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第5話 『特別への道は一つじゃない?』

 幻月花から抽出できた、今までよりも一際まばゆい輝きを放つ純白の珠。


『★4 (EP):幻月花の涙』


 掲示板に報告が上がっている『始まりの街』スタートなプレイヤーの生産/採集アイテム最高ランクは未だに★2(UC)クラス。


 ふふふ、これはやっちゃいましたか? やっちゃいましたね?


 この3週間の成果の確認も放り投げて、まずはとにかくいざ! そっとお口に含んで……ごくん。


「ん……ん~~ぅ」


 幸せ~。


 真っ先に感じる、爽やかな甘さ。後から追いかけてくる、ほんのりとした柑橘系の酸味。

 まさに天上の甘露!


 現実の味は久しく感じていないけれど。

 今までのゲームのみならず、医療用までも含めたVR空間で味わったどんな味よりも鮮烈!

 あ~ん、コップになみなみと集めて、毎日ごくごく飲みたい味わいだわ。


 って、いけないいけない。一番大事なMPの変化は……?


「ん、んー。ダメですか。いえ、さすがに素材そのままでは効果がない事は予想していましたから、いいのです」


 うん。いいのよ、仕方がないの。

 無情に5割から着々と減るばかりの青いMPバーを見つめる。


 ん~? 胸元が、ほんのり温かい?

 そっと指先を添えてみれば、澄んだ青い魔力核の奥から、ぽかぽかとした温もりが伝わってくるような。

 けれど、MPには変化なし。青いバーは、相変わらず減り続けています。


 うーん……気のせいかしら。


 でも、ちょっとだけ期待したのも間違いないから、もう1個、ゆっくりと味わわせてね?

 二粒目の純白の珠を、こくり。

 ん~~、やっぱり幸せな味!


 そっと足元のお花、幻月花から抽出をしながら、最近の成果を確認する。

 レベルは相変わらず1のまま。

 代わりに上がっているのはスキルだけね。


 変化があったところだけ、目で追いかける。



 ★ ════════════════════════ ★

【スキル】 残りSP:14

 [種族特性]【魔力視 Lv.3 ↑】、【浮遊 Lv.3 ↑】、【魔力飛翔 Lv.5 ↑】

 [補助系] 【初級識別:植物 Lv.2 ↑】

 [生産系]【錬金:抽出 Lv.3 ↑】

 ★ ════════════════════════ ★



 お道具がないから【初級錬金術】はLv.1のまま。新しく習得できるスキルも増えたけれど、SPには不安しかないから保留ね。


 でも、一番の成果は称号!

 なにせ最高速度で飛んでわざとMPを速攻で使い切ったり、墜落してみたり。もう、何度死んだことか!

 これ、私みたいにログイン時間がおかしいプレイヤーしかMAXまで上げるの無理じゃないかしら?



 ★ ════════════════════════ ★

 称号:万の屍を大地に捧げし者 (Lv.3 ↑/MAX)

 称号保有効果:リスポーン待機時間50%削減

 獲得条件:1か月以内に10,000回死亡し、リスポーン


 称号:空を染める恋の色 (Lv.5 ↑/MAX)

 称号保有効果:最大飛行速度5 %上昇、地上疾走最大速度5%減少

 獲得条件:飛翔に伴う行動により、1か月以内に10,000回死亡


 称号:抽出名人 (Lv.3/MAX)

 称号保有効果:抽出時、獲得アイテム数増加確率50%上昇

 獲得条件:抽出を、1か月以内に10,000回成功させる

 ★ ════════════════════════ ★



「空を染める恋の色。一見綺麗な言葉に見えるけれど、これってつまり……ん、んぅぐ……ぁぉ゛!?」


 く、苦しい。

 胸が、い、痛い……!


