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転生猫ですが、最弱テイマーをダンジョン飯で最強に育てます  作者: 悪癖


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第46話 マコトの料理も、勉強になる

『……今日はマコトが料理するのか?』


「そうよ。今日は私が晩ご飯を作ろうと思って」


 休日の夕方。


 いつものようにキッチンへ向かった俺は、エプロンをつけたマコトを見て足を止めた。


 普段、この家の料理は俺が担当することが多い。


 もちろんマコトだって料理はできるし、俺が来る前はずっとユウマの飯を作っていたらしい。


 ただ、マコトは仕事で帰りが遅くなる日も多いからな。最近は俺が作る方がすっかり当たり前になっていた。


『何か作りたいものがあるのか?』


「ううん。せっかくのお休みだし、たまには私も作ろうかなって」


『ほほう』


 なるほど。


 それなら、今日はマコトに任せるか。


 ……いや、待てよ。


 せっかく他の人が料理するんだったら、見ておいた方がいいんじゃないか?


 この前、橘と一緒に料理した時も、いろいろ勉強になったからな。


『マコト! 俺も見てていいか?』


「え? もちろんいいけど……ニャルも何か作りたいの?」


『いや、今日はマコトの料理を見たいんだ』


「あら」


 マコトが少し驚いた顔をした。


「ニャルに見られると緊張するわねえ」


『何でだ?』


「だって、ニャルの方が料理上手じゃない」


『そんなことないぞ。俺だって知らないことはいっぱいあるからな!』


 実際、橘に教わってからは、自分の料理にもまだまだ改善できるところがあると分かった。


 それに、マコトはずっとこの家で料理してきたんだ。


 ユウマの好きなものだって、俺よりずっと詳しいはずだろう。


『俺も勉強させてもらうぞ!』


「ふふっ。じゃあ、よろしくね」


 マコトが笑って、俺の頭を軽く撫でた。


 ……うむ。


 料理の前に撫でてもらえるとは。


 今日はいい日になりそうだな!


「母さん、今日の晩ご飯は何?」


 そこへ、リビングにいたユウマが顔を出した。


「今日は生姜焼きにしようと思ってるの」


「えっ、生姜焼き?」


「うん。久しぶりに作ろうかなって」


「やった!」


 おお。


 ずいぶん嬉しそうだな。


「母さんの生姜焼き、好きなんだよね」


「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」


「だって美味いし」


 ユウマはそう言ってから、俺を見た。


「あ、もちろんニャルの料理も大好きだよ!」


『分かってるって』


 別に張り合うつもりなんてないぞ。


 むしろ、ユウマがそこまで喜ぶ生姜焼きなら、俺も食べてみたい。


 マコトの味ってやつだな。


『よし。俺も楽しみだ!』


「じゃあ、ニャルは今日はお休みね」


『……え?』


 思わず耳が立った。


『俺は何もしなくていいのか?』


「うん。いつも作ってもらってるから、今日はゆっくりしてていいのよ」


『むう……』


 それはありがたいんだけど。


 料理しているところを見るだけっていうのも、ちょっと物足りないな。


 俺はキッチンの作業台を見上げた。


 肉。


 野菜。


 調味料。


 いろいろ並んでいる。


 ……うずうず。


『マコト』


「なあに?」


『少しだけ手伝ってもいいか?』


 マコトは俺の顔を見て、それからくすっと笑った。


「本当に料理が好きなのねえ」


『おう!』


「じゃあ、付け合わせをお願いしようかしら」


『任せろ!』


 よし!


 これで俺も料理に参加できるぞ!


