↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生猫ですが、最弱テイマーをダンジョン飯で最強に育てます  作者: 悪癖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/57

第48話 世界一かわいいが、三匹になった

 今日は、ちょっと楽しみにしていることがある。


 レンのところのレオと、小春のところのきなこ。


 俺の知っている二匹のテイムモンスターが、初めて顔を合わせることになったのだ。


 レオは元気いっぱいのグリフォン幼体。


 きなこは、背中に小さな翼がある、のんびりしたケットシー。


 ……うむ。


 考えてみると、ずいぶん性格が違うな。


 レオは俺を見つけるとすぐに駆け寄ってくるし、遊び始めたらなかなか止まらない。


 一方、きなこは隣に座っているだけでも満足そうだ。あいつとは一緒に箱へ入ったり、日向ぼっこをしたりしている。


 そんな二匹が会ったら、どうなるんだろう。


『ユウマ、そろそろ行くのか?』


「うん。もうちょっとしたら出ようか」


 休日の朝。


 俺はリビングのテーブルに立ち、出かける準備をしているユウマを見上げていた。


 今日の待ち合わせ場所は、もふもふ堂だ。


 犬飼がやっているテイムモンスター用品店で、俺たちにとってはすっかり馴染みの店になっている。


「ニャル、楽しみ?」


『おう!』


「そっかあ」


 ユウマが嬉しそうに笑った。


「ニャルの友達が増えるの、俺も嬉しいな」


『まだレオときなこが仲良くなるかは分からないぞ?』


「まあ、そうだけど。きっと大丈夫だよ」


『そうだといいな』


 俺は尻尾を揺らした。


 別に、無理して仲良くなる必要はない。


 猫にも好みがあるし、グリフォンにも好みはあるだろう。


 でも、せっかくなら三匹で一緒に遊んでみたいじゃないか。


「そういえば、小春さんもすごく楽しみにしてたよ」


『ほう』


「蓮がレオの写真を送ったら、かわいいって喜んでた」


『そりゃよかった』


「でも、最後にはきなこちゃんが世界一かわいいって言ってたけどね」


『……相変わらずだな』


「まあ、世界一かわいいのはニャルなんだけど」


『お前も相変わらずだな』


 俺がそう言うと、ユウマは笑いながら頭を撫でてきた。


 ……おお。


 朝からいい撫で心地だ。


 思わず目を細めてしまう。


「じゃあ、行こうか」


『おう!』


 俺はユウマに抱き上げられ、いつものように腕の中へ収まった。


 さて。


 今日はどんな一日になるかな。



――――――



「おっ、悠真!」


 もふもふ堂の前へ着くと、見覚えのある少年が手を振っていた。


 レンだ。


 そして、その足元には。


「クルルッ!」


『おお、レオ!』


 小さなグリフォンが、こちらを見つけて嬉しそうに鳴いた。


 前足を弾ませ、今にも駆け寄ってきそうな勢いだ。


「レオ、待て待て。ニャルは小さいんだからな」


「クル?」


 レンに声をかけられ、レオがぴたりと止まった。


 ……おお。


 ちゃんと待てるじゃないか。


 前に会った時より、少し落ち着いたのか?


