231:『四腕巨人ゲルゲナート』最終戦 Ⅰ
ラストスパート決めますよ。
「諸君!! 何はともあれここからが『ゲルゲナート』との最後の戦いだ!! 気合イレルゾォォ!!!」
「「「「「「「「「「「オォー!!」」」」」」」」」」」」
みんな元気がいいことこの上ない。やる気も十分だ。これならこのまま一気に流れに乗れるだろうか。もしかして俺いらない子に成り下がる? それはちょっと嫌だな。
「さてと・・・俺ももう少し頑張ろうかねぇ」
「「「「「「「「「「休んでろ英雄風情が!!!」」」」」」」」」」
「いやなんでっ!!?」
今の自分の声で体ちょっと痛かったのは内緒。この場にいる全員が声を揃えて休んでろ宣告。しかも打ち合わせとかそういうのも一切なかったのにだ。
「当たり前だろボケアール!! ボロボロのお前がさらにボロボロになったんだぞこら!! 少しくらいは俺らのこと信じて休んでろチーターマン!!!」
誰がチーターだこら・・・でもなんか動物のチーターマスクかぶってるプロレスラー的な響きがあるから少しかっこいい。
「いや、でもお前らだけでかなり苦戦してんだろ?」
「それでもですよ。アールさん」
「うぉっ!? シロマサいつの間に・・・というか武器なんかすごいことになってね?」
「武器に関しては真化ジョブの影響なのでお構いなく。それよりもアールさんは少し休んでください。リークさんたちも心配してるんですから」
確かにリークもレイレイもマー坊も涙目だ。ギンに関してはもうポロポロ泣いてる。くっついてるディアも後頭部に響かない程度ではあるがポカポカと叩いているし。
「この場にいる全員の意思を代弁しますよ。確かにアールさんが参戦してくれるなら私達の勝利は確かでしょう。でもそれでは誰も納得しないのです」
「・・・」
「ゴブリンイベントの際は君が全ての悪を背負い、新しく追加されたボス個体に関しても君抜きでは現状勝てません。悔しいですが事実です」
「だからこそ私たちの力だけであのボスに勝ちたかった。君を無事に助けてその上で勝利したかった。けどあの時・・・絶望した中で私たちは君の力を頼ろうとしてしまった」
気が付けば数人のプレイヤーが俺に背を向け、ゲルゲナートへ武器を構えていた。表情は見えないが、声には悔しさのようなものを感じた。
「そして今、貴方が繰り出した一撃。最初『やっぱりこの人は主人公なんだな』と納得しました。貴方だけで勝てるのだとね。けど、そのあとボロボロになった貴方を見て、自分たちの弱さを知りました」
「弱さ?」
「結局のところ私たちは君のその強さの秘密を勘違いしていたということだよアールくん!! どんな時だろうと傷つかずに、勝利する英雄なのだとね!!! だが実際は違った!! 君は自分の体を傷つけることを覚悟で今の技を使った!!」
ニコニーコの言うとおり確かに極星十二宮は諸刃の剣だけど、何度も何度も使うつもりはないぞ。痛いし。
「助けた私たちを君がまた!! 助けてくれたのだ!! まだ完全に回復しきっていないその身体で!! そんな無理を君にさせた自分が情けないのだ!!!!」
「・・・」
「だから休んでてよアール。アタシ達頼りないかもしれないけどさ? アタシ達の意地って奴を見せてあげるんだから」
俺を真っ直ぐに見るレイレイは、とても真っ直ぐに俺のことを見ていた。そして瞳には決意が宿っている。何を言われても絶対に曲げないという強い意志だ。
「・・・わかった。なら俺はこの先何があろうとも手出ししない。それとこれは俺からの試練だ。だから誰ひとり抜けることなく全員で勝って見せろ。そこまで言ったんならこの程度のことはやってくれないと信用できないぜ?」
目の前で死なれるのは気分が悪い。そうなりそうだったら俺は全部の言葉を無視して手出しするし、助ける。その思いを込めて口を開いた俺に対して、ポンと肩を叩くチーザー。
「ヘッ上等だ。こっから先誰ひとりとしてテメェの前でくたばりゃしねぇ。その試練受けてやろうじゃねぇか!! なぁ!!テメェら!!!」
「うむ!!! それが君という英雄から、未来の英雄である私たちへの挑戦状ということなのだろうな!!! その挑戦受けよう!!」
「いいでしょうアール。貴方を超えたいとは思いませんが、何かを守るために必要なことがそれなのだとしたら私は戦います!!」
「試練合格したら肉奢れよな!!!」
「全部肉は英雄様持ちだぜ!!!」
「盛り上がってきたぜおい!! やってやろうじゃん!!!」
「五代目剣聖から、僕らへの挑戦状ということですか。いいでしょう!! 死神の実力とくとご覧あれ!!」
「あの身のこなし・・・やっぱり藤宮流・・・ってことはあのジジイの関係者かしら・・・まぁいいわ!! 私の槍がどれだけ通じるのか試したいとも思っていたしね!!!」
なんか結構乗り気な人多いな。俺としてはすごく嬉しいけど。それに釣られてだんだんと決意表明をする人が増えてきた。煽ったみたいになったから逆に燃え上がった感じ?