 ……いや、今日は勉強する日だったな。


 ちゃんとマコトの手元も見ておかないと。



――――――



「まずは生姜焼きの準備ね」


 マコトが冷蔵庫から取り出したのは、普通の豚肉だった。


 ダンジョン食材じゃない。


 スーパーで買える、薄切りの豚肉だ。


 ……うむ。


 普通の食材もいいよな。


 俺は念動力で調理器具を動かせるし、ダンジョン食材の正しい処理方法も分かる。


 でも、それだけで料理が美味しくなるわけじゃない。


 どんな食材だって、ちゃんと美味しく料理するのが大切なんだ。


「今日は薄切りのお肉だから、すぐに火が通るわよ」


『ふむふむ』


 俺は清潔な作業用マットの上に立ち、マコトの手元を覗き込んだ。


 マコトは生姜をすりおろし、小さな器へ入れる。


 そこへ醤油、みりん、酒を加えて混ぜ始めた。


『おっ。先にタレを作るんだな』


「そうよ。お肉を焼き始めてから調味料を量ってると、慌てちゃうこともあるからね」


『なるほど』


 確かに、薄い肉はすぐ火が通る。


 焼き始めてから調味料を一つずつ量っていたら、肉が焼けすぎるかもしれない。


 まあ、俺なら念動力で同時にいろいろ動かせるけど、人間はそうはいかないもんな。


 ……いや。


 俺だって先に準備しておいた方が、料理に集中できるか。


『覚えておこう』


「そんな大したことじゃないわよ?」


『いやいや。大事だぞ!』


 マコトは照れたように笑った。


 それから、器の中のタレを少し味見する。


「うん。これくらいかな」


『もう味が決まったのか?』


「だいたいね。悠真は少し甘めの生姜焼きが好きだから」


『おお!』


 なるほど。


 ユウマの好みに合わせているのか。


『それなら、砂糖を少し増やすのか?』


「そうね。でも、みりんの甘さもあるから、あんまり入れすぎないようにしてるの」


『ふむふむ』


「それに、悠真はタレをご飯につけて食べるのも好きなのよ」


『ほほう!』


 それは知らなかった。


 いや、ユウマが白飯をたくさん食うことは知っているぞ。


 俺の料理でも、いつもおかわりしてるしな。


 でも、生姜焼きのタレをご飯につけるのが好きなのか。


『じゃあ、タレは少し多めがいいんだな』


「そういうこと」


 マコトはにっこり笑った。


 ……うむ。


 さすが母親だな。


 長年ユウマの飯を作ってきただけのことはある。


 俺も飼い主の好みは結構把握しているつもりだったけど、まだまだ知らないことがあるらしい。


「何かすごく真剣に見てるね、ニャル」


 ユウマが横から覗き込んできた。


『当たり前だろ。勉強中だからな!』


「そっか。頑張って」


 そう言って頭を撫でようとする。


『待て、ユウマ!』


「えっ?」


『今は料理中だぞ!』


「あ、ごめん」


 ユウマは慌てて手を引っ込めた。


 まったく。


 料理してる猫を何だと思ってるんだ。


「ふふっ。ニャル、先生みたいね」


『今日は生徒だぞ!』


「あら、そうだったわね」


 マコトが楽しそうに笑った。


 ……よし。


 気を取り直して勉強だ。


 マコトはフライパンを温め、油を薄く広げた。


 そして、薄切りの豚肉を一枚ずつ並べていく。


 じゅうっ。


 肉が焼ける音が響き、すぐにいい匂いが立ち始めた。


 ……おお。


 やっぱり肉を焼く匂いっていいな。


 鼻が勝手にひくひく動いてしまう。


「ニャル、近づきすぎないでね」


『分かってるって』


 俺は少しだけ後ろへ下がった。


 ……ほんの少しだけだぞ。


 マコトは肉の色が変わったところで、手早くひっくり返していく。


『あれ? もうひっくり返すのか?』


「うん。薄いお肉だから、あんまり焼きすぎると硬くなっちゃうのよ」


『なるほどな』


「厚いお肉ならじっくり焼くこともあるけど、今日はすぐ火が通るからね」


 確かに、橘に教わったローストとは違う。


 あの時は肉の厚みをそろえて、火を入れて、休ませて……と、いろいろ気を遣った。


 でも、今日の肉は薄い。


 同じ肉料理でも、やり方は全然違うんだな。


 マコトは肉の両面に焼き色がついたところで、さっき合わせたタレを加えた。


 じゅわあっ!


