が、また少し、明るく、なった。
「お前のギフト——また、育ったみたいだな」アルクは言った。
「ああ」ライナは——自分の、胸元を、見た。「古龍ヴェルダが——言っていた。俺のギフトは。『人の、痛みを、引き受け、守る、力』に、育つ、と。——筆頭武官として。みんなを、守ろうと、するたびに。この、ギフトが——少しずつ、育っていく、気がする」
「お前らしい、力だな」アルクは言った。「人の、痛みを、引き受けて、守る。——お前は、ずっと、それを、やってきた。ガレオを、導いて。隠密部隊で、影から、守って」
「ああ」ライナは言った。「いつか——このギフトが。完全に、開花すれば。俺は——もっと、みんなを、守れる。その日を——目指して、強くなる」
「楽しみだな」アルクは、微笑んだ。「お前の、覚醒が」
「覚醒、か」ライナは、ふっと、笑った。「俺みたいな、元・敵が。守り手のような、力に、目覚めるとは。——人生、わからないものだ」
「過去は——関係ない」アルクは言った。「今の、お前が。みんなを、守りたいと、願ってる。——それが、全てだ」
「……ああ」ライナは言った。
月明かりの下。
元・四将、ライナが——アステリアの、筆頭武官として。隠密部隊を、率い。みんなを、守るために、強くなろうと、している。
その、胸元の、ギフトは——少しずつ、確かに、覚醒へと、近づいていた。
影から、守る、力。人の、痛みを、引き受ける、力。
その、開花の、日は——そう、遠くないのかもしれない。
「さあ」アルクは言った。「明日も、忙しいぞ。隠密部隊の、訓練。発明の、改良。——アステリアは、まだまだ、大きくなる」
「ああ」ライナは、頷いた。「楽しみだ」
二人の、元・敵と、賦活師が——並んで、夜空を、見上げた。
アステリアの、守りは——また一つ、厚みを、増した。
空の力。隠密の力。発明の力。
そして——成長していく、仲間たち。
星の国は——内側からも、外側からも。強く、豊かに、なっていった。
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