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役立たずと追放された俺の保存倉庫は、飢えた世界を救う最後の希望だった  作者: レモンティー


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第百五話 十四人目の名前

セラは寝台の縁を握っていた。

額に汗が浮かび、呼吸が浅い。

医師は麓から来たばかりだった。

荷を置くとすぐに状態を確かめ、オルナに湯と清潔な布を頼んだ。

「タクトさん、外で待っていてください。必要なことがあれば呼びます」

俺は頷いた。

保存倉庫で食料を運べても、出産の痛みを代わることはできない。

外ではロウが何度も同じ場所を歩いていた。

「セラの母親は洪水で死んだ。あの子はずっと、ここで子を産むのを怖がってた」

「医師がいます」

「医師がいても、怖いものは怖い」

俺は言葉を失った。

雨は上がっていたが、道にはまだ泥が残る。

カイトは次便の御者に、安全な場所で待機するよう伝えた。

「医師のための湯は足りるか?」

「水場から運べる。火を絶やさないよう、薪も分けた」

ニノが小さな布を抱えてきた。

「赤ちゃんにあげるの」

洗ったばかりの布だった。

「今すぐ渡す?」

「オルナさんに聞こう」

ニノは布を持って小屋の戸口まで行き、そっと置いた。

役に立ちたい気持ちは、命令されなくても動く。

俺はその背中を見て、最初にラトナ村へ来た日のトトを思い出した。


昼過ぎ、セラの声が聞こえなくなった。

ロウが立ち上がり、俺も息を止めた。

しばらくして、か細い泣き声がした。

「生まれた!」

オルナが戸を開けた。

顔は疲れ切っていたが、笑っていた。

「女の子だよ。セラも頑張った」

医師はまだ母子の状態を確かめている。

俺たちは喜びのあまり小屋へ押し寄せないよう、外で待った。

ニノが俺の袖を引いた。

「十三人だったのに、十四人になったね」

「ああ」

「食べ物も、十四人分いるね」

「そうだな」

子供の言葉は、いつも帳面より早く大切なことを教えてくれる。

夕方、セラが赤ん坊を抱いて戸口へ出た。

医師は無理をさせないよう椅子を用意した。

「名前を考えたの」

セラは小さな顔を見つめた。

「ルカ。ここまで流されずに届いた、光みたいな子だから」

ロウが頷いた。

「いい名だ」

「でも、書く場所がない」

セラの声が震えた。

喜びと不安は、同じ胸に並んでいた。

俺はフェルトを呼んだ。

彼は書類を持って来たが、すぐに机へ広げなかった。

「お母さん、出生の届け出は、土地の所有とは別に進められます。医師の確認と、あなたの申告が必要です。ここに住む権利の結論を、今日出すものではありません」

「書いたら、連れていかれませんか」

「そのような命令は出ていません。もし別の手続きが始まるなら、通知を出します。黙って進めることはしません」

ロウは長い間、黙っていた。

「俺が書く」

「おじいさん?」

「お前の名前も、子の名前も、なかったことにさせたくない」

フェルトが差し出したのは、住民を追い立てる命令書ではなく、出生届の用紙だった。

セラはルカの名を口にし、医師が確認欄に署名した。

ロウは証人として、自分の名をゆっくり書いた。

震える手が何度も止まる。

「字が下手になった」

「読めます」

フェルトが言った。

「十分、読めます」

俺は横で見ていた。

俺が代わりに書く必要はなかった。


その夜、ロウは山の人々を集めた。

「俺たちは十三人だった。今は十四人だ。だから食料も、毛布も、明日の予定も、十四人分で数える」

誰かが笑い、誰かが泣いた。

オルナは赤ん坊を起こさないよう、小さな声で歌った。

ニノが聞いた。

「じゃあ、明日から隠れなくていい?」

ロウは答えた。

「まだ全部決まったわけじゃない。けれど、助けてと言っていいんだ」

「ぼくも?」

「もちろんだ」

俺は倉庫の表示を閉じた。

食料の残量より、今夜は十四という数字を忘れたくなかった。


翌朝、カイトの便が山へ着いた。

