241:エリアボス『ワンアイズドラキュラゴ』戦
エリアボス戦ですが、ゲルゲナート経験していると強そうに感じないルークくん。
「要はでかいコウモリだ。羽さえどうにかしてしまえばそこいらのモンスターと変わんねぇよ」
「簡単に言わないでよ!!? どうせ師匠は手出ししないんでしょ!!?」
「したら絶対に速攻で終わるもんね。これも修行だよルーク」
言われたとおり、とりあえずルークに戦闘を任せるので俺は手出ししない。戦ってみたい衝動はあるが、ここは弟子の強くなった姿を見るためにぐっと我慢しよう。
「けどバフくらいはかけてやるから頑張れ」
現在はパーティーのレベルに応じてボスの強さが変化するから、完全なソロは流石にかわいそうなので援護くらいはしてやろうと思っている。
「かけないほうがいいよとだけ言っとくね」
ほう。それはいいことを聞いた。ふむ。
「それって絶対何かあるやつじゃん!!? 師匠もウキウキしながらかけようとしないで!!? やめてぇー!!?」
「えぇ〜、ダメか?」
「ダメに決まってるでしょ!!? 今リーク姉ちゃん言ってたじゃん!!?」
「一個だけ、な? 一個だけなら大丈夫だろ?」
「やだー!!!」
「大丈夫だよルーク。油断しなかったら多分死なないと思うよ?」
「リーク姉ちゃんの多分はあんまり信用できないの!!! それバカ師匠基準での多分じゃん!!」
「「ちぇー」」
「とにかく!! 僕が頑張るから手出ししないでよね!!!」
とか話している間に食事を終えたのかボスである一つ目蝙蝠こと『ワンアイズドラキュラゴ』が吊り下がっていた場所から羽音を立てながら飛び立っていた。獲物は残さず綺麗に食べたみたいだ。案外行儀がいい。
あと、何げにルークを焚きつけることにも成功してやる気は十分。空に浮く相手に対してどうやって戦うのか見せてもらおうか。
『 !!!』
「あぐっ!!?」
「むっ?」
音のない叫びを上げる『ワンアイズドラキュラゴ』。耳に届いたのは聞くだけで不快になる音。超音波的なものが攻撃手段のようだ。頭に響く痛みだが、肉体にダメージはない。
ルークはというと、こういうのに慣れていないようで耳を塞いでよろけている。それを好機と見たようで、その巨体に似合わず意外といい速度で急降下してきた『ワンアイズドラキュラゴ』。
胸から伸びる腕がルークに向かって伸びていく。無視したら捕まってそのまま吸血されて死にそうだな。
「『風瓶エリシオン』、月光真流壱ノ型『白月』」
駆け抜けてルークと『ワンアイズドラキュラゴ』の間に入り『双子星の剣』を抜き伸びてくる腕を押さえ込む。急降下してきた勢いもありいい力だった。これはルークには防げんな。
翼をはためかせて指を俺に伸ばしてくる『ワンアイズドラキュラゴ』。同時に声のない雄叫びをあげてこっちの脳へとダメージを直接与えてくる。頭に痛みが襲いかかるが、この程度は我慢できる範囲内である。
「月光真流参ノ型『月火』」
相手の勢いに合わせて衝撃の向きを真横に流してやると、『ワンアイズドラキュラゴ』はその勢いのまま横へ吹き飛ぶ。さらに俺自身も横へとなぎ払うように『双子星の剣』を振るったので単純に勢いは二倍ほど。
驚いて体勢を立て直そうとした『ワンアイズドラキュラゴ』だが、勢いが強かったためかそのまま岩盤へと激突した。
「月光真流七ノ型『初月』」
吹き飛ばした際に振るった勢いを利用してその場で一回転し、刃に衝撃を載せてそのまま奴が激突した岩盤へ向けて衝撃の塊を飛ばす。
『初月』による攻撃をよけられなかった『ワンアイズドラキュラゴ』はモロにそれを受け、両翼が歪な形へと変化した。あくまでも飛ぶ斬撃ではなく、衝撃の塊なので切り落とすことは出来なかったが、これで飛ぶことは困難になるだろう。
「さてルーク。手出しした理由は言わなくてもわかるな?」
「・・・うん」
「フォロー入れるけど、あの蝙蝠初見殺しみたいなものだから仕方ないといえば仕方ないよ」
「嘘っ!? そうなの!!?」
マジでか。エリアボスを初見殺しに設定するのかよエクスゼウス・・・というか綾地さん。いいのかそれ。苦情とかこなかったんだろうか? 俺としては挑みがいがあるから大変ありがたいけど。
「苦情はもちろんあったんだけどその回答が何ともエクスゼウスらしい回答だったんだよ。これだね」
――――◇――――
Q:エリアボスの設定がおかしいです。倒せないボスなんですか?
A:ゲーム舐めてるんですか? 簡単に倒せないからボスなんです。何度も挑戦して攻略法でもなんでも掴んでクリアしてください。攻略不可能なボスなど配置しないので頑張ってください。
――――◇――――
Q:ソロだとエリアボスに瞬殺され、パーティーでもあの超音波で何も出来ずに全滅してしまいます。何かバグか何か起きていませんか?
