009話. 従業員募集
ルーベンが村人たちを集めて祭りを開く実質的な理由は、一緒に働く人間を選ぶためだった。
現代でも事業において労働力は重要だったが、この時代はその重要性がはるかに高かった。
ベアトリスから受け取った30エスクード。
物価が大きく異なるため、現代の貨幣と直感的に比較することはできなかった。
たとえば30エスクードでは、この時代において前世の3千円程度の香水を一つ買うことすらできなかった。
しかし、ビーゴの港町で一年間、店と家を借り、人を何人も雇えるだけの金ではあった。
本格的に事業を始めるビーゴの港町へ行き、悪くない条件を提示すれば、人々が押し寄せるはずだった。
『問題は、そうして雇った人間がまともな奴かどうか確かめる方法がないってことなんだよな。』
過去に一時代を築いた帝国でさえ、愚かな皇帝や奸臣一人のせいで滅びることがあった。
前世の有名企業も、一人の人間のせいで完全に潰れることが多かった。
そのため、ひとまず創業メンバーは村から選ぶつもりだった。
『何よりもまず人柄だ。能力は俺が伸ばしてやれるが、人柄を変えるのは簡単じゃない。』
互いに顔見知りだったため、村人なら最低限の人柄は確認できた。
肉屋に到着したルーベンは考えるのをやめた。
「おじさん、こんにちは。」
ルーベンを見つけた店主は、店から飛び出してきながら言った。
「これは誰かと思えば! 大アルバ家の後援を受けるルーベンじゃないか? おめでとう!」
「もう話を聞いたんですか?」
「今、村中がお祭り騒ぎだよ。」
300人にも満たない小さな村だったため、噂が広まるのも早いようだった。
「そういうことなら、おじさん、今日は店じまいしましょう。」
「何だって? どうして店を閉めるんだ?」
肉屋の店主は不思議そうな表情でルーベンを見た。
それもそのはず、まだ露店台には肉が山ほど並べられていたからだ。
「今、露店台にあるものは僕が全部買います。」
「これを全部? 全部合わせたら8レアルはするぞ?」
ルーベンは金の入った袋を叩きながら言った。
「もう、何を言ってるんですか? 僕、アルバ家から後援を受けたんですよ?」
「そ、そうではあるが、これを全部どうやって食べるつもりだ?」
まだ自分がパーティーを開くという話は聞いていないようだった。
「まだ聞いていなかったみたいですね。あとで日が沈む頃、露店台にある肉を全部持って聖堂の前まで来てください。」
「聖堂の前にどうして?」
「皆さんがこうして祝ってくださっているんですから、僕も一度くらいご馳走しないと。僕も伝えて回っていますが、念のため、おじさんも周りの人たちに話しておいてください。」
ルーベンが銀貨を8枚渡すと、店主はルーベンの手をぎゅっと握りながら言った。
「いやあ、本当におめでとう。村の慶事だな!」
小さな村だからか、自分のことのように喜ぶ肉屋の店主だった。
『あるいは、手にしっかり握っているあの銀貨のせいかもしれないけどな。』
金も名分も両方あるため、まさにとんとん拍子だった。
***
その日の夕方、聖堂前の空き地には村人が全員集まっていた。
焚き火ごとに三々五々集まり、ルーベンの話をしていた。
「急にどうして全員集まれと言うんだ? 今日は何かの日か?」
「ルーベンがアルバ家の後援を受けることになったから、祝いの祈りとパーティーを開くそうだ。」
山の中で働いていて、まだ話を聞いていなかった者が驚いて尋ねた。
「何だって? アルバ家? 俺の知っているあのアルバ家か?」
「君の知っているあのアルバ家で合っているよ。なんとベアトリスお嬢様が直接契約されたそうだ。」
「何てことだ……。うちの村にとんでもない慶事が起きたな。こうしてはいられん。主役のルーベンはどこだ?」
ルーベンを探してきょろきょろする男に、別の男が言った。
「ルーベンは今、司祭様と話していて忙しい。君の家族はあちらにいるから、子どもたちのところへ行ってやれ。」
「それにしても、何をしたらそんなに立派なお方から後援まで受けられるんだ? ルーベンは大学に通っているわけでもないだろう?」
尋ねられた男は、自分が飲んでいたお茶を揺らして見せながら答えた。
「これだ。」
「それはルーベンが売っているハーブティーだろう? それがどうした?」
「ベアトリスお嬢様が、ルーベンの作ったハーブティーをとても気に入られたそうだ。」
「俺たちがたった1マラベディ払って飲んでいる、このハーブティーを?」
「俺たちはものすごく高級なハーブティーを飲んでいたということさ。」
「ほう、どうりで美味いと思った。」
その時、別の男が割って入り、からかうように言った。
「君はビールの方が美味いと言っていなかったか?」
「な、何を言う! ル、ルーベンのハーブティーがどれだけ美味しいと思っているんだ。」
「私も、君がハーブティーは味が薄いと言っていたのを聞いた気がするが?」
