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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第十二話 百二十人に足りない最初の一袋

ベルクへ運ぶ第一便は、小麦二十キロと豆八キロ、それに塩だった。

数字だけ見れば、百二十人には到底足りない。

「これで助けに行くと言えるのか」

ハンスが呟く。

「今日の命をつなぐための便です。次を必ず出します」

俺は倉庫の収納表示を確かめた。

重さは余裕がある。

問題は中身だ。

ラトナ村の種麦には手をつけない。

共同倉庫の残量をエナと確認し、村長の前で帳面に記した。

街への仕入れ便はハンスの弟ヨルンが引き受けた。

セヴの案内で山羊道を登る。

ぬかるんだ斜面は足元が崩れやすい。

トトは先頭を歩こうとしたが、俺は止めた。

「目印をつけるのは俺たちの後ろで。危ない場所を先に調べるのは大人の仕事だ」

一時間ほどで峠を越えた。

眼下に小さな家々が見える。

煙の上がる家は二軒だけだった。

村の入口で老人が槍を構えた。

「誰だ」

「ラトナ村から来ました。食料を届けに」

「食料だと?」

老人の目が俺たちの空の手を見た。

「ふざけるな。荷車も袋もない」

俺は平らな石の上に小麦袋を取り出した。

老人は槍を落とした。

「……魔法使いか」

「運び屋です」

村長のマルタは白髪の女性だった。

彼女は俺の説明を最後まで聞き、すぐに集会所の扉を開けた。

「まず子供と病人を集める。大人は後だ」

「配給の前に人数を確認させてください」

「疑うのか」

「誰かが二度受け取り、誰かが一度も受け取れないのを防ぎたいんです」

「なら、名簿の最後に私の名前を書いておくれ」

とマルタは言った。

「村長が最後でいいんですか」

「今まで村の鍵を握っていたのは私だ。誰かが受け取れなかったら、私が先に腹を空かせる」

列の後ろで赤ん坊を抱いた女が手を上げた。

名簿には彼女の家が載っていなかった。

昨夜、倒れた祖母を介抱していて人数調査に出られなかったのだ。

俺は帳面の余白を開いた。

帳面の数字を直すだけでは足りない。

俺は女の家まで案内してもらい、歩けない祖母にも粥が届くよう配達札を作った。

マルタは一瞬黙り、やがて頷いた。

百十九人。

セヴを入れて百二十人。

亡くなったのは昨日の朝、七十歳の老人だった。

飢えが直接の原因かどうかは分からない。

それでも食べるものが足りなかったことは確かだ。

俺は水で豆を煮るよう頼んだ。

乾燥豆を急いで生のまま配れば、体を壊す恐れがある。

病人にはまず少量ずつ、状態を見ながら渡す。

広場に人が集まった。

「全部でこれだけか」

誰かが呟いた。

俺は帳面に指を置き、今日届ける袋の数を一つずつ確かめた。

炭焼き小屋を先に訪ねていた御者が戻ると、荷台には空の器が二つ載っていた。

病人は食べ終えたのではない。

熱で匙を持てず、粥をこぼしてしまったのだ。

エナは器の縁を布で巻き、少しずつ口へ運べるようにした。

老人は

「配るだけでは届かんのだな」

とつぶやいた。

俺は翌日の配達表に、食料の量だけでなく食べる手助けが必要かどうかを記す欄を設けた。

どれか一つを見落とせば、せっかくの善意が誰かの負担になる。

マルタは配給札を並べ直し、熱のある家に赤い糸を結んだ。

俺が明日の分を数える間、トトは坂の上の家まで歩く時間を測った。

「鍋が冷める前に着けるよ」

その一言で、広場に並べない人のための配達順が決まった。

広場に来られない老人のため、配達先の戸口まで記録した。

トトは百二十人の名簿を指で追い、受領を確認できなかった家に小さな丸をつけた。


翌朝は丸の残る家を優先して訪ねる。

食事を渡しただけでなく、食べられたかどうかも確かめることになった。

「今日の分です」

俺は言った。

「明日以降の分は、今、手配しています。約束できる量だけを伝えます」

すると一人の男が前に出た。

「どうせ次は来ない。だったら今、俺の家族の分を寄こせ」

男の後ろには、頬のこけた幼い兄妹がいた。

俺は腹が立たなかった。

自分の家族を守りたいのだ。

「子供の分は確保します。ただ、先に奪えば、別の子供の分がなくなる」

「綺麗事を言うな!」

男が俺の胸ぐらをつかんだ。

セヴが間に入ろうとしたが、マルタが手を上げた。

「その男の家にも、今夜の鍋を届ける。だが、ここで殴り合えば明日の鍋はなくなる」

男の手がゆっくり離れた。

だが彼は列へ戻らず、兄妹を連れて広場を出ようとした。

「待って」

とマルタが呼び止め、彼の家の配達札を自分の胸に差した。

「私が持っていく。食べるところまで確かめる」

