248:勝敗の行方
社員B『見て見て! 今回の奴は流石に勝てるっしょ!!』
社員D『藤宮くんに黒星を叩きつけるのがBとCの共同個体かぁ・・・』
社員R『でも初見であそこまでいったし二戦目では攻略されそうですね』
主任X『馬鹿ねあなた達。W、蝙蝠のステータス数値を確認してみなさい』
社員W『えっ!? もしかしてBCってばやらかしたんですか!?』
社員A『ギルティ』
主任X『違うわよ。戦いの結末がわかるから見てみなさい』
一同『こ・・・これは・・・!!!?』
『 LAAAA!!!! 』
『Laaa〜!!!』
襲い来る衝撃を覚悟したその時だった。突進は俺を捉えることなく、ほんの僅か。本当に僅かではあるが横に逸れた。
その結果生まれた隙間に岩盤に埋まった俺の体が入り込みダメージなくやり過ごせた。それだけじゃない。岩盤に突撃した『ヴェノミードラゴキュラ』が微動だにせずピクピクと震えてその場を動かないのだ。
この機を逃すまいと即座に俺自身のアイテムポーチから回復アイテムを取り出し、ありったけ使用して体力と状態を回復。さらに装備品の状態を戦闘中一度だけ完全修復できる『奇星石』で『艶姫刀:クヴァレイドル』の溶け折れた刀身を復活させる。
ちなみに『奇星石』はエクストラダンジョンで錬成した『奇跡の星花』を使用して錬金した特殊なアイテムだ。その『奇跡の星花』だが、もちろん今回も持ち込んでいたんだが、実は既に使用済みだったりした。
そんなことは今どうでもいい。岩盤から抜け出して急ぎ距離をとった。もしかしてとは思うが、もし違ったら不味いからな。
充分に距離をとり、握る『艶姫刀:クヴァレイドル』の中にいる二人に問いかける。
「クレイ。イドル!!!」
『ギリギリマニアッタヨウダ。マタセタナ主様ヨ』
『La〜!!』
「シャァッ!! 粘り勝ちだ!!」
『艶姫刀:クヴァレイドル』の能力『水姫魅了』。魅了した相手は能力発動中身動きがとれず無防備を晒す特殊状態異常能力だ。この能力があるからこそ、現在も『クヴァレイドルクイーン』攻略は難航しているのだ。
だが、『クヴァレイドルクイーン』、ひいては『艶姫刀:クヴァレイドル』の『クヴァレイドル』にはもう一つ恐るべき能力がある。それが『水姫侵食』。
傷口が心臓、もしくは心臓の代わりとなる部位。相手の核となる部分にそれが及ぶと、瀕死状態にするという防御も対策も不能な絶対能力。
モンスターの個体によってその侵食率は違うものの、例えボスモンスターであってもこの能力が無効化することはない。
通常の『カースサイスリッチ』、アヴァロア憑依の『カースサイスリッチ』状態、『クヴァレイドルクイーン』始めとする常設型のボスモンスターに、イベントで再戦可能なボスモンスターでそれは立証済みだった。
『ヴェノミードラゴキュラ』に弱点がない、もしくは驚異的な再生能力を持つため、俺では致命傷を与えられないと踏んだ時点で俺は勝利条件を『水姫侵食』による勝利へと切り替えていた。
体内外問わず何度も切り続け、侵食度を上げつつひたすら耐えた結果が先ほどの負けを認めかけた瞬間。ついに芽吹いたのだ。
『ココマデ苦戦サセラレタノハハジメテダッタ』
『La〜・・・』
「ふぅ・・・正直負けを認めてたぜ・・・」
『馬鹿カ? ワレラガフタリモイルノダ。ソウ簡単ニマケサセルトオモウカ?』
『La〜LaLLa〜』
「そっか・・・ありがとうな二人共」
刀身が折れ、二人だって苦しかっただろうに、それでも俺に応えてくれた二人に感謝だな。刀身に優しく触れながら、岸壁へと突っ込んだ『ヴェノミードラゴキュラ』に視線を向ければ静かに光の粒子となって消え始めていた。
『キ・・・キィ・・・』
「・・・・月光真流奥義『水無月写鏡』」
消えゆく『ヴェノミードラゴキュラ』へ歩み寄り、突っ込んでいた岸壁に向けて刃を叩き込み、埋もれる『ヴェノミードラゴキュラ』を開放しその顔を正面からしっかりと見る。
「なぜ助けたとでも言いたそうだな? 『ヴェノミードラゴキュラ』。お前の戦いに敬意を表する。同時に感謝する。お前との戦いで俺はまた一つ経験を積むことができた。それと倒した相手の顔をちゃんと見るのは俺の流儀でな」
『キィ・・・』
「もし次があればまた戦おう。だから今は休みな」
『・・・キィ・・・』
最後に笑ったような声を出しながら、『ヴェノミードラゴキュラ』はその姿を光へと変え消えていった。
――――◇――――
・特異個体『セブンアイズドラゴキュラ』及び特異個体『ヴェノミードラゴキュラ』撃破。
・生存者『アール』
・生存者『従者:ディア』
・戦闘終了に伴い、封鎖していた戦闘エリア『テリオン渓谷エリア:ボスフィールド』を開放します。
――――◇――――
・『セブンアイズドラゴキュラ』『ヴェノミードラゴキュラ』を撃破しました。
・レベルアップ!:アールはレベル62になりました。
・UtSレベルアップ!:『復活Lv3』『UtS:刹那Lv2』
