226:魂の雄叫び
レイレイさん援軍連れて帰還。
「・・・いたいよ・・・」
「そこのヒーローモドキも一発殴るわよ!! というか全員まとめて殴り飛ばすわよ馬鹿ども!!! 早く立ちなさいよ!!」
理不尽にグーで殴ってやったのにキレもせずに無気力のまま塞ぎ込んでるとか明日槍でも降るんじゃないの!!?
「でも・・・戦う理由が・・・なくなっちゃったの・・・」
「それこそバカじゃないの!!? あのデカ物倒さないとこの世界むちゃくちゃにされるのよ!!? 例え仮想世界だとしても私たちの世界よ!! 自分の大切な何かを戦う理由にすればいいじゃない!!!」
戻ってきてみれば皆泣いてるわ塞ぎ込んでるわで地獄絵図よ。なにこれボス戦中に舐めてるの? 死ぬ気なのっていうか全員死ぬ気じゃない巫山戯るなってのよ!!
「あぁもう!! アタシだけじゃ流石に”アールを助けられないんだから”起きなさいよ!!!」
「っ・・・ごめんね・・・私・・アールを・・・助けられなかったの・・・」
唐突に馬鹿なことを言い出したんですけどこの女狐。助けられなかった? そもそも崖の下で足止めに参戦できなかった時点で助けるなんて言える立場じゃないし。
「は? 何言ってるのよ。だから”今から助ける”んでしょうが。馬鹿なことを言ってないで全員起きなさいよ!!」
助けられてたらあんな所にアイコンあるわけないじゃない! というかやっぱり食われてたのね!! なんでさっきは見えなかったのよ!! あぁもう!!所在がわかったら安心したアタシも大概だけどね!!
「ごめんなさいみなとぉ・・・アール・・・しんじゃった・・・」
「・・・・はい? 何馬鹿なこと言ってるのよ? いるわよあそこに」
「違うの・・・アールが居た場所をきりさいちゃったの・・・だから・・・もう・・・」
「はぁ・・・呆れた。なら起きてしっかり見なさいよ。おいギルファー!!”ジェクス”!!あのバカ共にアールのこと見せるから押さえ込んで!!!」
『何度も言うが貴様に名前を呼んでいい権利を与えた覚えはないぞ小娘!!!』
『姐さん鳥使い荒すぎるっスよ!!? けど了解ッス!! おう駄犬!!手伝えや!!』
『こんのクソドリィィ!!! 後で覚えていろッ!!!』
脱力しきった女狐をひん捕まえて目線を上に上げる。このくらいで見えるでしょうね。もうちょっと上かしら?
「・・・・え・・?」
ちゃんと見えたわね。ちょっと巨人の体に飲み込まれかけてるけどしっかりとアールがそこに見える位置になってるわ。
分身使って腕を全部押さえ込んでるギルファーと、脳天に爪を突き立ててグワッっと上に向けさせているジェクスのおかげできっちり見えてるでしょ?
