第61話 名核の下で
最初に聞こえたのは、足音ではなかった。
深いところで空気を吸い込むような、長く湿った音。続いて石壁の内側から低い鐘が鳴り、少し遅れて同じ音が返ってくる。
わたくしは階段の途中で立ち止まった。
「……呼吸に聞こえますわね」
「俺にもそう聞こえる。ただ、人間の息にしちゃ長すぎるな」
カルマが前方へ明かりを向けた。
螺旋階段の先は、天井の低い搬送路になっていた。両壁に銀の管が埋め込まれ、一定の間隔で白い光が走っている。足元に荷車の車輪が残した溝が二本。その間に、細い水の筋が光っていた。
ゼェレは一段下りて、壁の管へ耳を近づけた。
「息じゃないね。送風機の音が混ざってる。でも、間隔はずいぶん変だなぁ」
「人がいるかどうかは、まだ分からないということですか?」
シュテルさんが尋ねる。
「うん。そこは自分で確かめて。私は管がどこへ繋がってるか見たい」
そう言うと、ゼェレはすぐに歩き出した。
わたくしは彼女の背を見送ってから、カルマと目を合わせた。
「先に通路を確認してくださる?」
「任せとけ。ただし、何か見つけたら勝手に触るなよ」
「そちらこそ」
「分かってるって」
いつもの調子で返してくれたことが、今はありがたかった。
◇
搬送路の突き当たりには、分厚い扉が二枚あった。
左には〈資材搬入〉。右には〈名核接続区〉。
右の扉の上には、王国の古い紋章と教会の星環紋が、別々の金具で取り付けられている。設置した年代が違うのか、王国側の紋章だけがひどく摩耗していた。
扉は施錠されていなかった。
カルマが片側を押すと、蝶番が小さく鳴る。内側から薬品と湿った布の匂いが流れ出した。
寝台があった。
これまで見てきた施療院のものとは違う。石の台座の上に細い金属の枠が載せられ、枠から伸びる導路が床へ潜っている。台座の下には車輪が付いていたが、動かせるようには見えなかった。
奥へ目を向ける。
幾つかの寝台に、人が横たわっていた。
ひとりは白髪の女性。胸の上で手を組んだまま、浅く息をしている。隣には若い男性がいて、その首元から銀色の環が肩へ延びていた。
別の台は空だった。寝具だけがきれいに畳まれている。
「シュテルさん」
わたくしが呼ぶより早く、彼女は女性の脇へ膝をついていた。
「聞こえますか。私はシュテル・シュトラール、聖盾審問官です。助けに来ました」
女性の瞼が震えた。
しかし返事はない。
シュテルさんは呼吸を確かめ、枠と身体を繋ぐ銀環へ視線を移した。触れようとして、一度手を止める。
「リズさん。この環も、外す前に確認した方がよさそうです」
「ええ」
そう答えた瞬間、背後で乾いた音がした。
カルマが扉の脇から細い紐を引き出している。
「開けたら鳴る仕掛けだ。もう音がしたかもしれねえ」
「それなら急いで、という話だね」
ゼェレは道具鞄を床へ置いた。
「でも、この枠を引っ張って外すのはやめて。下の管がまだ生きてる」
彼女は寝台のそばへしゃがみ、台座の継ぎ目へ細い金属片を差し入れた。
「上で絞ったのは、補完送出に抜ける分だけだったんだね。こっちには別の供給管が来てる。……あれ? 供給が減ったら患者を休ませる造りだったはずなのに、減った分をもっと引くように改造してある」
「確かめられますの?」
「見れば分かる部分はね。どこまで人の身体に影響してるかは、本人を診ないと分からないよ」
ゼェレは金属片を抜き、シュテルさんへ場所を空けた。
手際がよかった。わたくしが警戒していることなど気にも留めず、自分に分かることだけを告げて次の仕事へ移る。
その潔さを、まだどう受け取るべきか決めかねていた。
「……だれ?」
かすれた声がした。