『おおっ!』


 いい音!


 フライパンの中でタレが一気に沸き立ち、生姜と醤油の香りが広がった。


 ……これはたまらんな!


 さっきまで肉の匂いだったのに、今度は甘辛い香りが混ざってきた。


 鼻をくすぐる生姜の香りもいい。


 俺の尻尾が、勝手にぴんと立った。


「いい匂いでしょ?」


『最高だ!』


 マコトは箸で肉を動かしながら、タレを全体に絡めていく。


 肉には十分に火が通っている。


 だから、あとはタレがほどよく煮詰まれば完成らしい。


『もっと煮詰めるのか?』


「今日はこれくらいでいいかな」


『そうなのか?』


「うん。あんまり煮詰めすぎると味が濃くなっちゃうし、お肉も硬くなるから」


『ふむ……』


 なるほど。


 味を濃くすることと、美味しくすることは別だもんな。


 それに、ユウマはタレをご飯につけて食べるのが好きなんだろ?


 だったら、ある程度タレを残しておいた方がいい。


『マコト、ちゃんと考えてるんだな』


「ええ? そんなに褒められること?」


『もちろんだ!』


 俺は大きく頷いた。


 するとマコトは少し照れくさそうに笑った。


「私なんて、いつも簡単な料理ばっかりよ」


『簡単でも美味しいならいいじゃないか』


「……ふふっ。そうね」


 マコトは嬉しそうに目を細めた。


 ……うむ。


 やっぱり、料理は奥が深い。


 手間をかければいいってものでもないし、難しい技術を使えば必ず美味しくなるわけでもない。


 忙しい日でも作れる。


 食べる人が喜ぶ。


 後片づけも大変じゃない。


 そういうことまで考えて料理するのも、大事なんだな。


 俺も普段から料理しているけど、どちらかというと美味しさや新しい調理法ばかり考えがちだった。


 ……よし。


 今日の勉強もなかなか収穫があるぞ!


「さて、ニャル。そっちはどう?」


『おう! これから仕上げるところだ!』



――――――



 俺が担当するのは、ほうれん草のごま和えだ。


 生姜焼きに合わせるなら、さっぱりした副菜がいい。


 マコトからも「ごま和えなんてどう?」と提案してもらったから、それに決めた。


 まずは、ほうれん草をきれいに洗う。


 念動力で葉を浮かせながら、水を使って汚れを落としていく。


 ……うん。


 こういう細かい作業は得意だぞ。


「相変わらず便利ねえ、ニャルの魔法」


『へへっ。そうだろ!』


 洗ったほうれん草を沸騰した湯へ入れる。


 茎の部分から先に。


 少し遅れて葉も沈め、全体に火を通していく。


 茹ですぎると柔らかくなりすぎるから、ここは気をつけないとな。


 頃合いを見て引き上げ、冷水へ移す。


 粗熱が取れたら、余分な水分をしっかり絞る。


『よし。こんなもんかな』


 俺は念動力でほうれん草を持ち上げ、水気を切った。


 ……おっと。


 あまり強くやりすぎると、葉が潰れちゃうな。


 力を少し弱める。


「ニャル、丁寧ねえ」


『せっかく作るんだからな!』


 水気を切ったほうれん草を食べやすい長さに切り、器へ移す。


 次はごまだ。


 すりごまを用意して、醤油と少しの砂糖を合わせる。


 ふわっと香ばしい匂いが広がった。


 ……おお。


 これもいい匂いだな。


 ごまって、地味だけど結構好きなんだよな。


 香ばしいし、いろんな料理に使える。


 今度ダンジョン食材にも合わせてみたいところだ。


「ニャル、味はどう?」


『ちょっと待ってくれ』


 俺はごま和えを少しだけ取り分け、味見してみた。


 もぐもぐ。


 ……うん。


 ほうれん草の柔らかい食感。


 ごまの香ばしさ。


 醤油の塩気と、ほんの少しの甘み。


 悪くない。


 でも、生姜焼きと一緒に食べるなら、もう少しさっぱりしていた方がいいか?


