216:『四腕巨人ゲルゲナート』激戦 Ⅱ
さぁさぁ始めましょうボス戦
『オオオオオオオォォ!!!』
民家を巻き込みながら地面にくずれ落ちた『ゲルゲナート』は倒れたまま巨大な咆哮を上げた。同時に再び襲いかかってくる恐怖感や絶望感。でもそれ以上に私の中を駆け巡る怒りが恐怖を殴りつけた。
改めて思うけど、始まりの合図が終わりの合図になる可能性があるとかどんなクソ難易度なのよ。もう少し優しめの難易度設定して欲しいんですけど。
見なさいよあの腕。今エールと†黒悪魔†が切り裂いたのにもう再生してる。再生速度も尋常じゃないくらい早い。簡単に倒せないのはわかってたけどそれにしたってでしょうに。
『ゥオオオオ!!!!!』
「あ、ヤバッ」
一瞬、ほんの一瞬気が抜けた瞬間にそれは襲いかかってきた。倒れた『ゲルゲナート』は近くにあった奴にとって小石を掴み、剛速球で投げてきた。
『ゲルゲナート』にとっては小石でも、私たちにとっては巨石になる。そんなものが高速で投げられたんだ。残念ながら今私はちょうどMP回復の為に片手が塞がっている。
白月の構えを取りたくても一手足りない。それでもやるしかない。こんな所で殺られてたまるか。
「ソウルガードォォスマァァッァァッシュ!!!!!!」
直後、向かってきた巨石の前に立ちふさがり、作画が明らかに違うニコニーコがその拳を叩きこみ粉砕した。それだけじゃない。粉砕された破片を私の前に立つ複数のプレイヤーが全て蹴散らしていく。
「リーク。貴女の怒り。確かに届きました」
「開戦直後からやってくれたわねあの巨人。絶対に泣かせてやるんだからヽ(`Д´)ノ!!!」
ミラファたちが並び立ち己の武器を構えて立っている。それだけじゃない。様々な場所で、動き出したプレイヤーがそれぞれの戦いのために動き出し、『ゲルゲナート』へ攻撃を仕掛けていく。
「皆!! 立ち上がれ!! 私たちがここで怖気付くことは決してならない!! 私たちはこの大陸に住むみんなを守るためにここに集ったんだ!! この恐怖を乗り越えてこそ私たちは真に勇者となりえるんだ!!」
相変わらずのヒーロー発言だけど、それが今は頼もしい。私たちの怒りよりも、大義名分が『ヒーローになれる』方が奮い立つだろうし、それに正義の味方が一緒に頑張ろうって言ってるんだ。
テンションが上がらない方がおかしいでしょう。言葉に応じる様に再起したプレイヤーたちが私たちのもとに集まってくる。一部は先行して起き上がろうとする『ゲルゲナート』へと向かっていく。
雷華は武器を構えて、自分の真化ジョブを起動する言葉を叫ぶ。するとそれに応えるように体の中から雷が発生し、身に付ける和服風の鎧に雷を纏わせた。
「リーク君!! 指揮は君に委任する!! 私は前で戦うほうが性に合っているのでね!!!!」
「任せなさいニコニーコ。あんたこそ殺られたら分かってるんでしょうね?」
「知らないなぁ!! なぜなら私は平和の守護者だ!! 私の敗北は世界の終わりなのだからな!!!」
このどこから来るのかわからない圧倒的な自信は一体どこから来るのかしらね。でもこういう時のこいつは頼もしい。
二度三度と折れかけて再起したんだしもう折れることはないでしょう?