白髪の女性が、こちらを見ていた。
「いま、お身体を確認しています。苦しいところはありますか?」
シュテルさんが顔を近づける。
「胸が……重いの。起きようとすると、息が続かなくて」
「無理に起きなくて大丈夫です。お名前を教えていただけますか」
女性は唇を開きかけ、そこで目を伏せた。
「名前……言っていいの?」
シュテルさんの指が一瞬止まった。
「もちろんです。どうして、そう思われたのですか?」
「ここでは、言っちゃいけないって。間違えるからって……」
女性は枕元の小さな札を見た。
札には、数字と短い記号しか書かれていない。
わたくしは胸の奥が冷えるのを感じた。
「ここでどのように呼ばれていたとしても、ご自分のお名前を話すことに許可は要りませんわ」
女性がゆっくりとこちらを見る。
「……サビーネ。サビーネ・オルトよ」
「サビーネさん。ありがとうございます」
シュテルさんはその名を紙へ書き、女性にも見えるようにした。
「これで合っていますか?」
女性は時間をかけて文字を追い、頷いた。
《名核》という文字が、ようやく目の前の寝台の姿と結びついた。帳簿の記号から想像していたものより、ずっと生々しい。ここには胸の苦しさを訴え、帰る日を待つ一人の女性がいた。
わたくしは彼女の枕元に置かれた番号札を見直す。
そこに名前はない。担当医の署名もない。あるのは搬入日と、定期送出の時刻だけだった。
「ここへ来られた経緯を、お話しできます?」
「施療院で……しばらく検査をするって。痛みが取れたら帰れるって言われたの」
「いつ頃ですの?」
「もう……よく分からない。窓がないから」
サビーネさんは苦しそうに目を閉じた。
シュテルさんがそれ以上聞かず、額へ手を添える。
「お話は後で大丈夫です。今は休んでください」
女性の呼吸が落ち着くのを待ってから、シュテルさんがわたくしを見る。
「二人とも、生きています。ただ、長い間ここにいらしたのなら、急に環を外すのは危険かもしれません」
「そちらは私も同感」
ゼェレが台座の反対側から顔を上げた。
「こっちの補助線が心臓の動きに合わせて魔力を戻してる。今は回収だけ止めても、返す方を切っちゃ駄目だよ」
「先ほどの部屋と同じ仕組みですのね」
「似てるけど、こっちはもっと直接繋がってる。随分思い切ったことするなぁ」
彼女はそこで一度、言葉を切った。
青い瞳が、寝台の枠ではなくサビーネさんの顔へ向く。
「……この人、寝てる間も引かれてたんだ」
先ほどまでの軽い口調が消えた。
けれど、それもわずかな間だけだった。
「シュテル。呼吸が速くなったらすぐ教えて。私は返還側を残したまま、回収の方を絞る」
「分かりました」
わたくしはふたりの手元へ目をやった。
人を魔力の供給源として扱い、その命を維持する仕組みまで同じ装置に組み込む。止めれば救えるとも、動かせば助かるとも、簡単には言えない。
王国は、こんなものをどのような名目で認めてきたのか。
《白冠》が外縁の人々を守っていることは知っている。だからこそ、誰がその維持を担うのかは、当事者の意思を抜きに決めてよいはずがなかった。サビーネさんには、帰れる日さえ知らされていない。
◇
「リズ、奥に管理室がある」
カルマが通路から戻ってきた。
「人はいねえが、書類と操作盤が残ってる。入口の紐が警報なら、誰か来る前に見た方がいい」
「わたくしも参りますわ」
「ここは任せてください」
シュテルさんはサビーネさんの手を握ったまま言った。
ゼェレも頷く。
「私はこの台座を見てる。変なものが動いたら呼ぶよ」
わたくしは魔札を二枚だけ手元に残し、カルマと管理室へ向かった。