『マコト、ちょっと味見してみてくれ』


「あら、いいの?」


『もちろんだ!』


 マコトは箸で少しつまんで口へ運んだ。


「うん。美味しいわよ」


『本当か?』


「ええ。ごまの香りがちゃんとするし、味も濃すぎないわね」


『おお!』


「生姜焼きと一緒に食べるなら、これくらいがちょうどいいと思う」


『よし!』


 マコトのお墨付きをもらったぞ!


 俺は満足して、残りのほうれん草を器へ盛りつけた。


 ……うむ。


 きれいにできたな。


 緑色の葉に、ごまがほどよく絡んでいる。


 派手な料理じゃないけど、こういうのもいい。


「ニャル、盛りつけまで上手ねえ」


『橘にいろいろ教わったからな!』


「ああ、あの料理人さんね」


『おう! あいつの料理はすごいぞ!』


「そうなのね。私も一度食べてみたいわ」


『今度、一緒に行くか?』


「ふふっ。機会があったらね」


 マコトはそう言って笑った。


 ……おお。


 それもいいな。


 マコトに橘の料理を食べてもらうのも楽しそうだ。


 あいつの作る料理は本当にうまいからな。


 俺もまた勉強しに行きたいし。


「ニャル、こっちもできたよ」


 ユウマが声をかけてきた。


 見ると、食卓には白いご飯と味噌汁が並んでいる。


 味噌汁もマコトが作ってくれたものだ。


 豆腐とわかめの入った、普通の味噌汁。


 でも、出汁のいい匂いがしている。


 そして、その横には。


 つやつやとタレの絡んだ生姜焼き!


 ……おおお。


 これはうまそうだ!


 焼き色のついた肉の表面に、甘辛いタレが光っている。


 皿の端には千切りキャベツも添えられていて、見た目もいい。


 俺のごま和えも、その隣へ並べる。


『よし! 完成だな!』


「うん。いい感じ!」


 ユウマが嬉しそうに頷いた。


「今日は母さんとニャルの合作だね」


『そうだな!』


「何だか贅沢だなあ」


 ユウマは食卓を見て、にこにこしている。


 ……うむ。


 いい顔だ。


 こういう顔を見ると、やっぱり料理してよかったと思うな。


「じゃあ、食べましょうか」


『おう!』



――――――



「いただきます!」


「いただきます」


『にゃ!』


 ユウマはさっそく生姜焼きへ箸を伸ばした。


 タレの絡んだ肉を一枚持ち上げ、白いご飯と一緒に口へ運ぶ。


 もぐもぐ。


 ……どうだ?


「んんっ! 美味い!」


 おお!


 いい反応だ!


「これこれ! 母さんの生姜焼き!」


「あら、そんなに?」


「うん! この甘辛い味が好きなんだよね!」


 ユウマは嬉しそうにもう一口食べた。


 そして、肉に絡んでいたタレを白いご飯につける。


「やっぱりこれ、ご飯が進むなあ」


『おお! 本当にタレをつけて食うんだな!』


「え?」


 ユウマが不思議そうに俺を見た。


『マコトから聞いたぞ。お前、生姜焼きのタレをご飯につけるのが好きなんだってな』


「ああ、うん。昔から好きなんだよね」


「小さい頃からそうだったわねえ」


 マコトが懐かしそうに笑った。


「生姜焼きの日は、よくご飯をおかわりしてたのよ」


「今もしてるけどね」


『なるほどな!』


 これは覚えておこう。


 ユウマは甘辛いタレが好き。


 特に、ご飯と一緒に食べられるやつ。


 ……よし。


 今後の料理にも使えそうだ。


 俺も自分用に小さく切り分けてもらった生姜焼きを食べてみる。


 ぱくっ。


 ……おおっ!