「き、君まで何を言うんだ? 私がいつそんなことを言った?」
困り果てた男を救ったのは、助祭の声だった。
「司祭様がお出ましになります!」
全員がしていたことをやめ、両手を組み、頭を下げた。
周囲が静かになると、司祭が言った。
「ルーベンがアルバ家から3年間の定期後援を受けたという話は、皆さんもすでに聞いていることでしょう。このすべての栄光をお許しくださった主に感謝いたしましょう。アーメン。」
司祭の言葉に、村人たちは全員で唱えた。
「アーメン。」
ルーベンの立場からしても、今回の契約の功績を主に帰すことに異論はなかった。
『教会が繋いでくれた縁なんだから、間違った話でもないな。司祭様、これからも今みたいにお願いしますよ。そうすれば俺がアーメンを百回でも唱えてあげますから。』
素朴な中年の司祭が愛らしく見え始めたルーベンだった。
しかし、そのような贔屓目も、数十分続く説教と祈りの無差別攻撃の前では、十字架の前で悪魔の皮が剥がれるかのように消え去ってしまった。
『あの、司祭様。俺、腹が減ってるんですけど、そろそろ全部』
人々の間に座っている時は、適当に姿勢だけ整えておけばよかった。
しかし今は司祭と共に全員の注目を浴びていたため、全力で演技した。
そうして長い長い説教と祈りが終わると、全員が敬虔に言った。
「アーメン。」
すると、助祭が塩と水を持って司祭へ近づいた。
「主の創造物であるこの塩を祝福してください。父と子と聖霊の御名によって祈ります。」
次は水だった。
「主の創造物であるこの水を祝福してください。あなたの聖霊がこの水を聖なるものとし、すべての罪と悪から…………。」
自分のために行われる聖水儀式(Asperges)だったため、ありがたい気持ちはあった。
それでも、ほかの不便さにはだいたい慣れてきたが、宗教行事の時間になるたび、世界から切り離されたような感覚に陥るルーベンだった。
皆が祈る中、ぼんやり立っていなければならないこの気まずさ。
しかし、できる限り前向きに考えることにした。
『耐える者には福がある。そうだ、耐えよう。また分からないじゃないか? 司祭がまた、とびきりの金づるを連れてきてくれるかもしれない。』
ついに祝福の祈りを終えた司祭は、聖水を振りかける道具に水を含ませ、ルーベンへ振りかけながら再び祈った。
「主よ、この聖水を通してルーベンを清め、すべての罪と悪からお守りください。アーメン。」
それと同時に、村人たち全員が言った。
「アーメン。」
長く退屈だった説教と聖水儀式が終わり、ようやくパーティーが始まった。
「ルーベン、本当におめでとう!」
「おめでとう。それから今日はご馳走になるよ!」
「あとで知らないふりをするんじゃないぞ!」
主役であるルーベンは空き地を歩き回り、人々から祝福を受けた。
「どうりでルーベンのハーブティーを飲んだ後はよく眠れると思った。」
「私は時々体がだるかったんだが、お前のハーブティーを飲んでからはすっかり消えたんだ。確かに効能はすごいよ。」
「効能だけじゃない。味だってどれほど美味しいことか。」
「はは、ありがとうございます。」
すると、一人の女性がルーベンに尋ねた。
「ところで、あなたのハーブティーはこれからも飲めるの?」
「もちろんです。僕たちの村では、これからもずっと一杯1マラベディで販売します。」
「本当? お嬢様と後援契約を結んだのに、それでも大丈夫なの?」
後援についてよく知らない平民たちは、ルーベンがアルバ家にだけハーブを供給しなければならないと思っていた。
しかし、この時代には独占契約という概念はほとんどないに等しかった。
一つの商店が、戦争中の両国に同時に武器を売っていた時代だったからだ。
「もちろんです。ベアトリスお嬢様が求めた一つのメニューを除けば、すべて販売できます。」
「一つのメニュー?」
「詳しいことはお話しできませんが、これまで販売していたメニューはそのまま販売します。」
「ああ、そうなのね。それでも、あなたのお茶を安く飲み続けられるなら良かったわ。」
そうして村人一人一人に挨拶をしているうちに、だいたい食事が終わった。
腹を満たした人々は、ワインとハーブティーを飲みながら歓談を始めた。
『ここからが本番だ。』
ルーベンは人々の前に立ち、声を上げた。
「皆さんに、少しお話ししたいことがあります!」
全員が歓談をやめ、ルーベンに注目したため、周囲が静かになった。
そのおかげで叫ばずとも、少し声を張るだけで全員に聞こえる状況になった。
「僕はこれから、ハーブティーで商売をしようと思っています。そこで、一緒に働いてくれる仲間を探しています。」
アルバ家の後援を受ける前であれば、皆に笑われていただろうが、今は状況が違った。
「おお! うちの村から商人が出るのか?」
「なんといってもアルバ家の後援を受けているんだ。大商人になるかもしれないぞ。」
「やはり血は争えないな!」
