第二章④ マクシム隊
ブレスト停泊地は、朝焼けとも夕焼けともつかない曖昧な光に満たされていた。
ル・コンケやウェサン周辺では何隻もの帆船が商船の航路を塞ぐまいと、手綱を引かれた馬のように右へ、左へと身をよじらせている。帆の影が海面に散り散りに落ち、まるで海そのものがざわついているようだった。
沿岸警備を担う第五艦艇部隊。例年より多く海へ駆り出された海賊討伐の第七艦艇部隊。王国海軍の蒼い軍旗が各所で翻り、周辺海域はまさに網を張った状態だった。
そんな緊張感ある海域の片隅で、ひときわ場違いな空気を漂わせているのが一隻の小型フリゲート船。マクシミリアン・ブーケ隊が乗る船だ。
「んー。それっぽいの、なかなかいませんね」
望遠鏡を覗き込みながらメリッサが頬を膨らませる。潮風が彼女の髪を攫い、レンズの先で揺れた帆影が幻のように形を変えた。マクシム隊は少数精鋭、というより、深海魚みたいにどこか放っておけない独立気質の塊だったが、参謀部の嫌がらせはそれに拍車をかける。大きい船に乗せてもらえないどころか、他部隊への増援参加すら許されない。参謀部の言い分は決まってひとつ。
「自分たちの発案なんだから、自分たちでやれ」
つまり、「勝手に動くやつらは勝手に頑張れ」ということらしい。甲板には隊員全員がずらりと並び、肩を寄せ合いながら望遠鏡を構えていた。誰も彼もが真剣な顔で海を睨みつけている姿は、それはそれで様にならなくもないのだが……問題はその全員が望遠鏡という統一感だ。どう見ても海賊を嗅ぎ分ける職人集団ではなく、珍しい海鳥でも探して遠足に来た海軍学校の生徒たちのそれに近い。
望遠鏡のレンズ越しに映る船影を、マクシムは一隻ずつ丹念に追っていた。右手には望遠鏡。左手には、フランソワ海賊団に関する目撃情報をまとめた参謀部作成の書類。彼は視界の向こうと手元の紙面とを、何度も照らし合わせるが、その仕草は冷静そのものに見えて、実際のところはまるで逆だった。普段ならば折り目一つ付けぬよう扱う書類を、マクシムは明らかに握っていた。紙の端には微かに皺が寄り、白い指の節の間にはっきりと青筋が浮いている。参謀部に一矢報いる。その執念が潮風より重く彼の肩にのしかかっていた。マクシムの隣で望遠鏡を覗き込んでいたダヴィットがしばらくしてから口を開く。
「隊長」
ダヴィットの望遠鏡を離さないままの一言にマクシムが短く返事をし、僅かに視線だけを向けた。
「そろそろお昼にしませんか? このまま続けたら、海賊に遭遇する前に隊員が全滅しますよ。飢えで」
ダヴィットの乾いた冗談に、周囲で聞いていた隊員の何人かが小さく吹き出しそうになったが、マクシムは眉一つ動かさず言った。
「出陣してまだ三日目です」
書類の角が指に押されて小さく歪み、マクシムは視線を海へ戻して淡々と続ける。
「この辺りは、サン・マロへ最短で抜けられる航路があります。彼らは必ずここを通るはずです。見逃すわけにはいきません」
ダヴィットは望遠鏡を下ろし、かすかに苦笑した。
「隊長、その気迫は尊敬しますが……腹は意思では動いてくれません。そろそろ誰か倒れますよ。本当に」
マクシムは返す言葉もなく、表情一つ緩めず海を睨んでいる。その時、規律正しい足取りのリラが階段を上ってきた。背筋を伸ばし、風に揺れる外套を手で押さえながら、まるで司令官の補佐を務める士官のように整った顔でマクシムの前に立つ。
「隊長、お願いがあります」
リラの声は実に落ち着いていて、まっすぐだったが、彼女の胃袋で鳴り響く警鐘はその冷静さの下で暴れている。
