第19話 謁見の間で
フェルナンドはルミとリカルドを連れて謁見の間に向かう。護衛の騎士たちが厚い生地のジャケットに身を包む中、女王は薄手のドレスを身にまとっていた。
ルミは一度彼のそばを離れ、女王の傍らに立つ。フェルナンドとリカルドは帝国式の礼をした。
「イルヴェリア王国女王陛下、イルザ・ハーヴィ様へ、ヴァイデソル帝国第七皇子、フェルナンド・メディナ・ガリゲスが、リカルド・ヴァルセインと共にご挨拶を申し上げます」
「ようこそ、イルヴェリアへ。国を上げて歓迎いたしますわ」
彼女は新雪のように微笑む。
「娘から毎日話を聞いておりました。フェルはかっこいい、優しい、ちょっといたずらっ子、と」
フェルナンドは思わずルミを見やる。イルザはふふっと笑って続けた。
「娘を守ってくださり、ありがとうございました。母親としてお礼を申し上げます」
「礼には及びません。むしろ、こちらの不手際で危険な目に合わせてしまいました」
淀みなくそう答える。イルザは微笑んだ。
「雪と氷しかない国ですが、どうか楽しんでください」
「ご寛恕に感謝いたします。それでは、これ以上女王陛下の貴重なお時間を頂戴してはなりませんので、これにて失礼いたします」
彼はそう言った後に退出する。廊下に出たところでぐっと伸びをした。
「……ふう。疲れた……」
「ご立派でした」
「ありがとうな」
「あー、さみい。客間に戻るか」と声を出していると、ぱたぱたと足音がした。振り返るとルミがいる。
「フェル、お疲れ様。かっこよかったよ」
「おう。……つうか、お前女王陛下に何吹き込んでんだよ」
「事実だよ? ちょっと過保護で、お勉強も得意で……」
「……待て待て待て」
指折り数え始めたルミを止める。照れ隠しで頬をかいた。
ルミと共に客間へ戻る。彼女はフェルナンドをじっと見たあと、ゆっくり口を開いた。
「フェル、私の誕生日はこっちにいるんだよね?」
「おう。その予定だ。……どうした?」
「あのさ、私の誕生日を祝う夜会で、エスコートしてほしくて」
「……いいのか?」
「うん。フェルがいい」
彼はそっと彼女に近づき、白い髪に指を通す。
「いいぞ」
「ありがとう」
ルミは霜星花にも似た笑顔を浮かべる。フェルナンドは頭をかいてつぶやいた。
「……悪いけど、当日はマントかなにか借りていいか? 寒い」
「いいよ」
彼の言葉に、ルミはころころと笑った。
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