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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第三十一話 帳簿にしかない五百袋

領主の倉庫には、麦が五百袋あるはずだった。

しかし棚にあったのは、麦が二百十四袋、豆や乾燥野菜などが二百五十九袋。

合わせて四百七十三袋だった。

帳簿の五百袋は麦だけの受領予定数だ。

麦は二百八十六袋足りない。

ほかの食料を足しても、帳簿の麦が揃ったことにはならない。

「帳簿の五百袋は、誰が確認した数字ですか」

俺が聞くと、出張所のクラウスは古い台帳を開いた。

「先月の受領印がある。北門商会の印も」

印は確かにあった。

だが、数量の欄は別のインクで書き足されている。

「偽造だと決めるのは早い。受領した人を探しましょう」

エナは麦五百袋と、現物の麦二百十四袋を別々の欄に記した。

「豆を足して四百七十三袋、だからあと二十七袋、という計算は違う。麦だけで二百八十六袋足りないの」

エナが言う。

彼女は最初の配達から帳面を扱い、今では俺より小さな違いを見つけるのが速かった。

俺たちは倉庫番の老女ベッカを訪ねた。

彼女は受領印を押したことを認めたが、荷は数えていないという。

「門前に荷車が並んで、商会の人が『雨が来るから急げ』と。私は袋の口を確かめただけだよ」


翌朝、俺はベッカと一緒に受領票を一枚ずつ並べた。

帳面に記された日付には、雨で橋が通れなかった日も含まれていた。

エナが配達便の日誌を持ってくる。

「この日、橋の修理で道が閉まってる。荷車は通れなかったはず」

だがベッカは首を振った。

「川向こうから船で運んだのかもしれない」

その可能性もある。

俺たちは船着き場の記録を取り寄せた。

そこには船の出入りが三件しかなく、五百袋を運べる量ではなかった。

クラウスは深く息を吐いた。

「数字が合わないのは間違いない。だが、どこへ行ったかは分からん」

俺は相手の目を見て言った。

「まず疑いのある帳面と、実際の食料を分けましょう。人を裁くのは証拠が揃ってからです」

五村の会議では、四番村の村長が強く反対した。

「うちの分を先に出せと言うのか。去年の冬、うちは誰にも助けてもらえなかった」

その声には怒りだけでなく、長い不信があった。

俺は席を離れ、村長と廊下で話した。

「去年、何があったんですか」

村長は妻が食料を求めて隣村へ行き、空の手で帰った話をした。

「あれから、他人を信用しないと決めた」

俺は言葉を選んだ。

「信用してくださいとは言いません。出した量と戻る予定を紙に残します。約束を守れなければ、次から拒んでください」

村長はその紙を受け取り、長く見つめた。

「一度だけだ」


翌日、彼の村から豆袋が運ばれた。

袋の上には、村の子供たちが描いた小さな麦の絵が貼ってあった。

配給所では、病気の老人が列に並べず、食料を受け取れないことも分かった。

俺たちは巡回班を作ったが、誰にどれだけ届けたかが曖昧になると不信を生む。

エナは受領票に家族の印をもらい、書けない人には立会人をつけた。

雨の日には道がぬかるみ、班が戻るのが遅れた。

俺は焦って保存倉庫から袋を出そうとしたが、ハンスが止めた。

「お前が全部やったら、巡回班は育たない」

その言葉が痛かった。

急いで助けることと、明日も助けられる仕組みを残すこと。

その両方を選ばなければならない。

そのときベッカが、受領時の袋について思い出した。

「袋の口を留めていた封蝋が、全部同じだったんだよ。赤い鳥の印でね」

俺は持参した伝票を見た。

商会の印は黒い門。

赤い鳥ではない。

そのとき外から鐘が鳴った。

南の二番村で、配給所の前に人が倒れたという知らせだった。

「調査より先に食料だ」

とハンス。

会議が終わってから、五番村の若い村長が俺を追いかけてきた。

「うちには数字に入っていない人がいます」

山で炭を焼く家族が三世帯、村外れで暮らしているという。

村の台帳には載っていない。

「届けられますか」

「まず人数と場所を教えてください。台帳にないから食べなくていい、なんてことにはしません」

村長は深く頭を下げた。

エナは急いで地図に三つの点を書き足した。

数字は命を守るために使うものだ。

数字からこぼれた人を見捨てる言い訳にしてはいけない。


翌日、炭焼き小屋へ豆を届けた。

幼い兄弟が袋の重さを量ろうとして、二人がかりで持ち上げる。

「こんなにあるの?」

と兄が聞く。

「三日分だよ。次の便まで、みんなで分けて」