「せめてメリッサだけは解放してください。ひとりくらい見張りが減っても構わないでしょう?」
一見、戦略的判断を装った理路整然とした訴えだが、彼女の視線は一度だけ食糧庫のある甲板下の入り口に吸い寄せられた。そのわずかな揺らぎが腹の虫の企みを赤裸々に物語っている。マクシムは書類を握る手を緩め、息を吐いた。
「……わかりました。メリッサだけは解放しましょう」
マクシムの言葉は甲板の端で望遠鏡を構えていた本人にまで届いた。
「ほ、本当ですか!? やったー!!」
メリッサは全身で喜びを爆発させ、足で甲板を踏み鳴らす勢いだ。隊員たちも思わず笑い、ひととき海風が軽やかに揺れるが、その歓喜の弾丸のような勢いは途中で失速した。メリッサの瞳がリラの無表情な視線と腹を押さえる隊員たちの期待に満ちた顔を順に捉えていく。ただの休憩ではない。料理だ。求められているのはそれだ。彼女の理解がじわじわと胸を冷やし、肩がみるみるしぼんでいく。
「……えっと。やっぱり、そういう……感じですよね……?」
さっきまでの満面の笑みは消え去り、遠い潮騒のような小声でメリッサは呟いた。
「……というか」
グウェナエルが望遠鏡を肩の高さまで下げ、わざとらしいほどの声量で言った。その声音は、まっすぐマクシムの鼓膜を狙い撃つ。
「船を一隻ずつ捕まえて尋問した方が早いんじゃないか? あいつら、襲撃のたびに船を乗り換えていくんだろう」
明らかに「こんな捜索、徒労の極みじゃないか」と言外に叩きつけている。彼のすぐ横でサミュエルが腕を組み、眉間を揉んだ。
「まったくだよ。それに連中、普段は普通の船乗りを装うって話だ。目撃情報にある、あの派手な格好をいつもしてると思わない方がいい。カラフルな羽根帽子に金ボタンの外套……そんな分かりやすい姿でうろついてるわけがない」
ロザリーもまた望遠鏡を胸に抱えたまま首を傾げた。
「他に判別方法はないのかしら。彼らだけが使う旗とか、符号とか……もっと決定的な何か」
返事はどこからも返ってこない。それぞれの顔が、同じ種類の疲労で曇っていく。空腹だけでなく、情報の曖昧さと参謀部の無茶振りに心まで削られているのが露骨だった。最終的に誰ともなく、隊全員がまったく同じため息をついた。そんな中、ただ一人だけ妙に涼しい顔の男がいた。シャルルだ。彼は片眼鏡の位置を指先でつつき、陽光を反射させながら、思いついたばかりの奇案をぽろりと落とした。
「あるとすれば……言語ですかね」
その場の空気が、ばっさり止まる。隊員全員がいっせいにシャルルを見る。困惑の顔が十一人揃うとなかなか壮観だったが、当の本人は視線の集中すら快適そうに受け止めて続けた。
「こちらからカスティーリャ語で話しかけるんですよ。海賊船には国籍も出自もごった返しているはずです。その中に、カスティーリャ語の使い手が紛れている可能性は高い。反応した者がいれば、海賊船である可能性が高いということになります」
甲板の上に凪のように無音が降りた。遠くのカモメの鳴き声すら、呆れて黙りそうな沈黙。ロザリーが眉を引きつらせ、メリッサは口を半開きにしたまま固まり、ダヴィットは「言語で判別?」と自分の耳を疑っている。マクシムに至っては、握っている書類の端がくしゃりと音を立てた。あまりにも唐突で、あまりにも雑で、あまりにもシャルルだった。潮風だけが彼の暴論を優しくかき消していく。マストの根元で腕を組んでいたマルセロは彼の暴走理論を聞き終えた瞬間、こめかみを押さえた。
「……腹減りすぎて頭おかしくなったんじゃないか?」
