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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第十五話 閉ざされた街道に値札をつける男

南の谷へ向かう道に、商会の通行料を示す札が立った。

荷車を引く御者たちは、通れる道が一本しかないことを知っていた。

若い門番は商会の印がある箱を抱え、徴収した額を小さな帳面に書いていた。

俺はその帳面を見て、彼が命令を疑いながらも家族のために仕事を辞められないのではないかと思った。

今はまだ、道を開ける根拠も、青年に証言を求める資格もない。

村の代表が保管する古い通行証を調べる必要があった。

三度目の便を準備していると、商会の使者がラトナ村へ来た。

黒い外套を着た男は、村の広場で一枚の書状を広げた。

「南の谷へ通じる街道は、今後すべて当商会の管理下に置く」

村長が眉を寄せた。

「道は王国のものだろう」

「崩落の復旧費を当商会が負担する。通行料を取る権利は領主から認められた」

「まだ復旧していないじゃないか」

ハンスが言うと、男は笑った。

「だから工事するのです。通行料を払えば、あなた方も通れる」

金額は荷車一台につき銀貨十枚。

徒歩の運び手にも一人銀貨一枚。

「人が飢えてるのを知ってるのか」

「もちろん。だからこそ、安全な道が必要でしょう」

俺は書状を受け取った。

領主の印は確かにある。

ただし、認められているのは『復旧した街道の維持管理費』だった。

「まだ復旧していない道で、通行料を取れるとは書いてありません」

男の笑みが消えた。

「細かいことを」

「細かいことです。人が通れるかどうかで命が変わる」

使者は書状を取り返した。

「では、工事が終わるまで通らないことです」

「山羊道は街道ではありません」

「山も谷も領主の土地だ」

男は踵を返した。

村人たちは怒りを口にしたが、俺はすぐに動けなかった。

相手が正式な許可を得ているなら、力ずくで通るのは危険だ。

エナが帳面を指した。

「次の便は明後日。今止まったらベルクが困る」

「だから、道の所有者と許可の範囲を確認します」

俺は領主の出張役所へ向かった。

役人は最初、話を聞こうとしなかった。

「商会との契約は済んでいる」

「契約文を確認させてください。私たちが使っているのは崩落した街道ではなく、古い山羊道です」

「そんな道まで知らん」

「では、禁止する根拠もないはずです」

役人は苛立ち、机を叩いた。

「お前は誰だ」

「食料を運ぶ者です」

「それが偉そうに」

俺は一歩引いた。

見張り役が交代しても判断を引き継げるよう、封印の状態を書き留めた。

トトは通行料の札を見上げた。

俺は徴収した額と橋の修繕費を別々に書き出し、誰に説明を求めるべきか整理した。

夕食前、ハンスは車軸に付いた泥を落とした。

俺は次便の荷を量り直し、狭い橋を渡るときだけ二台に分ける案を出した。

「遠回りでも、落とすよりましだ」

明日の遅れを村に伝える札を、トトが先に書き始めた。

「偉くありません。ただ、ベルクに百二十人がいて、次の食事を待っています」

役人はしばらく黙った。


やがて地図を出した。

山羊道は王国の旧巡回路として記録されていた。

商会の管理区域には含まれていない。

「この道なら通れる。ただし崖が崩れたら責任は持てん」

「分かっています」

俺は地図の写しと、通行を禁じていない旨の証明を受け取った。

だが村へ戻ると、もっと悪い知らせが待っていた。

商会がラトナの木工品を買う店へ圧力をかけ、取引を止めさせたという。

「売上がなければ、次の食料が買えない」

エナの声が震えた。

俺は帳面を開いた。

村の手元資金は減り続けている。

「道を塞げないなら、金を止めるつもりか」

ハンスが呟いた。


その夜、俺たちは集会所で話し合った。

村人の中には、商会へ謝罪して取引を戻してもらうべきだという者もいた。

「頭を下げて済むなら、それでもいい」

俺は答えた。

「でも、次に値段を倍にされたら? その次は?」

誰も答えなかった。

「別の買い手を探します。売り物の質も見直しましょう」

ヨルンが手を挙げた。

「北の市場なら、木工品を扱う職人組合がある」

「往復は?」

「三日。馬車なら二日だ」