「私が命にかけて”全てを守るためにこの拳を振るおう”!!! 私が平和の守護者ニコニーコであるッ!!!!」
真化ジョブ持ちはみんなそれぞれキーワードとなる言葉があるみたいね。雷華しかり、今のニコニーコしかり。
結構恥ずかしいようなセリフだけど、まぁ楽しんだ者勝ちよね。さてと。私も任された事はする。全員で勝つために。
「総員これより私の指揮に入ってもらう!! 反論異論は認めない!! ここにいる全員の力を出し切って勝つわよ!!!」
「「「「「「「「応っ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」
「作戦はシンプルよ!! 特攻持ちを中心に短期決戦で勝負を決める!! 真化ジョブ持ちは独自行動で動きなさい!! 一々力を聞くより見たほうが早い!! ある程度見たら指揮下に入れるから全力でいけ!!!」
「わかったとも!! エールくん!! 雷華くん!! 真之介くん!! †黒悪魔†くん!! 行くぞ!!!」
「ではミラファ。行ってきます」
「行ってらっしゃい雷華さん! みんなで勝ちましょうね!」
「えぇ、必ず勝ちましょう。”雷纏いて駆け抜ける”!!我が名は『雷鳴武将』也!!」
「今度こそ、誰も失わずに助けてみせます!! 『不滅の愛撃』の名にかけて!!!」
「『因果裂:翅弍臥魅』†黒悪魔†!! 命を弄ぶ獣を討ち取らん!!」
「『真月ノ剣豪』の名は伊達ではない!! 真之介! 参る!!」
「我ら人々の平和を!! 命を!! 平穏を守るために新たなる力へと真化した新たな平和の守護者!! 行くぞ『ゲルゲナート』!! お前を倒して平和を取り戻す!!!」
真化ジョブ連中が突撃する。それぞれの獲物を構えて一斉に『ゲルゲナート』へと駆け抜けていく。
「脳筋連中と攻撃ジョブ連中は突っ込みなさい!! 相手の行動を見るから盾は出さないつもりだから狙われたら死ぬ気で避けなさい!! もしくはカウンターでも叩き込め!!!」
「その方が俺好みだ!!」
「俺のトマホオォォックブゥゥメランを受けてみろ!!!」
「私だってヒーローの端くれよ!! 双剣士シュティの名をその身に刻んであげるわ!!!」
続くように特攻持ち以外がニコニーコ達のあとを追う。特攻こそ持っていなくても皆それぞれに武器を持っている。それに『こいつ(ゲルゲナート)を倒す』っていう気持ちは誰にも負けないはずだ。
「シロマサ!! タンクジョブを全員率いて『ゲルゲナート』から街への被害を防いで!! 状況次第では『ゲルゲナート』の攻撃も防いでもらうから連絡が取れるようにしておいて!!回避盾共はハエのようにチョロチョロしてヘイト稼いで街と避難民に意識を向けさせるな!!! 」
「了解!! 盾持ちは全員ついてこい!!! ライトニング!! そっちは任せた!!!」
「了解マスター!!! ライトニング、出るぜ!!!」
街の壊滅がこの戦いの勝敗を決める一つの要点。なら街への二次被害を防ぐことも重要なんだ。それに街のあちこちには仮設補給拠点を作っている。そちらを維持することも戦いにおいては重要になってくる。
「魔術師系統のやつは後方支援に徹して!! 前線の連中に傷を数秒であろうとも残しておくんじゃないわよ!! 回復できない連中は『ゲルゲナート』の束縛を狙って!! 間違っても戦果目当てで攻撃して前線崩すんじゃないわよ!!!」
「ガッテン!! 色々召喚して奴の調子を崩してやるよ!! 魔力をチャージ!!!」
「さぁ可愛い私のアンデット、出ていらっしゃい。獲物は大きいわ。皆で喰らい尽くしましょう・・・!!!!」
「支援部隊は街の各地に設置した補給拠点に行って!! 人が入ったら30秒で戦線に戻しなさい!!!」
「クラン『影』任務了解した」
「クラン『影』任務了解した」
「俺たちは戦場にも出張るから拠点までいけないなら俺と押忍の所でもいいぜ!!」
「お姉さん頑張っちゃうわよ!! 何かあれば頼りなさい! 一瞬で全快まで持って行くわよ!!」」
「自分がどこにも属さないと思った連中は基本的に鉄砲玉よ!! 死ぬ気で突っ込んであとに続く者たちへの勝利の道を作りなさい!!!」
「残りの扱いが酷いっ!!? でもそういう役割の鉄砲玉は大歓迎だぜ!!」
「銀狼の言うとおりだな!! 俺らも逝くか!!!」
それぞれの連中が動き出してそれぞれの戦いを始める。すべては勝つために。
ただ不安要素であり、心配要素でもあるアールの所在が未だわからない。アイコンでは表示されず、現在地も不明。ログインしているのは確認できるけどそれ以外に何もわからない。
ニコニーコっていう精神的支柱が今は大きいけど、間違いなく戦っていくうちにそれだけでは足りなくなる。
アールの存在、強さ。そしてカリスマ性はもうプラクロには必要不可欠な存在になっているんだから。
必要な犠牲ならば皆喜んで尖兵となる優しい世界。




