229:魂の一撃
『ゲルゲナート』戦に戻ります。
『オオォォオオオオ!!!!!!!!!』
『キュルオオオオオォォォ!!!!!!!!!!!!』
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!』
「「「「沈めェェェェ!!!!!!!」」」」
『ソウルシャウトォォォスマァァッシュッ!!!!!!!』
これが本当の最終形態とでも言うかのように始まった『ゲルゲナート』との戦い。メス猫に励まされたのは屈辱だけど、おかげで闘志が戻ってきた。
全員揃って『ゲルゲナート』にむけて吶喊し叫び声をあげながら攻撃を繰り出していく。そして驚くことに、アールと思われる呪怨が響くはずの『ゲルゲナート』の咆哮が全く意味を成さなくなっていた。
代わりに伝わって来るのはこの場にいる人たちのうるさいほどの熱い気持ちだった。これが『共鳴』の力なのかしら。
誰かは熱血系主人公のように雄叫びをあげながら、アールへ声をかけ続けている。ある人はツンデレ系ライバルよろしく声を上げていた。
他にもよく分からない呼びかけとかもたくさんある。これが全部アールに対して向けられていると思うと、とっても胸が熱くなる。
対する『ゲルゲナート』もここが踏ん張りどころと気合を入れたように今まで以上に、四本の腕を振り回すように攻撃を仕掛けてくる。
シロマサ率いる防御部隊が受けられそうな攻撃を受け止め、受け流し、回復部隊が即座に回復とバフを次々と掛けていく。
危険な攻撃は死に物狂いで攻撃を繰り返すことで阻止してその腕を切り落とす。中でもやっぱり大きいのは『武装竜』による押さえ込みと、特攻持ちによる腕の切断。
一撃とまでいかずとも凄まじい威力で叩き込まれる一撃の数々。まぁニコニーコだけは規格外で一撃一撃が普通のモンスター相手なら文字通り消し飛ばすんじゃないかって思うほどの威力があるけど。
しかし流石に化物。切り落とされても即座に再生するからタチが悪い。けど、一種のパターンに入った今、再生と同時に再び切断に入る動きもより洗練されてきた。
「いけジェクス!!! そのまま眼球引き抜いてやりなさい!!!」
『エグいッスね姐さんっ!!? でも了解ッス!!!』
『ジェクス』って呼ばれている初代ワールドボス『大鎧怪鳥』を従えて戦線復帰を果たしたレイレイの存在が大きい。やっぱり眼に関して言えば私以上だし、この様子だと絶対になんか私に教えてないこととかありそう。そう思うくらいには心強い。
「姐さん!! デカブツ体当たり仕掛けそうでっせ!!!」
「任せなァ!!!! Jrリューyってこれ勢いやばそうだなおい!!?」
「ギン!! コヨミ!! 片足お願い!!!」
確かにこのまま迎え撃っても向こうに分がありそう。ならば足腰を潰してやればいい。ちょうどその近くに適任な二人が駆けているからね。
「心得た!! 剣聖流派奥義『天津雀:二式』!!」
「切り落としてあげます・・・!!! 剣聖流派奥義『天津雀』!!」
「「重奥義『十字天津』!!!」」
『オオォオォォオォォォオオオオォォオオオォォォオォォォオオオォォ!?!?!?!?!?!?』
『ゲルゲナート』の弁慶の泣き所にあたる部分に巨大な十文字の傷が深々と刻み込まれた。その痛みはやっぱりあるみたいで悲鳴のような叫びを上げてバランスを崩した。
前屈みに倒れかけたところに『Jrリューヤ』のアイアンクローが頭を捉えた。ギリギリと締め上げていく音と共に、『ゲルゲナート』は抜けだそうともがくが、四本の腕を残り三匹の『武装竜』とジェクス、ギルファーが爪と牙で押さえつけている。
それだけじゃない。プレイヤーもこの場で戦ってくれているNPCもが『ゲルゲナート』の全身を押さえ込んでくれている。
「リーク!! 行ってこい!! 旦那起こしてこいや!!!」
「譲ってやるからサッサと行け女狐ェェ!!!」
「言われなくても!!」
『Jrリューヤ』の背中を駆けて、『ゲルゲナート』の胸元、アールが飲み込まれているであろう中央に向けて跳躍する。
「聞こえてるよねアール!! 今、助けるから!!!」
落下の勢いをそのまま力に変えて、アールに教えてもらった技にみんなの思いを込めるように、胸元めがけて絶対に当ててみせる。
「月光真流奥義『水無月写鏡』!!!!」
――――◇――――
誰かの声が聞こえる。眠っていた意識が浮上した。自分が誰なのかは思い出せないが、胸の中から溢れてくる声が、俺を呼んでいることだけは理解できた。
『アールくん!!!』
『アールさん!!!』
『アール!!!!』
アール・・・俺の名前みたいだ。いろんな声が俺のことを呼んでいるんだろう。なぜだろう。何もわからないのに、俺はこの声に応えたいという思いが溢れてくる。
ここで眠っていてはいけないと、目覚めるんだと俺の中の何かが必死に訴えてくる。でも、目覚めるってどうやって目覚めるんだろう?
目を開けることが目覚めだとしたら、俺はもう目覚めている。でもそうじゃないって思うんだ。眠っていたこの場所から出ること。それが目覚めだと思う。
でも・・・どうやればそれができる? 名前しか思い出せていない俺は一体何ができるんだ? 体中に繋がっている何かを引きちぎる術を俺は持っていない。
やっぱり無理そうだ。声の人たち。ごめんなさい。答えたいけど無理そうです。けど、その声を聴いてはいたいのでそのままお願いします。
『ヤットオキタカ』
『La〜』
誰?
