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第9話 『ヨシPの、メンテナンスだよ! 暇つぶし生配信 #2/2』

 まず真っ先に表示された私のレベル1という事実にコメントが沸く。


 >www

 >レベル1w ぇ、1陣だよな?w 今日INする2陣じゃないよな?

 >1か月たってレベル1のままって、何が起きてるんだ。よくそれで今まで続けてるな

 >生産特化で街から出た事すらありませんとか、観光勢ですら、5レベルは超えてるぞ?



 ★ ════════════════════════ ★

 ◆ユニークP獲得デメリット

 ・600,000UP:パーティー枠占有 +4 [解除不能]

 ・200,000UP:代償に対するユニークメリット段階付与 [高難度]

 ・100,000UP:獲得ユニーク解放指針 [非開示] 

 ・50,000UP:取得経験値30%減少

 ・2,000UP:開始地点・ユニークシナリオ連動[地点指定不可]

 ・1,000UP:キャラクターカスタマイズ制限 (リアルモジュール)

 ・1,000UP:キャラクターネームお任せ設定

 ・470,000UP:種族特性に設定された各種デメリット

 ・199,000UP:その他 (プレイヤー共通1,000UP込み)

 ―50,000UP:ギルド所属制限 [所属可能プレイヤー上限:1名]

 ※パーティー枠占有条件により獲得ポイント削減

 ―25,000UP:転移施設利用不可 [大陸内転移限定制約]

 ―15,000UP:プレイヤー間取引手数料100%増加

 ―7,500UP:NPC商店買い取り価格30%減少

 等

 ★ ════════════════════════ ★



『いやさぁ、知ってた。俺、知ってたんだよ。でもさ……パーティー枠占有の[解除不能]を選ぶすがすがしさ。俺は好きだねぇ、とがってるねぇ、MMOに喧嘩売ってるねぇ』


 >え、これ2人パーティーまでしか組めなくね? え……どうするん?

 >ボス戦とか、詰んでね?

 >レイドボスとかならワンチャン? それ以外だと……実質常時ソロチャレンジでゲームするって事?

 >いや、それもだけど、ギルド所属制限

 >正気か? これ


 やっぱり、同情されてる!

 ちょっと呆れられてる気もするけれど、いいの。リアルの人間と交流するのは……怖いもん。


 隣でエリシアさんがちょっとだけ困った顔で私を見ながら、微かに震え始めた肩をぎゅって抱きしめてくれる。そんな彼女を――U-topiaのAI、住民のリアルさを知ってしまったからこそ思いきれたっていうのもあるのよ?


 >真祖吸血鬼の配信者で種族デメリット40万UP獲得だっけ

 >3人の現存100万UP越えの一人な。開始地点の屋敷所在地が川の中州になってる島で、引きこもりになった人

 >あれはあれで楽しそうだからまぁ……

 >地下に抜け道つくって出ようとしたら、どこ掘っても聖銀の巨大鉱脈で詰んだ人


『さて、そろそろ次行くな~』


 《作成された人気ユニーク性質を教えて》 



 今度はユニークポイントのためにつけた制約から、獲得したユニークに話題が移って盛り上がっています。

 本当に、世界中でいろんな物語が、『特別』が始まっているのね。


 生配信のやり取りを聞いていたら、早く私も目に見える成長をしたいと焦りが生まれてきました。


「エリシアさん。水魔術と魔力操作、練習用に付けてもらえる?」

「はい。いつもどおり、オリジン・ラウンジ内だけの仮スキルですね」


 ソファーに身を寄せ合って座ったまま、水球を3個生み出す。


 ゆっくりと引き延ばすみたいに、それぞれの球をひも状に伸ばして……伸ばして……。

 3本の水流が混ざり合わないように微妙な隙間を開けてねじねじ、より合わせて1本の縄みたいに編み上げていく。


 ここではスキルレベル1でしか練習できないから、できる事には限度があるし、操作もゆっくり。


 集中して、時間をかけて……そのまま宙に浮かぶモニターの周りに額縁みたいに沿わせて、完成!


 ボタンをポチって押すみたいに意識すると、ぼーんって『ファイアーボール』とか『アクアランス』みたいに魔術が飛び出すプリセット機能もあるけれど。私はこのやり方が好き。魔術楽しい!


