第47話 親友に、猫友達を紹介したい
「なあ悠真。お前んちの猫、また話題になってるぞ」
朝の教室。
自分の席に鞄を置いたところで、親友の蓮がスマホを片手に近づいてきた。
「また?」
「また。ほら、これ」
差し出された画面には、見覚えのある小さな猫が映っていた。
うちのニャルだ。
二十センチほどの身体でキッチンに立ち、念動力で専用包丁を操っている。
どうやら『ニャルの台所』の切り抜き動画らしい。
「お、塩バター炒めのやつじゃん」
「そうそう。ホーンラビットとゴブリンポテトの」
画面の中では、ニャルが切り分けた肉をフライパンへ並べていた。
じゅうっと音が響くと、小さな三角耳がぴんと立つ。
その後、焼き色を確かめようと身を乗り出し、鼻をひくひくさせていた。
……かわいい。
俺は思わず画面へ顔を近づけた。
「おい、悠真」
「何?」
「お前、何回も見てるだろ、この動画」
「見てるけど?」
「なのに毎回そんな顔になるのかよ」
「だってかわいいだろ」
「……まあ、かわいいけどさ」
蓮は呆れたように笑った。
だけど、今の切り抜きはなかなか分かっていると思う。
肉を焼くところだけじゃなくて、ニャルが焼き色を確かめる時の真剣な表情まで入っている。
しかも、最後には満足そうに尻尾を立てるところまで。
うん。いい編集だ。
「……保存しとこ」
「お前、自分のチャンネルの動画だろ?」
「切り抜きは別だから」
「そういうもん?」
「そういうもん」
俺が動画を保存していると、蓮が隣の席へ腰を下ろした。
「でさ、俺が見せたかったのは、そっちじゃなくて」
「え?」
「昨日の大食いの人、知ってる?」
「ああ。ホーンラビット十匹分食べた人?」
「そう、それ!」
蓮はスマホを操作し、別の投稿を表示した。
「すげえよな。十匹分だぞ?」
「俺も見た時びっくりした」
「よく食い切れたよなあ」
まったくだ。
動画に映っていた料理はどれも美味しそうだったけど、量がとんでもなかった。
ニャルだって、あの動画を見た後はずっと十匹分という量を気にしていたくらいだ。
「で、その人がさ。食べた翌日から身体が軽いって言ってるじゃん」
「うん」
「今日も調子いいらしいぞ」
「ああ、それも見た」
今朝もニャルと一緒に投稿を確認したばかりだ。
本人は不思議がっているけど、コメント欄ではいろんな意見が出ていた。
食べすぎて逆に元気になったんじゃないか。
よく眠れただけじゃないか。
気のせいだろう。
中には、ホーンラビットの力が宿ったんじゃないか、なんて冗談もあった。
「なあ悠真。これって、もしかして……」
蓮が声を少し落とす。
「ニャルの料理を食べた時と同じなのか?」
「……かもしれない」
俺は頷いた。
ニャルの料理を食べ続けることで、俺の身体能力が上がっているのは間違いない。
最初に気づいたのは、ダンジョンで剣を振った時だった。
以前より剣が軽い。
踏み込みが速い。
疲れにくくなっている。
そんな変化が積み重なって、今では以前よりずっと安定して探索できるようになっている。
ただ、あの大食い配信者も同じなのかは、まだ分からない。
「本人も身体が軽いって言ってるだけだし、ちゃんと調べたわけじゃないみたいだからさ」
「ああ、そうか」
「本当にダンジョン飯の効果かもしれないし、別の理由かもしれない」
「なるほどなあ」
蓮はスマホの画面を見つめた。
「でも、もし本当だったら面白いよな」
「うん。それは俺も思う」
「だってさ。普通はダンジョンで強くなろうと思ったら、魔物を倒してレベル上げるだろ?」
「そうだね」
「それが、飯食って強くなれるかもしれないんだぜ?」
蓮が楽しそうに笑う。
こいつはもともと探索者適性が高い。
Aランク適性だから、普通に魔物を倒してレベルを上げるだけでも順調に強くなれる。
一方、俺は最低のGランクだ。
同じようにレベルを上げても、蓮ほど能力は伸びない。
でも、ニャルと出会ってからは、別の成長方法を見つけた。
今では以前より深い場所にも進めるようになったし、探索そのものがずっと楽しくなっている。
もっとも、俺たちは昔からそんな適性の違いを気にして付き合ってきたわけじゃない。