『記憶マデウバッテイルノカ』
『La〜』
『一発イレテヤリタイガムリダシナ。アイツラツゴウヨクココマデヒビクコウゲキシテコナイカ?』
『La〜・・・La!!』
ごめんなさい聞き取りにくいので出来ればわかりやすい言葉でっ!!!?
『ツゴウヨスギルナ』
『LaLa〜』
「ん゛だぁぁ〜・・・クソっ・・・思い出したぞこん畜生・・・!!!!」
この一撃、絶対に『水無月写鏡』だぜおい。頭ガンガンするぅ・・・。おかげで全部思い出した上に少し前までの自分の考えに対して絶賛憤怒中だぜ・・・!!!
いきなりよくわからん毒か何かを盛られて動けなくなり、その謎の人物もろとも『ゲルゲナート』に喰われて気持ち悪い触手みたいなモンが皮膚を食い破りまでは覚えてる。
全身に今食いついてるのがまさにそれだろう。クソ気持ちわりぃ!!
(ヨヨヨ!!!)
「あぁ・・・悪いディア。後で吐き出すからもう少し我慢してろや」
『ワレラも早ク出タイ』
『La〜!!』
そういえばあの時ディアに食わせたんだっけ『艶姫刀:クヴァレイドル』。お前らもごめんな。油断したつもりはなかったんだがまさかこうなるとは。
考えるのは後にすっか。今はこの布団で挟まれてるような気味悪い状況から抜け出さねぇとな。
『アール!!!!』
この声、リークか? 胸の奥から響く暖かい声。それだけじゃない。たくさんの声が俺を呼んでいる。もしかしてこれ、ジェクスの能力か?
ってことはジェクスまで助けに来てくれてるのか。嬉しいじゃねぇか。ジェクスを動かせるのはギルファーくらいだから、あいつ最近見かけなかったのはジェクスを探していたからなのかもな。
出て行ったらお礼言わないとな。そんな訳だ。こんなところサッサと出ねぇとな。すると声に続くように暗い中に一筋の光が俺を照らしていた。そっちが出口なのか?
「お・・・・おおおおお・・・・・おおおおおおお!!!!!!」
正解なのかわからねぇが光の方向へと手を伸ばす。腕にかかる荷重と管を引きちぎるように力を込め動かしていく。くっそ重てぇなおい。けどゼッテェこの場から出てやるよ。
んでもって食われた恨みを百倍返しで返してやるから覚悟しろやぁ。
「こんちくしょうめぇェェ!!!!!!!」
『ブチブチブチッ!!』と皮膚を裂きながら管が抜けていく。押さえ込んでいた布団のような荷重を退かすように手を上に伸ばしていく。
「おおっ!!?」
下半身をつなぐ管が俺を光に向かわせんと下に引きずりこもうとする。ざっけんな。掴まれる場所がない俺クソ不利じゃねぇかっ!! 上等だコラァ!!!
「負けるかァァァ!!!!!!」
それでも腕を光の方へと強く伸ばす。こんな理不尽程度で諦めるほど俺は行儀はよくねぇんだよ。絶対に負けねぇ!!
――――ニガサナイ
「こんなクソ気持ちわりい場所お断りだクソ野郎・・・!!!!」
管を通じて届いた『ゲルゲナート』の声らしき低い声。どうやらこいつ俺を逃がしたくないって訳らしい。それこそお断りだ。
せっかく邪神ぶっ殺して新しい事始めたのにまた復活とか最悪すぎるし、俺(剣聖)を触媒にして復活するとか胸糞すぎる。魔剣聖ロールの時ならまだしもこっちの時にそれは死んでもゴメンだぜ。
「まだ・・・届かねぇ・・・!!!!」
引きずり込もうとする力に逆らって、必死に伸ばす手はまだ光に届かない。体の疲労感も半端ない中でこれが続くのはきついんだってばよ!!
「うぐっ!!」
この野郎。体に痛みを与えてきやがった。全身が引き裂かれるような痛みだ。気合入れないと意識が落ちそうだ。
「う・・・がぁああああ・・・・!!!!」
まだ足りない・・・届かない・・・でも、これ以上はどうなるかわからねぇ・・・!!!
「だれか・・・・手を・・・・貸してくれ・・・!!!!!」
届かないかもしれないけど、それでもここから脱するために、最後の力を振り絞る気持ちで声を絞り出す。ちょっと本気で痛みで意識が飛びそうだ。マジで頼む。
俺の声。『ゲルゲナート』以外の誰かに届いてくれ・・・!!!!
「「アール!!!」」
「っ!! さいっっこう・・・だぜ・・・・!!!」
俺の声は、届いたらしい。すごく久しぶりに聞いた気のする懐かしい声の主が、俺の手を取ってくれた。
暫く出番無かった主人公おかえり!!次回から主人公目線に戻りますのでよろしくお願いします。
今更ですが今季はVR系アニメが豊富で同じジャンル書かせて貰っている私も嬉しいです。更新毎日楽しみに待ってるし、いっつも参考にさせていただいてます。
と言うか、私がこの作品かけ始めたそもそものキッカケは今季のアニメ二つと絶対ランキングに居るあの方の作品です。




