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転生猫ですが、最弱テイマーをダンジョン飯で最強に育てます  作者: 悪癖


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第14話 テイマー二人でもふもふ堂

「お、ニャル。来たな」


 もふもふ堂へ入った瞬間。


 犬飼が俺を見た。


 悠真ではない。


 俺だ。


「にゃ」


「今日は何が――」


 そこで。


 犬飼の視線が動いた。


 俺の後ろ。


 悠真の隣。


 さらにその向こう。


 蓮の腕の中。


「…………」


 レオがいる。


「きゅ?」


 犬飼の目が。


 明らかに輝いた。


「……グリフォン?」


「やっぱり分かるんだ」


 蓮が言った。


「今日孵ったばっかりなんですけど」


「ちょっと待ってくれ」


 犬飼がすぐにカウンターから出てくる。


 悠真への挨拶は。


 まだない。


 蓮にも。


 ない。


 俺は知ってる。


 この店ではこうなる。


「見せてもらっていいか?」


「はい」


「きゅ?」


 犬飼がしゃがむ。


 いきなり触らない。


 まず。


 レオの顔を見る。


「初めましてだな」


「きゅ」


「俺は犬飼。よろしくな」


 レオが首を傾げる。


 犬飼も笑った。


「元気そうだ」


「分かるんですか?」


「少なくとも、今見える範囲じゃな」


 そこでやっと。


 犬飼が顔を上げた。


「ああ、いらっしゃい」


「順番!」


 悠真が言った。


「俺たち今ですよね!?」


「悪い悪い」


 全然悪いと思ってない顔だ。


 やっぱり。


 この店。


 人間の優先順位が低い。


『いつも通りだな』


「ニャルも慣れたなあ」


『俺もそっち側だからな』


「そういう問題?」


 俺はテイムモンスターだ。


 なら。


 この店では優先される側。


 悪くない。


「それで」


 犬飼が立ち上がる。


「今日はこの子の相談か?」


「そうです」


 蓮が頷いた。


「俺、テイムモンスター飼うの初めてで」


「なるほど」


「何食わせればいいかも分かんなくて」


「それで来たのか」


「はい」


 犬飼が。


 今度は蓮を見る。


 少しだけ。


 顔が真面目になった。


「分からないから聞きに来たなら大丈夫だ」


「え?」


「一番困るのは、分からないまま適当にやることだからな」


 それから。


 またレオを見る。


「グリフォンか。面白い子が来たなあ」


「きゅ!」


 何を言われたか分かっているのか。


 レオは元気に鳴いた。


「元気もある」


「めちゃくちゃあります」


『さっき俺の尻尾を狙ってきた』


「きゅ?」


 レオが俺を見る。


『その顔するな。覚えてるからな』


「仲いいのか?」


 犬飼が聞く。


「今日会ったばっかりですけど」


 悠真が答える。


「もう遊んでました」


『俺が遊んでやった』


「ニャルも楽しそうだったけど」


『付き合ってやった』


「同じじゃない?」


『違う』


 重要だ。


 俺は大人として。


 生まれたばかりのレオに付き合ってやったのだ。


 たぶん。


「じゃあまず」


 犬飼が腕をまくる。


「この子に必要なもの、一緒に見ていくか」


「お願いします」


 蓮の返事が。


 探索へ行く前みたいに真面目だった。


 ――――――


「翼は無理に広げるなよ」


「はい」


「羽の状態は見る。でも生まれたばっかりなら、まずは本人がどう動かすか観察だ」


「はい」


「爪も毎日切る必要はない。伸び方と削れ方を見る」


「はい」


「運動は?」


「させた方がいいですよね?」


「もちろん。でも幼体相手に、探索者の訓練みたいなことするなよ」


「しませんよ!」


「いや」


 犬飼が蓮を見る。


「お前、探索者だろ?」


「そうですけど」


「動けるやつほど、自分の基準で考えることがある」


「…………」


「レオは今日生まれたばっかりだ」


 犬飼がレオの頭へ指を近付ける。


 レオが。


 くん。


 匂いを嗅ぐ。


「こいつがもっと遊びたいって顔してても、疲れてる時は休ませる」


「分かりました」


 蓮が頷く。


 真面目だ。


 さっきから。


 ずっと。


 犬飼の話を聞いている。


 俺と悠真が初めてここへ来た時とは。


 少し違う。


 あの時は。


 俺がいるとか。


 いらないとか。


 自分で決めていた。


 ベッド。


 ブラシ。


 食器。


 キャリー。


 俺は普通に意思表示できる。


 レオは。


 まだ。


「きゅ!」


 鳴くくらいだ。


 だから。


 蓮が覚えることが多い。


「飯は?」


 蓮が聞く。