蓮は蓮。
俺は俺。
それぞれ自分のペースで探索して、学校で会った時に成果を話す。
それで十分だった。
「まあ、俺は十匹も食えないけどな」
蓮が笑った。
「俺も無理」
「ニャルなら作れそうだけど」
「作る方はね。でも、本人は同じものを大量に食べるより、いろんな料理を食べた方が楽しいって言ってたよ」
「あー……」
蓮が納得したように頷いた。
「めちゃくちゃニャルらしいな」
「だろ?」
「強くなる話をしてるのに、結局美味いものの話になるんだな」
「まあ、ニャルだから」
二人で笑っていると、始業前の予鈴が鳴った。
「あ、やべ。そろそろ戻るわ」
「うん」
蓮が立ち上がる。
その途中で、ふと思い出したように振り返った。
「そういや悠真。昨日、ニャル何作ったんだ?」
「昨日はニャルじゃなくて、母さんが生姜焼き作ったんだ」
「生姜焼き?」
「うん。ニャルはほうれん草のごま和え」
「……お前んち、相変わらず飯が充実してんな」
蓮が何とも言えない顔になった。
「それ、昼休みに詳しく聞かせろよ」
「別にいいけど」
「写真もあったら見せてくれ」
「分かった」
そう答えると、蓮は満足そうに自分の席へ戻っていった。
……そんなに生姜焼きが気になるのか。
まあ、母さんの生姜焼きは美味かったからな。
ニャルもかなり気に入っていたし。
それに、昨日のニャルはいつもと少し違っていた。
普段は料理を教える側なのに、母さんの隣で真剣に手元を見ていたんだ。
小さな耳をぴんと立てて、質問を繰り返して。
あの姿もかわいかったなあ。
……しまった。
写真、もっと撮っておけばよかった。
――――――
「うわ、うまそう!」
昼休み。
俺が昨日の夕食の写真を見せると、蓮がさっそく声を上げた。
画面には、生姜焼きとごま和え、それから白いご飯と味噌汁が並んでいる。
「これ、母さんの生姜焼き」
「いいなあ。タレがめっちゃ美味そう」
「美味かったよ。ちょっと甘めで、ご飯が進むんだ」
「くっそ、聞いてたら腹減ってきた」
「今、弁当食ってるじゃん」
「それとこれとは別だろ」
蓮はそう言いながら、弁当のおかずを一口食べた。
俺も自分の弁当を開く。
今日はニャルが朝から用意してくれたものだ。
ホーンラビットの香草焼きに、卵焼き。それから普通の野菜を使ったおかずも入っている。
蓋を開けた途端、蓮の視線がこちらへ向いた。
「……お前さあ」
「何?」
「昼までニャルの飯なの?」
「うん」
「いいなあ!」
蓮が身を乗り出した。
「その肉、ホーンラビット?」
「そう。ちゃんと処理してあるやつ」
「うわ、絶対美味いやつじゃん」
「美味いよ」
「即答すんなよ。余計食いたくなるだろ」
そう言われても、実際に美味しいんだから仕方ない。
俺は香草焼きを一口食べた。
冷めても柔らかい肉から旨みが広がり、エルフハーブの香りがふわっと鼻に抜ける。
うん。
やっぱり美味い。
「……何だよ、その幸せそうな顔」
「いや、美味いなって」
「分かってるよ!」
蓮が笑った。
こうやって昼飯を食べながらくだらない話をするのも、俺たちにとってはいつもの時間だ。
探索の話をすることもあれば、学校のことやゲームの話をすることもある。
最近は、そこにテイムモンスターの話題が加わった。
「あ、そうだ。レオは元気?」
「元気元気。元気すぎるくらい」
蓮が嬉しそうに笑った。
「最近さ、遊びたくなるとすぐ俺のところに来るんだよ」
「へえ」
「こっちが座ってると、足元まで来て見上げてくるの。で、構ってやるとめちゃくちゃ喜ぶ」
「かわいいな」
「だろ?」
蓮の顔が緩んだ。
……うん。
完全に飼い主の顔だ。
「写真あるぞ」
「見たい」
「ほら、これ」
蓮がスマホを取り出した。
画面には、小さなグリフォンのレオが映っている。
獅子を思わせる身体に、鷲のような翼。
まだ幼体だから、勇ましいというより、ふわふわしてかわいらしい。
写真のレオは、前足を揃えてこちらを見上げていた。
「うわ、かわいい」
「だろ!?」
「目がきらきらしてるな」
「そうなんだよ! 遊んでほしい時、こういう顔するんだ」
蓮は嬉しそうに写真を拡大した。
「しかもさ、最近ちょっと大きくなってきた気がするんだよな」