『久しぶりだな、レオ』


「クルル!」


 ユウマが俺を地面へ下ろしてくれたので、レオへ近づいてみる。


 すると、レオも嬉しそうに鼻先を寄せてきた。


 くんくん。


『おっと』


 顔が近いな。


 まあ、嫌じゃないけど。


 俺も鼻を近づけて挨拶を返す。


 ……うむ。


 元気そうで何よりだ。


「ははっ。レオ、ニャルに会えて嬉しいんだな」


「ニャルも嬉しそうだよ」


 ユウマとレンが笑っている。


 確かに、久しぶりに会えたのは嬉しい。


 それに、こうして見るとレオもちょっと成長したような気がするな。


 まだまだ幼体だけど、以前より身体つきがしっかりしてきたようにも見える。


『レオ、大きくなったか?』


「クル?」


「おっ、ニャルも分かる?」


 レンが嬉しそうに頷いた。


「最近、ちょっとずつ大きくなってるんだよ」


『やっぱりか!』


「毎日見てると分かりにくいけどな」


 そう言いながら、レンはレオの頭を撫でた。


 レオは満足そうに目を細めている。


 ……うむ。


 いい飼い主と相棒だな。


「ところで、小春さんたちは?」


「もうすぐ来るって連絡あったよ」


「そっか。じゃあ中で待とうか」


 ユウマが店の扉を開ける。


 すると、奥から聞き慣れた声がした。


「おっ、今日は二組一緒か!」


 犬飼だ。


 俺たちを見るなり、嬉しそうに笑っている。


「ニャルもレオも元気そうだな!」


『おう!』


「クルル!」


「ははっ。いい返事だ!」


 犬飼はしゃがみ込み、まず俺たちの様子を確かめた。


 ……相変わらず、人間より先にテイムモンスターへ挨拶するんだな。


「今日は何か探しに来たのか?」


「買い物もしたいんですけど、今日は友達と待ち合わせで」


 ユウマが説明する。


「もう一組、テイマーの知り合いが来るんです」


「ほう。新しい友達か」


「はい。ケットシーの子なんですけど」


「おお、ケットシー!」


 犬飼の目が輝いた。


「それは楽しみだな!」


 ……うむ。


 この人も、なかなかのモンスター好きだ。


 まあ、今さらだけどな。


 俺たちが話していると、店の扉が開いた。


「こんにちはー!」


 明るい声。


 振り向くと、そこには見覚えのある女の子が立っていた。


 小春だ。


 そして、もちろんその腕には。


「にゃあ」


『おう、きなこ!』


 淡いきなこ色の猫が、のんびりした声で鳴いた。


 小さな翼を背中にたたみ、小春の腕の中からこちらを見ている。


「ニャル! 久しぶり!」


『おう!』


「今日もかわいいねえ!」


 小春が嬉しそうに笑った。


 ……ああ。


 いつもの小春だな。


「小春さん、こんにちは!」


「こんにちは、悠真くん!」


 ユウマが手を振る。


 その隣で、レンが少し姿勢を正した。


「あ、初めまして。高橋蓮です。悠真の友達です」


「あっ、初めまして! 白石小春です!」


 小春も笑顔で挨拶を返す。


「悠真くんから話は聞いてるよ。レオくんの飼い主さんだよね?」


「はい。こいつがレオです」


「クル!」


 レンの足元から、レオが顔を上げた。


 小春の視線が下へ向く。


 そして。


「……わあ!」


 目が一気に輝いた。


「本物のグリフォンだ!」


「はい。まだ小さいですけど」


「すごい! 翼もあるし、前足もかわいい!」


 小春がしゃがみ込んだ。


 でも、すぐに手を伸ばしたりはしない。


「レオくん、こんにちは」


「クルル?」


 レオは首を傾げた。


 ……おお。


 小春の挨拶が気になるらしい。


「かわいい……!」


 小春が小さく呟く。


「グリフォンの赤ちゃんって、こんなにかわいいんだね……!」


「でしょ!」


 レンが満面の笑みになった。


 ……あ。


 これは、あれだな。


 飼い主自慢が始まりそうだぞ。


 そんなことを考えていた時だった。


「クル?」


 レオの視線が、小春の腕の中へ向いた。


 そこには、初めて見る翼のある猫。


 きなこがいる。


 ……おっ。


 いよいよだな。



――――――



「クルルッ!」


 レオが嬉しそうに一歩踏み出した。


 新しい友達を見つけた、とでも言いたげな顔だ。


 一方、きなこは。


「……にゃ」


 少しだけ耳を動かした。


 そして、小春の腕の中からレオをじっと見つめている。


『ほう』


 やっぱり、反応が違うな。


 レオはすぐに近づきたい。


 きなこは、まず相手を観察したい。


 ……なるほど。


 これは、ちょっと間に入った方がいいかもしれないな。


「レオ、ちょっと待とうな」


 レンも気づいたらしく、優しく声をかけた。


「クル?」


「きなこちゃん、初めて会うんだからさ。ゆっくりな」


 レオはレンを見上げ、それからきなこへ視線を戻した。


 前足が少しそわそわしている。


 ……うむ。


 遊びたくて仕方ないんだな。


『レオ、こっちだ』


 俺は二匹の間へ歩いていった。


 レオが俺を見る。


「クル!」


『慌てるなって』


 俺は前足を上げて、少し待つように合図した。


 すると、レオはその場に腰を下ろした。


 ……おお。


 いい子だな!


