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015話. ガラスのコップ

店の契約まで約束した後、聖堂へ戻ったが、ラエフと会う約束の時間までは余裕があった。


ただじっとしているのも気まずかったため、適当に祈るふりをして時間を潰した。


ゴーン―。


昼のミサを告げる鐘の音に合わせて待ち合わせ場所へ向かうと、ラエフが先に来て待っていた。


「おお、ルーベン。用事はうまくいったか?」


「はい。どちらも気に入った建物を契約することにしました。」


「それはよかった。それじゃあ、店で使う品を買いに行くか? どこから行こう?」


「ガラス工房からです。」


「ガラス工房? どうしてだ?」


「ガラスのコップを買いたくて。」


この時代、ガラスは非常に高価な品だった。


平民が主に使う木製のコップや陶器のコップと比べれば、少なくとも五倍、高ければ数十倍以上もした。


「そんな高価なガラスのコップを何に使うんだ?」


「もちろん、お茶を注ぐ時に使います。」


「木のコップはともかく……高級なコップなら、陶器で十分じゃないか?」


『何も分かっていないな。』


この時代の陶器は土色だったため、ハーブティーを注いでも、その色の美しさを表現できなかった。


もちろん白い磁器も存在したが、東方から来た品だったため、ガラスのコップとは比べものにならないほど高価だった。


当然、この時代には450度以上に耐える現代基準の耐熱ガラスは存在しなかったが、水は沸騰しても100度だった。


急激な温度差にさえ気をつければ、問題なく使うことができた。


「女性客の心をつかむには、これくらいの投資は必要ですよ。」


時代は違っても、人の心はだいたい同じだった。


どれほど味に自信があっても、見た目で訴えかけられなければ関心を引くことはできなかった。


ガラスのコップは、目でも味を感じる女性客のための投資だった。


「女性客だけを狙っても金にはならないだろう……男性客を呼び込むには、価格が最優先だ。」


『このおじさん、既婚者だから独身時代の気持ちを忘れたのか?』


18世紀半ばまで、イングランド全土には数多くのコーヒーハウスが存在した。


しかし18世紀後半になると、その地位を紅茶ハウスが取って代わった。


紅茶ハウスが繁栄した重要な理由の一つは、紅茶ハウスへ押し寄せた『女性』たちだった。


このように女性たちが紅茶ハウスへ集まると、男性たちも続いて紅茶ハウスを訪れるようになった。


紅茶を飲むためではなく、女性たちと出会うために。


このように、ルーベンはティーハウスを社交の場にするつもりだった。


「おじさん、ハーブティーはあまり好きじゃないですよね?」


突然の質問に、ラエフは困ったように答えた。


「う、うん。悪いが、ハーブティーは俺にはあまり合わなくてな。それでも妻は本当に気に入っている。もうハーブティーなしでは生きられないとか何とか。」


ラエフは申し訳ない気持ちから、口数が増えた。


「では、どうして前にハーブを丸ごと買おうとしたんですか?」


「それは妻が……あっ! そういう理由か!」


ラエフはすでに結婚していたため状況は少し違ったが、女性のために財布を開くという点では同じようなものだった。


しかも、ここは港町。


人々の懐事情は、ルーベンの故郷の村よりはるかに豊かだった。


異性と出会うためなら、水で薄めたワインより高いハーブティーを飲める程度には。


「まあ、だいたいそんなところです。」


「ははは、人の心理をそんなふうに利用するとはな。本当にお前はロペルマンの息子で間違いない! あいつより多くの女を泣かせそうだ。」


思いがけず父親の過去を知ることになったルーベンだった。


***


ラエフについて人気のない路地へ入ると、通りのあちこちから槌を打つ音が聞こえた。


「ここから次の路地までが、工房の集まっている一帯だ。」


「道一本違うだけなのに、雰囲気がまるで違いますね。」


「まあ、そうだな。地面にガラスの欠片なんかが落ちているかもしれないから、気をつけてついてこい。」


ラエフは中ほどにあるガラス工房へ入りながら言った。


「ウェガー。来たぞ。」


ラエフの声に、汗をだらだら流しながら飲み物を飲んでいた中年男性が答えた。


「ラエフじゃないか。妻への贈り物でも買いに来たのか?」


「今度、三人目を妊娠したから節約しないといけないんだ。」


「じゃあ、どうして来た? 買わないなら出ていけ。」


ウェガーの反応に慣れているのか、ラエフは特に何も言わず、ルーベンを紹介した。


「こちらはロペルマンの息子、ルーベンだ。」


ウェガーは驚いた目でルーベンへ近づきながら言った。


「いやあ! 顔を見ると確かにロペルマンの息子だな。いや、よく見るとロペルマンより男前じゃないか? 腹立たしいな。」


口調は荒かったが、満面の笑みを浮かべながらルーベンの頭を撫でるウェガーだった。


「こんにちは。ルーベンです。」