廊下を折れると、正面に小さな窓があった。そこから寝台の並ぶ部屋が見える。窓の下には操作卓があり、中央に黒い金属板がはめ込まれていた。
〈名核接続・運用照合〉。
その下に、二つの欄。
〈王国名録照合〉。
〈中央教義院接続確認〉。
わたくしは思わず身を寄せた。
幼い頃、父の執務室で見た監査書には、照合の前に必ず人の名前を記す欄があった。面倒な手続きだと思っていた自分が、今では恥ずかしい。
単に王国と教会の帳票が同じ場所に保管されていたのではない。片方の確認だけでは先へ進めないよう、操作盤そのものに二つの手順が設けられている。
「これ、どっちも押さなきゃ動かせないのか?」
「そのように見えますわ。ただ、いま使われている仕組みが表示どおりかどうかは、確かめなければ」
操作卓の端には薄い冊子が置かれていた。
紙の角は何度もめくられたように丸くなっている。
その冊子を開き、わたくしは息を呑んだ。
〈接続対象の公名は、受入時の王国照合記録に従うこと〉。
続く行には、〈運用区画では対象番号を用い、公名の転記を省略できる〉とある。
余白に、異なる筆跡で修正が加えられていた。
〈本人確認書類は中央保全局にて別途保管〉。
けれど、その保管先を示す番号は黒く塗り潰されている。
「……リズ?」
カルマの声に顔を上げる。
わたくしは頁を彼に向けた。
「最初は名前で確認する仕組みだったようですわ。けれど、ここでは番号だけで扱えるように変えられています」
「元の名前と繋がらなくても、装置は動くってことか」
「少なくとも、この規定では運用時の転記を省けます。けれど、その前に誰が本人だと確かめたのか、確かな記録が必要なはずです」
カルマが隣の棚を開けた。
中には束ねられた薄い札が並んでいる。先ほどの寝台と同じ番号が付いた札もあった。
「これか?」
彼はそのうち一枚を引き出し、わたくしの前へ置いた。
札の裏に、擦れた文字が残っていた。
〈サビーネ・オルト〉。
わたくしは顔を上げた。
「……先ほど、ご本人が名乗られた名前ですわ」
「こっちには残ってるのに、寝台の札からは消えてるんだな」
「ええ」
すぐに《ローズ・リスト》を呼び出したくなった。
けれど、その手を止める。
同じ名前が書かれていることと、この記録が本人の正しい公名を示していることは、まだ別だった。照合の履歴も、本人の承諾も、この札だけでは分からない。
だから、まず書かれているものをそのまま残す。
わたくしは冊子と札の位置を記録し、手元の紙へ写し取った。
「どうした?」
「父が使っていた監査書を、ここで開こうと思いましたの。でも、その前に確認すべきことがありますわ」
「本人に聞くか」
「ええ。それから、この札がいつ、誰の手で作られたのかも」
カルマは頷き、棚の奥へ手を伸ばしかけた。
そのとき、操作卓が短く鳴った。
〈下層移送・準備開始〉。
黒い板の文字が変わり、通路側の扉が自動で閉まり始める。
「まずいな」
カルマが身を翻した。
遠くでシュテルさんの声がする。
「リズさん! 寝台が動き始めました!」
◇
廊下へ飛び出すと、台座の一つが床の溝に沿ってゆっくり滑っていた。
サビーネさんが横たわったまま、壁の向こうへ運ばれようとしている。
「止められるか!」
カルマが台座へ駆け寄る。
「本体を押さえないで!」
ゼェレの声が飛んだ。
「床の溝から動いてる。力任せに止めると、身体に繋がった管が引っ張られる!」
「じゃあ、どこだ!」
「左の車軸。いや、違う……待って」
ゼェレが石床へ膝をつく。指先が溝の縁へ沈むと、台座の進路に沿って石が盛り上がった。
車輪の前ではなく、少し離れた位置に低い壁ができる。
