第百三十三話 星降る、祝祭
一 祝賀の、準備
ガラントとの、同盟成立を、祝って。
アステリアでは——盛大な、祝祭が、開かれることに、なった。
建国以来、最大の、催しだった。
「同盟の、祝賀と——建国の、祝い」アルクは言った。「二つ、まとめて、盛大に、やろう」
「腕が、鳴ります!」ネッサが、商会長として、料理人を、束ねた。「アステリア中の、ごちそうを、用意します!」
セバスチャンが——祝祭の、進行を、采配した。
「ガラントから——ドラクロワ伯爵、ゼルダ殿を、ご招待、いたします」セバスは言った。「同盟国の、要人を、迎える、初めての、正式な、祝祭。皆様の、作法の、見せどころで、ございます」
「うう——」ガドルが、うめいた。「また、フォークの、特訓か」
「ご安心を、ガドル様」セバスは、微笑んだ。「祝祭は——堅苦しい、ものでは、ございません。礼を、保ちつつ——心から、楽しむ。それが、最高の、もてなしで、ございます」
二 華やぐ、町
祝祭の、当日。
アステリアは——かつてないほど、華やいだ。
広場には、色とりどりの、飾り。水の街道の、ほとりには、ミズチ族が、灯した、水の、灯り。コダマ族が、咲かせた、花々。各種族が、それぞれの、祝いの、装いで、集った。
故郷からも——客が、来た。エニの門を、通って。ゴウダ。ドーグ。そして——タークも。
「タークさん!」ネッサが、駆け寄った。「来てくれたんですね!」
「……まあな」タークは、ぶっきらぼうに、言った。「握り飯——食わせるって、約束、だったろ」
「もちろんです! いっぱい、握りました!」
ガラントからは——ドラクロワ伯爵と、ゼルダが。
「ヴィナ殿——!」ゼルダが、ヴィナを、見て、目を、見開いた。「その、ドレス姿——見違えたぞ! 武人の、お前も、いいが——淑女の、お前も、美しいな!」
「ゼルダ殿——」ヴィナは、少し、照れた。ドレス姿で。「からかうな」
「からかって、なんかいない」ゼルダは、笑った。「本心だ」
ドラクロワも——祝祭の、見事さに、感心していた。
「セバスの、采配——見事だ」ドラクロワは言った。「華やかで、ありながら、品が、ある。アステリアは——立派な、祝祭を、催せる国に、なった」
「恐れ入ります」セバスは、礼を、した。
三 女神の、登場
祝祭が、たけなわに、なった頃。
空が——ふわりと、光った。
星の光が、降りてきて——女神が、現れた。
『お祝い——!?』女神が、目を、輝かせた。『こんなに、賑やかな、お祭り——わたしも、混ぜて!』
「女神様——!」ネッサが、喜んだ。
ガラントの、ドラクロワと、ゼルダが——女神の、突然の、登場に、驚き、慌てて、跪いた。
「め、女神——様!?」ドラクロワが、震えた。「本物の——女神様が!?」
『ふふ、そんなに、畏まらないで』女神は、笑った。『今日は——お祝いを、楽しみに、来たの。あなたたちも——一緒に、楽しみましょう』
「女神様が——直々に、祝祭に」ドラクロワは、感涙した。「ガラントの、長い、歴史でも——女神様の、ご降臨など。なんという、栄誉——」
『アステリアは——わたしの、お気に入りの、国なの』女神は、悪戯っぽく、言った。『甘いものも、美味しいし。みんな、温かいし』
『女神はん——!』アルファが、飛んできた。『甘いもん、こっちに、いっぱい、あるで!』
『行く——!』女神が、アルファと、甘味の、ところへ。
「女神様——相変わらず、ですね」アルクは、笑った。
四 ヴィナと、四人の、面影
祝祭の、片隅。
ヴィナは——カトレアを、抱えて、立っていた。ドレス姿で。
賑やかな、祝祭を、見ながら——ふと、思った。
「……あいつらにも」ヴィナは、つぶやいた。「見せて、やりたかったな。——こんなに、賑やかで、温かい、祝祭を」
カトレアに、宿る——亡き、仲間、四人。第一部で、想いを、託して、旅立った、四人。
「お前たちが、いたら——きっと、大はしゃぎ、だったろうに」ヴィナは、剣を、見つめた。「酒好きだったから。星の雫を、飲ませて、やりたかった」
