第44話 ただ料理してただけなんだけど
料理を誰かに教えるなら、まずは簡単なものがいい。
難しい料理を作れるようになるのも楽しいけど、最初から失敗したら嫌になっちゃうかもしれないからな。
それに、ダンジョン食材は下処理が大事だ。せっかく作っても、おいしく食べられなかったら意味がない。
……というわけで。
『ユウマ! 今日はこれにするぞ!』
「おっ、決まった?」
俺が念動力で持ち上げたのは、ホーンラビットの肉とゴブリンポテトだ。
ホーンラビットは、きちんと解体処理された肉。ゴブリンポテトは、見た目こそ普通のジャガイモに似ているけど、ちゃんとしたダンジョン食材だ。
『ホーンラビットとゴブリンポテトの塩バター炒め!』
「おお、おいしそう!」
『だろ? しかも簡単だぞ!』
今日の料理は、フライパン一つで作れる。材料も少ないし、難しい味つけも必要ない。
肉とジャガイモとバター。
これだけでも、ちゃんとうまい料理になるんだからな!
「じゃあ、今日はこれでいこうか。前に初心者向けの料理を教えるって約束したしね」
『おう! 任せろ!』
俺は尻尾をぴんと立てた。
橘に料理を教えてもらってから、知らなかったことを覚える楽しさがよく分かった。
そしてこの前は、俺たちの配信を見た知らない誰かが、ホーンラビットの料理を作ることに成功した。
教えたことが、ちゃんと役に立ったんだ。
だったら、今日も分かりやすく教えてやりたい。
……まあ、一番大事なのは、おいしいものを作ることだけどな!
◇
「こんばんは、悠真です。今日も『ニャルの台所』を始めていきます!」
「にゃ!」
俺はカメラに向かって前足を上げた。
挨拶が終わると、ユウマは今日の材料を一つずつ紹介していく。
「今日は、初めてダンジョン食材を料理する人でも真似しやすいものを作ります。ホーンラビットとゴブリンポテトの塩バター炒めです」
『おう! 簡単でうまいやつだ!』
「ニャルも張り切ってます」
ユウマがそう言って笑った。
俺の念話は、配信を見ている人には聞こえない。だから、作り方や注意点はユウマに伝えて、視聴者へ説明してもらう。
最初に用意したのは、ホーンラビットの肉だ。
『まず、この肉はちゃんと処理されたやつを使うんだぞ』
「はい。ここ、大事なところです」
ユウマがカメラに向かって頷いた。
「ホーンラビットは、角の根元付近にある臭腺と、その周囲の組織を解体時に取り除く必要があります。今日は、そこを処理したお肉を使っています」
『うん。それなら普通に料理できるぞ』
「初めての人は、安全に処理されていることが確認できるお肉を使ってくださいね」
ユウマが説明を終えると、画面を見て小さく頷いた。
「おっ、『そこが危ない部分なんだ』ってコメントが来てるよ」
『そうそう。肉自体が危ないわけじゃないんだ』
「あと、『前はそこまで知らなかった』って人もいるね」
『なら覚えておいてくれ! おいしく食べるために大事だからな!』
ユウマが俺の説明を伝えてくれる。
俺はその間に、肉を食べやすい大きさへ切り分けていった。
念動力で浮かせた包丁が、まな板の上を滑るように動く。
すっ、すっ。
……うん。
橘に教わってから、前より包丁の動かし方がうまくなった気がする。
「ニャル、今日も切るの上手だね」
『へへっ。練習したからな!』
「『包丁浮いてるの、何回見てもすごい』だって」
『いつも通りだぞ?』
「そこがすごいんだってば」
……人間って、不思議なところで驚くよな。
まあ、褒められるのは嬉しいからいいけど。
肉を切り終えると、次はゴブリンポテトだ。
俺は洗っておいたゴブリンポテトをまな板に並べ、一つをカメラの方へ向けた。
『ユウマ、こっちも説明するぞ』
「うん。次はゴブリンポテトですね」
見た目は、ちょっと色の濃いジャガイモ。
でも、芽の部分と、その周囲には気をつけないといけない。
『ここ、見せてくれ』
「この芽のところ?」
『そう。そこを周りごと取るんだ』
俺は包丁の先を使って、芽とその周囲を少し深めに取り除いた。
続いて、表面を確かめながら皮をむいていく。緑色になっている部分があれば、そこも厚めに取り除く。
「普通のジャガイモと似ていますけど、芽や緑色になった部分はしっかり取り除く必要があります」
ユウマが説明すると、またコメントが増えたらしい。
