第4話 女王の盾
「女王の盾?」
怪訝な顔を浮かべるルミに対し、フェルナンドは笑う。
「当たり前だろ。お前を生かすための作戦だからな? ……ぱっと思いつくのは、遮蔽物か」
「遮蔽物?」
「おう。ただし、普通の壁じゃだめだ。必要なのは、不破壊の性質を持つ壁だ」
「……そんなものって」
「ここにあるだろ?」
フェルナンドは自分を親指で指さす。
「え?」
「ルミの絶対防御で包まれた俺は、十分遮蔽物になるはずだ」
「……だめ」
「……あのなぁ」
フェルナンドは肩をすくめる。
「不破壊、不溶解、完全遮断。中にいる俺は絶対安全なんだろ?」
「……でも」
「自分を守れないなら、せめて後ろに隠れろ」
「……だけど、女王は!」
「絶対防御で包んだ時点で、女王の仕事は完了だ。民は守ってるんだから。……あとな」
金色の目が静かに青色を射抜く。
「俺はお前が守るべき民じゃない。お前の横に立つ王配だ。どんなときでも、お前と一緒に立ちたい」
彼女は何も言えない。
「分かったか?」
ルミは静かに黙り込む。
「……一緒に」
「おう。みんなを守る女王サマの、盾にくらいならせてくれ。……といっても、お前の魔法頼りになることには、変わらないが」
あくまでも彼は軽く笑う。
「一緒に、立ってくれるの……?」
「おう」
「……分かった」
「決まりだな」
彼は肘をつきながら、にかっと笑った。
「決行は何時からにする?」
「お昼ごろって、11時も入るかな?」
「かもな。凍結までにかかる時間は?」
「やろうと思ったら一瞬」
「化け物かよ。ま、避難誘導の時間を考えると、10時頃か。……授業中だな」
「尖塔には登りやすそう」
ルミの言葉に、フェルナンドは笑う。
「確かに。じゃあ、明日は体調不良にしとくか。朝9時50分に尖塔前集合な」
「分かった」
「……あいつにも……いや。いっそ言わないほうが……」
「何か言った?」
「何でもねえよ。ルミ、部屋に戻るだろ? 送ってくよ」
「別にいいのに」
「こんな時間に恋人を一人で帰すなんて皇子の名折れだ。兄貴たちにどやされる」
「……分かった。ありがと」
ルミは笑って立ち上がる。
「普通はここで手を取るんだけど……ルミには暑いか」
「どっちでもいいよ。……手、つなぎたいし」
「……保冷剤でも持ち歩くか。いつでも手を冷やせるように」
「過保護」
フェルナンドはルミの手を取って歩き出す。二人の笑い声は夜へと溶けていった。




