第百三十二話 ガラント王の、返事
一 ガラント王の、返事
ドラクロワが、ガラントへ、帰って——数日後。
正式な、使者が——ガラント王、ザドルグの、親書を、携えて、やってきた。
セバスが、恭しく、それを、受け取り——アルクに、手渡した。
「アルク様」セバスは言った。「ガラント王、ザドルグ陛下からの、正式な、親書で、ございます」
アルクが——親書を、開いた。
『我、ガラント王、ザドルグ。——外務卿ドラクロワ、ならびに、第三軍団長ゼルダの、進言を、受け。アステリアを、真の、品格と、力を、併せ持つ、得難き、隣人と、認む。——ここに、ガラント王国と、アステリアの、同盟を、宣言す。両国、共に、魔の獣の、脅威に、立ち向かい、末永き、友好を、築かんことを』
「同盟が——成立した」アルクは言った。
「やった——!」ネッサが、喜んだ。「アステリア、初めての、同盟国です!」
「大国、ガラントとの、同盟」カインが、感慨深く、言った。「これは——大きい。アステリアは——大陸の、国々から、一つの、国として、認められた、ということです」
「ドラクロワ伯爵と、ゼルダ殿の——おかげだな」アルクは言った。
「そして——皆様の、真心の、おかげで、ございます」セバスが、微笑んだ。
二 種族の、人材
同盟が、成立し——アステリアは、新たな、段階に、入った。
国として、認められた、以上——防衛も、運営も、より、しっかりと、整える、必要が、あった。
その中で——頭角を、現す者が、現れた。
まず——コダマ族の、若者、リーフ。
「アルクさん!」リーフは言った。緑の角を、持つ、快活な、若者。「俺、畑のこと、もっと、良くしたいんです! コダマ族の、知恵と、リィナさんの、調査を、合わせて——アステリア中の、土地を、もっと、豊かに、できるはずです!」
「リーフ——やる気だな」アルクは、笑った。
「リーフは——コダマ族の、中でも、土を、育てる才が、ずば抜けています」コダマ族の年長者が、言った。「若いが——農の、まとめ役を、任せても、よいかと」
「なら——頼む」アルクは言った。「アステリアの、農業開発を、リーフに、任せる」
「やった——!」リーフは、喜んだ。「任せてください! みんなが、お腹いっぱいに、なる、町に、します!」
そして——ミズチ族の、戦士、ナミ。
水を、操る、技に、長けた、凛とした、女性だった。
「アルク殿」ナミは言った。「わたしは——水を、操れます。防衛隊で、働かせて、いただけませんか。水の、壁で、敵を、防ぎ、味方を、守る。——お役に、立てるはずです」
「ナミは——ミズチ族、随一の、使い手」ミズチ族の年長者が、言った。
「ガレオ」アルクは、防衛隊長を、見た。「どうだ?」
「ぜひ!」ガレオは言った。「水を、操る、戦士は——心強い。ナミさん、よろしく、頼む」
「こちらこそ」ナミは、凛と、言った。「アステリアを——共に、守りましょう」
コダマ族の、リーフが——農業開発を。
ミズチ族の、ナミが——防衛を。
多種族の、人材が——それぞれの、力で、アステリアを、支え始めた。
三 ヴィナの、迷い
その夜。
ヴィナが——一人、訓練場で、剣を、振っていた。
だが——その剣には、どこか、迷いが、あった。
「ヴィナ」アルクが、来た。「どうした。——元気が、ないな」
「アルク」ヴィナは言った。剣を、止めて。「……あたしは、最近、外交の、役ばかりだ」
「ファーストレディ、だな」アルクは言った。
「ああ」ヴィナは言った。「ドレスを、着て。作法を、覚えて。客を、もてなして。——それは、それで、大事な、役目だと、わかってる。アステリアの、ために、なってるとも、思う。でも——」
「でも?」
「あたしは——剣士だ」ヴィナは言った。「最近、剣を、振る機会が、減った。このまま——剣が、鈍るんじゃないか、って。ファーストレディの、役に、慣れるほど——剣士としての、自分が、薄れていくようで」
「ヴィナ……」
「リーフや、ナミは——自分の、力で、町を、支え始めた」ヴィナは言った。「ガレオも、防衛隊長として。みんな——前に、進んでる。なのに、あたしは
——外交と、剣の、どっちつかずで。——自分が、何者なのか、わからなくなる、ときが、ある」
ヴィナの、声には——珍しく、弱さが、滲んでいた。
「ヴィナ」アルクは言った。「お前は——剣士でも、ファーストレディでも、ある。どっちかを、選ぶ必要は、ない」
「でも——両方は、中途半端に、ならないか」ヴィナは言った。
「ならない」アルクは言った。「むしろ——両方やってるからこそ、見えてくる、ものが、あるはずだ。お前は、今、外交で——たくさんの人と、縁を、結んでる。各種族の、各国の、人々と。その、経験は——きっと、剣士としての、お前も、変える。——どんなふうに、かは、わからないけど。俺は、そう思う」
「縁が——剣を、変える?」ヴィナは、つぶやいた。
「ああ」アルクは言った。「お前の、剣は——昔は、一人で、戦う剣だった。今は——みんなと、繋がる剣に、なった。なら——これからは、もっと、多くの縁を、内包する剣に、なるかもしれない。外交で、結んだ、縁の分だけ」
「……そうか」ヴィナは、少し、考え込んだ。「縁を、結ぶほど——剣も、変わる」
「焦るな」アルクは言った。「お前は——お前の、ペースで、進めばいい。剣士でも、ファーストレディでも。——両方、お前だ」
「……ありがとう、アルク」ヴィナは言った。少し、笑って。「お前は——たまに、本当に、いいことを、言う」
「たまに、な」アルクは、苦笑した。
ヴィナは——剣を、見つめた。
外交で、結んだ、無数の、縁。それが——いつか、自分の、剣を、どう変えるのか。
まだ——その答えは、見えなかった。
だが——何かが、芽生え始めているのを。ヴィナは、感じていた。
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