「そうなの?」
「うん。毎日見てるから分かりにくいけど、前の写真と比べると違うんだ」
「へえ。グリフォンって成長早いのかな」
「個体差もあるだろうけどな。犬飼さんにもまた相談してみようと思ってる」
犬飼さん。
テイムモンスター用品店『もふもふ堂』の店主だ。
ニャルの用品を買う時にもお世話になったし、蓮がレオを迎えた時にもいろいろ教えてもらった。
あの人なら、レオの成長に合わせて必要なものを教えてくれるだろう。
「そういや、レオはニャルにも会いたがってるんじゃない?」
「どうだろうな。でも、前に会った時はずいぶん興味津々だったぞ」
「ああ、そうだったね」
レオは好奇心旺盛だ。
ニャルを見つけると、遊びたそうに近づいていくことがある。
もっとも、ニャルはレオよりずっと小さいから、勢いよく来られるとちょっと困るらしい。
それでも嫌っているわけじゃない。
なんだかんだで、ニャルもレオのことを気にしている。
「昨日もさ、ニャルがレオに何か作ってやりたいって言ってたんだ」
「マジで?」
「うん。何が食べられるか、ちゃんと確認してからだけどね」
「うわ、それ嬉しいな!」
蓮が顔を輝かせた。
「レオ、喜ぶと思うぞ」
「そうだといいな」
「俺も食いたい」
「そっちが本音?」
「両方本音!」
まったく。
でも、俺も蓮がニャルの料理を美味しそうに食べるところを見るのは好きだ。
ニャルだって、食べてくれる人が増えると喜ぶし。
……ん?
待てよ。
そういえば、もう一匹いたな。
ニャルが仲良くなった猫型テイムモンスター。
「なあ、蓮」
「ん?」
「そういえば、まだ紹介してない友達がいるんだけど」
「誰?」
「小春さんっていう人」
「小春さん?」
蓮が首を傾げた。
「最近知り合った人?」
「うん。俺たちより一つ上の高校二年生で、探索者もやってるんだ」
「へえ。同じ探索者なんだな」
「でも、本格的に深いところへ潜るっていうより、休日に無理のない範囲で探索してる感じかな」
「なるほど。で、その人がどうしたんだ?」
「テイマーなんだよ」
「おっ!」
蓮が身を乗り出した。
「何飼ってるんだ?」
「ケットシー」
「ケットシー?」
「うん。名前はきなこ」
そう言うと、蓮が一瞬止まった。
「……きなこ?」
「そう。ひらがなで、きなこ」
「何か美味そうな名前だな」
「分かる」
俺も初めて聞いた時、かわいい名前だと思った。
そして、実際のきなこもすごくかわいい。
「どんなやつ?」
「猫型のテイムモンスターなんだけど、背中に小さな翼が生えてるんだ」
「翼!?」
「うん。飛べるよ」
「マジか!」
蓮が目を輝かせた。
「猫に翼って、めちゃくちゃかわいくない?」
「かわいいよ。しかも毛がふわふわで、すごく落ち着いてるんだ」
「へえ……」
「ニャルとはまた違うかわいさなんだよね」
「ほう」
蓮は興味深そうに頷いた。
「ニャルより大きいの?」
「うん。きなこは三十センチくらい。ニャルは二十センチくらいだから、並ぶと結構違うよ」
「なるほどなあ」
蓮が想像するように目を細めた。
「で、そのきなこって子と、ニャルはもう会ってるのか?」
「うん。小春さんときなこ、うちにも遊びに来てくれたんだ」
「えっ、そうなの?」
「一緒にご飯食べたり、遊んだりしたよ」
「いいなあ!」
蓮が楽しそうに笑った。
「ニャル、猫友達できたんだな」
「そうなんだよ!」
俺は思わず嬉しくなった。
ニャルは頭がいいし、人間とも普通に念話で会話できる。
でも、やっぱり猫型のテイムモンスター同士で過ごす時間も楽しそうなんだ。
「二匹で同じ箱に入ったりしてたよ」
「……箱?」
「うん」
「何で箱?」
「猫だからじゃない?」
「ああ……」
蓮が妙に納得した。
まあ、そういう反応になるよな。
俺だって、最初はどうしてニャルがあんなに箱へ入りたがるのか不思議だった。
今ではすっかり慣れたけど。
「しかもさ、ニャルが先に入ってた箱に、きなこも入ってきたんだよ」
「へえ!」
「でも、ニャル一匹にちょうどいい箱だったから、二匹だとぎゅうぎゅうで」
「ははっ! 何それ、かわいいな!」
「だろ!?」