――――◇――――
・囚われの身だった五代目剣聖アールは時代人の手によって救われた。だがその直後、窮地に陥った時代人を救うため、禁断の奥義を使い、彼はその命を失いかけた。
・時代人たちはその事実を受け止め、そして決意する。『英雄を超えるのだ』と。その為に自分たちの力だけで復活した『四腕巨人ゲルゲナート』を倒すと決めた。
・その決意を聞いた古き英雄は、新しき英雄たちへ挑戦状を叩きつけた。それは同時に新時代の英雄を信じるということでもあった。
・彼の信頼に答えることこそ、新しい時代を紡ぐ人として誇りになるだろう。さぁ時代人よ。過去から続く悪夢を君たちの手で葬り去るのだ。
・勝利条件更新
・特殊勝利条件開放『四腕巨人ゲルゲナート』を『五代目剣聖:アール』の与えたダメージ以上で、尚且つ今後の戦闘にて一人も『瀕死状態』にならずに勝利する。(現在アールによる累積ダメージ39%)
・
・通常勝利条件『四腕巨人ゲルゲナート』の撃破
・敗北条件『街の崩壊』(現在45%)
――――◇――――
お、運営ナイス判断。というかこのアナウンス的に俺が取り込まれるのもシナリオに書き込んでやがったな。俺を助けられなかったら特殊勝利条件の開放はなかったってことか。
ワールドシナリオだと何が起こるか本当に分かんねぇな。
「上等だぜ!!! アールさんよぉ!! 精々後ろで見てろや!!!」
「おう! 見ててやるからお前ら勝ってみせろや!!!」
「当然だオラァ!!!!!」
戦意十分、気合充分。丁度再生していた『ゲルゲナート』が立ち上がれるくらいには復活していた。それと同時に時代人が一斉に『ゲルゲナート』へ突撃していく。
「おうおうアールさんよぉ」
ガシッと肩を組んできたのはマー坊だった。怒ってるのかなぁと顔を覗けばそういう訳ではないらしい。むしろ結構ウキウキしていた。さっきまでの泣き顔はどこへ行ったのやら。
「ちなみになんだけどよ? この戦い終わったら一つ頼みあんだよ」
「珍しいな。なんだよ?」
「今度久しぶりに稽古つけてくんない? もちろんリアルの方で」
「なんだそんなことでいいのか。それなら別に構わないぞ?」
「流石アール。んじゃ決定な。んじゃさっさとあのデカ物始末してくるかなぁ!!! ドォラァ!!!」
ものすごく殺る気満々でゴリラが突撃していった。と言うか俺としてはそれくらいなら頼まれたらいつでも教えるんだけどな。俺の修行にもなるし。
「イデデ」
「「「「むぅ・・・」」」」
『おぉ!!これ見たことある光景ッス!! 人数増えてるッスけどね』
『こいつは相変わらずこんな感じだ』
四人して脇腹を摘むんじゃない。不機嫌そうに脇腹をムニっと摘んでいた。それを見て大型犬程度の大きさになっていたギルファーと、ゴジュウカラ程の大きさになっていたジェクスが寄ってきた。
「久しぶりだなジェクス。元気してたか?」
『勿論ッスよ兄貴!! というかよくその状況で声かけられるッスね!! さすが兄貴ッス!!』
『お前との約束を破ってこの鳥は人間を襲っていたがな』
『ちょバカ犬今それを言うなッス』
ふーん。無抵抗の人間を襲うなよって約束破ったと。へぇー。ふーん・・・・
「ジェクス。どういうことか説明しろよ?」
『ヒィィ!!! 姐さん!! フォローして欲しいッス!!』
「やだ。どうせならお仕置きされて欲しいくらいだし」
『そんな殺生なぁ!!!?』
「何か文句あるのカナ★? カナ★?」
『兄貴俺ッチ約束破っちまったクソ鳥ッス!! 本当に申し訳ないッス!!!』
「そっか。なら暫く飯は米粒だけな」
『うぐぅぅ!!? わ・・・わかったッス・・・とほほ・・・』
そういえばレイレイに対して姐さんって・・・どゆこと?
