第3話 俺にも噛ませろ
「……え?」
キョトンとしているルミに、フェルナンドはいたずらっ子のような笑みを向ける。
「ルミ、俺が得意な魔法は?」
「……安定化と……ブースト?」
「おう。当たりだ。お前の隣で、お前の魔法を安定させる。何なら制御を代わったっていい」
ルミはフェルナンドの肩を掴み、「危ないよ」と止める。
「……フェルだって皇子様じゃん」
「……お前のロジックに乗るなら。俺ほど代替可能な皇族はいないぞ。なんてったって、皇位継承が絶望的な第七皇子だからな」
「……そんな、言い方……」
「お前と同じだ」
彼女は黙り込む。彼はあえて軽く笑った。
「それに、女王サマが絶対守ってくれるんだろ?」
「……それは、もちろん」
「じゃ、決まりだな」
フェルナンドはノートを片付け、一枚の紙を取り出す。それは学園の見取り図であった。側面図も描かれている。
「作戦は?」
「……尖塔に登って、学園を氷で補強して。みんなをお昼前には凍らせる」
「へえ。で、ルミはどうやって自分を守る?」
「……無理だよ。絶対防御を全員に張ったら、そんな余力ない」
「……なるほどな」
フェルナンドは腕を組んだ。口角は上がっている。
「……じゃあ、作戦を直していいか?」
「直す?」
「おう。お前の生還率を少しでも上げる」
「え?」
「俺、お前の王配になる計画、諦めてないから」
彼はにんまりと笑った。
学園の見取り図を見ながら、フェルナンドは口を開く。
「まずは俺の魔法とルミの魔法を繋げる方法だが……」
「絶対防御でいいんじゃない?」
「……あれ、中に入ったら寝るんだろ?」
「ううん。眠らせずに閉じ込めることもできるよ」
「……なるほどな……」
フェルナンドは腕を組む。
「ルミ。最上級の防御魔法を張れる余力を残したうえでの、絶対防御の展開数は?」
「……わかんないけど……150とか?」
「150か……。150?」
「うん」
「やっぱ規格外だな……」
「でも、みんなを守るには全然足りない」
「それはそうだな。……やっぱ、避難誘導だな」
「……みんな、信じてくれるかな……」
「……それがネックだよなぁ。……あ」
フェルナンドは顔を上げる。
「ルミ。氷を動物の形にして操れたよな?」
「……できるけど……」
「それの制御、俺にくれ」
「……何する気?」
「でっかい狼に襲われたら、みんな逃げるだろ」
「……危なくない?」
「ケガはさせないようにする」
彼はくるくるとペンを回した。
「あとは、角度計算だな」
「角度計算?」
「ああ。太陽の檻がどこから打ち込まれるか予想して、被害範囲を予想する」
「……怪しいところ、見に行く?」
「いけんのか?」
「氷の鳥を使えば、ある程度は近づける。感覚共有できるよ」
「……頼む。大体の位置と高さを知りたい」
ルミは頷くと氷の鳥を二羽出した。さっきよりも大きめだ。
「触れば、制御できるんだよね?」
「術者が制御させてくれる気があればな」
フェルナンドは氷の鳥に触れる。
「……やっぱ冷てえ」
「氷だもん」
「……よし、制御取れた。行くぞ」
彼は窓を開けて鳥を飛ばす。ルミが操る鳥の先導で怪しい場所へと向かう。雲を越えたあたりで高温が発生し、鳥は少しずつ水滴に変わっていく。やがて溶けてしまった。
「……高度15キロ以上か。位置から考えると、角度は35度から50度」
「計算早いね」
「数学は得意なの、知ってるだろ? ……ビームの太さは直径500メートルのはずだ。学園の敷地から外は安全だな」
「……じゃあ」
「氷の狼で中の奴らを全員追い出し、学園を占拠。残ってる奴らは凍結、でどうだ?」
「……倫理的にはあれだけど……いいと思う」
ルミは呆れたように笑う。
「……じゃ、最後のピースだな」
「最後のピース?」
「ああ。女王サマを守る盾だ」
フェルナンドは頬杖をついたまま、にんまりと笑った。