荷札には『山地暫定救援地点・十四人』と記されている。

個人名は必要な書類だけに残し、配達員が運ぶ荷札には載せない。

カイトはロウに受領を頼んだ。

「全部届きましたか」

「数えてから返事をする」

ロウは袋を一つずつ量り、受領欄に印を押した。

「十四人分、確かに受け取った」

ニノが赤ん坊のいる小屋を振り返った。

「ルカにも、明日の分ある?」

「あるよ。ただし、赤ちゃんに何を食べさせるかは、お母さんと医師が決める」

カイトが答えると、ニノは真剣に頷いた。

医師が来るまでの数時間、オルナは村の女性たちに仕事を分けていた。

「湯を運ぶ人、布を洗う人、子供を見てくれる人。みんな一度に小屋へ入らないで」

俺は水の運搬を引き受けた。

倉庫へ飲み水を収納できても、汲み場で水を確かめ、密閉容器へ入れる作業は必要だ。

水を無から作る力ではない。

ロウは火のそばに座り、濡れた薪を乾かしていた。

「役に立たないじいさんだな」

「火を守ってくれてます」

「それしかできん」

「それがないと湯が作れません」

ロウは黙って薪を一本足した。

赤ん坊が生まれたと聞いても、ロウはすぐに笑わなかった。

「母親は無事か」

「医師が診ています」

「子は息をしているか」

「泣いていました」

ようやく彼の肩が落ちた。

オルナが戸口から呼んだ。

「ロウ、セラが会いたがってるよ」

老人は帽子を取り、土の付いた手を洗った。

中へ入るとき、何度も足を止めた。

「お前が生まれたときも、こんなに小さかったか」

セラが笑った。

「私は覚えてないよ」

「俺も、もう覚えてない」

その声は少し震えていた。

フェルトは届け出の控えを二通作った。

一通は役所で保管し、一通はセラが持つ。

「なくしたら、どうすれば?」

セラが尋ねた。

「再発行の手続きがあります。連絡先をここに書きます」

ロウは横から口を挟んだ。

「字が読めない者は?」

「詰所の番人と、救援便の連絡係にも説明しておきます。ただし、本人の情報は勝手に広めません」

セラは控えを布に包んだ。

その紙には、ルカの名前と生まれた日が、誰かの都合で消されないように書かれていた。

何年も紙を恐れてきた人々が、今度は紙を失わないように守っていた。

ニノは赤ん坊の名を何度も繰り返した。

「ルカ、ルカ。忘れないように」

「そんなに呼ぶと起きちゃうよ」

セラが笑う。

「でも名前って、呼んでもらうためにあるんだよね」

ニノは考えてから、小さな声で呼んだ。

「ルカ、おはよう」

まだ夜だった。

オルナが吹き出し、ロウまで笑った。

俺はその笑い声を聞いて、十三人が初めて俺たちを追い返さなかった日の静けさを思い出した。

帰り際、セラが俺を呼んだ。

「この子が大きくなったら、何て話せばいい?」

「何をですか」

「私たちが、ずっと名前を隠して暮らしていたこと」

俺は考えてから言った。

「隠さなければ生きられないと思ったことも、名前を書こうと決めたことも、両方話せばいいと思います」

セラはルカを抱き直した。

「この子は、自分の名前を怖がらずに言えるといいな」

ロウが横から、初めて声を震わせずに言った。

「ルカ。ここで生まれた子だ」

ロウは出生届の控えをセラに渡した。

そこにはルカの名前と、山の集落を示す暫定の番号が並んでいる。

「昔、わしらの番号が消えた。だから怖かった。だがこの子の番号は、誰かが食料を届けるときにも、医師を呼ぶときにも役に立つんだな」

セラは紙を赤ん坊のそばに置き、ルカの小さな手が触れないよう端を押さえた。

「いつか本人に見せる。ここに生まれて、ここで待っていた人がいたって」

たったそれだけの紹介を、十三人はずっとできずにいた。

山を下りるとき、俺は地図の空白に小さな印を付けた。

そこに住む人の人生まで、印一つで表せるわけではない。

それでも、誰かが次に道を探すとき、何もない場所として通り過ぎないように。

十三人目の配達先には、十四人目の名前が生まれていた。

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