「お見事ですよ、ルミナティアちゃん。これだけ繊細な魔力の直接操作を習得できているプレイヤーはあまりいませんよ」

「えへへ、1年頑張った甲斐があったよ……」


 ゲームが始まってからもここに来てはスキルの組み合わせを試させてもらったのよね。

 スキルが本当に掲示板に書かれている通りかとか、少しでも確認できたのは助かったわ。

 ただ、幻月花やあの月明かりに満たされた特別な空間を再現できるわけじゃないから、最後はどうしてもぶっつけ本番だったの。


「ずば抜けたVR適性の証拠ね」

「まだゲームの中で生かせないどころか、魔術スキルを覚える事すらできていないけれどね……?」


 よしよしと頭を撫でてもらいながら、私のVR適性を活かす方向で考えていた他の案も思い出す。

 いわゆる、思考加速系って呼ばれているスキル。例えば【反応速度向上】ね。


 攻撃の予測範囲を提示するみたいなスキルもあるけれど、これは別物。

 対モンスターや住民(NPC)なら、かなりの高精度。それもそのはず、ゲームプログラム内部で演算された行動計画をそのまま参照するから。でも、対プレイヤーだと、AI予測の提示にすぎないから外れる可能性もある。


 それに対して思考加速系スキルはVR技術の一環で、実際の人間側の処理速度を引き上げてしまう。

 その上昇幅は普通なら、精々2割。それも人によって効果はまちまち。


 けれど、それでも確かな効果がある上に、脳力開発にもつながると大注目されている。

 一方で安全性には当然懸念も示されていて、臨床実験による検証が済んで認可されている範囲に限り、同意のもとで提供される。


 さらに治験の頃より安全マージンが倍以上取られてて、同型スキル全てで共有されるクールタイム(CT)なんと現実時間2週間。いかなる方法でも短縮不可。効果時間もたったの30秒。


 まあ、今の私はSPもゼロ。覚えたいスキルだって山積みなんですもの。

 うん、見送り見送り!



『次の質問が最後なー』 


 あ、いけない。すっかり練習に夢中になってた。

 ヨシPさんが拾ったのは私も気になっていた事。


 《グランドクエストとか、メインシナリオ的なのはないの?》


『無い、というと正確じゃないな。ちょっとしたお使いから、エリアや国単位の大規模シナリオ。プレイヤーの“特別”が生み出すユニークシナリオに、世界設定……そういうのが全部絡み合ってU-topia全体で、現実みたいに世界が成り立つのがこのゲームだ。んで、この質問を選んだのがまさに、今日の発表に絡むわけだな。てなわけで。お次のコーナー、どん』



 ★ ════════════════════════ ★

 第1回 ヨシPの、メンテナンスだよ! 暇つぶし生配信

 ~~U-topiaアップデート告知~~


 ・ユニーククエスト/ピックアッププレイ動画公開開始

 ・『オリジン・ラウンジ』のカスタマイズ機能追加(U-topia連動+課金家具等)

 ・アーツカスタマイズ機能解放予告

 ★ ════════════════════════ ★



『うし、まず1個目! 変わったプレイをしたり、U-topia世界に影響を与える何かを成し遂げたプレイヤーの、動画を公式サイトで公開するぞ。もちろん公開を許可しているプレイヤーだけが対象だ。現在地とか、非公開設定にしている情報も勝手には出さんから安心してくれ。採用されると課金ポイントプレゼント。再生数、いいねが多いと、さらに報酬増額ドンだぜ! いづれ、動画のシーンを自キャラでなりきり追体験できるコンテンツも追加予定だ。いくつかダイジェストでつないだ公式PVを用意したから見てくれ』



 黒い画面に金文字ロゴのU-topiaがフェードアウトすると、壮大なオーケストラBGMがかきならされる。

 ローアングルからせり上がるカメラに映し出されるのは、思い思いのファンタジースタイルに身を包んだプレイヤー達。

 始まりの街の4方向を封鎖するボスを討伐する、攻略最前線の姿。


 かと思えば、とんてんかん、とんてんかん。

 軽妙な金づちの音が響く、煙をもくもくと立ち上らせる煙突が無数に並ぶ、石造りの街の上空をカメラが通過する。

 たどり着いたのは果てしない漆黒の大地へと続く、奈落の底みたいな渓谷。

 橋でもかけようとしているのか、上半身裸のドワーフらしきプレイヤーが黙々と大地を隆起させ、黒曜石みたいな漆黒の石材に変質させている。


 どの映像も片隅にはプレイヤーネームが表示されている。


 笛を吹く洒落た帽子を頭に引っ掛けた美女の後ろを、スライムや小動物がぴょんぴょんと愉しげに跳ね回りながらついていく。


 冷ややかな揶揄(やゆ)の眼差しをものともせず、広場に持ち込んだ台座に乗って、ぴかぴか光る剣を振り上げる若者は魔王討伐の仲間を募集でもしているのか。あるいは、勘違いの果てに善良な大商人を糾弾でもしているのだろうか。