 VRMMOだからもちろん痛覚の再現なんて1割以下に抑えられているけれど、それでも確かに感じる猛烈な不快感。

 なに、何が起きてるの。


 《魔力体内部で高濃度のマナを検知。魔力核と適合しない属性マナが反発。魔力体が崩壊します》


 花園すれすれを浮遊したまま、胸元を押さえてうずくまる私。

 MP枯渇で見慣れた、光の粒子となって体が消えていくのではなく。

 内側からあふれる輝きに塗りつぶされるみたいにして、消滅する。



 《死亡しました。5秒後にリスポーンします。Lv1のため、デスペナルティーは免除されます》



 こんばんは、新しい私。

 いえ、そんな冗談を言っている場合ではありませんよ。


 進んだ、前に進んだ!

 結果は死亡でも、変化が生まれた!!


 心の中でぎゅっとガッツポーズ。実際にはしませんけれどね? 楚々としたお顔で何事も無かったかのように。ふよふよ~。


「けれど、どうしましょう。予定していたルートとはたぶん、違う? さっきのシステムメッセージが伝えてくれていた事……属性マナ、魔力核……」


 プレイヤー達が持ち寄る掲示板の情報を次々検索する。

 あれでもない、これでもない。


 掲示板だけだと不安なので、公式が用意している有志プレイヤーで作り上げていく『公式U-topia WIKI』も調べる。


 これと、これ……それとも、これ?

 この先は未解明なのね? でも、どの道SPが足りないから選択肢からは外していい、それなら……。


 情報を共有してくれるプレイヤー、検証好きなプレイヤー、そんな皆の叡智を借りて道筋を考える。


 知識の共有が本当にありがたい。

 5陣のプレイヤー分まで完売済だから、サブアカウントを作って調べるなんていう事もできない。

 やり直しがきかないこの『特別(ユニーク)』を先に進めるために、頭がオーバーヒートしそうなくらい必死で調べる、考える。


「もしかしたらこれが、正解ルート?」


 残りSP14。

 さて、元々考えていた攻略ルートも再確認してみる。


 一つは、鑑定と錬金術で『幻月花の涙』を加工する方法。

 素材の鑑定スキルにSP1、加工に必要なスキルが一つにつきSP5。道具を用意するための魔術まで考えると……うん、残り14SPでぎりぎりね。


 もう一つは、付与魔術で素材の特性を移し替える【魔化】を目指す方法。

 こちらは初級・中級・派生スキルの習得で、最低12SP。ただし、中級スキルの解放には相応の修練が必要。

 最前線のプレイヤーですら苦労しているのだもの。今の私なら、3か月はかかるかしら……。


 どちらも、可能性はある。

 でも、今回の死亡で新しい情報が手に入った。属性マナと、魔力核の反発。

 これまで考えていたのは、マナをどうやって加工するかという方法。けれど、もしかしたら問題は、加工方法だけじゃない?


「……そもそも、マナと私の相性が悪いのなら?」


 考えろ……考えろ、私……。


 このルートに変更したらどうなる?

 必要SPは14以内で……行けそう。

 でも、効果があやふやというか、人によって安定しないスキルをメインで取得することになる。


 検証結果がさらに出るのを待つ?

 でも……それっていつ?

 その間、私自身ができる事は?


「そもそも正解って本当に一つなの……かしら?」


 狭き道だとは思う。至極簡単な攻略ルートが用意されているとは思えない。


 無茶なデメリット(制約)を重ねて得られた、膨大なポイントを消費して用意されたユニークシナリオ。

 その始まりの試練として、私は今もまだ、この誰も来ない幻想の空間に独りで立っている。

 たったの一歩すら、ちっぽけな範囲から外へ踏み出せていない。


「これはやっぱりゲームで、『楽しい』がきっと何より大事、だよね? 苦行を味わう事はあったとしても、U-topiaは特別を、『ユニーク』を楽しんでねっていうコンセプトだって。確かエグゼクティブ・プロデューサー? さんがインタビューか何かでも言っていたはず」


 それなら……うん、それなら。

 考えたルートのどれにも可能性があるって感じるなら。


「私が一番、楽しいかもって思えるのは……今、新しく考えたこのルート! これが間違いなら、その時はその時です!」


 よし、そうと決まれば。


【同調】 《必要SP10》  ※分類:補助スキル。同調し、同調させる。

【錬金:充填】 《必要SP1》  ※魔導具等の動力源に魔力を充填する


 まずはこの2つを習得。ポチっとな!


 残りSP:3


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