 うまい!


 豚肉が柔らかい!


 噛むと肉の旨みが広がって、そこへ生姜の香りと甘辛いタレが重なる。


 醤油の香ばしさもいいな。


 甘みがあるけど、しつこくない。


 生姜の風味が後味をすっきりさせてくれるから、また次の一口が欲しくなる。


 ……うむ。


 これは確かに白飯が欲しくなる味だ!


『マコト! これ、すごくうまいぞ!』


「あら、本当?」


『おう! 肉も柔らかいし、タレもいい味だ!』


「ふふっ。ありがとう」


 マコトは嬉しそうに笑った。


 ……ああ。


 なるほどな。


 俺もユウマに料理を褒められると嬉しいけど、マコトも同じなんだ。


 自分が作ったものを、美味しいって言ってもらえる。


 それだけで、こんなにいい顔になるんだな。


「ニャルに褒められると、何だか自信がつくわね」


『本当のことだからな!』


「ありがとう」


 マコトはそう言って、自分も生姜焼きを口へ運んだ。


「うん。今日はいい感じにできたかしら」


『大成功だぞ!』


 俺は自信満々に頷いた。


 ……いや。


 俺が威張るところじゃないか。


 でも、うまいものはうまいんだから仕方ない。


 ユウマは生姜焼きを食べ終えると、今度は俺の作ったごま和えへ箸を伸ばした。


「こっちも食べてみよう」


『おう!』


 ほうれん草を一口。


 しゃくしゃく。


 ……どうだ?


「んっ。これも美味い!」


『よし!』


「ごまの香りがいいね。生姜焼きの後に食べると、ちょうどいい感じ」


『そうだろ!』


 狙い通りだ!


 甘辛い生姜焼きの後に、少しさっぱりしたごま和え。


 味が変わるから、また生姜焼きが食べたくなる。


 ……うむ。


 なかなかいい組み合わせじゃないか。


「ニャルちゃんのごま和えも美味しいわね」


 マコトも嬉しそうに食べてくれた。


「ほうれん草の茹で加減もちょうどいいし、味つけも優しいわ」


『へへっ。そうだろ!』


「ほんと、ニャルは何を作っても上手ねえ」


『いやいや。今日はマコトの料理の方が勉強になったぞ』


「あら」


『手早く作る方法とか、ユウマの好みに合わせるところとか、いろいろな!』


 マコトは少し驚いたような顔をした。


 それから、にっこり笑った。


「そう言ってもらえると嬉しいわ」


「母さんもニャルも、料理上手だよね」


 ユウマが二人を交互に見た。


「俺、毎日美味いもの食べられて幸せだなあ」


『おお!』


「ふふっ。そうね」


 マコトが笑った。


 ……うむ。


 俺も幸せだぞ。


 美味しいものを作って。


 美味しいものを食べて。


 それを一緒に楽しんでくれる家族がいる。


 しかも今日は、俺自身も新しいことを教わった。


 こんなにいいことはないな!


「そういえば、ニャル」


『ん?』


「今日の生姜焼き、どうだった?」


『すごくうまかったぞ!』


「うん。それは聞いたけど」


 ユウマが笑う。


「ニャルも今度、生姜焼き作ってみる?」


『もちろんだ!』


 俺はすぐに答えた。


『今度は俺も作ってみたいな!』


「やった!」


『でも、マコトの生姜焼きもまた食いたいぞ』


「あらあら」


 マコトは嬉しそうに目を細めた。


「じゃあ、またお休みの日に作ろうかしら」


『おう!』


「俺も賛成!」


 ユウマが元気よく手を上げた。


 ……うむ。


 満場一致だな!


