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底辺から始める、《与える》だけの無双伝 ~えぇ、与えていただけですよ?でも実は……知らないうちに守られていました!!♪!!?~  作者: わっぱるぅ
第二章

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第百三十話 気難しき、客人

一 使者、到着

 ガラントから——正式な、使者が、来る、知らせが、届いた。

 セバスチャンの、采配で——アステリアは、迎える、準備を、整えていた。


 アルクが、《創生》で、創った——格式ある、迎賓の、間。セバスの、指示による、装飾。ネッサと、商会の、料理人たちが、用意した、供応の、料理。星の雫は、皇帝直伝の、温めた、飲み方で。

「準備は——万端で、ございます」セバスは言った。優雅に、礼を、して。「あとは——皆様の、心構え、次第」


 そして——使者が、到着した。


 ガラントの、紋章を、掲げた、馬車。供を、連れた、一人の、貴族が——降りてきた。

 白髪。鋭い、目つき。皺の刻まれた、顔には

——長年の、宮廷経験が、滲んでいた。背筋は、まっすぐで、一分の、隙も、ない、佇まい。


「私は——ガラント王国、外務卿、ドラクロワ伯爵」その老貴族は言った。冷たく、よく通る、声。「ガラント王、ザドルグ陛下の、名代として、参った。

——アステリアの、長は」


「俺だ」アルクが、進み出た。セバスに、教わった通り、優雅に、礼を、して。「アルク。アステリアの、まとめ役だ。——遠路、ようこそ、いらした、ドラクロワ伯爵」


 ドラクロワが——アルクを、じろり、と、見た。値踏みするように。

「……ほう」ドラクロワは言った。「礼は——一応、心得て、いるようだな。田舎の、成り上がりと、聞いていたが」

 その、言葉に——棘が、あった。


二 試される

「ドラクロワ伯爵」セバスが——前に、出た。完璧な、所作で。「お疲れの、ところ、恐れ入ります。まずは——迎賓の、間へ。お茶を、ご用意して、おります」


「ほう」ドラクロワは——セバスを、見て、少し、目を、見開いた。「お前——なかなか、できる、執事だな。その所作——どこで、学んだ」


「恐れ入ります」セバスは、礼を、した。「至らぬ、点も、ございましょうが——どうぞ、ご寛恕を」


 ドラクロワは——迎賓の間へ、通された。

 彼は——一つ一つ、アステリアの、もてなしを、確かめるように、見ていた。席次。茶の、出し方。挨拶の、口上。


 そして——その目は、厳しかった。


「ふむ」ドラクロワは言った。茶を、一口、飲んで。「茶の、温度は——悪くない。だが、席次は——本来、もう少し、格式を、重んじるべきだ。供応の、間合いも——やや、性急だな」


 アルクたちが——緊張した。セバスの、教えた通りに、したつもりだったが。


「ドラクロワ伯爵」セバスが、静かに、言った。「ご指摘——痛み入ります。されど——アステリアは、若き国。古き、宮廷の、格式には、及ばぬ点も、ございましょう。なれど——心は、誰よりも、誠実に、お迎えして、おります」


「心、か」ドラクロワは——鼻で、笑った。「心など——目に、見えぬ。私が、見るのは——形だ。礼節という、形。それが——国の、品格を、表す。アステリアに、その品格が、あるか。——それを、見極めに、来た」


三 ヴィナの、初舞台

 その時。


 迎賓の間に——ヴィナが、入ってきた。

 いつもの、剣士の、装いでは、なかった。


 セバスと、ネッサが、見立てた——気品ある、ドレス。銀の髪を、結い上げ、凛とした、立ち居振る舞い。剣を、帯びていない、彼女は——まるで、どこかの、姫君のようだった。


「お初に、お目にかかります、ドラクロワ伯爵」ヴィナは言った。セバスに、特訓された、淑女の、礼で。少し、硬いが——確かに、優雅に。「アステリアにて、賓客の、おもてなしを、務めます——ヴィナ、と、申します。長旅の、お疲れ、いかばかりかと。心より——歓迎、申し上げますわ」