『そうそう。それでいい』


 俺は今度はきなこの方を見る。


『きなこ、こいつがレオだ』


「にゃ?」


『俺の友達だぞ。元気だけど、悪いやつじゃない』


 きなこがゆっくり瞬きをした。


 言葉がどこまで通じているかは分からない。


 でも、俺が普段通りにしているのは分かるだろう。


『降りてみるか?』


「んにゃ」


 きなこは小さく鳴くと、小春の腕からふわりと浮き上がった。


 背中の翼がゆっくり動く。


 そのまま床へ降りようとして……。


「クルッ!」


 レオが思わず立ち上がった。


 おいおい。


『レオ、待て!』


「クル?」


 俺の声に反応して、レオがまた止まる。


 ……危ない危ない。


 別に飛びかかろうとしたわけじゃないんだろうけど、きなこからすれば、急に大きなグリフォンが動いたように見えるからな。


 実際、きなこは少し浮いたまま、レオから距離を取っていた。


 小さな翼がぴくりと動いている。


「きなこ、大丈夫だよ」


 小春が優しく声をかけた。


「無理しなくていいからね」


「にゃ」


 きなこは小春を見上げると、ゆっくり床へ降りた。


 ただし、まだ小春のすぐ近くだ。


 ……うん。


 それでいい。


 知らない相手へ、いきなり近づく必要はないからな。


『レオ、まずは俺と遊ぶか?』


「クル!」


 俺が声をかけると、レオは嬉しそうに尻尾を揺らした。


 ……おお。


 すごい勢いだな。


 俺は少しだけ離れた場所へ歩いていく。


 レオもその後ろをついてきた。


 とことこ。


 とことこ。


 俺が止まる。


 レオも止まる。


 俺が振り向く。


 レオが首を傾げる。


『……何だこれ』


 ちょっと面白いな。


「ふふっ。レオくん、ニャルの後ろついて歩いてる」


 小春が笑った。


「ニャル、慣れてるなあ」


「前からレオとは仲いいんですよ」


 ユウマが嬉しそうに説明している。


 そうこうしているうちに、きなこも少しずつこちらへ興味を示し始めた。


 最初は小春の足元から眺めていたけど、やがて一歩。


 もう一歩。


 ゆっくり近づいてくる。


「にゃ」


『おっ、きなこ』


 俺は足を止めた。


 レオも隣で止まる。


 きなこは俺の鼻先へ顔を近づけた。


 くんくん。


『おう。久しぶりだな』


「にゃあ」


 いつもの挨拶だ。


 俺も鼻を近づける。


 すると、レオが興味深そうに顔を寄せてきた。


「クル?」


 きなこがぴたりと動きを止める。


 ……おっと。


『ゆっくりな、レオ』


 俺は二匹の間に立ったまま、様子を見守った。


 レオは一度首を傾げた後、そっと鼻先を近づけた。


 きなこも少しだけ顔を前へ出す。


 くん。


 くんくん。


 ……おお。


 挨拶できたじゃないか。


 きなこはすぐに一歩下がったけど、さっきみたいに浮き上がったりはしなかった。


 レオも追いかけず、その場でじっとしている。


『よしよし』


 俺は満足して尻尾を立てた。


 すると、レオも嬉しそうに小さく鳴いた。


「クルル!」


 きなこはその声に耳を動かした後、ゆっくり瞬きをした。


 ……うむ。


 これは、なかなかいい感じじゃないか?


「……ねえ、悠真くん」


 小春が小声で言った。


「今、挨拶したよね?」


「うん。したと思う!」


「レオ、ちゃんと待てたな!」


 レンも嬉しそうだ。


 俺は三人を見上げた。


 ……いやあ。


 このくらいでそんなに喜ぶのか。


 まあ、初対面だからな。


 仲良くできそうなら嬉しいんだろう。


 ……俺も嬉しいけどな!



