↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛フラグ管理局折衝課 〜成立確率11%の彼女を折りに行くたび、なぜか俺との縁が育っていく〜  作者: よるの 余白
「折れなかった縁」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
146/151

第百四十六話「鶴田からの報告」

 鶴田から連絡が来た。研究の報告だった。喫茶店で会った。鶴田はいつもの心拍計をつけていた。


   ◇


「森本さんに報告したいことが、あります。川瀬さんへの接触回数の、最終集計です。折衝課がなくなったので、記録を整理していて。森本さんの川瀬さんへの接触回数を集計しました」


 鶴田は端末を見た。


「業務上の接触、49回。業務じゃない接触——記録外ですが、私が数えていた分、78回。合計、127回です」


「待ってください。業務として通ったのは、49回じゃありません。もっと長く通いました。案件が凍結されるまで、ずっと」


「はい。実際の訪問は、もっとあります。ただ——システムの業務記録が、49回で止まっていました。50回目から、PAIRはあなたの訪問を、業務上の接触として記録していません。あなたが業務のつもりで通っていた間も、です」


「50回目、から」


「理由は、記録にありません。ただ、今なら推測できます。PAIRはあの頃にはもう、あなたの訪問を業務だと判断していなかった。だから以後は、全部記録外。私が数えていた分が、78回です」


「50回目が、いつか覚えていますか」


「先ほど調べました。業務記録が49回で止まった、その翌回です。外れ値カップルが恋管に来た直後の訪問でした」


 外れ値カップルが恋管に来た日。18%で折られかけ、それでも続いて、子供まで生まれた二人を見た日。あの日のあと、PAIRは俺の訪問を業務だと判断しなくなった。俺自身が業務だと思い込んでいた頃、PAIRはもう、そうではないと知っていた。


   ◇


 俺より先に、PAIRが知っていた。あれが業務ではなくなっていたことを。


 127回。127回、川瀬さんに会いに行った。


「127回も、ですか」


「はい。ただ——PAIRに記録された接触は、0回です。業務上の接触は算出対象外。業務じゃない接触は、そもそも記録されない。だからPAIRの公式記録には——森本さんと川瀬さんの接触は、0回です」


「127回会ったのに、記録は0回」


「はい」


   ◇


「でも」と鶴田が続けた。「PAIRはスコアを出しました。川瀬さんの100%を。記録が0回なのに、100%を出した。記録外の127回を——PAIRは、見ていた。公式記録には残さない。でも、見ていた。そして100%を出した」


 鶴田は少し間を置いた。


「私は127回数えました。PAIRも127回見ていました。公式記録は0回。でも——森本さんは127回、会いに行きました。それが、事実です」


   ◇


 127回会いに行った。記録には残らない。でも、事実は消えない。鶴田が数えた。PAIRが見ていた。


「鶴田さん。あなたが127回数えてくれて——よかったです」


「なぜ」


「記録に残らないことを、誰かが数えていてくれた。それは——救いです」


 鶴田は心拍計を見た。


「……心拍が、上がりました。これはたぶん——嬉しいです」


 鶴田は端末をしまいかけて、手を止めた。


「森本さん。この前話した件です。PAIRが探している、他の100%の」


「見つかったんですか」


「……一つ、記録の痕跡を見つけました。まだ確かめていません。確かめたら、お話しします。ただ——森本さんと川瀬さんは、やはり、最初の一つでした。最後では、ないようです」


 その先は、言わなかった。確かめていないことは、言わない。ただ「最後ではない」とだけ、鶴田は言い切った。確かめる前に言い切るのは、鶴田にしては、珍しいことだった。


   ◇


 喫茶店を出て、鶴田と別れた。


 PAIRの公式記録は、0回。でも俺は127回、あの部屋のドアを開けた。記録に残らない127回を、鶴田が数え、PAIRが見ていた。データに残らないものは、なかったことになる——折衝課ではそう教わった。でも、ならなかった。残らない127回が、川瀬さんの100%を作った。記録の外にこそ、本物があった。



次話「いつもの部屋で」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。