217:『四腕巨人ゲルゲナート』激戦 Ⅲ
キンクリキンクリ
どれくらいの時間が経っただろう。もしかしたらまだ数分も経っていないかもしれない。けど『ゲルゲナート』との戦いはまさに死闘である。
『オォォォォオオオォオォォォオオオオ!!!!!』
「ッッ・・・ひっ・・・・るむなぁぁぁ!!!! 気合入れて戦えぇぇ!!!!!」
『ゲルゲナート』の咆哮はそれだけでプレイヤーの潜在恐怖を蘇らせて、体を蝕む。一瞬真っ白になる思考と、動かなくなる体を奮え上がらせるように誰かが叫び、思考を取り戻すことで現在戦線は成り立っている。
特攻持ちである真化ジョブ所持プレイヤーがその力を振るい攻撃を繰り返すが、即座に再生しては反撃してくる『ゲルゲナート』の猛攻は、これだけの数では”足りない”と言っているようにも見える。
「ブレイブソウルスマッシァァァッ!!!」
ニコニーコが魂を込めて放った一撃すらも、一時的な隙を作ることは出来ても即座に復帰されてしまう。腕を何度切り落としても即座に再生する。
粉砕しようが何をしようが瞬きをする刹那の時間で何事もなかったかのように再生を繰り返す『ゲルゲナート』。私が生み出した『光闇の巨人』も数分前に『ゲルゲナート』のナックルハンマーで消え去ってしまった。
何かギミックがあるんじゃないかと思うけど、まだそれは見つからない。ひたすらに攻撃を繰り返して、動きや軸にしている場所は見つけても、再生の種は未だわからない。
言いたくはないけどアールがいればもう少し情報を知っているだろうしそれを聞いて戦術を組みたいところではある。
でも一切呼びかけも電話も繋がらない。ログインはしているから”いる”んだろうけど、どこにいるのかわからない。
「ヴァンレイ!! 一旦下がりなさい!! 三分後に戻ってきて!!」
「すみませんお願いします!!!」
「『武道』!! ヴァンレイの場所を埋めて!! 三分は持ちこたえろ!!!」
「無茶を言うぜクソ!! やってやんよ!!!」
それでも戦い始めて、色々とわかったことはある。
まずあの四つの腕はそれぞれが独自に動くこと。まるでそれぞれに意思があるように動くから『ゲルゲナート』が見ていない死角からの攻撃でも反応してくる。
次に再生についてだけど、再生する時は僅かながらに『ゲルゲナート』は無防備になる。一瞬ではあるけどぴたりと動きを止めるんだ。
その隙に撤退や交代、更なる追い打ちをかけることで戦線の維持は可能だということ。現れた地点から100mも動かさずに押し止めていられるのはこの部分が大きい。
それと『ゲルゲナート』本体に関してだけど異様に硬い。特攻持ちでも、あらゆる攻撃が本体には通用しない。腕には十分すぎるほど通る攻撃でも、体には一切傷がつかない。
恐らく弱点か、状況を打開するためのポイントは胴体への攻撃が鍵になるのは間違いない。それにしたって『眼』も硬いなんて聞いてないわよ。
普通『眼』には攻撃通るでしょうが。目を潰してやろうとしたのに全く効果なしとかなにこのチート級ボスモンス。
「あヤヴェギャッ」
「パチスロットの空いた穴を埋めて!! 戻ってくるまで持ちこたえなさい!!!」
「任せろ!!!」
「リークさん!! シュートとマキナ戻りました!! これより戦線に加わります!!」
「助かる!! お願い!!」
「護衛に出ていた他の人たちも順次戻ってきます!!!」
「その情報はありがたいわ!! アストラル!! 今の情報の全部書き込んどいて!! 戦場の様子も逐一書き込みなさい!!」
「人使いが荒いな!!」
「嫌なら†魅祈†に任せてもいいのy「任せてくれ!! 私の本気をおみせしよう!!」最初からやれ!!! それから他の街にいる補給部隊に連絡!! そろそろ用意したステータス補強のアイテムが尽きるみたいだからね!!」
さっき連絡があった。回復アイテムよりもバフ系のアイテムが先に底をつきそうだって。ここまで消費が激しいのはこっちが瀕死になるのもあるけど、『ゲルゲナート』の咆哮にはバフを打ち消す効果もあるみたいだから。
魔法魔術で支援しているけど、アイテムで補ってもらわないと間に合わない状況でもある。ルシオンがいるならそうでもないんだけど、あのバカ今ダンジョンの中で、しかも離脱できない状況だとかで最悪よ。
「ハァァァ!!!!」
†黒悪魔†の一閃が再び右腕を輪切りにする。ボトリボトリと落ちる肉塊は即座に光となって消えていくが、同時に切られた腕も即座に再生する。
切り口からブニュリと気色の悪い音を立てて生えてくるから最悪。どこの緑色の星人よ。いや、緑色の奴でもここまでデカくないし強過ぎもしないわよ。
「根暗マンサー!! 切り口に仕込んだ毒の様子はどう!!?」
