⭐️ 第百三十四話 百花の、円舞⭐️
一 祭りを、守る
黒い靄を、まとった——魔獣の、群れ。
祝祭の、賑わいを——切り裂くように、迫ってきた。
「魔獣だ——!」住民たちが、慌てた。
「落ち着いてください!」セバスが、冷静に、叫んだ。「皆様、町の、中心へ! ご老人と、お子様から!」
「防衛隊——配置に、つけ!」ガレオが、指揮を、執った。義手で、剣を、握って。「ナミさん——水の壁を!」
「了解——!」ミズチ族の、ナミが、水を、操り、防壁を、張った。
「バルガ——城壁を!」アルクが、叫んだ。
「任せろ!」バルガが、《不落の城壁》を、展開した。
だが——魔獣の、群れは、大きかった。祝祭の、灯りに、引かれたのか、いつもより、数が、多い。
「数が——多いな」ヴィナが、剣を、抜いた。ドレスの、まま。
「ヴィナ殿!」ゼルダが、戦斧を、構えて、駆けつけた。「私も、戦うぞ! 同盟国の、誼だ!」
「助かる、ゼルダ殿!」ヴィナは言った。
二 守りたいもの
ヴィナは——戦いながら、見ていた。
逃げる、住民たち。怯える、子供たち。せっかくの、祝祭。皆の、笑顔。ガラントから、来てくれた、客人。故郷から、来てくれた、ターク。
そして——カトレアから、現れた、四人の、仲間。
「ヴィナ!」四人が、叫んだ。「一緒に、戦うぞ!」
四人の、魂が——女神の力で、現界した、まま。魔獣に、立ち向かった。光の、体で。
「お前たち——!」ヴィナは言った。
「昔みたいに——一緒に、戦おう!」男の一人が、笑った。「ただし、今度は——お前を、死なせない!」
ヴィナは——胸が、熱くなった。
かつて、守れなかった、四人。一人だけ、生き残った、後悔。
でも——今、四人は、また、隣で、戦っている。そして——アルクも、ネッサも、ガレオも、ゼルダも、町の、みんなも。
「あたしは——」ヴィナは、つぶやいた。「あたしは、もう——失わない。この、祝祭を。みんなの、笑顔を。——結んできた、すべての、縁を」
ヴィナの中で——何かが、満ちていく。
外交で、結んだ、無数の、縁。コダマ族。ミズチ族。ガラント。故郷の、人々。——そして、カトレアの、四人。
その、すべての、縁が——ヴィナの、剣に、流れ込んでくる。
三 奥義、開花
「アルク!」ヴィナが、叫んだ。「力を——貸してくれ! あたし——何か、つかめそうだ!」
「ああ!」アルクが、付与を、かけた。エニが、縁の糸で——ヴィナと、町の、すべての、縁を、繋いだ。
ヴィナの、カトレアが——眩く、輝いた。
四つの宝石が——いや、それだけでは、ない。
アステリアで、結んだ、無数の、縁が——光の、花弁と、なって、ヴィナの、周りに、舞い始めた。
「これは——」ヴィナは、自分の中の、力を、感じた。「あたしが——外交で、結んできた、縁。皆との、絆。——それが、剣に、なる」
ヴィナは——悟った。
外交とは——多くの人の、心を、繋ぎ、場を、治めること。淑女として、舞踏の、場を、治めるように。
その、感性が——今、剣技に、昇華する。
「《絆守の剣・カトレア奥義——」ヴィナは、剣を、掲げ、静かに言葉を発した。
《百花の、円舞》
ヴィナを、中心に——光の、花弁が、円を、描いて、広がった。
その、円の中に——逃げる、住民も、戦う、仲間も、すべて、包み込まれた。花弁の、光が、彼らを——優しく、守る。魔獣の、攻撃を、寄せ付けない、守りの、円舞。
そして——ヴィナが、舞った。
ドレスを、ひるがえし。舞踏の、ように、優雅に。剣を、振るって。
円の中に、踏み込んだ、魔獣を——光の、花弁の、斬撃が、一斉に、斬り裂いた。一体、また、一体と。舞うように。
四 舞う、剣聖
ヴィナの、舞は——美しかった。
戦場を——舞踏会の、広間のように、支配し。味方を、守りの、円舞の中に、包みながら。その円に、入った、敵だけを——花弁の、斬撃で、一掃する。
攻防一体。範囲制圧。一対多で——無双する、奥義。
「これは——!?」ゼルダが、目を、見開いた。「ヴィナ殿——なんという、剣技だ! 舞うように、戦い
——味方を、守りながら、敵を、薙ぐ!」
「すごい——!」ガレオが、言った。「ヴィナさんの、周りだけ——別世界だ!」
カトレアの、四人も——ヴィナの、舞に、加わった。
「相変わらず——派手だな、ヴィナ!」男の一人が、笑った。
「でも——美しいよ」女性の一人が、言った。「あなたの、剣。一人で、戦ってた、頃とは——別人だ。皆を、守る、剣に、なった」
「ああ」ヴィナは、舞いながら、言った。涙を、流して。「あたしは——もう、一人じゃ、ない。だから——こんな、剣が、振るえる。皆を、内包して、舞う、剣が」
四人の、魂と、ヴィナが——共に、舞った。
亡き仲間と、新しい縁が——一つに、なって。