 ドピンク色の厳つい全身甲冑を着込んだ重戦士が、草むらの中で必死に四葉のクローバーを探し。


 灰銀色の髪をツーサイドアップにした赤目の女の子……あ、これさっきコメントに出ていた真祖吸血鬼さんですね? そーっと川を渡ろうと踏み出したらステーンっと転んで、流れる水に沈んでる。あぁぁ……あっという間にリスポーンした。


 悲喜こもごも、わくわくするような冒険、ちょっとした住民との触れ合い。


 そんなPV風にまとめられた動画の最後に映ったのは――。


 天上に大きな満月が浮かんでいる。

 地に広がるは白く輝く花園。

 シンプルな純白のワンピースドレスの裾が、ひらりひらり。揺れ動く。

 舞い踊るは白銀の髪の少女。

 冴えわたるは、静寂に響く澄んだ歌声。


「って、私じゃないですか!?」


 そういえば、ユニーク設定の情報公開とは別に、ゲーム開始直後のチュートリアルクエストの中で、プレイ動画の公開も許可していたのでした。

 誰かと直接お話するのは怖い。でも、あの綺麗な世界を皆にも見てもらえるのは、ちょっと嬉しいなって思ったから。

 ……でもでも! まさか、私自身がこんな風に選ばれるとは思わなかったわ!


 >でっっっっか

 >名前ルミナティアって、え。この子がそうなん?

 >かわよ~。これでリアルモジュールって、うっそぉぉぉ

 >ちっちゃ細可愛いのに、お胸だけは、あらぁ

 >ちょっと細すぎないかNA!? おじさん心配になるんだNA。一緒にご飯、どうかNA★ミ


 ぅ。冗談かもしれないけれど少しだけ、胸の奥が冷たくなる。

 そんな私に気づいたのか、エリシアさんがそっと肩を抱いてくれました。


「不快なコメントは、こちらの画面では表示されないようにしましょうね」


 あ……さっきまで目が回りそうな勢いで流れていたコメントが、少しだけ落ち着いて見える。


「ありがとうございます、エリシアさん」


 うふふ。優しい。


 >この歌、ゲームのBGMじゃないよな?

 >え、本人が歌ってるの?

 >空中であのステップ、どうやってるんだ

 >月の妖精さんみたい……

 >最速の死者ちゃん、こんなことしてたのか。ほえぇ


 あ……え、えへへ。

 歌も踊りもこっち、『オリジン・ラウンジ』で練習してから挑んでよかったぁ。

 こんなに本気で取り組めたの、まだ体が動いた小さい頃以来だからすごく、すごく楽しかったの。


 >可愛すぎる

 >あの白い光、歌と舞いに反応してないか?

 >すげぇ、まじ、すげぇ。なんか、普通にひたすらバトって経験値稼ぎだけしてたのが惜しくなってきた

 >なんだこれ。ゲームの中にこんな綺麗な場所があるのか


 でも、こうして客観的に見るとシーンの美しさも相まって、大変に幻想的だけれど。

 何万人っていう人に見られてると思うと、さすがに恥ずかしいなぁ。


 >この場所どこだろう? すごい綺麗

 >お城? どこの国だ? 様式が初期大陸のものとそもそも違うぞ

 >月が大きすぎる、数も……いや、奥に見えるのは……

 >検証勢まで湧いとる

 >さっきの渓谷といい、明らか全然別の場所だから、まぁ


 羞恥に耐えられなくなってきて視線を彷徨わせる私の視界の隅っこ、メッセージアイコンが光ってる。


 おぉ、課金ポイントがもう入ってる。

 2万円分? そんなにもらっていいんですか? 初公式PV採用記念……動画掲載の報酬はまた別と。ほほぅ。



『気になるシーン、プレイヤーキャラ、あったよな? あとで公式サイトの動画、見てくれな。U-topiaの中からでもいつも通り見られるから』



 そんな感じで、ヨシPさんの公式生配信は大盛況で進んでいきました。


 私? 私はこの直後に発表された、『オリジン・ラウンジ』のカスタマイズ機能がその場で解放されてしまいましたからね。

 設置できる家に家具、風景変更の選べるリストを眺めるのに夢中すぎて、残りの配信はろくに聞いていませんでしたよ!

 サポートAI用のドレスまであったし。


 課金家具にもたくさん良いのがあったから、ポイントいっぱい貯めなくちゃ。


 サービス開始記念イベントのスタートダッシュランキングは、上位どころか1位に入っていたのもあったみたい。

 私あの場所から全く動けていないのにね。

 後でU-topiaにログインしたらその報酬も確認しましょう。


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