というかどこぞの囚われの身のお姫様なのよ。変な球体に入れられてるのは初めて見たパターンだけど。
そもそもよ。さっきまで確認できなかったアールのアイコンがいましっかりと映ってる時点でそこにいるし生きてるのだってアタシには丸分かりなのよ。
「ほら見える? ちゃんと生きてるわよ。飲まれかけてるけど」
「っっっ・・・!!!!! うそ・・・本当に・・・きゃっ!!?」
なんかムカついたから放り投げてやった。さっきからそう言ってるのに信じないし無気力のくせに、アール見た瞬間に泣きそうになるとかヒロインじゃない。ムカつく。
「しっかり見たわよね? なら立て女狐。ほら!! ほかの連中もいつまで寝てるのよ!! さっさと起きて働け!! チーザー!! アンタの竜もよ!! こんな巨体で横になられたら邪魔になるだけよ!!」
「う・・ううう・・・!! このバカレイレイ・・!!!」
何泣きながら立ち上がってるのよ。しかもなんか声が嬉しそう。キショイんだけど。ほかの奴らも泣きながら笑ってるしキモい。
なんで目視できなかった知らない私が元気で、目視できてたこいつらが元気なかったのよ。なに? もしかして幻覚でも魅せられてたとか? 流石に幻覚対策はしてないんだけど。
「ねぇレイレイ」
「あ? なによ?」
「ありがと」
「え・・・あぁうん・・・どういたしまして?」
心の底からの感謝だってわかったからどう返したらいいのかわからなくなったじゃない。そんなこと気にせずに女狐は目元を拭い去りいつものキリっとした表情に戻っていた。
「この場にいる全員に問うわ!! まだ戦えるかしら!!?」
「「「「「「「「「「「オォォオオオ!!!!!」」」」」」」」」」」」
「今度こそ!! 絶対に助けるわよ!!!!」
「「「「「「「「「「当たり前だァァ!!!!!」」」」」」」」」」」
何よ全員元気じゃない。やっぱり幻覚?まぁ皆目覚めたみたいだしまぁいっか。ってあいつ誰?
「そこの新顔」
「ふぇ? 僕?」
「アンタ以外に誰がいるのよ? アンタ誰?」
「ふふん!! よくぞ聞いてくれました!! 僕こそr「「「「「黙れクソガキ。口を開いたら殺す」」」」」・・・・ッッッ!!!!!」
あぁ、なんとなく理解した。こいつが何処ぞの坊ちゃんクジャンよろしく被害を増やしてそれがキッカケで幻覚に落とされたのね。
普段笑顔でゴツイニコニーコが憤怒の表情見せてるから間違いない。表示的にはNPCみたいだけど名前は・・・・オリオクス・・・聞いたことない名前ね。
睨まれて殺気を向けられて丸まって怯える小動物のように小さくなった。そこにいると邪魔になりそうね。仕方ない。
「とりあえずアンタ邪魔よ。余計なことする前にどっかに行きなさい」
「レイレイ。出来れば私の近くにそのクズ寄せないでくれない? 見ただけで殺したくなるの」
「ふぎっ!!?」
「別にいいけど先にアール助けてからよ。近づかせないけど殺す労力を向けるのはあとにしなさい。ジェクス!! 来なさい!!」
『アイサー!!!』
掴んでいた頭を地面に叩きつけて、翼を広げたジェクスが私の横にやってくる。嫌われているガキんちょの首を掴んでジェクスの背中に乗る。
怒り心頭とはいえNPCをアールの目の前で殺させるのは後味悪いから、怒りの理由を聞いてないアタシの近くに置いとくのが一番丸いわね。
「さぁジェクス!! アナタの力! 存分に使ってもらうわよ!!」
『勿論でさぁ姐さん!! 兄貴を助けるためにこの不肖ジェクス!! 最初から全力でっせ!!!!』
「・・・ところでレイレイ。そいつってもしかして・・・」
今頃気づいたのね。かなり見覚えあるでしょうね。正気に戻った連中も間近で見てようやく思い出してきたみたい。
「詳しくは後よ。さぁジェクス!! あそこにいる眠れるお姫様に私たちの魂を届けるわよ!!!」
『キュルォォォォォォ!!!!!!!!!!!!』
――――◇――――
全プレイヤーに対して『従者:鎧翼鳥ジェクス』の『共鳴』が発動。
共鳴先対象:時代人アール。
――――◇――――
『共鳴』
・対象とした相手に直接何かを与える能力。受けたダメージをそのまま移すことも可能であり、届けたいものが物質でも非物質でも対象へ与えることが可能。与えるものは『共鳴』発動者が決める。
――――◇――――
ジェクスが大きくその翼を広げ、辺り一帯に自らの羽を撒き散らす。綺麗な翡翠色の羽がこの場にいる全員の身体に触れると、取り込まれていくように体の中に入ってくる。
「行くわよアンタたち!! よくある王道ファンタジーよろしく声を届けてお姫様で英雄なアールを目覚めさせてやろうじゃないの!!」
実はちょっとだけこういうシュチュエーション憧れてたりするのよね。助けられるよりも助ける方が熱い展開に参加できていいじゃない?