進んでいた台座が、そこへ向かう途中で速度を落とした。
「今。カルマ、あそこの留め金を外して!」
「見えてる!」
カルマが台座の側面へ手を入れ、連結具を引き抜く。
硬い金属音。
台座は止まった。
しかし、サビーネさんの胸元に走る光が、急に強くなった。
「……っ、苦しい……!」
「すみません、もう少しだけ!」
シュテルさんが枠のそばで祈祷を始める。
白い光が女性の胸元を薄く包んだが、銀環へ触れた途端、吸い込まれるように揺らいだ。
わたくしは魔札を飛ばしかけ、思いとどまる。
叩き壊せばよいものではない。前の部屋で、もう学んでいる。
「ゼェレ、どこへ力をかければよろしいの?」
「そっちの管は触らないで。……あ、ちょっと分かった」
ゼェレは台座の下から顔を上げた。
「移送と回収が連動してる。台座が動けなくなったから、先に中身だけ送ろうとしてるんだ」
「中身って、魔力か?」
「そう。こんなときまで、よくできた仕組みだね」
最後の一言には、笑いがなかった。
壁の奥で鐘が鳴る。
女性の指が震え、シュテルさんの袖を掴んだ。
もう躊躇している場合ではない。
「わたくしが送出側の弁を固定します。位置を教えてくださいまし」
「台座の右下。小さい方。そこだけ動きを止めて」
ゼェレの指示を聞き、魔札を一本の細い管へ滑り込ませる。
弁が開こうとする力に逆らい、そこで固定した。
手首に重い反動が返る。
それでも札は離さない。
「カルマ、管理室の卓に移送停止があるか見てきて!」
「了解!」
「シュテルはそのまま呼吸を見てて。戻す方の流れは切らないから」
「はい!」
ゼェレの両手が石床に触れる。
彼女の手元から薄い石の板が起き上がり、台座の下面を支えた。ゼェレの肩が一度だけ震えた。それでも指先は止まらず、溝に沿った細い金属の筋が、石の内側へ収まる。
硬いものが擦れ合う音がした。
「……これで、移送側は切れた」
胸元の光が落ち着く。
サビーネさんの呼吸はまだ浅い。それでも、少しずつ間隔が揃ってきた。
カルマが走って戻ってきた。
「停止操作はあった。でも押す前に表示が変わった。向こうで移送の指示を出してる!」
「誰が?」
「名前は出ねえ。管理者権限って表示だけだ」
わたくしは札を保ったまま、奥の扉を見た。
鉄の合わせ目から、別の光が漏れている。
今、誰かがこの区画の状況を把握し、奥から命令を出しているらしい。
この人たちを運び出すために。それとも、こちらへ見せないために。
いずれにせよ、もう放置できない。
◇
ゼェレが台座の状態を確かめ、ようやく立ち上がった。
「一人分の回収は止めた。返還の線は残ってるから、今すぐ悪化することはないと思う。でも、外へ運ぶなら医者と設備に詳しい人が必要だね」
「この方を、ここへ置いたままにはできません」
シュテルさんが答えた。
「分かってる。だから急いで方法を探してるんでしょ」
ゼェレはいつもの気安い調子に戻りかけ、わたくしを見た。
「リズ、さっきの札、まだ保てる?」
「ええ。しばらくは」
「なら、ちょっとだけ手伝って。もう一人の台座も動く可能性があるから、先にこっちの安全を確保したい」
わたくしは頷いた。
カルマは通路の先へ向かい、閉じた扉と管理室を行き来しながら、次の移送が始まらないか確かめている。
シュテルさんはサビーネさんに、今何をしているのかをゆっくり説明していた。
「すぐに全部を外せるとは言えません。でも、ここから出る方法を探しています。もう勝手に運ばせませんから」
女性は小さく頷いた。
その様子を見て、わたくしはようやく自分の呼吸を整えた。
命を救うためには、相手を傷つける決断が必要になることもある。