 ドラクロワが——ヴィナを、見た。


「……ほう」ドラクロワは言った。「これは——美しい、ご婦人だ。その、礼も——まずまず。アステリアにも、淑女が、いるとは」


「恐れ入りますわ」ヴィナは言った。内心、冷や汗を、かきながら——でも、堂々と。

「だが——」ドラクロワは、目を、細めた。「その、手」


「手——?」ヴィナが、はっと、した。


「ドレスを、まとっても——その手の、剣だこは、隠せぬな」ドラクロワは言った。「ご婦人——あなたは、剣士か。淑女の、ふりを、しても——本性は、武人だ。取り繕っても——無駄だ」


 ヴィナが——言葉に、詰まった。

 場に——緊張が、走った。


四 取り繕わない

 だが——ヴィナは。

 ふっと——肩の力を、抜いた。そして、まっすぐ、ドラクロワを、見た。


「ええ、その通りですわ、ドラクロワ伯爵」ヴィナは言った。淑女の、口調を、保ちながら——でも、自分の言葉で。「あたし——いえ、わたくしは、剣士です。この手の、剣だこは——町を、仲間を、守ってきた、証。隠す、つもりは、ありませんわ」


「……ほう」ドラクロワが、眉を、上げた。


「取り繕っても、無駄、と——おっしゃいましたわね」ヴィナは言った。「その通りです。だから——取り繕いません。わたくしは、剣士で、ありながら、今日は、この国の、賓客を、もてなす役を、担っています。慣れない、作法に——必死です。でも」


 ヴィナが——微笑んだ。剣士の、誇りを、込めて。


「あなたを、心から、歓迎したい、という気持ちは

——本物です」ヴィナは言った。「形が、未熟なのは——許してください。でも、その、未熟な作法の、一つ一つに——わたくしたちの、精一杯の、敬意が、こもっています。それだけは——本当です」


 ドラクロワが——しばらく、ヴィナを、見つめた。


「……正直な、ご婦人だ」ドラクロワは言った。少し、意外そうに。「取り繕うと、思いきや——逆に、剣士だと、認めた。そして——未熟さも、認めた。

——面白い」


五 ドラクロワの、流儀

「ドラクロワ伯爵」アルクが、言った。「正直に、言う。俺たちは——宮廷の、作法は、不慣れだ。あんたから、見れば——至らない点ばかりだろう。でも——あんたを、敬う気持ちは、本物だ。同盟を、結びたい、という願いも」


「アルク殿」ドラクロワは言った。「あなた方の、

『力』は——ゼルダ軍団長から、聞いている。魔の獣を、退ける、力。それは——認めよう。だが——私が、見極めるのは、力では、ない。品格だ」


「品格——」


「いいか」ドラクロワは言った。「国と、国の、付き合いは——長い。一時の、力では——測れぬ。大事なのは——その国が、礼節を、重んじ、信義を、守れるか。約束を、違えぬか。——それを、測るのが、作法だ。作法を、軽んじる国は——いずれ、信義も、軽んじる。だから、私は——厳しく、見る」


「なるほど」アルクは言った。「作法は——信義の、証、か」


「左様」ドラクロワは言った。「私は——五十年、外務卿を、務めてきた。多くの国を、見てきた。力に、おごり、礼節を、失い——滅んだ国を、いくつも。だから——アステリアにも、問う。お前たちは