最近やったゲームってそういうイベントあんまり見ないから熱血イベント成分不足みたいな感じ?そんな時にこんなにも都合よく熱い展開になってるわけだしもうノリノリよ。
「・・・ハッ!! 美味しいところ持ってきたからって調子に乗るなよメス猫!!」
「言ってろ!! 昔アールが電話でなかったからって大泣きしてた女狐!! しかもさっきまで泣きべそかいてたアンタ達よりは動けるわよ!!」
「んなあぁっ!!? アンタそれは内緒だって話したじゃない!!?」
そうだったかしら? オホホホホ! 覚えてないわねぇ!! ザマァ!!
「ハハハハ!! 言われてしまったな!! だがレイレイくん!! 目覚めさせるとは一体どのようにするのだい!!!!?」
落ち込んでいたのが嘘のように、いつものテンションのニコニーコが大声で聞いてきた。
「コイツの能力『共鳴』でアールを目覚めさせるのよ。ただ助けるよりも目覚めてもらってから助けたほうが展開的に熱いじゃない?」
ただ助けるよりもこっちのほうが私好みってだけなんだけどね。アールって普通に助けるっていうのがイメージわかないし。それなら目覚めさせるっていう形で助ける方がなんかカッコイイじゃない。
「おいおいおいおい!! なんだその熱い展開はよぉ!! いいじゃねぇか!! 乗った!!」
「オッシャァ!!! なんかやる気も気合も戻ってきたぜぇ!!!」
「囚われのお姫様ならぬ王子様を助けるみたいな?」
「魂で吼えろ!! 思いを叫べ!! この戦いを完全勝利で迎えるために!! 自分たちの思いを叫びながら『四腕巨人ゲルゲナート』を倒すのよ!!!」
「「「「「「「「「「オォォオオオ!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
最終戦の幕開けよ。まずは寝てるお姫様を起こして上げないとね
レイレイさんアールに大分感染されてきて主人公ムーブ繰り出しました。後日思い出して悶える模様。ちなみに『死怨』がなかったのはアールがそこに居ることをわかっていたからです。
――――◇――――
リークの本当の絶望は『アールが自分のことを信じなくなってしまうこと』
レイレイにとっての絶望は『アールがどこにいるのか分からないこと』
愛する人がどこに居ようとも、自分のことを絶対に信じていてほしい。自分は絶対に貴方裏切らないと誓っているからこその絶望。
愛する人に嫌われても、憎悪の感情を向けられたとしても、貴方がそこにいてくれるのならば、自分がどうなっても構わないと思っているからこその希望。
信じて欲しいリークと、いてほしいと願うレイレイ。
数話前にレイレイが絶望していたのはそういう理由です。ちなみにリークに効果が無かったのはアールが自分を信じていると確信していたからです。どれだけ女を囲おうとも、自分のことを捨てないと思っていますのでこの人。
――――◇――――
『ゲルゲナート』の特殊行動条件
①残りHPが半分以下になったとき
②誰かを取り込んでいる
③取り込んだ存在と親しい存在が近くにいるとき
――――◇――――
条件を満たしたとき、取り込んだ相手が誰であろうとも、咆哮を聞いた存在に生きる意味すら失わせるほどの絶望を叩きつけるという最凶最悪の行動です。ゲルゲナート側としては命の危機を感じて目覚めた新しい力だったりします。
味方を変えれば正義が悪に、悪が正義になるのはそう言う思考を持つ人はきっと常識ですよね? 私だけじゃないですよね?
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