第17話 アイスケーキ
雪が降り積もる針葉樹林の中、ルミは薄手のノースリーブドレスを身に纏い、氷が張っている湖面に足をつけてちゃぷちゃぷ水遊びをしていた。しまちゃんも気持ちよさそうに雪浴びをしている。
フェルナンドは呆れ笑いをしながら、なるべく足音を立てずに近づく。そのままそっと彼女の目を覆った。
「だーれだ?」
「……え? フェル?」
「あたり」
フェルナンドはからから笑う。ルミは慌てて振り向いた。
「16時じゃなかった?」
「なんか、手違いがあって。……寒くねえ……んだよな?」
「お水はあったかいよ? フィルもする?」
「凍え死ぬわ」
ルミの冗談にけらけら笑う。
「……顔赤いね。凍傷になりかけてない?」
彼女はそう言って彼の頬に触れた。
「……あったかいな」
「私の手があったかいって相当だよ? お城に戻ろう?」
「……そうする」
フェルナンドは鼻をすすりながら笑った。
城に戻ったルミは、使用人に暖炉を入れてもらうように頼む。彼女は心配そうにルミをのぞき込んだ。
「……大丈夫ですか?」
「アイスティーも持ってきて。氷たっぷりで」
「……かしこまりました」
使用人は暖炉に火を入れて、すぐに厨房に走る。
「……俺は生き返るけど……。暑くねえの?」
「暖炉くらい大丈夫」
「……ならいいけど」
フェルナンドは何か言いたげに彼女を見た。使用人がほとんど氷のアイスティーを持ってくる。
「……凍ってね?」
「たぶん、すごく冷やしてくれたんだと思う」
グラスを傾けると、からりと氷の音がなった。
「……体調、どう?」
「だいぶ良くなってきてる。春には、学園に戻れるかも」
「マジ?」
フェルナンドは自分のことのように喜ぶ。
「うん。今朝も30度に下がってたし」
「……下がった? ……昨日は?」
ルミは視線をそらす。
「……ルミ」
「……31度」
「暖炉消すわ」
「寒いでしょ」
「厚着する」
暖炉を消し始めた彼に対し、彼女は「過保護」と笑った。
しばらく他愛のないおしゃべりをしていると、フェルナンドは顔を上げて呟いた。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「誕生日、近かったよな。プレゼント持ってきた」
彼は立ち上がると、大きな荷物を漁る。
「荷物、大きくない?」
「泊まりなのと……、プレゼントがちょっと大きくて。……お、あったあった。まず一つ目な」
「……一つ目?」
「おう」
取り出したのはケーキの箱。彼は「ほい」とそれを手渡す。
「……ケーキ?」
「まあ、開けてみろって」
ルミは箱を開ける。中から出てきたのはホールケーキだった。
「美味しそう」
「だろ? ……実はそれ、アイスなんだよ」
「え?」
思わずフェルナンドを振り返る。
「アイスケーキって言うんだ。味はバニラ、チョコ、チョコチップ、ソーダ、クッキーアンドクリーム、ココナッツ……」
「いろんな味?」
「おう。ピースごとに違う味だぞ」
ルミはフェルナンドとケーキを交互に見やる。
「……晩ごはん、これにする」
「ちゃんと食え。それはおやつかデザートだ」
彼は笑いながらその額を小突いた。
「今食うか?」
「食べる!」
「一ピースだけな。どれがいい?」
「クッキーアンドクリーム!」
「……どれだっけ」
フェルナンドは付属している説明書を見ながら呟いた。
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