――――――



「それにしても、三匹並ぶとすごいなあ」


 ユウマがしみじみと言った。


 俺たちは今、店の奥の邪魔にならない場所で、少し休憩しているところだ。


 もちろん、犬飼にはちゃんと許可をもらっている。


「おう、いいぞ。ただし、他のお客さんが来たら場所を空けてくれよ」


 そう言いながら、犬飼も楽しそうに三匹を眺めていた。


 レオはレンの足元。


 きなこは小春の隣。


 俺はユウマの前に座っている。


 ……うむ。


 こうして並ぶと、本当にばらばらだな。


 俺は二十センチくらいの小さなヌッコ。


 きなこは俺より大きい、翼のあるケットシー。


 レオはさらに大きな、獅子と鷲を合わせたようなグリフォン幼体。


 同じテイムモンスターでも、全然違う。


「ねえ、見て。レオくんの前足、すごくかわいくない?」


 小春が嬉しそうに言った。


「この丸っこいところ!」


「あ、分かります?」


 レンがすぐに反応した。


「まだ幼体だから、結構ふわふわしてるんですよ」


「そうなんだ! かわいい!」


「でしょ!」


 ……おや。


 意外と話が合うな、この二人。


 と思っていたら。


「でも、きなこの前足もかわいいんだよ」


 小春が自分の猫を抱き上げた。


「ほら、この小さな肉球!」


「にゃ?」


 きなこが不思議そうに前足を動かす。


「おお、かわいい!」


 レンも素直に褒めた。


「でも、レオの肉球もいいんですよ!」


 ……ん?


 何か始まったぞ。


「ニャルの肉球もかわいいですよ!」


 今度はユウマが参加してきた。


 ……おい。


 何で俺の前足まで話題にするんだ?


「ニャルは身体が小さいから、肉球もすごく小さくて!」


「分かる! この前触らせてもらった時、すっごくかわいかった!」


「ですよね!」


 ユウマが満足そうに頷いた。


 ……うむ。


 何やら褒められているらしい。


 でも。


「まあ、世界一かわいいのはニャルなんですけどね」


 あ。


 言った。


 小春の笑顔が、ぴたりと止まった。


「……悠真くん?」


「はい?」


「世界一は、きなこだよ?」


「いや、ニャルですよ」


「きなこだもん」


「ニャルです」


 ……また始まった。


 この二人、本当に会うたびに同じことを言ってないか?


 俺は呆れて尻尾を揺らした。


 すると、レンが首を傾げる。


「いやいや。ちょっと待ってくださいよ」


 ……ん?


「世界一かわいいのは、うちのレオですけど?」


 ……おお。


 増えた。


「えっ、レオくん?」


「はい。もちろん!」


「いやいや、蓮。ニャルだって」


「お前はニャルしか見てないだろ」


「蓮だってレオしか見てないじゃん!」


「そうだよ。だってかわいいもん」


「それは分かるけど!」


 ユウマとレンが言い合い始めた。


 小春も負けていない。


「ちょっと待って! きなこのかわいさも見てよ!」


「いや、きなこちゃんもかわいいですよ!」


「そうそう。きなこちゃんもかわいいです!」


「でしょ!?」


 小春が嬉しそうに笑う。


 ……おっ。


 解決したか?


「でも世界一はニャルです」


「レオだろ」


「きなこだよ!」


 ……駄目だった。


『お前ら、何をそんなに争ってるんだ?』


 三人が俺を見た。


「世界一かわいいテイムモンスターの話!」


 ……なるほど。


 いや、分かってたけどな。


『三匹ともかわいいでいいだろ』


「それはそうなんだけど!」


「一番は別なんだよな!」


「そうなの!」


『……そうか』


 もう好きにしてくれ。


 俺は小さく欠伸をした。


 すると。


「あっ、ニャルが欠伸した!」


「かわいい!」


「ちっちゃい口だなあ!」


 ……おい。


 今度は何だ。


 こいつら、俺が何をしても喜ぶんじゃないか?


 俺が呆れていると、犬飼が横から笑いながら声をかけてきた。


「ははっ。三人とも、いい飼い主だな」


「そうですか?」


 ユウマが聞く。


「ああ。自分の相棒が一番かわいいと思えるのは、いいことだ」


 犬飼はそう言って、俺たちを見渡した。


「ただし、本人たちの前であんまり騒ぎすぎるなよ。三匹とも、もう呆れてるぞ」


 ……うむ。


 さすが犬飼。


 よく分かってるな。


 俺が満足して頷くと、ユウマたちは顔を見合わせた。


 そして、三人そろって笑い出した。


「確かに、ニャルは呆れてそう」


「レオも何の話か分かってないだろうしな」


「きなこなんて眠そうだよ」


 ……そうそう。


 それくらいのんびりしてくれ。


 俺たちは別に、世界一を決めてもらいたくて集まったわけじゃないんだからな。


 もっとも。


 ユウマたちが楽しそうなのは、悪くない。


 ……まあ、たまにはこういうのもいいか。



――――――



 しばらくすると、レオが何かを見つけた。


「クル?」


 視線の先にあるのは、俺の尻尾。


 ……ん?