軍医の声にしては妙に切実だった。空腹で隊員が倒れるなど軍医の恥、どころか存在意義の否定。彼の視線はすでに「栄養失調の予備軍」と化している隊員たちへ向けられている。そんなマルセロの背中を押すように、アニータがぱんっと手を叩いた。
「みんな! そろそろご飯にしましょうよ!」
衛生兵らしい容赦ない采配。彼女の声を合図に、堰を切ったように隊員たちが動き始める。ぺこん、と軽い音を立ててペネロペが望遠鏡を放り投げた。
「お腹すいたー。あたし、休憩もらうわ」
勢いのまま飢えた猫みたいにスタスタ歩き出す。続いてスザンヌが望遠鏡を胸に抱えながら、そっと一礼した。
「すみません、私も休憩いただきます」
上品なのに逃げ足だけは速い。彼女の動きに呼応するように、他の隊員たちもぞろぞろと望遠鏡を懐にしまい始めた。腹の虫の合唱が見張り台より早く主導権を握ったらしい。ただ一人、マクシムだけがその光景に背筋を固くしたまま、書類を握りしめて動かない。そんな空気などお構いなしに、隊員たちは昼食へ向けてぞろぞろと甲板を後にした。フリゲート船はひとときの空腹停戦に入る。マクシムは呆然としたまま、口元がひくりと動く。
「ま、待ってください! もう少し、もう少し頑張りましょうよ!」
隊長のくせに隊長らしくない、心の芯にまだ湯気が立った状態で絞り出した、あやふやな説得。もちろん、誰にも届かない。その時、マクシムの視界の端を何かがよぎった。別のフリゲート船が、風に押されて横切ろうとしている。その白い帆が昼の陽光を浴びて滑るように近づいた。マクシムの中で何かが弾ける。
「ええい、どうにでもなれ!」
錯乱すれすれの、もう開き直りに近い心境だった。彼は手すりへ身を乗り出し、通り過ぎようとするフリゲート船へ向けて、肺いっぱいに空気を詰めて叫んだ。
「やあ! 今日も仕事に精が出るね!」
もちろんカスティーリャ語だ。もう何がしたいのか自分でもわかっていない。だが、向こうの甲板で縄を巻いていた水夫がこちらを振り返り、やわらかいカリブ訛りのカスティーリャ語で朗らかに返してしまった。
「おう! 昼が終わったらもっと働くさ!」
マクシムは一瞬固まった。そのままフリゲート船は風に乗り、すいと通り過ぎていく。マクシムは踵を返し、隊員たちのもとへ向かおうと歩き出したが、三歩目でぴたりと止まった。
「……ん、今のって」
昼餉の香りよりも強烈に、脳裏に海図のような線が浮かび、、その線がひとつの答えに収束した瞬間、彼の背筋を冷たい指が這い上がった。マクシムは弾かれたように振り返り、遠ざかるフリゲート船を凝視した後、全力で駆け出した。
「敵です! 見つけました!!」
ちょうどパンをかじろうとしていた隊員たちが一斉に固まり、甲板へ雪崩れ込んだ。サミュエルが真っ先に舵輪へ飛びつき、荒っぽく舵を切りながら怒鳴る。
「どの船だ!? どれだ!!」
マクシムは息を切らしながら、振り返った方角を指さした。
「あのフリゲート船です! 今すぐ追ってください!」
命令が放たれた瞬間、船は風を裂くように身をかがめ、昼食どころではなく隊員たちの胃より先に帆が膨らんだ。海風が刃のように頬をかすめる中、船首でマクシムは獲物だけを見つめていた。まるで心臓が前方のフリゲート船へ引っ張られていくようだった。彼の横で、シャルルが片眼鏡に指を添えて、静かに近寄る。動きは落ち着いているのに、どこか誇らしげな気配が漂っている。
「隊長。奴ら、どんな言葉を使ったんです?」
マクシムは硬い喉をひとつ鳴らし、視線を逸らさずに答えた。