けれど、目の前の人間を番号として扱わないことは、今すぐにでもできる。
わたくしは管理室で見つけた札の写しを取り出した。
「サビーネさん。お伺いしてもよろしいでしょうか」
「……ええ」
「こちらに、あなたのお名前が記された記録があります。ご本人のもので間違いありませんか?」
女性は手を伸ばそうとしたが、腕が上がらなかった。
わたくしが紙を近づけると、彼女は文字を追って、かすかに笑った。
「そう……私の名前。まだ、あったのね」
その言葉に、返事ができなかった。
名前が書かれた札は残っている。けれど、あの棚から出さなければ、寝台の上の彼女は番号のままだった。
わたくしは《ローズ・リスト》を胸元から呼び出す。
黒薔薇の刻印が、薄暗い部屋に淡く浮かんだ。
番号札と公名の書かれた札。それに、彼女自身の証言。
これで照合すべき相手は分かった。
けれど、記録の空白を埋めるには、まだ必要なものがある。誰が、いつ、どんな権限で彼女の公名を番号へ置き換えたのか。
頁はそこだけ、答えを返さなかった。
わたくしは無理に先へ進めず、開いた記録を閉じた。
「必ず、確かめますわ」
サビーネさんはもう目を閉じていた。
それでも、彼女の手がシュテルさんの袖を離すことはなかった。
◇
奥の扉が、再び鳴った。
今度は警報ではない。錠が外れる音だった。
カルマが即座に《赤鐘》を抜いた。
「誰か来る」
わたくしは札を固定したまま、扉へ向き直る。
ゼェレがその前へ歩き、靴先で床石を確かめた。壁も床も彼女の術式が届く。いつでも通路を閉じられる位置だ。
扉の向こうから、落ち着いた男の声がした。
「そこにいる者たちへ告げる。搬送を妨害するなら、接続者の命は保証できない」
シュテルさんの手が止まった。
わたくしはその言葉を聞いて、強く唇を噛んだ。
わたくしたちが進めば、寝台の人々を危険にさらすと脅している。
そしてこの男は、その危険を理解している。
少なくとも、運用している者の一人は、知ったうえで続けているのだ。
「お名前と所属をお聞かせくださいまし」
わたくしは扉へ声をかけた。
「こちらは、接続されている方々の保護を優先しております。あなたにも、設備の停止に協力していただきたい」
沈黙が落ちた。
やがて男は、わたくしの問いには答えずに言った。
「王国の承認を受けた設備だ。勝手な判断で止めるな」
その一言が、妙に静かに聞こえた。
王国の承認。
教会の地下で、人を名前ではなく番号で寝かせ、魔力を奪い続ける設備に、王国が承認を与えているというのか。
証拠として確かめなければならない。
けれど今、目の前でこの人たちを脅している者が、何を根拠に行動しているかは明白だった。
「でしたら、その承認を示す記録も見せていただきますわ」
わたくしが答えると、向こうで誰かが短く笑った。
「……面倒な女だ」
わたくしは魔札を一枚、扉へ向けて浮かべた。
破るためではない。開いた瞬間に、こちらへ向けられるかもしれない武器を止めるために。
ゼェレが横目でわたくしを見る。
「今度は先に準備してるんだ」
「ええ。守らなければならない方々がいますもの」
「……そっか」
ゼェレはそれ以上何も言わなかった。ただ靴先を少しずらして、石床に指を添える。
カルマは扉と寝台の両方を見られる位置へ移り、シュテルさんはサビーネさんのそばを離れない。
わたくしはもう一度、部屋の中を見渡した。
生きている人間がいる。
その名を知る者も、まだいる。
それを奪い取る仕組みが、王国と教会の手で守られているのなら。
わたくしが確かめるべきことは、まだ山ほどあった。
扉の隙間から、白い光が一筋、床へ差し込んだ。