そうなんだよ。
本当にかわいかったんだ。
ニャルが押されてちょっと困った顔になって、それでもきなこが落ち着いて座ったら、最後には二匹ともくっついて眠っちゃって。
……ああ。
思い出しただけでかわいい。
「写真ないの?」
「あるよ」
「見せて!」
俺はスマホを取り出しかけて、少し考えた。
あの時の写真は、小春さんと俺だけで交換することにしたものだ。
SNSにも載せず、家でのんびり過ごしていた二匹の姿として大事に残してある。
蓮なら変な使い方をすることはないと思うけど、せっかくなら小春さんにも確認してから見せたい。
「今度、本人にも聞いてから見せるよ」
「お、そういう写真か」
「うん。普通に遊びに来てもらった時のやつだから」
「そっか。じゃあ楽しみにしとく」
蓮はあっさり頷いた。
そして、少し考えてから言った。
「……なあ、悠真」
「何?」
「そのきなこって子、レオにも会わせてみたくない?」
「……あ!」
そうだ。
その手があったじゃないか。
ニャルときなこはもう仲良し。
ニャルとレオも知り合い。
だったら、三匹で会ってみるのも面白そうだ。
「いいね、それ!」
「だろ?」
「小春さんも猫好きだし、レオを見たら絶対喜ぶと思う」
「レオも新しい友達ができたら嬉しいだろうしな」
蓮がにこっと笑った。
「まあ、勢いよく近づきすぎないように気をつけないとだけど」
「ああ、そうだね」
レオは好奇心旺盛だから、初対面でもすぐ遊びたがるかもしれない。
一方、きなこは落ち着いた性格だ。
いきなり距離を詰めるより、ゆっくり慣れてもらった方がよさそうだな。
「最初は様子を見ながらでいいんじゃない?」
「うん。レオにも無理はさせないよ」
蓮が頷いた。
俺も同じ気持ちだ。
三匹が仲良くしてくれたら嬉しいけど、無理やり遊ばせたいわけじゃない。
それぞれのペースで過ごせれば、それで十分だと思う。
「でもさ」
「ん?」
「三匹並んだら、絶対かわいいよな」
「……それな」
想像してしまった。
小さなニャル。
翼のあるきなこ。
そして、元気いっぱいのレオ。
三匹が同じ場所にいる。
……何それ。
めちゃくちゃかわいくない?
「蓮」
「何?」
「絶対に実現させよう」
「お前、急に真剣な顔すんなよ!」
蓮が笑い出した。
でも、仕方ないだろ。
これは飼い主として、ぜひ見ておきたい光景なんだから。
――――――
「で、どこで会う?」
放課後。
帰り支度をしながら、俺と蓮は改めて相談していた。
「うーん。あんまり騒がしい場所は避けた方がいいよね」
「そうだな。初対面だし」
レオときなこは、まだ一度も会ったことがない。
俺たちにとっては友達同士の紹介でも、テイムモンスターたちにとっては知らない相手との初対面だ。
ちゃんと落ち着いて過ごせる場所がいい。
「あ、もふもふ堂は?」
俺が言うと、蓮が顔を上げた。
「おお、いいんじゃね?」
「犬飼さんの店なら、みんな行ったことあるし」
「確かに。レオの用品も見たいと思ってたんだよな」
「俺もニャルの新しいおもちゃとか見たいかも」
もふもふ堂なら、テイムモンスターに必要なものも揃っている。
それに、犬飼さんはモンスターの扱いに詳しい。
もちろん店に迷惑をかけないようにする必要はあるけど、待ち合わせ場所としてはちょうどよさそうだ。
「じゃあ、次の休みにする?」
「俺は大丈夫」
「分かった。小春さんにも聞いてみるよ」
「頼む!」
俺はスマホを取り出し、小春さんとのメッセージ画面を開いた。
以前もふもふ堂で知り合った時に連絡先を交換してから、何度かやり取りしている。
ニャルの様子を聞かれたり、きなこの近況を教えてもらったり。
ほとんどが猫の話だけど。
……まあ、それでいいんだよな。
俺は簡単に事情を説明する文章を打ち込んだ。
親友の蓮もテイマーで、小さなグリフォンのレオを育てていること。
ニャルとも知り合いで、今度はきなこにも会わせてみたいこと。
よければ、次の休日にもふもふ堂で会えないかということ。
送信すると、蓮が横から覗き込んできた。
「どう?」
「まだ返事来てないよ」
「そりゃそうか」
「小春さんも学校だろうしね」
俺たちは笑いながら、教室を出た。