「カスティーリャ語でした。しかも……しっかり、カリブ訛りの」
シャルルの口角がぴくりと上がった。自信が光のように漏れ出す。
「やっぱりね」
思えば、あの無茶な提案は正気ではなく本気だった。マストの途中から声が降ってくる。
「隊長! あの船に追いついたら何をすれば!」
グウェナエルだ。望遠鏡を小脇に、眼光は獣のように鋭い。マクシムの声が甲板に響く。
「鉤縄を使って乗り込みを! フリゲート船なら敵の数もそこまで多くないはず。報告によれば、おそらくあの船が追跡船!」
甲板が一瞬、ぐっと引き締まる。空気が戦支度を始め、続けてマクシムは振り返り、周囲に指示を飛ばす。
「信号旗を使って、付近の海軍船に通達してください! 標的を確認したと。海軍の方針では海賊は生け捕りが原則! 峰打ちか、人数差で戦意を折る! 殺しは最終手段です!」
ロザリーはすでに航海計算に没頭し、サミュエルは舵を両腕で抱えるようにして船を走らせていた。追跡戦はすでに始まっている。海の色さえ深くなる。潮の匂いが濃くなり、甲板の木目さえ緊張で軋むようだった。マクシム隊のフリゲート船は軽い。船体も、積載物も、余計なものが削がれた俊敏な刃のように、波間を跳ねるたび海賊船へと距離を詰めていく。帆は膨らみ、風は味方し、海そのものが背中を押してくる。船の後方で、スザンヌが必死に旗を振っていた。身体を波に合わせて踏ん張り、布が裂けんばかりの勢いで信号旗を振り切る。色彩の束が空気を切り裂き、太陽の下で閃光のように瞬く。
「……届いて……!」
祈りに似た声が漏れた時、遠方に浮かぶ別のフリゲート船の見張り台で一人の水夫が身を乗り出した。彼の手が額に影を作り、信号旗に気づいたらしい叫び声が上がる。その船の舳先がぎぎ、と軋んで方向を変えた。続くように、第二の船が帆を張り直し、第三の船が舵を切る。船体がうねりのように海賊船方向へ向き始め、木々を束ねた艦隊が生き物のように一斉に動き出した。第七艦艇部隊の隊員たちは戦場の匂いには誰より鋭い。参謀部が机上で判断を誤ろうと、海に出る者は違う。判断が速い。反応が速い。旗を受け取った瞬間、迷いなど砂のように吹き飛ぶ。信号はマクシム隊から他の部隊へと渡り、そこからさらに横の部隊へ、まるで海原の上に一本の火種が走ったように次々と連鎖していった。旗が翻り、帆が鳴り、掛け声が水面に落ちる。
「敵船確認! 進路変更!」
「追跡に入る! 前進準備!」
「帆を張れ、急げ!」
海賊船に向かって何隻ものフリゲート船が矢の束のように集まり始める。マクシム隊の船は先頭で風を裂き、その後ろを頼もしい影が追いかけてくる。マクシム隊のフリゲート船の舳先が、海賊船の船尾にぎりぎりで触れそうになった瞬間、マクシムは叫ぶ。
「今だ!」
彼の手にはサーベル。マクシムは瞬時に舳先を駆け抜け、跳躍して海賊船に飛び移った。着地の際、彼は海賊船の船尾で軽く受け身を取り、すぐさま戦闘態勢に入る。武器を手にした海賊たちが殺到するもマクシムは一歩も退かず、的確に敵の動きを読み、一人、また一人と気絶させていく。
「まずはこの船を止める。操舵輪を握るやつだ」
マクシムの視線は操舵手に向けられ、周囲の海賊が一斉に彼に襲いかかるが、その隙に他の隊員たちも舳先や鉤縄を使って次々と乗り込んだ。身軽な彼らは海賊の目を掻い潜り、鮮やかに峰打ちを決めていく。その中、鉤縄で乗り込んだグウェナエルは険しい顔で声を張った。
「俺は今、機嫌が悪いんだ」
周囲の海賊たちが何事かと目を見開く中、グウェナエルは続けた。
「昼飯がお預けになったんだよ!」
