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第8話 『ヨシPの、メンテナンスだよ! 暇つぶし生配信 #1/2』

『よーし、公式生配信始めるぞー。正式サービス前から見てくれてる連中は知ってるな? U-topiaの“えぐぜくてぃぶ・ぷろっ・でゅーぅさぁー”吉武だぁ。ヨシPとでも呼んでくれい!』


 >ワコツ

 >はじまた

 >石くれる人キタ

 >それゲーム違う


 相変わらず、ずいぶんと自由な方ですね?

 画面の向こうではいかにも楽しそうに、おじさまがコメントの洪水に向かって手を振っています。


「ルミナティアちゃん、大丈夫?」


 そっと私の手を包んでくれるのは、薄桃色の髪を揺らすエリシアさん。


「ん、大丈夫ですよ。画面越しで、心の準備もできていれば、男性の声も平気ですから」

「そう? でも、無理はしないでね」


 うふふ。優しい。

 ここは、アーリーアクセス空間改め『オリジン・ラウンジ』。サービス開始後も利用できて、メンテナンスの間だってこうして寛げるのです。相変わらず草原なのにラウンジとはこれいかに。


 一年間、私の練習に付き合ってくれたサポートAIさんは、今ではすっかり大切なお友達。隣に寄り添い、淹れてくれた紅茶と杏子のクッキーを楽しみながら、空中のウィンドウを眺めます。現実では、今も自由に動けない私。だからこそU-topiaのメンテナンス中までこんな風に過ごせるのが、たまらなくありがたいの。


『正式サービス開始から1か月! まずは遊んでくれてありがとなー。今日は質問コーナー、アップデート情報、それからイベント結果発表だ。適当に付き合ってくれぃ!』


 >待ってました

 >詫び石はよ

 >6陣の抽選漏れたぁぁぁ


『んじゃ、質問コーナー一発目!』


 《レベルが上がらなさすぎじゃ?》


『急いでインフレさせたくないんだよ。がっつり遊んで一年でLv50、三年でLv80くらいを想定してる。むしろ差が付くのはスキルと住民(NPC)とかとの生活要素だ。SPも貴重だからなんでも覚え放題ってわけじゃないぞ』


 うんうん、そこは身に染みていますとも。私なんて、まだLv1だし。SPもきれいさっぱり使い切っちゃったし。

 ただ、最後のクエストでもらえたSPは破格でしたね、さすがユニークシナリオ?


 《間違えて覚えたスキルをリセットしたい》


『救済手段は用意する。けど、使えるのはLv20から。今すぐやり直し放題だと、初期ユニークの制約まで軽減されちまうからな。それと、ユニークの結果得たSPは対象外だ。あれはまあなんだ、同じSPってなってるけど、ユニークは別枠な?』


 《ヨシPが一番好きな通常種族は?》


『サキュバス! 以上』


 >いさぎよすぎw

 >独身チェリーこじらせおじさんよ

 >もうちょっとオブラートに包んでもろて

 >さすがGM(ゲームマスター)キャラなのに美少女キャラを自キャラにする漢


『おい、お前ら後でID調べるからな、覚えてろよ?w で、よくある質問がこれだ』


 《ユニークって、同じものを誰かが持ってたら意味なくない?》


『同じ設定なら、基本的には同じだけのチャンスがある。それで手に入る結果まで一緒かっていうと、そりゃ違う。どこで、誰と出会って、何を選ぶか。ただやっぱ人気の設定とか、お前らも大好きな最強理論だって広まってる。かち合えば奪い合いなのはMMOなら当たり前だろう? そういう競争要素もよく考えて自分だけの“特別”を考えてくれって感じだな。サポートAIとしっかり相談するのも大事だぞ? かなり“いろいろ”、尽くしてくれるぞ』


 隣でニコニコ、私を見詰めてくれているエリシアさんの薄桃色の瞳と目が合う。

 うん、私のユニークシナリオ、彼女がいろいろと調整してくれたのだものね。

 ふにふに。握り合った手の温もりを楽しんでいたら、配信は進んでた。


 《廃課金ゲーは嫌だ》


『安心してくれ。見た目関係に、ハウジング、付加効果無しのうまい飯とか、フレーバー要素がメイン課金コンテンツになる。とはいえ課金要素自体は出すぞ? そもそも、パッケージ販売と月額課金制だ。開発運営に、維持費だってただじゃないからな。技術提携やらなんやらの入りが大きいから、ゲームだけの収益で運営はしてないが』