男は振り返った。

「村長が来るのか」

「今まで鍵を持っていた者が、最後の家を見落とすわけにはいかない」

男は頭を下げなかった。

ただ、妹の手を握り直し、家の場所を教えた。

最初の鍋が煮えるまで、俺は村の倉庫を調べた。

棚には空袋が並び、床には麦粒が数粒落ちていた。

畑は冷害で全滅したという。

しかし、倉庫の奥には木箱が一つ残されていた。

「これは?」

「来春の種だ。食べれば来年も飢える」

俺はラトナ村で聞いた言葉を思い出した。

種麦を食べるな。

二つの村は、同じ崖っぷちに立っていた。

配給を始める前、俺は鍋の数を数えた。

大きな鍋は二つ、小鍋は三つ。

火を焚く薪も少ない。

食料があっても調理できなければ意味がない。

マルタは使われていない納屋の板を燃やそうとしたが、俺は止めた。

雨漏りを塞ぐために必要な板かもしれない。

セヴが谷の斜面に落ちている枯れ枝を集め、別の村人が炉の隙間を石で塞いだ。

少ない薪で湯を沸かす工夫を重ねるうちに、村人たちの手が自然に動き始めた。

俺がすべてを指示しなくても、彼らは自分たちの暮らしを知っている。

夕方、子供たちに薄い豆粥が配られた。

一人の少女が器を両手で抱え、湯気を見つめていた。

「熱いから気をつけて」

少女は頷いたが、食べようとしない。

「どうした?」

「弟の分もある?」

「あるよ。名簿に書いてある」

少女は初めて匙を動かした。

配給が足りないと知った村人たちは、広場で互いの椀を見つめた。

俺は空の袋を掲げ、次の便の到着が未定であることを隠さなかった。

最初に声を上げたのは、列の後ろにいた老人だった。

「並べない家を先に探せ」

その一言で、配る順番を考え直した。

広場から戻った老人の家では、鍋が空のまま冷えていた。

寝台の病人は起き上がれず、老人は自分の取り分を二人に分けようとしていた。

「名簿には三人とも載っているのに」

俺が呟くと、老人は目を伏せた。

「広場まで器を持って行けなかった。並べない者には、配られないと思った」

俺は残った粥を温め直し、病人が飲み込めるよう少しずつ器に移した。

その頃、広場では配給が終わったという鐘が鳴っていた。

「終わっていない」

マルタに告げると、彼女は配達係を二人呼んだ。

「広場に来なかった家を全部回って。札を渡すだけじゃなく、食べられたか見てきておくれ」

セヴが鍋を持とうとしてよろめいた。

自分の粥を食べていなかったのだ。

マルタは彼の手から鍋を取り上げ、椅子に座らせた。

「運ぶ者が倒れたら、明日は誰が運ぶんだい」

トトが配達札の裏に『食べた』と『まだ』の二つの印を描いた。

「受け取っただけじゃ、助かったか分からないから」

夜になり、配達係が一度戻ってきた。

「確認できた家は回った。まだ食べられない人は、明日リーナ先生に診てもらう」

マルタは札を数え、やっと腰を下ろした。

配給の終わり際、名簿に載っているのに受領確認のない家がもう一軒見つかった。

谷の外れで炭を焼く夫婦で、妻は足を痛めて広場まで来られない。

鍋には残りがほとんどない。

列の最後にいた老人が、自分の椀を差し出した。

「半分にしろ」

俺が礼を言う前にマルタが首を振る。

「善意だけで次も救えると思うな。明日は家ごとに確認する人を決めよう」

セヴが炭焼き小屋までの坂道を引き受け、トトは地図に赤い丸を描いた。


翌朝の最初の一杯は、その家へ運ぶことになった。

「次の便が遅れたらどうする」

「まず知らせます。病人の分を確保して、皆で配り方を決める」

俺の答えに、彼女は短く頷いた。

俺は帰路のために残していた自分の乾パンを取り出し、炭焼き小屋へ向かうセヴに託した。

自分の夕食を抜けば、明日の山道で足が止まるかもしれない。

エナは黙って俺の水筒を半分満たし、

「帰りは交代で歩く。無理をするなら次の便は任せない」

と言った。

助ける側が倒れれば、次の百二十人分は届かない。

俺は彼女に頷き、足を休める時刻を決めた。

帰り際、昼間の少女が弟の手を引いて立っていた。

「お兄ちゃん、弟も食べたよ」

小さな弟は空の器を持ち上げて見せた。

配り終えた袋の底には、粉が一握りだけ残った。

俺はそれを捨てずに鍋へ入れ、次便の到着予定を待つ家ごとに伝えて回った。

百二十人分には足りない最初の一袋だった。

俺は次の便の到着日を約束しなかった。

代わりに残りの袋数を掲示し、村の代表と不足する日の食事を一緒に数えた。

弟が空の器を返すと、姉はその手を離さず炊事場を出た。

明日の食事はまだ足りない。

だから俺たちは、二人が眠っている間に次便の荷を集めることにした。

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