「食べる量とか」


「そこもいきなり決め打ちしない」


 犬飼が言う。


「幼体だから成長も早い。体格、食いつき、運動量、体調を見ながら変えていく」


「なるほど」


「最初は幼体向けの中から合うものを探せばいい。食べ方も見ろよ」


「食べ方?」


「勢いよく食べる子もいれば、ゆっくり食べる子もいる。身体が大きくなるなら器もすぐ変わる」


「器……」


 蓮が店の棚を見る。


 目が。


 少し怖い。


 買う気の目だ。


 俺には分かる。


「蓮」


「何?」


 悠真も気付いたらしい。


「全部買おうとしてない?」


「必要なら買うけど」


「まだ何が必要か聞いてる途中だぞ」


「でも寝床いるだろ?」


「まあ」


「食器もいる」


「うん」


「ブラシも」


「たぶん」


「翼用のケア用品もあるなら――」


「待て待て」


 犬飼が止めた。


「一個ずつだ」


「でも後で必要になるなら、今買っといても」


「ならん」


「え?」


「この子」


 犬飼がレオを指差す。


「すぐ大きくなるぞ」


「…………」


 蓮がレオを見る。


 レオも。


 蓮を見る。


「きゅ?」


「今これくらいなんですけど」


「今はな」


 犬飼が笑う。


「グリフォンだぞ。ずっとその大きさじゃない」


「あ」


「身体も大きくなる。翼も伸びる。足も太くなる」


「…………」


「成長に合わせて買い替える前提で考えろ」


「なるほど……」


 蓮は。


 本当に知らなかった顔をしている。


 探索なら。


 悠真より先まで行ける。


 強い敵だって倒せる。


 装備のことも詳しい。


 でも。


 テイマーとしては。


 本当に始まったばかりらしい。


「じゃあ、このハーネスは?」


 蓮が一つ取る。


 しっかりした作りだ。


 値札も。


 結構すごい。


「いらん」


「即答!?」


「それ三か月も使えないぞ」


「そんなに?」


「成長の仕方にもよるがな。今のレオに高いの買う必要はない」


「でも、丈夫な方が」


「今必要なのは高いものじゃなくて、今の身体に合うものだ」


 犬飼が隣の棚から。


 もっと普通のものを取る。


「最初はこっちで十分」


「こっちの方が安いですけど」


「だから何だ」


「店としてそれでいいんですか?」


「こっちの方が合うんだから、こっちだ」


 蓮が。


 悠真を見る。


 悠真が頷く。


「そういう人だから」


「前も?」


「高いベッドやめさせられた」


『俺は箱を選んだ』


「それはニャルが勝手に選んだんだろ!」


 うるさい。


 箱は良かった。


 今も使ってる。


「店、大丈夫なのか……?」


 蓮が小さく言う。


「俺も思った」


 悠真が返した。


 犬飼には聞こえていない。


 たぶん。


 ――――――


「きゅ!」


『待て!』


 ころころ。


 柔らかいボールが転がる。


 レオが追う。


 俺も追う。


 先に。


 レオの前足が届いた。


「きゅ!」


『む』


 ぱし。


 今度は俺が横から叩く。


 ボールが方向を変える。


 レオが飛び付く。


 外す。


 そのまま床を少し滑る。


「きゅっ!」


『下手だな』


 俺がもう一度。


 ぱし。


「きゅ!」


 追ってくる。


 速い。


 さっき生まれたばかりなのに。


 元気だ。


「二匹とも楽しそうだな」


 犬飼が笑っている。


 店にあった玩具を。


 試していいと言われた。


 俺は。


 別に遊ぶつもりはなかった。


 レオが。


 どうしても遊びたそうだったから。


 付き合っているだけだ。


 ころ。


「…………」


 ボール。


 俺の前。


「…………」


 前足を。


 ぱし。


「きゅ!」


 レオが突撃。


「にゃ!」


 横へ避ける。


 そのまま俺が走る。


 後ろからレオ。


『追うな!』


「きゅー!」


『待て! 違う! ボールを追え!』


「きゅ!」


『俺じゃない!』


 店の中。


 もちろん。


 商品を倒さないように。


 棚のない広いところを走る。


 俺。


 レオ。


 俺。


 レオ。


 距離が。


 縮まる。


『速っ』


 まだ小さいくせに。


 足は俺より長い。


 ずるい。


「ニャルー」


 悠真の声。


「無理すんなよ」


『してない!』


「完全に遊んでるじゃん」


『付き合ってるだけだ!』


「はいはい」


 その返事。


 嫌いだ。


「きゅ!」


 レオが。


 また。


 俺の尻尾を見る。


『お前、それは駄目だからな』


 尻尾を隠す。


 代わりに。


 ボールを叩く。


 ぱし。


 レオの方へ。


「きゅ!」


 今度はちゃんと。


 ボールへ飛び付いた。