「『そこまで取るんだ』って。あと、『普通のジャガイモとあまり変わらないんだね』って人もいるよ」
『そうなんだよ。気をつけるところさえ知ってれば、難しくないんだ』
「ニャルも、ちゃんと下処理すれば普通に料理できるって言ってます」
俺は処理したゴブリンポテトをもう一度確かめた。
……よし。
これなら大丈夫だな。
『次は切って、火を通すぞ!』
ゴブリンポテトを一口大に切り、鍋で下ゆでする。
塩バター炒めだから、最後はフライパンで焼くんだけど、先に火を通しておいた方が失敗しにくい。
切ったゴブリンポテトを湯の中へ入れると、しばらくして甘い匂いが漂い始めた。
……おお。
いい匂い。
早く食べたいな。
「ニャル、まだ味見しないでね」
『……まだ何も言ってないだろ!』
「さっきからお鍋の方に顔近づけてるから」
くっ。
よく見てるな、ユウマ。
俺は何事もなかったように顔を上げた。
「ちなみに、下ゆでしておくと、最後に炒める時も中まで火が通りやすいそうです」
『そうそう。初心者にはこっちの方が楽だぞ』
ユウマが俺の言葉を説明すると、また嬉しそうにコメントを読んだ。
「『なるほど、先にゆでるのか』『それなら自分にもできそう』だって」
『おう! やってみてくれ!』
俺は尻尾を振った。
……何だか、楽しいな。
自分で料理するのももちろん楽しいけど、こうやって誰かに作り方を教えるのも悪くない。
橘が俺に料理を教えてくれた時も、こんな気持ちだったんだろうか。
今度聞いてみようかな。
◇
下ゆでしたゴブリンポテトを取り出し、水気を切る。
あとは炒めるだけだ。
フライパンに少し油を広げ、ホーンラビットの肉を並べる。
じゅううっ!
気持ちのいい音が響いた。
肉の表面が少しずつ色を変え、香ばしい匂いが立ち上る。
……うん。いい感じだ。
『ここはすぐに動かさないのが大事だな』
「今日は、焼き色がつくまで少し待つんだね」
『おう。橘に教わったやつだ!』
「なるほど。皆さん、ここもポイントみたいです」
ユウマが説明している間、俺は肉の焼け具合をじっと確かめた。
そろそろだな。
ひっくり返すと、こんがりした焼き色が現れた。
『よし!』
「おお、きれい!」
ユウマがカメラへ見せると、コメントでも焼き色を褒めてもらえたらしい。
へへっ。
練習した成果が出てるな!
肉に十分火を通したところで、ゴブリンポテトを加える。
ころころと転がるジャガイモに、肉の旨みが絡んでいく。
表面に少し焼き色がついたところで、最後にバターを落とした。
じゅわっ。
溶けたバターが広がり、甘く香ばしい匂いが一気に強くなる。
『……おおお』
これは、たまらん。
バターって、何でこんなにいい匂いがするんだろうな。
鼻が勝手にひくひく動いてしまう。
「ニャル、すごい顔してるよ」
『仕方ないだろ! いい匂いなんだから!』
ユウマが笑った。
「『ニャル先生、めっちゃ食べたそう』だって」
『当たり前だ!』
「まだ料理中だよ?」
『分かってるって!』
……まったく。
いい匂いがするんだから、食べたくなるのは当然だろ。
俺は気を取り直し、フライパンをゆっくり揺すった。
ゴブリンポテトの表面にバターが絡み、肉の焼き目がつやつやと光っている。
最後に塩で味を整えれば、完成だ。
『できたぞ!』
「おお! おいしそう!」
ユウマがカメラを近づける。
皿の上には、こんがり焼けたホーンラビットと、黄金色のゴブリンポテト。
難しい飾りつけなんてしていないけど、バターの香りが食欲をそそる。
……うん。
こういう料理もいいよな。
簡単で、ちゃんとうまそうだ。
「今日はこれで完成です。下処理の確認と、しっかり火を通すことが大事なので、初めて作る人はそこに気をつけてくださいね」
『そうだぞ! 安全に、うまく作るんだ!』
ユウマが頷き、俺の言葉も伝えてくれる。
それからコメントを確認して、嬉しそうに笑った。
「『今度作ってみる』『これならできそう』『ニャル先生ありがとう』だって」
『おお!』
俺は思わず尻尾を立てた。
『ちゃんとうまく作れるといいな!』
「うん。そうだね」
ユウマも嬉しそうだった。
それからカメラへ向き直り、いつもの挨拶をする。
「それじゃあ、今日の配信はここまでです。また次回もよろしくお願いします!」
「にゃ!」
俺も前足を上げた。
配信が終了する。
……よし。
これでようやく食えるぞ!