・特異個体初回登場討伐報酬:『腕装備『慧眼ノ眼装』』を入手しました。
・賞金:120000Dを獲得
――――◇――――
腕装備:『慧眼ノ眼装』
防御力+513 特殊能力『慧眼』『超回復』
・すべてを捉える驚異な眼と回復力を持つ『セブンアイズドラゴキュラ』の進化個体『ヴェノミードラゴキュラ』がその力を認めた相手にのみ与える籠手。そしてこの籠手こそ絶対強者の証とも言える。
――――◇――――
・特殊能力『慧眼』
この装備は他の腕装備に重ねて装備できる。重ねて装備した装備は『非破壊装備』となり、破壊されなくなる。
シリーズ装備スキル発動条件の装備数を1少なくする。
――――◇――――
・特殊能力『超回復』
発動中、攻撃を受けた時HPが回復する。また、戦闘中4回まで、MPを全て消費することでステータスを含め、HPを全回復できる。
発動ワード『万象を覆せ』
――――◇――――
はい強い(確信)。
攻撃のたびに回復ではなく、相手からの攻撃を受けるたびに回復する時点で半ゾンビ化するわけだ。元々一撃受けたら毎回、回復しないと行けなかった現状での最適解をこの装備が出してくれた。
さらにMP全消費で全回復を合計4回行える。試してみなければわからないが、半瀕死状態、つまり先ほどのように意識はあるが動けない状態の時に使用することで万全の状態まで持っていける。
俺が抱えていたアイテム大量消費によるHP回復という状態異常以外のもうひとつの問題を解決してくれたわけだ。おまけ・・・ではすまない能力である『慧眼』のおかげで武器と兼用だった『双子星の籠手』もそのまま使える上に『非破壊』というこの上ない状態に変化させてくれる。
長時間戦い続けた報酬としてはとてもありがたい。そんでもってイドルとクレイの前例があるわけだ。今回もいるんだろうな。
とりあえず即座に『慧眼の眼装』を『双子星の籠手』の上から履くように装備する。ゴワつくと思ったんだが同化するようにスゥっと装備できた。
「おっ!?」
すると『双子星の籠手』に変化が起こり、手の甲の約1/3程の大きさがあると瞳が現れた。けど恐ろしいよりは格好良いという感じの瞳である。
そして思った通りその眼は何度が瞬きをして周囲をキョロキョロと動かすと、グワっと眼が口のように開いて言葉・・・もとい鳴き声を発した。
『ギィ』
『ヨヨヨ?』
『La〜?』
『ギィィ』
『ヨヨ!! ヨーヨー!』
『LLa〜』
「クレイ。翻訳できるか?」
『余裕ダ。『オレサマヲタオシタオマエニチカラヲカシテヤル。ツヨクナッテイクスガタヲオレサマニミセロ』トイッテイル』
「翻訳ありがとよ。そんでもってよろしく頼むぜ・・・そうだな・・『ヴェノミードラゴキュラ』だったから『ヴェノ』でいいか?」
『キィ』
『『キニイッタ』トイッテイル』
「ちなみにだが俺は普通に相手ぶん殴ったりするから痛くても文句言うなよ?」
『キィキィ』
『『ソレヲ承知デチカラヲカシテヤルンダ。ドントコイ』ダソウダ』
それは良かった。痛いのが嫌だとか言われたら申し訳ないがポーチの中で寝ていてもらうことになったからな。
「ふぃー・・・なんか安心したらどっと疲れたぜ・・・」
その場にドサっと横になる。長時間ソロで戦うのは久しぶりだった上に、強敵だったから倒した達成感から全身の気が抜けてしまった。どうしよう。このまま眠れそう。
他のプレイヤーの邪魔、もしくはPKの餌になるからさっさと移動しないといけないのはわかってるんだけどな。すげぇ疲れた。
『キィ』
『ダレカクルゾ主様ヨ』
俺も感じたよ。足音がいくつも聞こえる。エリア開放のアナウンスはあったから待ちぼうけをくらったプレイヤーがいざ挑まんと入ってきたんだろう。
最近新規も増えたみたいだしな。仕方ない。もう少し寝転んでいたいがさっさと移動するか。
「師匠!!!!」
「「「「「アール!!!」」」」」
どうやらその必要はとりあえず無いらしい。知り合いの声だ。
ヴェノくんは雄です。まごう事なき凛々しい雄です。お間違えないようにお願いします。
――――◇――――
主任X『励久くんの粘り勝ちよ』
社員HC(クヴァレイドルクイーンの原案者)『オッシャァ!!!』
社員B『ば・・・馬鹿な・・・』
社員C『我らの最高傑作が・・・一度で・・・・!!?』
社員R『流石我らの剣聖。敗北知らず・・・いや、敗北を知るからこその勝利というものか』
社員L『死に戻りの経験があるから戦術瞬時に切り替える柔軟さを持っていますからね』
主任X『それでも状態異常に高耐性超体力があるコウモリ相手に戦い抜いたわよ本当に。満足してくれてるしよくやったわねB,C』
社員B『悔しい・・・だけど嬉しい・・・!!!』
社員C『悔しいぜ・・・アールくんの満足顔を見たら俺たちまで満足しちまったんだからなぁ・・・』
助役DD『うん。ここの部署は相変わらずだねぇ・・・あ、BとCには特別ボーナス出してあげる。』
社員B&C『わーい』