——力に、おごらず、礼節を、保てるか」

 その、問いには——重みが、あった。長年、外交の、最前線を、生きてきた、老貴族の。


六 もてなしの、夜

 その夜。

 供応の、宴が、開かれた。

 セバスの、完璧な、采配。ネッサの、心のこもった、料理。皇帝直伝の、温めた、星の雫。アルクたちの、特訓した、作法。

 ドラクロワは——一つ一つを、厳しい目で、見ながらも。


 星の雫を、一口、飲んで——わずかに、目を、見開いた。

「……この酒は」ドラクロワは言った。「温めて、香りを、立たせている。誰が、この、飲み方を?」


「ある、協力者から、教わった、飲み方だ」アルクは言った。「酒に、詳しい——古い、知り合いでな」

「ほう」ドラクロワは言った。「なかなか、酒の、わかる、御仁だ。——どこの、国の、御方かな?」


「それが——」アルクは、少し、考えて、言った。

「この世界の、人じゃ、ないんだ」


「この世界の——人ではない?」ドラクロワが、眉を、ひそめた。「異邦人、ということか?」

「いや」アルクは言った。「もっと——遠い。実は、俺は——この世界の、生まれじゃ、ない。別の、世界から、来たんだ」

「別の——世界?」ドラクロワが、目を、見開いた。「何を——馬鹿な。世界が、二つも、あると?」


七 二つの世界


「ドラクロワ伯爵」セバスが、静かに、進み出た。

「アルク様の、お言葉は——真実で、ございます。わたくしも——元は、別の世界の、者。アルク様の、お力で、二つの世界が、繋がったので、ございます」


「セバス、お前も——別の世界の?」ドラクロワが、驚いた。


「ええ」アルクは言った。「俺の、故郷は——ヴァルナ・クロスという、世界だ。そこは——長く、澱みに、苦しめられていた。その、澱みを、操る、巨大な国が——ガルディア帝国」


「ガルディア——帝国」ドラクロワが、その名を、初めて、聞いた。


「二百年、世界を、脅かした、帝国だ」アルクは言った。「その、皇帝——ガルゼスとは。俺は、長く、戦った。でも——最後には、和解した。今は——友だ。一緒に、世界を、良くしようと、している」


「皇帝と——和解」ドラクロワが、つぶやいた。「あなたは——別の世界で、巨大な帝国の、君主と、戦い、和解した、と?」

「ああ」アルクは言った。「星の雫の、温め方を、教えてくれたのは——そのガルゼスだ。酒に、目の、ない、男でな」


 ドラクロワは——しばらく、言葉を、失っていた。


「……にわかには、信じ、難い」ドラクロワは言った。「二つの世界。別の世界の、帝国。その皇帝との、和解。——だが」


 ドラクロワが——アルクを、見た。その、まっすぐな、目を。


「あなたの、目は——嘘を、ついている、目では、ない」ドラクロワは言った。「五十年、人を、見てきた、私の、目は——欺けぬ。あなたは——真実を、語っている」


八 縁の、守り手

「証拠を——お見せ、しましょう」セバスが、言った。「エニ様」

『……私が、二つの世界を、繋ぐ、門だ』エニが、姿を、現した。中性的で、神秘的な、その姿に——ドラクロワが、息を、呑んだ。


「これは——精霊? いや——」ドラクロワが、言った。


『縁の、守り手——エニ』エニは言った。『私が、縁の糸で、二つの世界を、繋いでいる。ドラクロワ伯爵。お前が、今、立っているこの、新しい世界と。アルクの、故郷ヴァルナ・クロス。——その、二つを』


「二つの世界が——真に、存在し。繋がっている、と」ドラクロワは、呆然と、言った。


「ああ」アルクは言った。「だから——ガルディア帝国も、ガルゼスも。この世界の、人は、誰も、知らない。当然だ。——別の、世界の、話だからな」

「左様で——あったか」ドラクロワは、納得した。

「道理で——私の、五十年の、知識にも、なかった、はずだ。ガルディアなど、という、大国は」


「驚かせて——悪かったな」アルクは言った。


「いや——」ドラクロワは言った。「むしろ——光栄だ。二つの世界を、繋ぐ、御方と。こうして、語らえる、とは。——外務卿、冥利に、尽きる」


 ドラクロワが——アルクを、じっと、見た。

 その目に——初めて、厳しさ以外の、何かが——宿った。


「アルク殿」ドラクロワは言った。「明日——もう一日、滞在させて、もらおう。アステリアの、真の姿を——もう少し、見極めたい」

「もちろんだ」アルクは言った。「ゆっくり、見ていってくれ」

 外交の、初日は——緊張の中、過ぎていった。

 厳格な、老貴族の、心は——まだ、開かれていなかった。


 だが——明日。


 アステリアの、真の姿が——試されることに、なる。

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