◇
「いやあ、今日も楽しかったね」
ユウマが配信機材を片づけながら、満足そうに言った。
俺はその横で、料理の皿を見つめていた。
……そろそろ食いたいんだけどな。
「ニャル、今日も評判よかったよ。作ってみたいって人、結構いたし」
『おう。ちゃんと作れるといいな』
「うん。それにしても……」
ユウマはスマートフォンを眺め、少し感慨深そうに笑った。
「結構いろんな人に、ニャルのこと知ってもらえたなあ」
『そうだな。よかったじゃないか』
「何で他人事なの。ニャルのことだよ?」
『だって、最初に配信したいって言ったのはユウマだろ?』
「それはそうだけど……」
ユウマが苦笑する。
そこへ、マコトが台所へ顔を出した。
「二人とも、今日もお疲れさま。いい匂いね」
『マコト! ちょうどできたぞ!』
「まあ、おいしそう。今日も上手にできたわね」
マコトは皿を覗き込んでから、ユウマの方へ目を向けた。
「配信、今日も盛り上がってた?」
「うん。最近は料理について質問してくれる人も増えてきたんだ」
「そうなの。最初は、せっかくだから配信してみたらって言っただけだったのにね」
マコトが懐かしそうに笑った。
そういえば、そんなことがあったな。
俺が台所で料理していたら、マコトが配信してみたらどうかと言い出した。
ユウマも乗り気になって、カメラやら何やらを用意して。
気がついたら、俺が料理しているところを知らないやつらに見せるようになっていた。
最初は何でそんなことするんだと思ったけど、今ではこうして料理の作り方まで教えている。
……不思議なもんだな。
「だって、ニャルかわいいし」
ユウマが真顔で言った。
マコトも当然のように頷く。
「それは知ってるわ」
『……おい』
「こんなにかわいい猫が料理までできるんだよ? みんなに見てほしくなるでしょ」
「そうよねえ」
『ユウマ、マコト』
二人が俺を見る。
『飯、冷めるぞ』
「あっ」
「あら、そうだったわね」
ようやく食事が始まるらしい。
まったく。
俺のかわいさについて話すのもいいけど、今は飯の方が大事だろ。
ユウマとマコトが席につき、俺も自分の皿の前へ移動した。
「いただきます!」
『いただきます!』
ユウマがホーンラビットの肉を一口食べる。
もぐもぐ。
……どうだ?
「うまっ!」
よし!
「これ、すごい好き。お肉が香ばしいし、バターの味がめっちゃ合う!」
『だろ?』
マコトもゴブリンポテトを口へ運び、嬉しそうに目を細めた。
「ジャガイモもほくほくね。表面は少しカリッとしてるのに、中は柔らかいわ」
『へへっ。先にゆでたからな!』
俺も自分の皿へ顔を近づけ、一口食べる。
……んんっ!
うまい!
ホーンラビットの肉は噛むほど旨みが出るし、ゴブリンポテトは甘くてほくほく。
そこへバターの香りが絡んで、もう最高だ。
やっぱり、簡単な料理でもうまいものはうまい!