 >ぶっちゃけた

 >最高スペックVRMMOに耐える機材持ってる時点で、月額1万円に文句は言えねぇ

 >U-topia、要求機材スペックは高いからな~

 >現実よりハイスペックな、現実以上の世界だから満足感すさまじいけど

 >社畜にも救済を~


『経験値効率アップとか、遊ぶ時間が取れない連中の救済要素は織り込んでるし、今後もさらに追加する。詳細は公式サイトでな。さて、お次は……ああ、これか』


 《一番ヤバイ初期ユニークの挑戦者は?》


 ヨシPさんがにやりと笑う。


『誰がどう遊んでるか、勝手に詳しく話すわけにはいかん。ただ、公開されてる初期ユニークポイントランキングなら見せられるな。せっかくだから、現在の状況も反映した版を……あ、パネル出る? そう? んじゃよろ。いやぁ、うちのメンバー優秀だろ?』


 空中の配信画面が切り替わりました。



 ★ ════════════════════════ ★

 初期ユニークポイント上位ランキング

 1位 1陣 2,139,000P キャラクターリセット済み

 2位 4陣 2,015,000P キャラクター再作成中

 3位 1陣 1,850,000P キャラクターリセット済み

 4位 5陣 1,724,000P キャラクター再作成中

 5位 1陣 1,623,000P ルミナティア

 第一陣の獲得ポイント平均:73,500P

 ★ ════════════════════════ ★


 >100万P以上はまじ無理

 >ストレステストさせられてる気分になる

 >仕事よりきつい


 あら、私が5位……いえ、元5位で現1位ですか?


「頑張りましたね、本当に。ルミナティアちゃんも諦めてしまうのではないかと、心配していましたよ」


 よしよし、と、頭を優しく撫でてくれるエリシアさん。

 締め付けのないゆったりとしたシルエットの薄いミントグリーンのドレスが、しゃらしゃらと、優しい衣擦れの音を奏でる。

 細っこ過ぎる私と違って、デコルテから脇が見えるオフショルダー仕様から漂う色香もすごい。


「うふふ、昨日はついに第1関門突破! しましたからね。これからですよ」


『2位と4位は1陣が出してくれた情報でビビったなぁ? まあ、ゲーム開始前ならノーリスクで再作成できるからな』


 >安易にTUEEEできると思った俺が間違ってた

 >昨日時点の公式ランキングで、第1陣の100万P以上は残り3人

 >160万P越えって、そもそもキャラリセせずに済む構成なのか?


 流れ続けるコメントを眺めて、私は首を傾げました。

 そんなに不思議かしら。確かに1か月の間ずっと死に続けて、ようやく昨日、最初のユニーククエストをクリアしたばかりですけれど……うん。言葉にしてみると、なかなかひどいわね?


「ルミナティアちゃん。この1か月を、無駄だったと思いますか?」


 エリシアさんが、そっと訊ねてきます。


「いいえ。いっぱい死にましたけれど、たくさん考えて、試して……私が何をしたいのか、どんな私が好きなのか、少しだけ見つめなおせた気もするんです」

「うふふ。でしたら、胸を張ってくださいね」

「……は、はい!」


 よしよしって、撫でられる頭がこしょばよくって気持ちいい。



『実はこの5位のプレイヤーちゃん“最速の死者”の名誉称号もちだZE☆ その記録なんとたったの15秒だ。まあ、この子は後でイベントランキング発表でもちょいちょい出てくるから、楽しみにな』


 >どんなデメリット構成なんだろう

 >キャラリセットしてないから、一応プレイは成り立ってるって事?


 おや、開示許可を求めるメッセージウィンドウが表示されましたよ。

 なるほど、どれを隠したいかも選べるのですね。


 ふむふむ。パーティーに誘われたり、面倒ごとが嫌ですから、公式が周知してくれるのはむしろ私にとってメリットしかありませんね。いつか強くなれた時の嫉妬を緩和する役にも立つでしょう。なんて、いつになるのかわかりませんけれど。


 PVPとかで弱点になりうる種族特性以外は開示を許可っと。

 レベルも別に問題ないですね。嫉妬を受けるどころか、同情を買う以外ありえないでしょう。

 《公開許可》、ぽちっとな。


『お、みんな喜べ、ルミナティアさんが許可をくれたぞ。ユニーク設定の制約最難関挑戦中のプレイヤーさんからの心優しい情報開示だ。ありがたく崇めて刮目しろー。――はい、ドン!』


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