第16話 イルヴェリア王国へ
太陽の檻の無力化から一週間後。フェルナンドは今まで着たことのないほど分厚い防寒着を着て、イルヴェリアの地に降り立った。護衛兼お目付役としてリカルドが同行している。
「……さっむ」
「低温とは聞いていましたが、まさかここまでとは……」
二人はブルブル震えながらイルヴェリア城へと向かう。屋内に入ったら少しは寒さがマシになった。
「あー……コート、脱ぎたくねー」
「礼儀ですから。……はっくしょん。失礼いたしました」
「お前だって耐えられてないじゃねえか」
フェルナンドは笑いながらコートを脱ぐ。周りを見てぽつりと呟いた。
「……この国の礼服、厚着だな。そりゃそうか」
「……とにかく、女王陛下に挨拶を」
「だな」
彼は笑って歩き出す。その時だった。人々がざわめき出す。
「……え? なんでフェルナンド殿下が?」
「一時間早い……?」
彼はキョトンとした表情を浮かべた。
「え? 15時って伝えてたはずだ」
「16時では……。確認してきます」
貴族らしい人が駆け出していく。フェルナンドはリカルドに小声で確認した。
「……15時だったよな?」
「……そう聞いておりますが……」
「俺が15時だ、ってお前に伝えてたわけじゃないよな?」
「はい。別の方から聞いております」
「……だよなぁ」
しばらくして確認してきた人が戻ってきた。びっしょりと汗をかいている。
「申し訳ございません。こちらの不手際で殿下の到着が一時間遅く伝わっておりました」
「ああー。……今回は俺個人のお見舞いだから気にしなくていい」
フェルナンドは軽く笑う。
「……その、女王陛下は16時まで会議が入っておりまして……。ご挨拶を待っていただくことは可能でしょうか……」
「構わないぞ。……あー、ルミには会えるか?」
「ルミ殿下でしたら空いておりますが……」
「いや、ルミ殿下はちょっと出かけてくるって言っておりましたよ」
貴婦人らしき人が口を挟む。
「16時までには帰ってくる、と裏手の湖へ」
「……誰か、案内してもらってもいいか?」
「もちろんでございます」
貴族のような人は侍従を呼ぶ。彼が案内してくれるようだった。再度コートを着込んで外に出る。雪が積もった針葉樹の森へと足を進めた。楽しそうな鼻歌が聞こえてくる。ルミの声だ。
「こちらです」
侍従が指し示す先、少し開けた湖にルミがいた。
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