「アール。実はね」
フムフム。ギルファーと一緒に探しに行って本気で殺したいほどの殺意芽生えたから殺そうとしたら忠誠を誓ったと。なるほどなるほど。人を襲った件は・・・ほうほう。
「お気に入りの場所を荒らされたから頭に血が上って街を滅ぼしたねぇ・・・しかもお気に入りの場所ていうのが町の近くで人が迷惑してる場所だったと・・・ジェクス。何か言い逃れはあるか?」
『あわ・・・あわわわわわわわ・・・・あばばばばばばばばばばばばばば!!!!』
「翼毟られるのと一週間ギルファーの下僕生活どっちがいい?」
「あ、それいいね。選びなよジェクス」
「私も恨みあるからどうなるか気になる。手伝おうか? モンスターにも効果ある契約書だす?」
『兄貴も姐さんも容赦ないッス!!? は・・・翼を毟ってくださいッス・・一週間あれば生え変わるんで我慢するッス・・・・』
「あ、そっち選ぶんだ。飛ぶの好きなのに」
『このアホ犬の下僕になるなら死んだほうがマシッス!!!』
ジェクスならそういうと思った。飛ぶのは我慢すればまた飛べるけど、ギルファーの下僕になったら死ぬまで言われ続けるからな絶対に。優劣つくのと同義だしジェクスなら断るだろうとは思ってた。
ついでに翼の素材手に入るから俺としてはありがたいし。多分頼めば普通にくれるとは思うけど。
『ふ・・・飛べない鳥はただの肉だな・・・簡単に食えそうだ』
『ヒィィィ忘れてたッス!! 姐さんその時は助けて欲しいッス!!』
「はいはい。アールもそれでいい?」
「勿論。そんじゃジェクス。その前にあのデカ物倒すの手伝ってこい。ギルファー。お前も頼む」
『ウッス!!!』
『仕方ない。終わったら肉を所望するぞ』
「それじゃぁアタシはアールとデートね!! 行くよジェクス!!」
「ちょっ!!? 何どさくさに紛れて約束してんのよメス猫!!!」
言い返す前にレイレイはジェクスに飛び乗り『ゲルゲナート』へと向かっていった。確かお仕置き中だったんじゃないのレイレイさん。これ絶対リーク怒って・・・ない?
「全く・・・まぁ今回は頑張ったしデートくらいは許してあげる。でも――――は禁止だよ?」
イヤイイのかよ。と言うか頑張ったとはいえあの唯がお仕置きを無しにするほどとは、知らないうちに一体何があったんだろうか。
「ちなみに私はログアウトしたらすぐに励久のこと犯す予定だからよろしくね」
「・・・マジで何があったの?」
これ目が本気だ。逃げられないやつだ。
「色々あったんだよ。行くよ犬。援護ヨロシク」
『今回だけだぞ女。乗るがいい』
そう言ってリークもギルファーと一緒に行ってしまった。マジで本当に何があったんだろうか。俺が知らない時間に。ちょっと恐怖。
「色々あったんじゃよ師匠・・・スンスン」
「そうですよアール君・・・この手の温もり・・・最高です・・・はふ」
匂いを嗅ぐな。俺の手を頬にこすりつけるなお前らも本当に何があったんだよ。捕まっていた奴に対する行動の範疇を超えてるような気がするんだが?
「やい!! そこのお前!!」
・・・どちら様?
今後のことも考えてアールさんこれ以上の干渉を否定。煽った瞬間エクスゼウスの新条件開放にて殺る気だだ上がりのプレイヤー諸君。もはやアールが運営に関わっていても不思議じゃないと皆理解しているので疑問すらない模様。
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