『よし』


 犬飼が。


 俺たちを見ながら。


 嬉しそうに言った。


「仲良くなれそうだな」


『まあな』


 こいつ。


 元気すぎるけど。


 悪くない。


「……これも買います」


 蓮の声がした。


 俺は振り返る。


 ボールを指差している。


「気に入ってるし」


「一個でいいぞ」


「似たやつも」


「一個でいい」


「でも飽きた時に」


「一個でいい」


「…………はい」


 犬飼。


 強い。


 ――――――


 しばらくして。


 レオの用品が。


 だいたい決まった。


 寝床。


 食器。


 ブラシ。


 今の体格に合わせたもの。


 餌についても。


 犬飼がレオの様子を見ながら。


 何を確認していけばいいか。


 蓮へ説明していた。


「分からないことがあったら来い」


「いいんですか?」


「そのための店だ」


 犬飼が言う。


「食わないとか、元気がないとか。翼の動かし方がおかしいとか。気になることがあったら早めにな」


「分かりました」


「ただし」


「はい」


「何でも心配しすぎるなよ」


「…………」


「生き物なんだから、毎日同じじゃない」


 蓮が。


 少しだけ。


 気まずそうな顔をする。


「俺、そんな心配してました?」


「店に入ってから質問何個した?」


「…………」


 数え始めた。


「やめとけ。多いぞ」


 悠真が笑う。


「お前、思ったよりめちゃくちゃハマってるじゃん」


「は?」


 蓮が反応する。


「昨日までテイマーじゃなかったのに」


「別に普通だろ」


「普通?」


「飼うって決めたんだから、ちゃんとするだけだって」


「ふーん」


「何だよ」


「別に」


「その顔やめろ」


「どの顔?」


「ニャルの話する時みたいな顔」


「それはお前だろ!」


 今度は。


 俺が言われた。


 何のことだ。


『二人とも同じじゃないか?』


「違う」


「違う」


 揃った。


「ほら」


『ほら』


「そこだけ組むな!」


 蓮が言う。


 その足元では。


 レオが。


 買ってもらったばかりのボールを。


 前足で転がしている。


 ころ。


「きゅ」


 ころころ。


「きゅ!」


 蓮が。


 すぐ下を見る。


「気に入った?」


「きゅ!」


「ほら、買ってよかったじゃん」


 悠真が笑う。


「もう完全に飼い主だな」


「うるせえ」


 言いながら。


 蓮は笑っている。


 悠真も。


 笑っている。


 俺は二人を見る。


 悠真と俺。


 蓮とレオ。


 昨日までは。


 俺たちだけだった。


 でも。


 これからは。


 こういうのも増えるのかもしれない。


「ニャル」


 悠真が俺を見る。


「何か欲しいものある?」


『ない』


「本当に?」


『ない』


「ブラシ新しいの出てるぞ」


『今のでいい』


「おやつは?」


『…………』


「そこ止まるんだ」


『見るだけだ』


「買う?」


『見るだけだ』


「尻尾動いてるけど」


 見る。


 動いている。


『……一個』


「はいはい」


 悠真が笑う。


 何だ。


 俺も。


 あんまり変わらないかもしれない。


 ――――――


 数日後。


 休日。


 俺は。


 悠真の隣で。


 スマートフォンを覗き込んでいた。


「いつも緑葉の洞窟ばっかりだしな」


『冷蔵庫だからな』


「ダンジョン」


『冷蔵庫』


「ダンジョン」


『大きい冷蔵庫』


「譲らないなあ」


 悠真が画面を動かす。


 近場。


 日帰り。


 今の悠真でも。


 無理なく行けそうな場所。


「最近、前より動けるようになったし」


『うむ』


「ちょっと違うところ行ってみる?」


 それは。


 いい。


 緑葉の洞窟には。


 まだ色々あると思う。


 でも。


 違うダンジョンへ行けば。


 違う食材がある。


 違う食材があれば。


 違う料理が作れる。


 俺は。


 画面を見る。


 岩鉄坑道。


 花蜜の森。


 それから。


「ん?」


 指が止まった。


『悠真』


「何?」


『戻して』


「どれ?」


『今の』


 一つ。


 上へ戻る。


 そこに。


 名前があった。


『碧水の地下湖』


 地下湖。


 説明には。


 水棲モンスター。


 魚。


 そんな文字。


 俺の耳が。


 ぴん。


 悠真が。


 俺を見る。


「ニャル?」


 俺は画面を見る。


 魚。


 地下湖。


 魚。


 俺の尻尾が。


 勝手に動いた。


『悠真』


「……何?」


『魚いる?』


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