廊下には、部活動へ向かう生徒や帰宅する生徒が行き交っている。
いつもの放課後だ。
「そういや悠真」
「何?」
「小春さんって、ニャルのこと知ってたんだよな?」
「うん。もともと『ニャルの台所』を見てくれてたんだ」
「へえ! じゃあファンだったのか」
「そう。もふもふ堂で会った時も、ニャルを見てすごく喜んでくれたよ」
「なるほどなあ」
蓮は少し考えてから、にやっと笑った。
「で、やっぱりニャルが世界一かわいいって?」
「いや」
「ん?」
「小春さんにとっては、きなこが世界一なんだ」
「……ああ!」
蓮が大きく頷いた。
「分かる!」
「分かるんだ」
「そりゃ分かるだろ。飼い主なら自分の相棒が一番かわいいって思うもんじゃね?」
「……だよな!」
俺も思わず頷いた。
やっぱりそうだよな。
小春さんもきなこが世界一かわいいって言うし、俺だってニャルが世界一かわいいと思っている。
それぞれ自分の相棒を大事にしているんだから、当然のことだ。
……ただし。
「でも、ニャルは本当に世界一かわいいけどね」
「いやいや、レオだって負けてないから」
「ニャルは料理できるし」
「それ、前にも聞いたぞ」
「二足歩行もできる」
「だから、かわいさを能力で競うなって!」
蓮が笑った。
「レオだって、あのふわふわの翼が最高なんだからな」
「ニャルの小さい前足も最高だよ」
「レオの肉球だってかわいいぞ」
「ニャルの肉球もかわいい!」
「お前さあ……」
「何?」
「ほんと、ニャルの話になると止まらないよな」
「蓮もじゃん」
「……まあ、そうだけど」
蓮は少し照れたように笑った。
その顔を見て、俺も笑う。
結局、俺たちは似た者同士なんだと思う。
探索者としての適性も、戦い方も、テイムモンスターの種類も違う。
だけど、自分の相棒がかわいくて仕方ないところだけは同じだ。
しかも、今度はそこに小春さんも加わる。
……あれ?
もしかして、三人で会ったらずっと猫自慢になるんじゃないか?
そんなことを考えていた時だった。
ぴこん。
「あっ」
スマホに通知が届いた。
「小春さんからだ」
「おっ! 何だって?」
画面を開く。
そこには、元気のいい返事が届いていた。
『いいね! ぜひ会ってみたい!』
続けて、もう一通。
『グリフォンの赤ちゃんなんだよね? 絶対かわいい!』
さらに。
『きなこも一緒に行くね!』
……うん。
何というか、すごく小春さんらしい返事だ。
「蓮、いいって!」
「マジで!?」
「うん。きなこも連れてきてくれるって」
「やった!」
蓮が嬉しそうに拳を握った。
俺もすぐに返信する。
次の休日、もふもふ堂で待ち合わせること。
レオも一緒に来ること。
詳しいことはまた連絡すること。
送信すると、すぐに了解の返事が届いた。
「よし。これで決まりだな!」
「うん!」
蓮が満足そうに笑う。
「レオにも話しておかないとな」
「俺もニャルに伝えないと」
「ニャル、どんな反応するかな」
「うーん……」
ちょっと想像してみる。
ニャルはきなこと仲良しだ。
レオのことも知っている。
だから、二匹が会うと聞いたら、きっと喜ぶと思う。
……いや。
もしかしたら。
『じゃあ、何か美味いものを作ってやりたいな!』
とか言い出すかもしれない。
昨日もレオに料理を作りたいって言ってたし。
そう考えると、思わず笑ってしまった。
「たぶん喜ぶよ」
「そっか。楽しみだな!」
「うん!」
俺たちは校門を出たところで、それぞれ帰路についた。
次の休日。
俺とニャル。
蓮とレオ。
そして、小春さんときなこ。
三人と三匹で初めて集まることになる。
ニャルがきなこと並んでいるだけでも、あんなにかわいかったんだ。
そこにレオまで加わったら、いったいどうなるんだろう。
……うん。
絶対にかわいい。
俺はスマホに残っているニャルの写真を眺めながら、自然と顔が緩むのを感じた。
早く帰って、ニャルに教えてやろう。
新しい友達を紹介できるって聞いたら、きっと喜ぶはずだ。
そして何より。
三匹が仲良くなってくれたら、俺も嬉しい。
……まあ。
世界一かわいいのがニャルだってことだけは、譲らないけどね。