その時。
女神が——ヴィナの、隣に、来た。
『ヴィナ』女神は言った。優しく。『カトレアの、四人のことを——想っているのね』
「女神様——」ヴィナは言った。「ええ。あいつらにも——この祝祭を、見せて、やりたかった、と」
『……ねえ、ヴィナ』女神は言った。『あなた、知ってる? カトレアに、宿った、四人の、魂は——まだ、完全には、消えていないの。あなたの、想いと、共に。剣の中で——生きているのよ』
「生きている——?」ヴィナが、はっと、した。
『ええ』女神は言った。『そして——わたしの、力で。少しだけ——あの子たちを、あなたの、前に、呼び出すことが、できる。ほんの、短い間。時々——だけど』
「あいつらを——呼べる!?」ヴィナの、声が、震えた。
『今日は——特別な、お祝いだもの』女神は、微笑んだ。『ごほうびに——会わせてあげる。あなたの、大切な、四人に』
五 再会
女神が——カトレアに、手を、かざした。
四つの宝石が——淡く、輝いた。
そして——ヴィナの、周りに。
四つの、光が——人の、形を、成した。
二人の、男。二人の、女。——ヴィナの、かつての、仲間。
「お前たち——!」ヴィナが、息を、呑んだ。「また
——会えるなんて」
「女神様の、おかげですね」女性の一人が、笑った。
「よう、ヴィナ」男の一人が、言った。「久しぶり、だな」「しかも——なんだ、この、ドレス姿は! ヴィナが——お姫様みたいに、なってるぞ!」
「う、うるさい!」ヴィナが、真っ赤に、なった。「事情が、あるんだ!」
「あはは!」四人が、笑った。「ヴィナが、ドレス! 想像も、つかなかった!」
「悪かったな——!」ヴィナが、言った。だが——その目には、涙が、滲んでいた。
「ヴィナ」女性の一人が、優しく、言った。「いい、仲間に、囲まれていますね。——わたしたち、ずっと、見てたよ。剣の中から。あなたが——笑ってる姿を」
「お前たち——ずっと、見ててくれたのか」ヴィナは言った。
「ああ」男の一人が、言った。「お前が——一人じゃ、なくなって。よかった。本当に——よかった」
六 束の間の、宴
ヴィナは——四人を、皆のところに連れて行った。
「アルク」ヴィナは言った。「女神様が……、こいつら——あたしの、昔の、仲間にまた会わせてくれた。カトレアに、宿った、四人……」
四人が、笑った。「ヴィナを——これからも、よろしく、頼む。こいつ、不器用だから」
「お前たち——!」ヴィナが、言った。
「特にあなた」女性の一人が、アルクを、見た。「ヴィナが、惚れてる、殿方ですね? 大事に、してあげてくださいね」
「な——!?」ヴィナが、真っ赤に、なった。「お、お前——余計なことを——!」
「あはは!」四人が、笑った。「ヴィナの、こんな顔、初めて、見た!」
ネッサが——四人に、料理を、振る舞った。
「皆さん、どうぞ! ヴィナさんの、お友達なら——あたしの、お友達です!」
「おお——うまそうだ!」酒好きの、男が、星の雫を、見て、目を、輝かせた。「これが——噂の、星の雫か! いただくぞ!」
男が、星の雫を、飲んで——感激した。
「うまい——!」男は言った。「こんな、うまい酒が、飲めるとは!」
「気に入ったか」ヴィナは、笑った。涙を、拭いて。
「ああ——!」男は言った。「ヴィナ。いい、町だ。
——ここなら、安心して、見守れる」
束の間の——宴。
亡き仲間と、新しい仲間が——一緒に、笑い合う、ひととき。
ヴィナは——その光景を、見て。
心から——幸せだ、と、思った。
その時。
北の、空が——黒く、染まった。
「——!?」アルクが、気づいた。
「アルクさん!」ガレオが、駆けてきた。「ネブロスの——魔獣です! 祭りの、灯りに、引かれたのか
——群れで、こっちに!」
祝祭の、空気が——一変した。
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