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幕間 少し、近い——香は重なる
香のことは、やはり、よくわからない。
嫌いではない。
むしろ、よい香りだとは思う。
ただ——
少し、近いのだ。
この距離で、この香り。
逃げ場がない、というほどではないけれど、
どこへ行っても、同じようについてくる。
「本日は、やわらかな香りにございますね」
女房がそう言う。
やわらかい、とは。
——似たようなことを、思い出す。
昔、運動のあと。
やけに甘い香りのする布に囲まれて、
少しだけ、息苦しくなったことがあった。
あれに、近い。
絹は、水に弱い。
気軽に洗う、ということができないらしい。
だから、香を焚く。
重ねるように、香りをのせる。
隠すのではなく、整える。
そういうことだと、教えられた。
——なるほど、とは思う。
思うのだけれど。
「整っておりますよ」
そう言われても、なお。
少しだけ、近い。
慣れるしかないのだろう。
——たぶん、慣れないけれど。