「よろしくな。ウェガーおじさんと呼べばいい。話は聞いている。大変だっただろう。」


「苦労したのは母です。だから父の後を継いで商売を始めようと思っています。母に楽をさせてあげるために。」


答えが気に入ったのか、ウェガーはルーベンの背中を叩きながら言った。


「はは、そうだ! それでこそロペルマンの息子だ。知りたいことがあれば何でも聞きなさい。そこのラエフより、おじさんの方がずっと物知りだからな。」


ルーベンは後ろから聞こえた『あの野郎、まったく。』というラエフの言葉を聞こえないふりをしながら、懐から布紙を取り出した。


「このような形のガラスのコップを、五十個注文したいんです。」


つい先ほどまで上機嫌だったウェガーは、戸惑った表情で尋ねた。


「何だって? 五十個? お前、それがどれほど高いか分かって言っているのか?」


『この表情。そばにいたら退屈はしなさそうだな。』


ルーベンはウェガーの目まぐるしい表情の変化を見て、笑いをこらえながら言葉を続けた。


「大量注文なので、25エスクードでお願いします。前金として10エスクードをお支払いして、残りは来年一月までにお支払いします。」


そのように注文しても、ガラスのコップ一つにつき8レアルだった。


離れまでついた大きな家の一か月分の家賃と同じ金額だった。


「悪い条件ではないが、いくらロペルマンの息子でも、それほどの掛け売りは難しいな。」


ウェガーもただで商売をしているわけではなかったため、当然の話だった。


ルーベンはアルバ家の後援契約書を見せながら言葉を続けた。


「これなら信用になりますか?」


工房を経営していたため、たどたどしくはあるものの文字を読めるウェガーだった。


契約書を読み進めていたウェガーは、アルバ家の印章を見ると仰天した。


「ア、アルバ家?! お、おいラエフ! これ、本当にアルバ家の印章か?」


「死にたくて仕方がない奴でもなければ、誰がアルバ家の印章を偽造するんだ? 物知りだと言っていたくせに、そんなことも分からないのか?」


ラエフのささやかな仕返しにも、ウェガーは契約書を確認するのに夢中だった。


「ははは! 本当にすごいじゃないか! その年でアルバ家の後援を受けるとは。いいだろう! 俺がきっちり作ってやる。」


「九月末までに可能ですか?」


「ああ。おじさんに任せておけ。」


「よろしくお願いします。」


最も高価なガラスのコップの契約を終えた後、工房をあちこち回り、店に必要な品々を注文しておいた。


***


ルーベンは翌朝早く、家と店の契約書に署名した後、港町を出発した。


帰りの荷馬車にも荷物はあったが、来た時より少なかったため、少し早く家へ着くことができた。


「おじさん、ありがとうございました。」


「こちらこそ利用してくれてありがたい。またな。」


ラエフと別れ、すぐに家へ向かった。


農園では、子どもたちが一生懸命ハーブの手入れをしていた。


真っ先にルーベンを見つけたピラオンが叫んだ。


「ルーベン!」


ピラオンの声に、子どもたちが一斉にルーベンのもとへ駆け寄った。


「港町はどうだった? ものすごく大きいだろ?」


「家は見つけた? 店は?」


「少し待て。先に母さんへ挨拶してくる。」


ルーベンは子どもたちを落ち着かせ、家へ入った。


「ただいま戻りました。」


「ルーベン、お帰り! 疲れなかった?」


「荷馬車に乗ってきたんですから。何も変わったことはありませんでしたか?」


「ここはいつも通りよ。」


ルーベンがテーブルへ座ると、エレナが水代わりに飲む薄いハーブティーを注ぎながら尋ねた。


「用事はどうなったの?」


「満足のいく形で終わりました。」


肯定的な答えだったが、エレナの心は落ち着かなかった。


仕事がうまく進んだということは、息子が近いうちに港町へ移り住むという意味だったからだ。


「いつ発つの?」


「気持ちとしては明日にでも行きたいんですが、ラエフおじさんが三日後でないと時間が空かないそうなので、その時に行こうと思っています。」


身一つで行くならともかく、アランビックやハーブをはじめ、持っていく物がいくつもあったため、荷馬車が必要だった。


「商売はいつから始めるの?」


「10月1日から始めるつもりです。」


「母さんは聖堂の演奏があるから、ついていくのは難しそうだけど、本当に一人で大丈夫?」


「もちろんです。僕はもう一人でも大丈夫ですよ。」


「一緒に働く子どもたちは、何人連れていくの? みんな港町へ行けると思って、浮かれているようだけど。」


そもそも最初に採用した時から、いつでも港町へ行けることを前提として選んだ子どもたちだった。


そのため、まだ結婚していないルーベンと同年代の者たちが集まったのだった。


家族の許可も得ており、本人たちも港町へ行きたがっていた。


そのため、気持ちとしては全員連れていきたかったが…………。


『農園を管理する人手も必要だからな。』


肝心のハーブ生産地を運営する人員がいなければ、すべてが無駄になってしまう。