A:異常はありません。テストプレイの際もスタッフが何十回とリトライを繰り返してクリアしています。諦めずに頑張ってください。
――――◇――――
Q:テリオン渓谷のボス『ワンアイズドラキュラゴ』への対策が全くわかりません。何かヒントをいただけませんか?
A:こういう時は掲示板を利用してみんなで攻略法を見つけてください。攻略手段はありますので頑張ってください。
――――◇――――
相変わらずの対応に思わずほっこりしてしまう俺はもう末期だと思う。ってかスタッフも苦戦してたボスならプレイヤーがそう簡単に倒せるわけがないわな。
「むぅぅぅ!!!!」
「ちなみに捕まるとどうなるんだ?」
「ジワジワと体が干枯らびるのを待つか、マミられるかのどっちかだね。どっちにしてもモード関係なく捕まったら基本死以外選択肢はないね。ソロだとだけど」
「怖すぎるよっ!!?」
ここまでのボスが難易度低めだったからここで一旦プレイヤーの心を折りに来たわけか。付け上がられると面倒だしな。
となると攻略法はまず、超音波に何らかの対策をするかもしくは・・・試してみるか。
「ちょい捕まってみるから後よろしく」
「ちょっ!!?」
「うわぁ躊躇いなく捕まりに行くんだね・・・」
もはやなんの疑問にも思わないリークと、対照的に驚いているルーク。まぁ驚くわな。けど捕まるのが前提だと考えれば自ずと戦い方はわかってくる。
羽をやられたため地面に立つ『ワンアイズドラキュラゴ』は、その眼球をぎょろりと俺に向け、不格好ながらも俺に向かって駆けてくる。その時に雄叫びを上げるのも忘れずにくるあたり、やっぱりこの超音波への対処が攻略に対して必須技能なんだろう。
右手に構えるのは『艶姫刀:クヴァレイドル』。一応リーチは確保しておきたかったからな。そのまま右手を上にあげ、伸びてくる腕に対し無抵抗のまま掴まれる。
握力に関してはたいしたことない。抜け出せない程度で握りつぶされる心配はなさそうだ。『ワンアイズドラキュラゴ』の眼球が俺をしっかりと捉えると、眼球がガバァと口のように開き、その奥には吸血鬼のような鋭い牙が見える。
ついでに眼球の口、その更に奥には眼球に伸びているであろう毛細血管のような何かが見える。その先にあったのは脈打つ気味の悪い物体。あれが弱点っぽいな。しかも一瞬ではあるが、超音波的な物が止まり、頭に響いていた不快感がなくなった。
「月光滅流十二宮奥義『堕天スコーピオ』」
上げていた右手に握った『艶姫刀:クヴァレイドル』を眼球の口の奥にある気色の悪い脈打つそれへと突き立てる。蠍が獲物に尾を突き立てるがごとく放った一撃は邪魔されることなく、弱点らしき物体へと突き刺さった。
『 !!!?』
「おっと・・・」
やっぱり弱点だったようで、掴んでいた俺を手放し苦しそうにのたうち回っている。まぁ体内刺されたら誰だって痛いよな。
閉じた眼球の隙間から溢れ出す白い体液、身体を地面にこすりつけて痛みを紛らわそうとするがどうしようもなさそうだ。
「なるほど・・・でもうわぁ・・・」
ルークは何か納得はしていたものの、ドン引きしていた。そりゃそうだろうとは思う。掴まれて弱点らしき体内へ攻撃するのが攻撃手段とは思うまい。しかも一瞬のみ不快感がなくなるので気づきにくいだろう。
「苦しませるのも可愛そうだな・・・せめて一瞬で逝けよ月光真流奥義『夢傷月』」
のたうち回る『ワンアイズドラキュラゴ』の閉じられた眼球めがけて掌底を叩き込む。それにより送り込んだ衝撃が体内で爆発する。
眼球が内部から破裂して、その肉片があたりに散らばった。可愛そうではあるが倒さなければ進めないので許して欲しい。
それはそれとしてと、念には念を入れておいて損はないだろう。
「天匠流抜刀術『鏡雀』」
「ちょっ!!?」
残っていた身体を玉ねぎを薄切りにするがごとく切り刻んでいく。全身から体液が吹き出しもはや原型は残っていない。
重力に従い、支えを失った肉はそのまましんなりと地面にパタパタとドミノのように伏せていくと、ようやく光となって消えていくのが確認できた。
――――◇――――
・テリオン渓谷エリアボス『ワンアイズドラキュラゴ』撃破。
・素材:『瞳蝙蝠の眼球』、『瞳蝙蝠の羽』×2、『瞳蝙蝠の牙』獲得
・5000D獲得
――――◇――――
「さすがアールだね。第二形態変化前に倒しちゃったよ」
「やっぱり第二形態あったのか」
眼球吹っ飛ばした時点で撃破エフェクト出なかったからもしかしてと思って輪切りにしたけど正解だったみたいだな。ルークはというと戸惑いつつも、理解したようにハッとすると、呆れたような顔で肩を落としていた。
アールの思考(裏側)『第二形態ありそうだなぁ』
ドンピシャでした。なる前に輪切りにしましたけど