「これ、また作ってほしいな」
『おう! いつでも作ってやるぞ!』
ユウマが嬉しそうに笑う。
俺も嬉しくなって、尻尾を揺らした。
配信を見ている知らないやつらが、おいしく料理できるのも嬉しい。
でも、やっぱり。
こうしてユウマやマコトがうまそうに食ってくれるのが、一番嬉しいな。
◇
それから数日。
『ニャルの台所』を見て料理を作ったという投稿が、少しずつ増えてきたらしい。
ユウマが時々、面白そうなものを見つけては教えてくれる。
「ニャル、また作ってみたって人がいたよ」
『おお。何作ったんだ?』
「ゴブリンポテトの料理だって。ちゃんと芽を取って作ったら、おいしかったって」
『よしよし!』
別の日には、ホーンラビットの肉を焼いてみたという人もいた。
どれも、すごく凝った料理というわけじゃない。
でも、安全な処理を確認して、ちゃんと火を通して、おいしく食べた。
それを聞くたびに、俺は何だか嬉しくなった。
……うん。
教えるのって、やっぱり楽しいな。
そんなある日の夜。
夕飯を食べ終えたユウマが、スマートフォンを見ながら変な声を上げた。
「……えっ。十匹?」
『ん?』
「いや、これ……すごいな」
ユウマが画面を見つめたまま固まっている。
何だ?
そんなに変なものでも見つけたのか?
『ユウマ、どうした?』
「ああ、ニャル。これ見てよ」
ユウマがスマートフォンを俺の方へ向けた。
画面には、動画のタイトルらしい文字が並んでいた。
――『ホーンラビット10匹分食べてみた!』
『……十匹?』
「うん。十匹」
『ホーンラビットを?』
「そう」
……十匹。
俺は少し考えた。
一匹でも、それなりの量の肉が取れる。
それを十匹分?
『……すごいな!』
「いや、ほんとにね」
ユウマが苦笑した。
「この人、大食い系の配信者なんだって。普段から大盛り料理とか、ものすごい量の食べ物を食べる企画をやってるみたい」
『ほほう』
大食いか。
うまいものをいっぱい食えるのは、ちょっと羨ましいな。
……いや。
十匹分はさすがに多すぎる気もする。
「ニャルの配信を見て、ホーンラビットが食べられるって知ったらしいよ」
『おお!』
「それで、安全に解体処理された肉を用意して、料理して食べてみたんだって」
ユウマが動画の一部を見せてくれた。
大きな皿に山盛りになったホーンラビットの肉。
焼いたもの、煮込んだもの、それから香草を使ったものまであるらしい。
……おおお。
すごい量だ。
『これ、全部食ったのか?』
「そうみたい。かなり時間はかかったらしいけど、全部食べきったって」
『へえ……!』
俺は感心してしまった。
世の中には、いっぱい食えるやつがいるんだなあ。
でも、それより気になったのは。
『……これ、うまかったのか?』
「そこ?」
『大事だろ!』
ただ大量に食うだけじゃ、もったいないじゃないか。
せっかくのホーンラビットなんだから、おいしく料理して食ってほしい。
ユウマは笑いながら、動画の説明を確認した。
「おいしかったって。特に香草焼きが気に入ったらしいよ」
『おお! それならよかった!』
俺は満足して頷いた。
十匹分も食えるなんて、俺には想像もできないけど。
うまかったなら、何よりだ。
ユウマはその後も少し動画を見ていたけど、俺はもう満足していた。
だって、腹いっぱいだったからな。
今日はもう、あとは寝るだけだ。
◇
翌日の夜。
夕飯を食べ終えた俺は、ユウマの近くで毛づくろいをしていた。
今日もうまかったなあ。
ユウマもたくさん食ってくれたし、マコトも喜んでくれた。
……満足、満足。
俺が前足をぺろぺろ舐めていると、ユウマがスマートフォンを見て声を上げた。
「……あれ?」
『ん?』
「ニャル、昨日の大食いの人、覚えてる?」
『十匹食ったやつか?』
「そうそう。その人が、またツイートしてるんだけど……」
ユウマは少し不思議そうな顔をした。
『何だ? また食ってるのか?』
「いや、そうじゃなくて」
ユウマが投稿を読み上げる。
「『昨日ホーンラビット10匹分食べてみたんだけど、なんか今日身体が軽いんだけど』……だって」
『……ん?』
身体が軽い?