その言葉を言うとき、俺は必ず次便の手配状況を確認するようになった。

希望だけで空腹は満たせないからだ。

「まず現物を確かめよう。ただし他の村の分を無断で動かすわけにはいかない」

俺たちは五村の代表へ使者を出し、現物の備蓄を共同で確認する会議を開いた。

全員に少しずつ我慢してもらう判断は、俺一人にはできない。

会議は荒れた。

「うちの村の麦を持っていく気か!」

「そちらはまだ三日分あるだろう!」

怒鳴り声の間で、エナが地図の端に小さな数字を書き込んだ。

村ごとの食事回数、病人、子供、現地で煮炊きできる鍋の数。

袋数だけでは人は食べられない。

倉庫の戸締まりをする頃、ベッカが小さな木箱を持ってきた。

「これも見てほしい」

中には古い検量用の分銅が入っていた。

重さを確かめると、表示より軽い。

「昔からこれを使っていたんですか」

「先月、商会の人が新しいものと交換したの」

もし計量器が違えば、受領した袋数だけでなく、袋の中身の重さも違っていた可能性がある。

俺たちは分銅を証拠として封印し、別の秤で再検量することにした。


翌日、村の代表が立ち会って袋を量ると、いくつかの袋は表示より明らかに軽かった。

ベッカは肩を震わせた。

「私が見逃したせいで……」

ベッカは秤に手を伸ばしたが、クラウスが止めた。

「証拠だから、今は触らず立会人を呼ぼう」

彼女は震える手を引っ込め、自分の印が押された受領票を一枚ずつ読み直した。

俺は空になった袋の口を開き、誰が最後に触れたのかを尋ねた。

「これからは一人で確認しない仕組みにしましょう」

彼女の失敗だけにしてしまえば、同じ手口はまた通用する。

責任を追及することと、再発を防ぐことは別の仕事だ。

夜、クラウスが地図に赤い糸を張った。

五村の食料がどの道を通り、どこで消えたかを示すためだ。

赤い糸は一つの倉庫ではなく、複数の中継地へ伸びていた。

「一度に全部を調べるのは無理だ」

と彼は言った。

「なら、次に食料が動く場所を先に押さえましょう」

証拠を追うことに夢中になって、配給を止めるわけにはいかない。

俺たちは翌朝から動く調査班と輸送班の担当を決めた。

赤い鳥の印と軽い分銅は、別々に調べることにした。

疑いだけで配給を止めないためだ。

ベッカは印を押した日のことを思い出し、倉庫の扉の前で立ち止まった。

「私が見たのは荷車の幌だけ。袋の数じゃなかった」

「なら、証言にはそう書きましょう」

と俺は答えた。

受領票の原本は役所に残し、エナは橋の閉鎖日だけを写しに添えた。

配給所では、今夜の麦が足りないと聞いた母親が幼い子を抱きしめていた。

俺は調査に回す人員を減らしてでも、豆を炊く班を先に出した。

「印の持ち主が分かれば、明日の分も戻る?」

と子が尋ねた。

「まだ分からない。でも、今夜の食事は待たせない」

ベッカは自分から村長の前に立ち、数えずに押した印の責任を認めた。

村長は責める代わりに、次の受領には二人で立ち会おうと言った。


翌朝、五村の代表を集めた。

棚の不足は昨日確認した。

今決めるべきは、残った食料を誰の鍋へ運ぶかだった。

「昨日確認した不足分は、調査班が追います。今ここにある麦と豆を、今夜誰に届けるか決めてください。明日までに集められる分は、確約できた便だけを別に示します」

一人の村長が唇を噛んだ。

「嘘の約束よりましだ」

最も遠い村の代表が立ち上がった。

「うちには明日の朝まで食べられる家がある。今夜の分がない村へ先に回してくれ」

その一言で議論が動き、代表たちは緊急配給に合意した。

最も危険な二村へ、倉庫の麦を優先して回す。

残り三村には共同炊事のための豆と乾燥野菜を届け、各村の残量を毎夕報告してもらう。

倉庫から出る荷には、ベッカと村の代表が別々に印を押すことになった。

出発直前、ベッカが俺の袖を引いた。

「赤い鳥の印なら、東の古い製粉所でも見たよ。いつだったか、確かめてみる」

製粉所は半年前に閉鎖されたはずだった。

クラウスが調査班を向かわせる間、俺は配給の荷車に付き添った。

「これで、うちの子に今夜食べさせられる」

最初の村で豆を受け取った母親が、まだ温かくもない袋を胸に抱いた。

代表たちが譲り合って決めた配分は、ようやく一つの家の夕食になった。

クラウスは不足する麦二百八十六袋を未確認欄に残し、配給済みの豆とは別に記録した。

村の代表は数字を読み上げ、明朝の照合に立ち会う人を決めた。

背後では、閉鎖された製粉所へ続く道に調査班の灯りが遠ざかっていった。

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