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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第四十九話 飢えを値札に変えた商会

中央穀物商会の会長グレイムは、王都で最も大きな穀物倉庫を持っていた。

北方街道が封鎖されてから、彼の倉庫には小麦が積み上がり、値段は三倍に上がっていた。

「民間の配達人一人で、我々の商売を壊せると思うな」

グレイムはそう言って、統制局へ新たな訴えを出した。

しかし今回は、エナたちにも準備があった。

各村の生産者証明、運送記録、倉庫の受領票。

すべて同じ帳面にまとめ、第三者の商人にも照合してもらっていた。

「商会の値段が高いこと自体は犯罪じゃない」

エナは仲間に言った。

「問題は、食料を止める命令を金で買ったかどうか」

リディアは統制局の内部記録を調べ、輸送停止の前日にグレイムの代理人が高官へ会っていたことを突き止めた。

それだけでは証拠にならない。

決め手になったのは、石橋の通行許可を発行した役人の証言だった。

「商会から渡された名簿にある荷車だけ通せと言われた」

「その名簿は残っていますか」

役人は震える手で紙を差し出した。

名簿には、グレイムの商会が契約した運送会社の名前だけが並んでいた。

審理の前夜、リディアは証人の安全を確保するため、石橋の役人を別の宿へ移した。

彼は怯えていた。

「証言すれば、家族が商会に仕事を奪われる」

俺は直接会うことを許されなかったが、エナが伝言を届けた。

「証言を強制しません。ただ、事実を残す方法は一緒に考えたい」


翌朝、役人は自分の意思で法廷へ現れた。

グレイムの商会で働く倉庫番も証言台に立った。

彼は穀物を隠した命令書を見たことがあると言う。

だが同時に、命令を拒めば家族が路頭に迷うと恐れていた。

「俺は悪いことをした。けれど、食わせなきゃいけない子供がいる」

俺は怒りを感じながらも、彼を会長と同じ立場に置くべきではないと思った。

審理官は命令した者と従った者の責任を分けて調べると約束した。

公開の席では、食料を受け取った村人たちの証言も読み上げられた。

ある母親は、豆を手に入れるため結婚指輪を売った。

別の農夫は、値上がりした小麦を買うため来年の種を手放した。

数字の上では利益が増えた一方で、暮らしから何が失われたか。

審理官は証言を聞き終えるまで、誰にも口を挟ませなかった。

閉廷後、エナは俺に言った。

「勝ったと思う?」

俺は少し考えた。

「まだ分からない。食料が安定して届くようになって初めて勝ちだ」

商会の看板を外しても、倉庫を管理する人間は必要だ。

輸送の道を知る御者も、荷を量る職人もいる。

悪い仕組みを壊すだけなら一日でできる。

代わりを作るには、何年もかかるかもしれない。

北方の村から来た手紙には、種麦を食べた家の数が書かれていた。

俺は病院への配達を減らさずに済むよう、別の買い付け先を探した。

今夜の患者と春の畑を秤にかけて片方を捨てる前に、運ぶ道を増やしたかった。


その日の午後、王都で公開の審理が開かれた。

俺は牢から連れ出され、証人席に座った。

グレイムは余裕の笑みを浮かべていた。

「この男は国の秩序を乱した。食料を勝手に配り、民衆を扇動した」

俺は深く息を吸った。

「俺が配った量は記録にあります。買った相手も、受け取った相手も証言できます」

「その善意が市場を混乱させたのだ」

審理官は、食料価格の変化を示す表を広げた。

輸送停止前、停止後、直接販売開始後。

三つの期間で値段がどう変わったか、誰もが見られるように掲示された。

グレイムの代理人は

「偶然だ」

と主張したが、通行許可の名簿と照らすと、商会に関係する荷車だけが止められていなかった。

俺は証人席で、最初に会った飢えた少年のことを話そうとして、思いとどまった。

感情を煽るために子供の苦しみを使いたくなかった。

代わりに、ラトナ村の受領記録と、配達できなかった日の欠食数を示した。

審理官は静かに数字を追い、質問した。

「この記録は誰が確認した」

俺は村長と炊事係の名前を答えた。

誰でも確かめられる事実を積み重ねるしかなかった。

審理官は閉廷後も帳簿を預かり、別の担当者による照合を命じた。

エナは原本の控えを残していたため、安心して渡せた。

俺はその準備に感謝した。

証拠は声の大きい者が勝つための道具ではない。

あとから誰でも確認できるようにするためのものだ。

倉庫番たちは、翌朝から新しい受領票を使うことになった。

誰が命じ、誰が運び、誰が受け取ったか。

俺はその三つの名前が記録されるのを見届けた。

グレイムは最後まで、自分が食料を生産したわけではないと認めなかった。

倉庫を持ち、道を押さえれば食料の価値を決められると信じていたのだろう。

だが、農家は別の買い手を見つけ、御者は新しい道を走り始めていた。

彼が失ったのは、穀物そのものではない。

人々が他に選択肢を持たないという前提だった。

審理の後、俺は倉庫番の男に声をかけた。

「あなたの仕事は必要です」

男は驚いた。

審理の場で俺が証言台に立てたのは、リディアが身柄の一時移送を申請し、監督官が認めたからだった。

手首にはまだ拘束具の跡が残っている。

倉庫番の男は証言の後、俺を見た。

「俺を許すのか」

「許すかどうかと、家族の食事を奪うかどうかは別です。知っていることを、まだ話してください」

男は唇を噛み、頷いた。

審理官は証拠の照合を命じ、その日のうちに俺の拘束を解く決定を出した。

ただし商会への調査は続く。

閉廷後、エナが俺に駆け寄った。

「釈放だって!」

「でも街道はまだ閉じている。今日の荷車は通れるのか」

「明朝、追加の記録を審理官に渡すわ」


翌朝、倉庫番が持参した運行記録から、商会の命令で空荷の馬車を三度走らせ、救援便を遅らせていた事実が明らかになった。

審理官は通行制限を解除し、倉庫の保管業務は監督下で続けるよう命じた。

会長の不正な指示を止めても、倉庫で働く家族まで飢えさせないためだった。

ハンスが男に声をかけた。

「明日の便に乗れ。積み荷を数える人間が足りねえ」

「俺を雇うのか」

「罪を隠すなら駄目だ。話すべきことを話してからだ」

男は長く頭を下げた。

最初の救援馬車が北門を抜けると、見送る人々から拍手が起きた。

俺が見ていたのは門の向こうだ。

そこには、まだ食べ物を待つ村がある。


その夕刻、北方から病院への食料到着と、五つの村で種麦が食べられ始めたという知らせが届いた。

倉庫番が北門へ向かう空荷の馬車を指さす。

「帰り荷がないと、御者は続けられない」

ハンスは産地へ連絡し、帰路に種麦を積む契約を提案した。

俺は病院用の食料を減らさない仕入れ先を探し、翌朝出発する御者へ荷の受取場所を渡した。

門の通行制限が解けても、畑に種が戻るまでは終わらない。

御者は空の荷台を確かめ、北へ走り出した。

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