「まず見本を持って交渉しよう」

ミリが小さな木の匙を持ってきた。

村の職人が作ったものだ。

「これ、私の分だけど、売っていいよ」

俺は受け取らなかった。

「これはミリのものだ。売るなら、作った人に代金を払ってからだよ」

「じゃあ、売れたらまた作ってもらう」

「それがいい」


翌朝、山羊道の入口には商会の使者が立っていた。

俺が役所の証明を見せると、男は顔を歪めた。

役所から戻ったあと、俺は通行許可の写しを三枚作った。

一枚はラトナの村長、一枚はベルクのマルタ、一枚は運び手が持つ。

原本を俺一人が持っていたら、俺が病気になった瞬間に輸送が止まるからだ。

トトは写しの文字をなぞりながら、

「これで本物と同じなの?」

と尋ねた。

「同じ権利があるとは限らない。だから原本の保管場所と、必要なとき誰が取りに行くかも決める」

彼は少し考え、

「道を通るだけでも、こんなに準備がいるんだね」

と言った。

商会の妨害がなくても、食料を届ける仕事には細かな約束が必要だった。

「ずいぶんと小賢しいな」

「道を通ります。食べ物を待っている人がいるので」

俺たちは一歩ずつ坂を登った。

道の向こうには、まだ朝食を待つ子供たちがいた。

門番の青年は、箱の下に控えを隠していた。

俺はそれを見たが、今は問い詰めなかった。

荷を待つ村への道を先に開き、控えの扱いは本人の意思を聞いてから決める。

証文を掲げた途端、商会の使者が通行料の箱を抱えた。

「これは領主への納付金だ。勝手に触るな」

俺は箱には手を伸ばさなかった。

「返す相手は、ここで払った人たちです。誰がいつ払ったか、領収書がないなら証言を集めましょう」

門番の青年が震える手で箱を地面に置いた。

「俺が徴収した。昨日の分は帳面に書いた。でも雇い主から、払った人に見せるなと言われた」

使者が青年の腕を掴む。

ハンスが一歩出たが、俺は止めた。

青年は使者の手を見つめたまま、

「弟の薬代を前借りしている」

と打ち明けた。

証言すれば仕事だけでなく、返済を迫られるかもしれない。

俺は代わりに払うと言いかけ、飲み込んだ。

それでは彼の口を別の金で買うことになる。

「通行料の控えを役所へ出すかどうか、君が決めていい。俺たちは古い通行証と役所の地図を提出する」

老人が一歩前へ出た。

「その間、うちの畑仕事を手伝わんか。賃金は日ごとに払う」

青年はすぐには答えず、箱の蓋を閉めた。

「証言は本人が決めることです」

青年は使者の手を振り払った。

「俺の弟も、この先の村で待ってる。道を塞いでいたのが俺だと知っても、あいつに飯を届けたい」

農家の老人が自分の通行証を青年に渡した。

「なら最初の荷車を通せ。箱の話は役所でつける」

使者は帳面を奪おうとしたが、青年は箱の下から控えを取り出した。

「誰からいくら受け取ったか、俺が全部書いた。弟のいる村の人からもだ」

老人は青年をかばうように前へ出た。

「証言は役所で聞こう。今は荷を通せ。腐った野菜は後から戻せん」

青年は箱を脇へ寄せ、最初の荷車が通れる幅まで柵を押し開いた。

柵が上がった瞬間、先頭の荷車の車輪が深い溝にはまった。

使者が笑った。

「ほら見ろ。通行料を払わずに通ろうとするからだ」

だが、通行料の箱を脇へ置いた青年が、真っ先に車輪の下へ石を詰めた。

老人が綱を引き、御者たちが荷を降ろして車体を持ち上げる。

青年は泥だらけになって叫んだ。

「俺は道を塞ぐために雇われた。でも、道を直す仕事なら今日からでもできる!」

車輪が溝を越えると、後続の荷車が次々と進んだ。

俺は青年に礼を言った。

「弟さんのところへも、食事を届けます」

青年は通行料の札を外したあと、壊れた路肩に目を落とした。

「次は金を取るためじゃなく、道を守るためにここへ来る」

村長は路肩の修理に必要な人数を数え、青年には翌朝の見積もりに立ち会うよう頼んだ。

彼は目を伏せ、柵を完全に開いた。

街道の関所で値札を見せられた御者は、手綱を握り直した。

「払えば通れるのか」

俺は領収のない通行料を拒み、待っている村へ迂回の知らせを送った。

柵を外した青年は、最後の荷車が通るまで道の脇を離れなかった。

弟の待つ家へ向かう御者が手を振ると、青年は通行料の札を裏返して地面に置いた。

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