「ピラオンとコボンを残します。」


「二人とも、とても残念がるでしょうね。傷つかないよう、きちんと話してあげなさい。」


「たぶん、本人たちも望むと思います。とにかく、みんなが気になっているでしょうから、外へ行ってきます。」


母との抱擁を終え、外へ出たルーベンは子どもたちを集めた。


全員が期待に満ちた目でルーベンを見つめていた。


「よし、注目! ひとまず、俺たちの店と一緒に暮らす家は見つけた。」


「やった! これでみんな一緒に港町へ行くの?」


全員、港町へ行けるという期待に満ちていた。


しかし、ルーベンは首を横に振りながら言った。


「残念だが、全員一緒には行けない。みんなが港町へ行ってしまったら、ここの農園のハーブは誰が育てて、乾燥はどうするんだ?」


「はっ! そ、そうだね…………。」


期待に輝いていた子どもたちの目が、心配に染まった。


「だから、ピラオンとコボンはここに残り、残りの者は俺と一緒に港町へ行く。」


子どもたちは予想外の決定に戸惑った表情を浮かべ、ルーベンとピラオンを交互に見た。


それもそのはず、ピラオンとコボンが最も熱心に働き、仕事もよくできたからだ。


ピラオンもまた、ルーベンの決定を受け入れられなかった。


「どうして俺を港町へ連れていかないんだ? 俺が一番頑張ったじゃないか!」


ルーベンは興奮したピラオンとコボンの肩へ手を置きながら言った。


「逆だ、逆。お前たち二人が一番優秀だから残すんだ。」


ひとまず褒め言葉だったため、ピラオンは少し落ち着いた声で尋ねた。


「優秀なのに、どうして残るんだ? おかしいじゃないか。」


「俺が港町にいれば、ここを管理することはできない。だが、お前たち二人なら、俺がいなくても十分にうまくやれると信じているから任せるんだ。俺がいない時は、お前たちが責任者だ。」


「ほ、本当? 俺たちが責任者なの?」


悔しそうな表情はどこへやら、ピラオンの顔は一気に紅潮した。


『よし、うまく乗ってきたな。』


そもそも、人をまとめ、指揮することに向いているピラオンとコボン。


事情を説明すれば、本人たちが残りたがると確信していた。


「もちろん、望まないなら別の子を残す。」


ピラオンとコボンは、ルーベンの気が変わるのではないかと慌てて叫んだ。


「い、いや! 俺たちが残る!」


「よし! 港町へ発つ前に、農園で働く人を補充するつもりだが、きちんと教育して管理できるな?」


「もちろんだ!」


「乾燥方法以外のハーブの管理や採取方法、調合法を教えて、働きぶりを監督すればいい。」


いつまでもハーブティー事業にかかりきりになるわけにはいかなかった。


別の事業も進めなければならず、人材を探すため各地を巡る必要もあった。


後に新大陸へ拠点を築き始めれば、ここを直接管理することは不可能だったため、今のうちから自動的にうまく回る基盤を作っておかなければならなかった。


『うまくついてくれば、お前たちが代表だ。』


もちろん、できなければすぐに交代させるつもりだったが。


「とにかく、ピラオンとコボンは責任者を任せるから、給料を100マラベディ上げる。残りは50マラベディずつだ。」


新しく入ってくる従業員と同じ金額を払うわけにはいかなかったため、そう決めたのだった。


「50も!? ルーベン最高!」


「わあ! 家に帰って自慢しよう!」


子どもたちが喜ぶ姿を真っ先に確認したのは、エレナだった。


港町へ行けないピラオンやコボンと喧嘩でもするのではないかと心配し、見守っていたのだった。


『自分の下にいる子どもたちをあれほど上手に扱うなんて、やはり生まれつきなのね。』


家を離れて暮らす息子への心配が、少しだけ減ったエレナだった。


***


港町はそれほど遠い場所ではなかったため、別れの挨拶はあっさりしていた。


「行ってきます!」


「何かあったら手紙を出すのよ!」


初めて港町へ行った時と同じように、ルーベンはラエフの隣の助手席へ座った。


座席がほかになかったため、子どもたちは荷台に乗った。


それでも歩いていくより、はるかに楽なはずだった。


『ついに始まるな。金を熊手でかき集めるように稼いでやる。少なくともセドゥラ・レアル(Cedula Real)を発給してもらえるくらいには稼がないとな。』


セドゥラ・レアルは国外へ出る権利を証明する書類で、現代でいえばビザのような概念だった。


取得手続きが厳しいだけでなく、王室や高官を通じてしか発給してもらえなかった。


『だが、この部分はすでにクリアしている。』


金を稼いでそれらしい製品を作った後、ベアトリスに発給を頼めばよかった。


新大陸へ行くためだけではなかった。


ルーベンにとって何よりも会いたい『二人』に会うためには、セドゥラ・レアルがどうしても必要だった。


『記憶術師。そして科学革命の先駆者。どうか元気でいてくれ。俺がすぐに会いに行くから。』




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