 その後も三人で食事を続けた。


 ユウマは宣言通り、ご飯をおかわりした。


 生姜焼きのタレを少しかけて、嬉しそうに食べている。


 ……なるほど。


 あれが好きなんだな。


 俺はその様子を眺めながら、今日覚えたことを頭の中で整理した。


 薄い肉は焼きすぎない。


 調味料は先に合わせておく。


 食べる相手の好みに合わせる。


 そして、手間をかけすぎなくても、美味しい料理は作れる。


 ……うむ。


 どれも大切なことだ。


 橘から教わった料理技術とは、また違う勉強になったな。



――――――



 夕食を終えた後。


 俺はユウマに抱っこされながら、今日の料理を振り返っていた。


『いやあ、うまかったな!』


「うん。美味しかったね」


『マコトの生姜焼き、また食いたいぞ』


「俺も!」


 ユウマが笑って、俺の頭を撫でてくれた。


 ……ふむ。


 撫でられるのもいいけど、今日はちょっと考えたいことがある。


『なあ、ユウマ』


「ん?」


『料理って面白いよな』


「……うん?」


『同じ食材でも、作る人によって全然違う味になるだろ?』


「ああ、そういうことね」


 ユウマが頷いた。


「確かに。ニャルの料理と母さんの料理って、どっちも美味しいけど違うもんね」


『そうなんだよ!』


 俺は尻尾を揺らした。


 橘の料理は、プロの技術が詰まっている。


 火の入れ方。


 ソースの作り方。


 盛りつけ。


 どれもすごく勉強になった。


 でも、マコトの料理には、また違うよさがあった。


 いつもの材料を使って、手早く作る。


 食べる人の好みを知っていて、自然に味を合わせる。


 特別なことをしているつもりがなくても、ちゃんと美味しい。


 ……そういう料理も、いいよな。


『俺も、もっといろんな料理を覚えたいぞ』


「そっか」


『おう! まだまだ作ったことのないものがいっぱいあるからな!』


 ユウマが楽しそうに笑った。


「ニャルは本当に料理が好きだね」


『当たり前だろ!』


 俺は胸を張った。


『美味しいものを作って、お前たちに食ってもらうのが一番楽しいんだからな!』


「……うん。ありがとう」


 ユウマは俺を抱き直すと、耳の後ろを優しく撫でてくれた。


 ……おお。


 そこ、気持ちいい。


 ごろごろ。


 思わず喉が鳴ってしまう。


 ……まあ、今日は勉強もできたし、美味しいものも食べられたし。


 十分満足だな。


「そうだ。明日、蓮にも話してみようかな」


『ん? 何をだ?』


「今日の生姜焼きのこととか、ニャルが母さんに料理を教わってたこととか」


『おお!』


 それはいいな。


 レンも食いしん坊だから、きっと興味を持つだろう。


 ……そういえば。


 レンのところにはレオもいるんだった。


 この前から、あいつらにも何か作ってやりたいと思ってたんだよな。


『ユウマ、レンにも今度また飯を食いに来いって言ってくれよ』


「うん。いいよ」


『レオも一緒にな!』


「ああ、そっか。レオにも何か作ってあげたいんだね」


『おう!』


 ユウマはにっこり笑った。


「じゃあ、明日学校で話してみるよ」


『頼んだぞ!』


 ……よし。


 次は何を作ろうかな。


 レオが食べられるものも、ちゃんとレンに確認しないとな。


 そう考えると、また楽しみが増えてきた。


 マコトの料理も勉強になったし、橘にもまた教わりたい。


 もちろん、新しいダンジョン食材だって探したい。


 ……うむ。


 やっぱり料理は楽しいな!


 俺はユウマの腕の中で満足そうに尻尾を揺らした。

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