「全く効果なしです!! この毒私が持つ最高の毒ですよ!!?」
「毒の効果なしとは考えにくいから試せるもの全部試して!! エール!! 真之介!! 腕をどうにかして肉塊に変えて!! 近くのやつ援護に行って!!」
「任せなさい・・・!!!!」
「エール姉さん!! 援護任せてくれ!! 姉さんは一気に懐まで!!」
「真面目にやればそれなりにカッコイイのにね・・・動き止めますから一気に殺ってください」
「助かります!! くらんこ、ネッター!!」
「剣豪の好です。援護しますよ真之介くん」
「ウチのメインメンバーまだ来てないからね。少しは代表して目立っておかないとね!」
「アルメリアさん!! ぞうもつまるさんも!! ありがとうございます!!!」
武器を構えたエールと真之介。そして、それぞれの前を疾走する四人が『ゲルゲナート』の行動の余波で迫り来る木々の破片や岩を切り裂き、道を作り出す。
耳が良いらしく、『ゲルゲナート』がこちらに気づいた。張り付いていた連中を振り落とすと四本の腕を全てこちらに向けて迎え撃たんと構えを取った。
「出番だシロマサ!!! 絶対に止めて見せなさい!!! 根暗!! 用意はいいわね!!?」
「オッシャァ!!! 総員出るぞ!! 対象をアルメリアとネッターにして『ガードムーブ』発動だァ!! タイミング間違えるなよ!!」
「「「「了解っ!!!」」」」
「マンサーつけてください!! できてますけども!!!」
盾持ちジョブの専用スキル『ガードムーブ』は視界の範囲内にいる味方を対象として、その味方の前に瞬間移動を行えるスキル。更に使用時に自身の攻撃力を0にする代わりに防御力を攻撃力の数値分上昇させる効果もあり、守ることに特化したスキルである。
被害を防いでいたシロマサ達が一斉に動き出し、それぞれが持つ盾を構えつつタイミングを逃さぬように意識を集中させている。
『ゲルゲナート』はそんなことなど気にせず四本の腕を一気に駆け抜ける四人に向けて突き出してくる。今の今まで防御をしたりしなかったから防げるとは毛ほどにも思っていないんでしょうね。
「突っ込む六人!! そのまままっすぐ行きなさい!!!」
「言われずともそのつもりです!! 皆さんお願いします!!」
でも残念。こいつらの防御力なら”防げる”と判断したからこそ防がせに行くのよ。それに目標が自分でやってくるんだもの利用しないわけがないじゃない。
そしてそれを信頼しているからこそ六人は真っ直ぐに進む。そして『タンクウォーリアーズ』を率いるシロマサっていう男はその信頼に応えるだけの力を持っている。
「ここだ行くぞお前ら!!! 『ガードムーブ』!!」
シロマサのタイミングは私が考えていたのと寸分狂わずに一致した。向かってくる拳が駆け抜ける六人に激突する間近で、盾持ち達が拳と六人の間に瞬間移動した。そして響く渡る金属を殴りつけた激しい音。
「「「「「「「俺たちを!! 誰だと思っていやがるゥゥゥ!!!!!」」」」」」」
『オォオオオォォオオォオオオ!!!?!!!!』
四本の豪腕は、肉片を作り出すはずだったそれは、わずか12人の手によって防がれた。誰一人かけることなく、ダメージこそ多少負ったかもしれないが、全員生存した状態でこの戦いにて初めて防がれた。
驚きを隠せない様子で、『ゲルゲナート』の表情が初めて変わった。驚きで動きを止めた『ゲルゲナート』の腕に、六人の戦士たちが飛び乗った。
「『不滅の愛撃』!!」
「『月呼天斬』!!!」
「秘剣『暁二刀舞踊』・・・!!!」
「術式『首狩り施術』応用ッ!!」
「剣豪一刀流居合ッ『侍心』!!」
「弓術裏奥義『パッションメイフライ』!!!」
エールの重撃が腕をへし折り、真之介の斬撃が折られていく腕を次々と切り捨てていく。
アルメリアの踊りのように流れる剣戟が、ネッターのナイフによる切り開きが、ぞうもつまるの居合い切りが、くらんこの食い破るような矢の一撃がそれらを更に細かい肉片へと変えていく。
『オォォオオオオオ!!!!』
「ブレイクソウルゥゥゥゥゥ!!!! スマァァァァッシュッ!!!!!」
『オォオォッ!!?!!』
動きが止まった『ゲルゲナート』を頭からたたきつぶすようにニコニーコが拳を叩き込む。ダメージとしては低いのかもしれないけど、重さに耐えられなかった地面が陥没し、『ゲルゲナート』の巨体が地面に沈んだ。
真化ジョブ持ちの皆さん(登場した人)
・ニコニーコさん『真化ジョブ:守護魔闘士』
・レイレイさん『真化ジョブ:暗殺者:恋華』
・エールさん『真化ジョブ:不滅の愛者』
・真之介さん『真化ジョブ:月夜剣豪』
・†黒悪魔†さん『真化ジョブ:因果裂:翅弍臥魅』