マクシムが操舵手へ向かって切り込みに行くと同時に、後続の隊員たちが次々と海賊船に降り立つ。着地と同時に、彼らの腹が一斉に鳴った。ぐぅ、とあまりにも正直な音がして、向かい合った海賊が思わず顔をしかめるが、隊員たちは遠慮などしない。
「悪いな兄ちゃん」
ダヴィットは素手で海賊の腕を掴み、容赦なく捻り上げて峰打ち。
「三日間、干し肉しか食ってないんだわ。今の俺らは厄介だぞ」
リラは海賊の攻撃をしなやかに受け流しながら淡々と呟く。
「料理係を働かせるために全員で腹を空かせてるこの状況、あなたたちに理解できる?」
そのまま彼女は冷徹な一閃で海賊を気絶させた。ペネロペは怒りの瞳で迫る海賊に吠える。
「昼休憩の直前に見つけたってタイミングが最悪なのよ!!」
ペネロペは振りかぶったサーベルの峰が海賊の頭をドラみたいに鳴らした。マルセロも軍医のくせに容赦ない。「はい解散!」と言いながら手加減なしの蹴り。
「空腹で倒れる前に戦闘終わらせるぞ」
スザンヌは優雅な動きで海賊の武器を弾き飛ばし、妙に上品な謝罪を添えながら気絶させていく。
「ごめんなさい。本当は昼食を摂ってから相手したかったのですが……」
シャルルは舵輪の方へ突き進みながら叫ぶ。
「隊長! この空腹の怒り、ぜったい無駄にしません!」
サミュエルは海賊三人に囲まれながら「昼飯の邪魔すんな!!」と本気の怒号を上げ、渾身の峰打ちで三人まとめて倒す。海賊たちは怒り狂った軍人集団に遭遇したことを悟り、若干怯え出した。マクシムはその混乱の中でも冷静で、操舵手を一気に詰めていく。相手が剣を構えるもサーベルの平で叩き落とし、操舵手の首筋に軽く柄を当てて気絶させ、操舵輪を掴むと深く息を吸い込んだ。
「……よし。この船、制圧するぞ!」
マクシムが振り返れば海賊たちは次々と倒れ、あちこちで隊員たちが「腹減った」「早く終わらせろ」「昼飯昼飯」と文句を垂れながら戦っている。マクシムが思い切り取り舵を切ると海賊船は船首を大きく振り、甲板に立っていた海賊たちが一斉に転倒する。船を無理やり停止させた瞬間、周囲の海域には他の第七艦艇部隊の艦隊が展開し、海賊船を包囲した。海賊船の先鋒、追跡船の船長は茫然とした目でその光景を見ていた。唖然としながら呟く。
「なんだ、こいつらやってることが正気じゃないぞ……」
隊員たちの凶暴なまでの空腹と苛立ちに押され、海賊の船長の表情は徐々に引きつり、恐怖と諦めが入り混じると肩を落として息を漏らした。
「やっぱり……海賊でいる方がマシなんだなあ……」
その隙を逃さず、長身のグウェナエルとサミュエルが船長を掴む。船長は必死に抵抗するが力は及ばない。グウェナエルの低い声が響く。
「早く、仲間の船の特徴を吐け!」
サミュエルも厳しい視線を船長に向ける。海賊船長は息を荒げながら必死に口を開いた。
「わ、分かった……フランソワに、申し訳ないと思いつつ……でも、あの……海軍たち、恐ろしすぎる……!」
しばらくの間沈黙が続き、彼は吐き出すように続けた。
「このあと、ガレオン船が二隻やってくる……一定の間隔を空けて……」
事実上の降参宣言だった。長身二人に取り押さえられたまま、船長の目には諦めと戦慄が混じる。マクシムは一歩下がり、船首側に視線を向けた。波の先に広がる海を見据え、進んだ航路とこれから来るガレオン船の位置を頭の中で計算する。
「なるほど。この後に、彼らが」
甲板にはまだ若干の荒れた空気が漂い隊員たちの熱気が残るが、マクシムの言葉は未来の行動を予告していた。