俺は首を傾げた。
ホーンラビットを食った次の日に?
……ああ。
なるほどな。
『そいつ、もしかして強くなったのか?』
「えっ」
『ほら。ダンジョン飯って、食うと強くなるだろ?』
「……あ」
ユウマが目を丸くした。
そういえば、俺たちにとっては当たり前になっていたな。
ユウマは俺の料理を食べて、少しずつ強くなっている。
ダンジョン食材をちゃんと料理して食えば、身体能力が上がることがある。
でも、普通の量を食っただけじゃ、すぐには気づかないこともある。
あいつは十匹分も食ったんだろ?
だったら、一度に結構な変化があっても不思議じゃない。
「……いや、でも。まさか」
ユウマは画面を見つめた。
「俺たちは知ってるけど、この人はダンジョン飯で強くなるなんて知らないんだよね」
『そうなのか?』
「たぶん。投稿にも、何で身体が軽いのか分からないって書いてあるし」
『ふうん』
俺は再び毛づくろいを始めた。
……まあ、そりゃそうか。
今までは、ダンジョン食材をちゃんと料理して食べるやつ自体が少なかったんだもんな。
食ったら強くなるなんて、知らなくてもおかしくない。
ユウマはまだ画面を見ていた。
「コメントもついてる。『気のせいじゃない?』とか、『食べただけで強くなるわけないでしょ』とか……」
『まあ、そう思うよな』
「でも、『いつもより動きが軽そうだった』って言ってる人もいるみたい」
『へえ』
俺はちらりとユウマを見上げた。
何だか難しい顔をしている。
そんなに気になるのか?
「……これ、本当にダンジョン飯の効果だったら、結構すごいことだよね」
『そうか?』
「そうだよ。今まで知らなかった人も、食べるだけで強くなれるかもしれないんだよ?」
『そりゃ、ちゃんと料理すればな』
俺は当然のことを言ったつもりだった。
でも、ユウマはますます考え込んでしまった。
……変なの。
俺にとっては、もうずっと前から知ってることなのにな。
まあ、あの大食いのやつが本当に強くなったかどうかは、まだ分からない。
本人も、身体が軽いと言ってるだけらしいし。
でも、もし本当なら。
……うん。
せっかくだから、もっといろんな料理を食ってみればいいんじゃないか?
同じものを十匹分食うより、いろんな味を楽しんだ方が、俺は好きだな。
今度の配信では、別の食材を使ってみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、ユウマがまた小さく声を上げた。
「……ああ、こっちにも。『俺もダンジョン食材食べてみようかな』って」
『おお。いいじゃないか』
「いや、ニャル。これ、もしかして……」
ユウマは何か言いかけて、言葉を止めた。
画面の向こうでは、まだ知らない誰かが料理を作ったり、食べたり、感想を書いたりしているらしい。
でも、俺にはあんまり関係ない。
おいしいものを作って、おいしく食べる。
それでみんなが喜んでくれるなら、いいことじゃないか。
……それよりも。
そろそろ眠くなってきたな。
俺は大きくあくびをした。
ふわあああ。
……うん。
眠い。
ちょうどユウマがソファに座っている。
あそこなら、きっと寝心地がいいぞ。
俺は床からぴょんと跳び上がり、ユウマの膝の上へ乗った。
「わっ、ニャル?」
『ん』
くるりと身体を丸める。
……ああ。
あったかい。
ユウマの膝は、やっぱりいいな。
耳の後ろを撫でられると、思わず喉が鳴った。
ごろごろ。
「……ニャル」
『んー?』
ユウマが俺の背中を撫でながら、ぽつりと言った。
「ニャル、なんかすごいことになりそう」
……すごいこと?
何だろう。
まだ何かおいしいものでもあるのか?
でも、もう腹いっぱいだし。
明日も料理できるし。
今は、それより。
『……眠い』




