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妖竿正宗と幻異の池 ~忘れられた名を、岸へ釣り帰す~

作者:源三郎
最新エピソード掲載日:2026/11/08
祖父が遺したのは、魚ではなく“心”を釣る和竿〈妖竿正宗〉だった。

最後の電話に出られなかった青年・千吉。餌のない針に掛かったのは、名を失い「きゅう」としか鳴けない、小さな九尾の狐。偉そうで、怖がりで、泣き虫なその幼獣を「キュウ」と名づけた夜から、千吉は水辺に沈む怪異たちの声を手繰りはじめる。

河童。猫又。濡女。彼らはみな、誰かに呼ばれなくなった「名前」を抱えて、水の底に沈んでいた。千吉は、力ずくで引くのではなく、糸をほんの少し緩めて相手の痛みを引き受ける――祖父ゆずりの作法で、忘れられた声を一つずつ岸へ帰していく。

怪異を数値で封じようとする釣客・魚住との衝突。人間が汚した海が生んだ、災害級の巨大怪異・赤エイとの対峙。

そして物語は、五十年後へ――。

怪異が「番号」で管理され、名を奪われて“妖核”に変えられる時代。竿は駆除の道具に堕ち、正宗は博物館の遺物になっていた。父・千吉の竿を継いだ息子・真吉が向き合うのは、水も、記録も、名前も、顔も、すべてを「無かったこと」にして呑み込む災害〈名喰らい〉。その地の底には、十年前に姿を消した父がいた。

祖父、父、息子。三世代の釣り人が、忘れられた名を岸へ帰していく――和風あやかし×釣りの、現代ファンタジー。
第一部 千吉の怪異釣行
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