光の、花弁が——戦場を、舞い、魔獣の、群れを——次々と、浄化していった。
五 祝祭を、守り抜く
ヴィナの、奥義を、中心に——アステリアは、反撃に、転じた。
アルクの《創生》。ガレオの、守り。ナミの、水。バルガの、城壁。ゼルダの、戦斧。そして——カトレアの、四人。
みんなで——魔獣の、群れを、退けた。
最後の、一体が——ヴィナの、花弁の、斬撃で、浄化され、消えた。
戦いが——終わった。
祝祭は——守り抜かれた。誰一人——欠けることなく。
「……守れた」ヴィナは、息を、整えた。剣を、収めて。
「ヴィナ——!」アルクが、駆け寄った。「すごい、奥義だった!」
「ああ」ヴィナは言った。「あたし——わかったよ、アルク。お前が、言った通りだった。外交で、結んだ、縁が——剣を、変えた。あたしは——皆を、内包して、舞う、剣士に、なれた」
「ヴィナ——」
「これは——あたし、一人の、力じゃ、ない」ヴィナは言った。「みんなと、結んだ、縁の、力だ。コダマ族。ミズチ族。ガラント。故郷の、みんな。——そして」
ヴィナは——カトレアの、四人を、見た。
「お前たちの——力だ」ヴィナは言った。
六 また、会える
戦いが、終わり——四人の、魂の、現界の、時間が、尽きようと、していた。
「ヴィナ」女性の一人が、言った。光に、戻りながら。「わたしたち——そろそろ、剣に、戻るよ」
「もう——時間か」ヴィナは言った。
「でも——」男の一人が、笑った。「女神様が、言ってた。これからは——時々、こうして、出てこられる、ってな。だから——今生の、別れじゃ、ない。また、会える」
「また——会える」ヴィナは、繰り返した。
「ああ」四人が、笑った。「お前が、ピンチの、ときは——また、出てくる。一緒に、戦う。お前の、奥義の、中で。——だから、安心しろ」
「お前たち——」ヴィナの、目から、涙が、こぼれた。「ありがとう。——ずっと、一緒に、いてくれて」
「礼は——いらない」四人が、言った。「わたしたちは——いつも、あなたと、一緒です。カトレアの中に。そして——あなたの、心の中に」
四人の、光が——カトレアに、戻っていった。穏やかに。
だが——もう、今生の別れではなかった。
また——会えるのだ。
「ヴィナ」女神が、近づいた。『どう? ごほうび、気に入った?』
「女神様——」ヴィナは言った。「ありがとう、ございます。あいつらに——また、会わせて、くれて。そして——時々、会えるように、して、くれて」
『ふふ』女神は、微笑んだ。『あなたが、頑張ってる、ごほうびよ。それに——あの四人も、まだ、あなたと、一緒に、いたいって。だから——叶えたの』
「……はい」ヴィナは、涙を、拭って、笑った。「あたし——もっと、頑張ります。剣士としても、ファーストレディとしても。——みんなと、結んだ、縁を、守るために」
七 祝祭、再び
魔獣を、退けた、後。
祝祭は——再び、始まった。
いや——より、賑やかに、なった。皆で、力を、合わせて、町を、守り抜いた、誇りと、共に。
「ヴィナ殿!」ゼルダが、星の雫を、片手に、来た。「見事な、奥義だった! 武の国でも——あれほどの、剣技は、見たことが、ない!」
「ありがとう、ゼルダ殿」ヴィナは言った。
「それに——」ゼルダは、笑った。「ドレスで、舞いながら、戦うとは。武と、優雅さの、両立。——お前は、最高の、剣士であり、最高の、淑女だ」
「からかうな」ヴィナは、照れた。だが——嬉しそうに。
ドラクロワも——感心していた。
「ヴィナ殿」ドラクロワは言った。「あなたは——外交の、場で、磨いた、感性を。剣に、昇華させた。これは——並の、武人には、できぬこと。あなたは
——真の、淑女にして、真の、武人だ」
「恐れ入ります」ヴィナは、淑女の礼で、言った。
アルクは——その光景を、見て、微笑んだ。
「ヴィナ」アルクは言った。「お前——また、強く、なったな。剣士としても。ファーストレディとしても」
「ああ」ヴィナは、笑った。「お前の、おかげだ。
『縁が、剣を、変える』って——教えてくれたから」
「俺は——きっかけを、言っただけだ」アルクは言った。「奥義を、開花させたのは——お前自身だ。お前が、結んできた、縁の、力だ」
「……ありがとう、アルク」ヴィナは言った。
星降る、夜空の下。
守り抜かれた、祝祭は——夜が、明けるまで、続いた。
ガラントとの、同盟。多種族の、絆。故郷との、繋がり。亡き仲間との、再会。そして——ヴィナの、新たな、奥義。
アステリアは——また一つ、大きく、なった。
縁を、結び。縁を、力に、変え。
星のように——無数の、灯を、ともしながら。
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