 何だ、その目は。


 俺が尻尾を動かすと、レオの顔も動く。


 右へ。


 左へ。


 ぴくっ。


「クル!」


『おい、レオ』


 ……その反応、覚えがあるぞ。


 前にも俺の尻尾を追いかけようとしてただろ。


『これはおもちゃじゃないからな』


「クル?」


 レオが首を傾げる。


 ……聞いてるのか?


 俺が尻尾を身体の横へ寄せると、レオは少し残念そうな顔になった。


 ……むう。


 そんな顔をされると、ちょっと遊んでやりたくなるじゃないか。


『……少しだけだぞ』


 俺は尻尾の先をゆっくり動かした。


 ぴくぴく。


 レオの目が輝く。


「クルッ!」


 前足が、そっと伸びてきた。


 俺は尻尾を引っ込める。


 空振り。


 レオが首を傾げる。


 もう一度、尻尾を動かす。


 今度はレオが慎重に前足を伸ばした。


 ……おお。


 さっきよりゆっくりだな。


『そうそう。そのくらいならいいぞ』


 俺は少しだけ尻尾を揺らした。


 レオは嬉しそうに前足を動かす。


 ……うむ。


 こういう遊びなら悪くないな。


 すると。


「にゃ」


 横から声がした。


 振り向くと、きなこがこちらを見ていた。


 どうやら、俺たちの動きが気になったらしい。


『ん? きなこも遊ぶか?』


「にゃあ」


 きなこはゆっくり近づいてきた。


 レオが顔を上げる。


 ……おっ。


 また近づこうとしてるな。


『レオ、ゆっくりな』


「クル」


 レオはその場で止まった。


 きなこは俺の隣まで来ると、少しだけレオを見つめた。


 そして、ふわりと尻尾を揺らす。


 レオがその尻尾を見た。


 ……おい。


 今度はそっちか?