その時、一人の青年がルーベンに尋ねた。
「具体的には、どんな仕事をするんだ?」
「遅くとも9月末には、ビーゴの港町にティーハウスを開く予定です。」
ビーゴの港町という言葉に、若者たちが興味を示し始めた。
『時代は違っても、若者が大都市へ行きたがる気持ちは同じなんだな。』
若者たちは互いに話し合った後、ルーベンに尋ねた。
「それなら、ビーゴの港町で暮らすのか?」
「ティーハウスを運営するチームはそうなります。」
「ほかのチームもあるのか?」
「ハーブを栽培するチームは、僕たちの村で働くことになります。もちろん、事業がどうなるかによって変動はありますが。」
いつかはビーゴより大きな都市にもティーハウスを出すつもりだった。
その時になれば、従業員たちを評価し、配置するつもりだった。
「給料はどうなる?」
「給料は毎月170マラベディです。港町で暮らす人たちの住居と食費は僕が負担します。そして時間が経ち、腕が上がれば、さらに多く支払う予定です。」
170マラベディは、銀貨であるレアルに換算すると5レアルだった。
エレナが受け取っている金に比べればはるかに少なかったが、一般の平民基準では悪くない条件だった。
「応募はどうすればいい?」
「残りの時間はお祭りを楽しんでください。興味のある方は僕のところへ来てくだされば大丈夫です。」
宣伝を終えたルーベンは席へ戻り、ようやく食事を始めようとした。
しかし。
「おお、ルーベン! さっき話していたあの事業のことだが。」
「兄ちゃん、ひょっとして年齢制限もあるの?」
「私! 私! 私が一番最初に来たよ!」
思ったより多くの人々が訪ねてきたため、食事をするのも簡単ではなかった。
***
パーティーを終えて家に戻ると、エレナが心配そうな表情でルーベンに尋ねた。
「9月末では早すぎないかしら? 家で冬を過ごして、春になってから行くのはどう?」
「それはさっき食事をしながら話したでしょう。その時では遅すぎます。」
一刻すら惜しいルーベンだった。
「分かったわ。本当にあなたのお父さんとそっくりね。」
「褒め言葉ですよね?」
息子のとぼけた返事に、エレナは笑ってしまった。
「ええ。褒め言葉よ。あなたのお父さんに似たのだから、うちのルーベンもきっと上手くやれるわ。その代わり、いつでも健康が第一だということを忘れてはいけないわよ。」
アルバ家の後援まで取りつけてきたルーベンだった。
誰に似たのか、本当に聡明で才能にあふれた子どもだ。
しかし、病床から起き上がってまだそれほど経っていない息子だったため、健康のことが気にかかった。
「僕もそれが心配なので、少し準備をしようと思っています。そのためには母さんの助けが必要です。」
「どんな助け?」
「アンドリューおじさんを紹介してください。」
アンドリューは父の親友であり、小さな商団を運営している人物だった。
ルーベンの記憶の中から、かろうじて見つけ出した。
それなりに貿易もしているため、ルーベンが必要としている品、いわゆるイギリス産の瀝青炭とアランビック蒸留器、柳の樹皮を手に入れるには、この人物が適任だった。
しかし、このような品々はいわゆる『錬金術師』の代名詞だった。
むやみにこうした怪しい機材を買い集めれば、エレナに問い詰められることは明らかだった。
そのため、少し遠回しに言う必要があった。
「アンドリューさんをどうして?」
「病気を予防するための品を少し購入しようと思っています。」
「よく考えたわね。母さんが明日すぐ手紙を書くわ。遅くとも8月中には来てくださるはずよ。」
「ありがとうございます。それくらいなら十分だと思います。」
「それはそうと、従業員はどうするつもり? 応募者が思ったより多かったでしょう。」
すでに肉体の記憶を呼び起こし、人々の情報を把握していたルーベンだった。
「ひとまず、最初に選ぶ7人は決めてあります。まず母さんです。」
「私?」
エレナは予想していなかった答えに戸惑いながら尋ねた。
「はい。従業員たちの昼食だけ作ってください。食材も僕が買いますし、給料もきちんとお支払いします。」
「ええ、ええ。うちの息子が事業をするのだから、当然母さんが手伝わないとね。」
エレナは快く頷いた。
ルーベンがこれほど仕事を急ぐのには理由があった。
『余裕を見て9月末、遅くとも10月3日までには開店しなければならない。』
1568年10月3日。
スペイン国王フェリペ2世の三番目の妻、エリザベート・ド・ヴァロワが亡くなった日だった。
その前に開店し、人々にハーブティーの存在を知らせなければならなかった。
彼女の死は、ルーベンの『ティーハウス事業』にとって非常に大きな助けになるからだ。
『申し訳ありません、王妃様。人の命で商売をするようで少し気が引けます。それでも、あなたが愛したスペインのためのことですから、どうか大目に見てください。』