 でも、きなこは嫌がる様子もなく、その場に腰を下ろした。


 レオも少し離れたところへ座る。


 ……うむ。


 さっきより、ずいぶん落ち着いたな。


「おお、三匹で並んでる!」


 ユウマが嬉しそうに声を上げた。


「レオ、ちゃんと座ってるな」


 レンも満足そうだ。


 小春はきなこを見ながら、にこにこしている。


「きなこも慣れてきたみたい」


 ……そうだな。


 最初は距離を取っていたけど、今はレオが隣にいても平気そうだ。


 俺は二匹を見比べた。


 元気いっぱいのレオ。


 のんびりしたきなこ。


 その間にいる俺。


 ……何だか、ちょっと面白い組み合わせだな。


 でも、悪くない。


 俺がゆっくり腰を下ろすと、きなこも隣で身体を丸めた。


 レオはしばらく俺たちを見ていたけど、やがて同じように伏せた。


「クルル……」


『おお。落ち着いたか?』


「クル」


 レオが小さく鳴いた。


 ……うむ。


 いいじゃないか。


 俺は満足して目を細めた。


 すると、きなこの尻尾がふわりと動き、俺の背中に触れた。


 ……おっ。


 懐かしい感触だな。


 前に一緒に箱へ入った時も、こんな感じだった。


 今度はレオもいる。


 ……うん。


 三匹で過ごすのも、なかなかいいものだ。



――――――



「今日は集まってよかったね」


 帰る前。


 ユウマが満足そうに言った。


「うん! きなこも楽しそうだったし!」


 小春が頷く。


「レオもいい経験になったと思う」


 レンも嬉しそうだ。


「最初、ちょっと勢いよく近づきすぎたからな」


「でも、ちゃんと待ててたじゃない」


「そうそう。きなこちゃんも最後は落ち着いてたし」


 三人が楽しそうに話している。


 ……うむ。


 どうやら、人間たちもすっかり仲良くなったらしい。


 最初は初対面だったレンと小春も、今では普通に会話している。


 まあ、テイムモンスターの話なら、いくらでも続けられるみたいだからな。


「また三組で集まりたいね」


 小春が言うと、ユウマとレンがすぐに頷いた。


「いいですね!」


「俺も賛成です!」


 ……おお。


 また集まるのか。


 それはいいな。


『ユウマ、次は何するんだ?』


「ん?」


『また遊ぶのか?』


「そうだね。みんなで集まって、ゆっくりするのもいいかも」


『ふむふむ』


 ゆっくりする。


 それも悪くない。


 でも、せっかく三組で集まるなら、もう一つやりたいことがある。


 ……そうだ。


『なあ、ユウマ』


「何?」


『次は、みんなで飯でも食わないか?』


「ご飯?」


『おう!』


 俺は尻尾を立てた。


『レオにもきなこにも、何か美味いものを作ってやりたいんだ』


「ああ、そうだったね!」


 ユウマが笑った。


「ニャル、前からレオにも料理作りたいって言ってたもんね」


「えっ、レオに!?」


 レンが驚いたように顔を上げた。


「ニャル、作ってくれるのか?」


『おう! もちろんだ!』


「やった!」


 レンが嬉しそうに笑う。


「レオも喜ぶと思うぞ!」


「クル?」


 自分の名前が聞こえたからか、レオが顔を上げた。


 ……うむ。


 いい反応だ。


「きなこも、またニャルのご飯食べたいかもね」


 小春が言う。


「前に作ってもらった鶏肉の煮込み、すごく気に入ってたし」


『おお! それは嬉しいな!』


 そうだった。


 きなこには以前、鶏肉を中心にした料理を作ったことがある。


 普段の食事を小春に確認して、人間用とは別に薄味で仕上げたんだ。


 あの時は美味しそうに食べてくれたな。


 ……よし。


 今回もちゃんと考えよう。


『でも、レオときなこじゃ、食べられるものも違うだろ?』


「そうだね」


 ユウマが頷いた。


『だから、先に普段何を食ってるか聞いておきたいんだ』


「なるほど。レオはまだ幼体だからな」


 レンが少し考えた。


「普段の食事とか、犬飼さんにも相談しながら決めてるし」


「きなこも専用フードが中心だよ」


 小春が続ける。


「好きなものはあるけど、初めての食材は少しずつ試すようにしてる」


『うんうん。それが大事だな』


 俺は満足して頷いた。


 自分が食べられるからといって、他のテイムモンスターも同じものを食べられるとは限らない。


 特にレオはまだ幼体だ。


 きなこだって、俺とは違う種族なんだからな。


『よし。じゃあ次は、みんなの好きなものを聞いてから料理を考えるか!』


「いいね!」


 ユウマが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、今度はうちに集まる?」


「いいの?」


 小春が目を輝かせる。


「もちろん!」


「やった! またニャルの料理が食べられる!」


 レンも嬉しそうに頷いた。


「俺も楽しみだな!」


 ……うむ。


 決まりだな!


 俺は三人を見上げた。


 ユウマ。


 レン。


 小春。


 そして、足元には。


 レオ。


 きなこ。


 俺。


 ……こうして見ると、随分にぎやかになったものだ。


 最初はユウマと俺だけだったのにな。


 美味しいものを作って、ユウマに食べてもらう。


 それが楽しくて料理を続けていたら、少しずつ食べてくれる相手も増えてきた。


 レンがいて。


 レオがいて。


 小春ときなこもいる。


 ……うむ。


 これは、ますます料理のしがいがあるじゃないか。


「ニャル、楽しそうだね」


『おう!』


 ユウマが俺を抱き上げる。


 いつもの腕の中へ収まると、自然と喉が鳴った。


 ごろごろ。


「ふふっ。かわいい」


 小春が笑った。


「ほんと、ニャルはかわいいなあ」


「でしょ!」


 ユウマが即座に反応する。


 ……あ。


 また始まるか?


「でも、きなこもかわいいよ?」


 小春が自分の猫を抱き上げた。


「にゃあ」


「レオだって負けてないですからね!」


 レンもレオの頭を撫でる。


「クルル!」


 ……やれやれ。


 今日だけで何回目だよ、その話。


『もう三匹とも世界一でいいだろ』


 俺が呟くと、ユウマが笑った。


「それはそうなんだけどね」


『だけど?』


「俺にとっては、やっぱりニャルが一番かな」


 ……そうか。


 まあ、それなら仕方ないな。


 レンにはレオがいて、小春にはきなこがいる。


 そして、俺にはユウマがいる。


 みんな、自分の相棒が大好きなんだろう。


 だったら、それでいいじゃないか。


 俺はユウマの腕に顎を乗せ、満足して目を細めた。


 さて。


 次は三匹で食べるご馳走か。


 レオには何がいいかな。


 きなこには、前とは違うものを作ってみたいな。


 もちろん、ユウマたちの飯も忘れちゃいけない。


 ……うむ。


 考えるだけで楽しくなってきたぞ!


 世界一かわいいのが何匹いるかは知らないけど。


 美味しいものを食べたい相手が増えるのは、大歓迎だ。


 俺は尻尾をゆっくり揺らした。


『よし。次はみんなに美味い飯を食わせてやるからな!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。